IS~転~   作:パスタン

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今年最後の投稿です。

今年は本当にお世話になりました。

来年も『IS~転~』をよろしくお願いします。




転校生は黒兎と金髪の貴公子でした3

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、班別に格納庫に集合。専用機持ちは時期と訓練機の両方を見るようにしよう。では解散」

 

 どうも織斑一夏です。午前中の1・2組合同実習が終わって、今は着替えに行く所だ。……しかし酷い、俺の班は俺と相川さんの2人でリヴァイブを運んだようなもんだ。確かに俺一人でも別に運べないこともないけど一緒に運んでこそ仲間意識も生まれると思うのだが……俺の考えが古いのかな?まぁ良いか。俺の中で相川さんの株は上昇中だ。お礼にお菓子でも持っていこうかな?シャルルの班は、体育会系の女子数名が運んでいった。「デュノア君にそんなことさせられない‼︎」とかなんとか言ってたな。何というか…その努力が報われることが決して無いとわかってる人間からするとホロリと涙が出てくる思いだ。

 

「シャルル。俺クラスの仕事が残ってるから先に行ってるけど良いか?」

 

「う、うん。僕は機体の微調整があるから、待ってなくていいからね」

 

 まぁ、性別を隠してる人間が誰かと着替えを一緒に出来る訳ないよな。安心しろシャル!俺は空気が読めるタイプだ。なるべく皆にばれないようにサポートしていこう。ちなみに俺のISスーツなんだが原作一夏のようなヘソ出しルックじゃない。7分袖のウェットスーツみたいな感じだ。

 

 つーかあんな恥ずかしいスーツ着れんし……。

 

「わかったよ。ああそうだ、お昼はみんなで屋上に行くからシャルルもどうだ?」

 

「ぼ、僕も行っていいの?」

 

「もちろんだとも、それじゃお昼は屋上でな」

 

「……」

 

 一夏は背を向けていて見えなかったが、その時のシャルロットの表情は複雑だった……。

 

 

~屋上~

 

「それじゃ、ラウラ・シャルルようこそIS学園へかんぱーい!」

 

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」

 

「感謝する。カンパイ」

 

「みんなありがとう。カンパイ」

 

 IS学園の屋上はヨーロッパ調の石畳の上に四季折々の花々が咲いた花壇。そして数か所に円テーブルとイスが点在している。今日は他の生徒がシャルやラウラ目当てで学食に向かった事を予測してのことだ。屋上に行くついでに自販機でジュースと一緒に食べられる様な軽食を少し買って皆でささやかなパーティーをやろうと言うことになったのだ。ちなみにこれらの費用は俺のポケットマネーである。

 

 主賓の二人といつものメンバーはそれぞれで自己紹介を行っている。予想通りシャルは短時間ながらも全メンバーと良好な関係が築けそうだ。緊張しやすい簪も初対面ながらそれなりにシャルとコミュニケーションが取れている。シャルの母性の高さだろうか?

 

 ラウラは軍人気質なのは相変わらずだが変に肩肘を張っていないせいか結構気さくに話が出来ている。ここら辺は原作と違った柔軟性が見れるな。特に箒とは日本文化で話が弾んでいる。割と共通点が多いのかもな。

 

「ラウラ久しぶり。まさかIS学園に来るとは思わなかった」

 

 我ながら白々しいが、実際俺にはラウラが来るなんてことは知らないわけだし……こんな感じで良いよな。

 

「軍上層部の意向などが絡んで昨年から入学は決定していたのだが、愛機の調整に手間取ってこの時期にずれこんでしまったのだ。というか、お前がISを動かしたことに私は驚きだぞ。テレビで見たときは思わず噴きだしてしまったのだからな」

 

「いや~自分でも驚きだったよ……。色々あったけど、みんなの力を借りながら今日までどうにか過ごしているかな。それより初めての授業はどうだった?うまかやれそう?」

 

「長らく軍で生活していた身としては戸惑いが大きいな……。あんな無邪気な接し方をされたことも、こんなに騒がしい雰囲気もほとんど経験がない。学校とはこれが普通なのか?」

 

