平和な世界の真ん中で   作:薫。

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俺と束の大きく未来を狂わせた出逢い

幼馴染みといえばどのようなことを思い浮かべるだろうか。

毎日起こしに来てくれる同級生の女の子?もしくは、いつも自分の後ろを付いて来る可愛らしい後輩?はたまた、自分の悩みを聞いてくれる包容力のある年上の女性?

幼馴染みとは言葉通り幼い時からの顔馴染みである人物を指すのだろう。俺にとっては小学二年生の春からの付き合いである篠ノ之束その人だった。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、私たちの出会いって覚えてる?」

 

二人で結婚式のことを決めているときに束はふとそんなことを聞いてきた。その質問に俺は、もちろんと返事をする。

 

「君が最初話しかけてきたとき私は、なんだこの偽善者って思ったんだ。

だってそのときの私は皆から嫌われるような性格をしているって自負してたし、変える気もなかったから。そんな私に話しかけてくるなんて孤独な人に話しかける自分格好良いって思ってる偽善者くらいだろうなって思ってたんだよ?

だけどさ、君は私がどれだけ拒絶しても諦めずに話しかけてきてくれたよね。

周りに人が居なくても大丈夫。

自分は特別な人間で他の人間とは釣り合わない。

なんて思ってた私でもやっぱり寂しかったんだろうね。

まだ箒ちゃんも生まれてなくて私が大切にしたいって思える人もいなかったから。君が諦めずに話しかけてきてくれた時は少し嬉しく思ったんだ。

でもそんな自分を認めたくなくて、それこそ嬉しくなった自分を認めたら自分は特別なんかじゃないって自分で肯定してるようで君に酷い言葉を浴びせてたよね。 

“私は特別なんだから凡人のお前とは違う”

とか

“自分を良く見せたいだけなんだろこの偽善者が”

なんて言ってた。

その中でも “私以外の人間に価値なんてないよ、もし私以外が半分以上いなくなってもこの世界は変わらず回りつづけるだろうね” って言ったこと覚えてるかな? 

このときの私は今思い出すと本当に恥ずかしいね」

 

そう言って束は小さく笑った。あのときのことか……

 

「ああ、もちろん覚えてるさ。その台詞を言った束に対して当時の俺は小さいながらも自分の気持ちを伝えたくて僅かな語彙を総動員して言ったんだ。

 

君がすごいのは知ってるよ?だけど僕のお父さんだって、お母さんだって僕にはとても大切ですごい人なんだ。価値って言うのは一人で決めるものじゃないよね。皆がそれぞれすごいって思う人は全員すごいじゃ駄目なの?それに僕のお父さんだって嫌だなって思うところはあるけど色んなところを見ていったらやっぱりすごいところはあるんだ。だから君も沢山の人を色んなところから見るといいと思うよ。 

 

ってさ。曖昧な部分もあるけど大きく言えばこうだったと思う。

こう考えればこのときの俺も大概大人びてたよな」

 

俺も束と同じように小さく笑う。

 

「うん。そうだ。多分それはその年頃の子供だったら当たり前にしていたことなんだろうね。だけど私はそれが当たり前に出来てなかった。それ以前に人は一括りに価値のないものだって決めつけてた。

君に言われたことを素直にするのは癪だったけれどそれでなにか変われるならって思ってる自分がいて、一度私のお父さんを見てみたんだ。

そのときお母さんのお腹のなかには箒ちゃんがいてさ、お父さんがしっかりとしなくちゃいけない時期だったんだろうね。お父さんが世話しなく動いてるのを見て格好良いなって思ったんだよ。

すると、世界が180°変わって見えたんだ。全てが輝いて見えた。皆が頑張ってるんだって気づけた。

次の日学校に行くと皆眩しかったよ。だから私はこう考えるよ。私は()()()()で人生が変わったんだろうね」

 

あのとき、束と出会って三ヶ月くらいだったか。あの後の、束の態度が物凄い柔らかくなったことを覚えてる。

そのときの束の気持ちを今、初めて聞いた。俺の何気なく言った一言で束はそんなことを思ってくれたのか。

あのときの自分は何度束のことを諦めようかと思ったか覚えていない。だけど束の苦しそうな、寂しそうな顔を見たら俺が助けてやらなくちゃって思った。でも、今では、本当に束に話しかけに行って良かったと思う。

だってそのおかげで俺はこんなにも可愛くて愛おしい妻と巡り逢えたのだから」

 

「な、な、なにいってるの?