 なるほど、ある意味この質問はラウラの視点だと当然だな。規律と階級が至上な軍において対等な関係はほとんどない。例え同年代の女の子がいたとしても階級差で対等な関係など持ちようもないし佐官クラスになれば特にそれは顕著に表れるだろう。だがIS学園、というより学校では基本的に先輩後輩くらいしか上下関係はないし……変な話をすれば今の状況は三等兵が少佐と同列になっているようなもんだもんな。そんな風に俺が考えていると……。

 

「10代の女子なんて大体あんな感じよ。理由云々を考えるなんて時間の無駄になるわよ」

 

 鈴が手に持ってるタッパーをいそいそと用意しながらラウラに何でもないかのように告げる。事柄の本質は捉えてるがもう少し言いようもあるだろうに……。てか君もその10代の女子でしょうに

 

「ふむ、考えるだけ野暮か」

 

 そう思っていたが当のラウラは特に思うところもないようだ。それどころか単純明快な鈴の言葉を気に入って部分があるようだ。

 

「そっ!それより折角日本に来たんだから色々やりたいこと探したほうが建設的よ。よし出来た‼︎はい一夏」

 

 そう言って鈴は俺の方にタッパーを渡してきた。ラウラは先ほどの鈴の言葉で考えてるようだ。……邪魔するのはよくないな。

 

「おお、酢豚丼だな。ありがとう鈴」

 

 下味をつけた角切りの豚肉を用い、衣をつけてピーマン、ニンジン、タマネギなどの野菜と一緒に油で揚げ、甘酢あんをからませた中華料理。そう、鈴の得意料理の一つ『酢豚』だ。今回は下にご飯を敷き詰めて丼仕立てにしてある。酢豚の甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐるりとても美味しそうだ。

 

「今朝作ったのよ。アンタ食べたいって言ってたからね。味わって食べるのよ」

 

 若干上から目線だがよく見ると頬が少し赤くなり口元が緩んでる。つっこむと面倒なので取り敢えずスルーして食べよう。

 

「はいよ。ではいただきます」

 

 先ずは箸で豚肉を一口。うん、衣はサクサクだが中の肉はとても柔らかい。恐らくバイナップルと一緒に寝かせたのだろう。とてもうまい!そのままご飯を一口。うむ、ご飯も餡と絡んでいい按配だ。自然と箸が進む。

 

「腕を上げたね鈴。すごく美味しい」

 

「と、当然よ‼︎頑張って練…じゃなかった。これが実力ってもんよ」

 

 俺の言葉にパッと笑顔を浮かべたが変な咳払いと共にそんな風に言葉を続けた。そーかー、頑張って練習したんだな〜。他の人間がいるとあまり素直じゃないな〜。でも、こんなこと言えば鈴が怒るのは火を見るより明らかだから口にはしない。面倒なので却下です。なので密かに忍び笑いをする。

 

 

 

「コホン。一夏さん、わたくしもたまたま早く目が覚めまして、サンドイッチを作ってみましたの。おひとつどうぞ」

 

 そう言いながらセシリアが見た目『は』とても素敵なサンドイッチが入ったバスケットを俺に差し出してきた。

 

 ……大事なことだから二回言おう。

 

 ミタメ『ハ』トテモステキナサンドイッチガハイッタバスケットヲオレニサシダシテキタ。

 

 ヤバイ……変な汗が流れてきた。シェフ・セシリアからトンデモ料理をおみまいされた。

 

「さぁ一夏さん、遠慮なさらず召し上がって下さいな」

 

 お願いです、頼みます、遠慮させてください‼︎簪がプルプル震えながら俺に首を振っている……。『アレ』の危険性を本能で理解したようだ。箒も鈴も軒並み顔をしかめている。

 

 皆の言いたいことは分かってるよ。でもそれは食べてからだ……。苦笑いしながら皆に首を振り、バスケットの中からBLTを一ついただく。

 

 うーん、見た目は何の変哲も無い……むしろとても美味そうなBLTだ。心なしか少し光って見える??

 

「それじゃ、いただきます」

 

「はい、召し上がってくださいまし」

 

 セシリアが嬉しそうに返答した。さて覚悟を決めて食べますかね。

 

 一夏、逝きマーース。ぱくっと一口

 

「どうかしら?」

 

 

 

 

「〜〜〜〜っおおおおおをををををヲヲヲヲヲ!!!!!!」

 

「い、一夏ーー!大丈夫か⁉︎震えてるぞ⁉︎携帯のバイブレーション並みに震えてるぞ!!!」

 

「アホなこと言ってる場合じゃないでしょモッピー!!一夏ペッてしなさい!!いいからペッてしなさいってば!!」

 

「一夏~、死なないで~!!!」

 

 唖然としているセシリアを横に、手元にあったお茶を慌てて飲み干す。

 

「ぷっはぁぁ……。あ、ああ、あ、あま⁉︎甘い、これ甘いよ!!!」

 

「甘い??それ……BLTでしょ?」

 

 訝しげに見ている。鈴、君の言いたい事は分かる。

 

「バニラエッセンスとか、砂糖とか……とにかくいろんな甘いものがいっぱい入ってた!!」

 

こんなものを……断じてこんなもの料理とは認めないぞ俺は‼︎

 

「セシリア~~」

 

 俺の勢いにたじろぐセシリアに俺は指をさして言い放った。

 

「料理禁止!!」

 

「そ、そんなーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オッホン、あー一夏、私もお弁当を作ってきたんだ。よければなんだが食べてくれ」

 

 そういいながら箒は、お弁当の包みを差し出してきた。

 

「え!本当に?じゃあ早速……おお!!」

 

 中身は鮭の塩焼き、鶏のから揚げ、金平牛蒡、ホウレン草の胡麻和えという非常にバランスの良い和風の献立がそこにあった。先のセシリアの件もあったから嬉しさも倍増だ。

 

「こんな手の込んだお弁当を……箒、ありがとう」

 

「ふふ、全く……気にせず食べてくれ」

 

 いやーこりゃうまい。みんな好きなものばっかりだし。箒も自分のお弁当の包みを開ける。おや?

 

「あれ?そっちに唐揚げはないのか?」

 

「!こ、これは、その、だな」

 

 箒は今までの嬉しさが嘘のように動揺してしまった。そして諦めたようにボソボソ呟いた。

 

「うまく出来たのがそれだけしかなかったから……」

 

 なるほど、それで俺のほうに入れてくれたのか。しかし女子とはいえオカズの彩りが少なくなるのはイカンだろう。

 

「はい」

 

 俺はオカズのから揚げの半分を箒のお弁当箱に差し出す。

 

「え…」

 

「おいしいものは一緒に食べなきゃな」

 

 

 

「ふふ、一夏ってやさしいんだね」

 

 上品に笑いながらつぶやくシャルさん。なんだかシャルが年上のお姉さんみたいに見えるな~。まぁラウラとのコンビはまさしく姉妹みたいだし、あながち間違えじゃないな。

 

「まぁ、大したことないさ。シャルルもこれからルームメイトになるわけだし、遠慮なんかしなくていいんだからな」

 

「一夏さん、部屋割りはもう決まったのかしら?」

 

「いや、でも普通に考えたら俺の部屋だよ。男だし」

 

「そっか、まぁ、普通に考えたらそうよね」

 

「……」

 

 そんな風に話している中で、ここで一人だけ訝しそうにしているラウラをみつけた。一体なんだろうか?

 

「どうかしたかラウラ?」

 

「いや、あ~んはいつするのだ??」

 

「へ?」

 

「へ?」

 

「へ!?」

 

「へ?」

 

 ……ん?なに?なに?何言ってんだ?この銀髪ジャーマニーロリは俺の聞き間違えか?いかんいかん、取り敢えず理由を聞こう。話はそれからだ。

 

「あの~、ラウラ……どうしてそうなったのかな?」

 

「クラリッサが教えてくれたのだ。仲の良い学生同士はア~ンをするものなのだろ?」

 

 あの人か……。ある程度予想はついてたけども。あんまりおかしな知識をラウラに授けないでください。無駄だろうけど

 

「そんな面白恥ずかしイベントなんてないわよ。あんた間違った知識植えつけられてるわよ。てか、誰よクラリッサって?」

 

「副官だ」

 

「今すぐクビにしろ!!」

 

 鈴の魂の叫びがさく裂した瞬間。




いかがだったでしょうか。

感想・誤字等の修正は適宜行っていきたいと思います。

それでは、来年もよろしくお願いします。

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