そんなこと不意に言われたら束さんでも恥ずかしいよ?」

 

束が顔を真っ赤にしながらそう呟く。

 

「あ、あれ?声にでてた?」

 

「う、うん。“助けてやらなくちゃ”くらいからかな?」

 

束の顔からはまだ赤みが抜けていない。

 

まじかよ……

漫画とかでよく見るシチュエーションだけど実際に自分が経験してみるとすごく恥ずかしいな……これ

 

「だけど、私も君に逢えて本当に良かったって思ってるよ。前も言ったけど、君に逢えてなかったら私は世界を混乱に陥れてた気がするんだ。

昔の私なら多分なんとも思わないんだろうね。だけど君から人の輝きを教わった私は、世界が変わってしまうのは嫌だよ。だって人が輝いているのを見ると心があったかくなるんだ。

だから、君に出逢えて手に入れたこの気持ちは絶対に忘れたくないって私は思ってる」

 

「俺も、お前に出逢って色んなことを教わったよ。夢の大切さ、とかだよな。

そのあと少し大きくなって、あの純真無垢だった俺はいなくなって、小学四年生のころだったけか、そんなときに千冬に会ってさ。

なんだかんだあったけど俺らと仲良くなって、弟の一夏くんとも知り合って皆で遊んでたよな」

 

そう言ってあのときの思い出に思いを馳せる。

色んなことがあったよなぁ

 

「ちーちゃんといっくんかあ。私は、最初ちーちゃんのことすごく嫌ってたね」

 

束は舌を出して笑った。

 

「そうだよな、そういや、俺が千冬と喋ろうとするとお前はすごく機嫌が悪くなってたよな。どうしてだったんだ?」

 

「それ私に言わせる?」

 

束が少しふくれっ面になって可愛らしく怒る。

その姿を見て俺は一つの考えにたどり着く。もしかすと嫉妬してくれたのかもしれない。確かめてみようと束に聞いてみる。

 

「もしかしてだけどさ、嫉妬してくれてたりしたのか?」

 

「その通りだよー。私はちーちゃんに嫉妬してたんだ。二年以上一緒だった君がぽっと出の暴力女に盗られたような気がしてね。

でもでも、そのあとしっかりと意思疎通してとっても仲良くなったんだよ?だから私とちーちゃんは今でも親友同士なのだ!」

 

束はブイブイとピースサインを俺の方へ向けてくる。そんなことがあったのか。初耳だよ……

 

「そういえば、一夏くんと箒ちゃんはどうなったんだ?

箒ちゃんは一夏くんのこと好きだったはずだろ?」

 

「んー、まだ箒ちゃんはいっくんのこと好きみたいだよ?だけどいっくんはモテモテだからねぇー。箒ちゃんの恋は実らないかもしれないね」

 

束は箒ちゃんのこと溺愛していたはずなのだが、それでいいのだろうか。てっきり箒ちゃんの恋は実ってほしいのだとばかり思っていた。

 

「あ、君ちょっと意外って顔してるね?束さんともなると君の考えなんてお見通しだぜ!

と言っても普通に箒ちゃんの初恋は実ればいいな、とは思ってるよ?だけど私にとってはいっくんも大切だからさ、いっくんにも本当に好きな人を選んでほしいんだ。

私達みたいに幼いころから好きあっているなんて奇跡的だよ?だから、箒ちゃんが選ばれなくても仕方がないよ。

そのあと箒ちゃんがもっと好きな人を見つけられるんだったら別にいいんじゃないかなぁ」

 

そういう束に俺はやっぱり昔の束では考えられないなと思った。

多分昔の束だったら無理やりにでも一夏くんと箒ちゃんをくっつけようとしたのではないだろうか。まあ、もうそんな束はこの世界に存在しないので推測の域を出ないが。

 

「おっと、そういえば結婚式について考えてたんだよな」

 

「あー、そういえばそうだったねぇ」

 

やはり、一世一代の結婚式だ。束には、しっかりと楽しんでほしい。まず、どんなウェディングドレスが良いのか聞いてみる。

 

「やっぱり、純白のウェディングドレスだよね!

ありふれてるかもしれないけどテンプレートにはその良さがあって皆が求めてるからテンプレートになってるんだよ!」

 

「まあ、束が好きなのを選べば良いと思うよ。

束は綺麗だからどんなドレスでも似合うからさ」

 

あ、また束が茹でダコのようになってしまった。

 

「ま、ま、また君はそんな歯の浮くような台詞を……

君には羞恥心ってものがないのかなぁ!?」

 

「さすがに俺だって羞恥心くらい持ってるさ。だけど、これだけは譲れない。束は綺麗で可愛いよ」

 

「な、なら私だって君のこと本当に格好良いって思ってるからね!」

 

うわ、これ束の言うとおり恥ずかしいな。胸が痒くなる。話をそらして気持ちを落ち着かせなければ。と考えていると束が自分で言っていて恥ずかしくなったのか違う話を投げかけてきた。

 

「そ、そういえば、君のスーツはどうするの?」

 

少し声がうわずっていたように感じたが気にしない。

そうか、俺のスーツも考えなければならないのか。

 

「束は何か着てほしいものあるか?」

 

「私には、選ばせたのに君は選んでもらうって何か違うと思うなぁ?自分で決めてよ!」 

 

束は楽しそうに俺に言ってくる。

まあ、それもそうだよなぁ。束が言っていたようにテンプレートっていうのは、俺も好きである。普通に白色のスーツがいいな。

 

「うん、俺は束、お前と同じ種類のものでいいよ。というよりそれがいい」

 

「そ、そう?

えへへ……なんか嬉しいなぁ……」

 

ああ、やっぱり俺はこんなとてつもなく可愛い束を嫁に貰えて幸せ者だよ。

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