新たな1枚・永遠のもの
炎が燃える。瓦礫の中、歌姫は歌う。
己の命を代価に、目の前の怪物を抑え込む歌。
一人の少女が瓦礫の下、かばわれながら、歌姫へと叫ぶ。
―――誰か助けて………私の妹を、誰か………―――
血に染まりし、歌を歌う。銀の歌姫が息を吸った瞬間です。
雷鳴が轟き、瓦礫を破壊しながら、怪物を吹き飛ばした。
全ての者達が驚く中、永遠の戦士はその場に駆け付ける。
◇
≪アブゾーブクイーン エボリューションキング≫
13枚のカードが舞い上がり、黄金の波動が辺りに放たれた。
私はその場に踏ん張る。聖遺物アガートラームを纏うのに、吹き飛ばされそうになる。
「! マリア姉さんっ!? マムっ!!」
後ろに振り向くと、瓦礫だけ吹き飛び、二人も驚きながらそこにいた。
炎が吹き飛び、火災が消える中、13のレリーフを鎧に刻む、黄金の戦士が静かに現れる。
その時、私の上に瓦礫が降る瞬間、私は気づくのに遅れ、目を瞑る。
それと同時に、砕け散る音を聞き、恐る恐る目を開けると、黄金の騎士が私を守ってくれた。
けれど、
「だめっ」
『ガアァァァァァァァァァァァァ』
背後から完全聖遺物ネフィリム。生き物のようなそれは咆哮を上げながら、彼に迫る。
だけど彼は後ろを見せたまま、右腕のレリーフが光り輝き、裏拳を放つ。
とてつもない黄金のエネルギーが拳を強化したのか、ネフィリムは簡単に吹き飛んだ。
「すごい………」
壁にめり込み、瓦礫が吹き飛ぶその一撃。ネフィリムが傷付き、僅かにひるんでいた。
「ここにいろ………」
私は初めて、彼の言葉を聞いた。男の人の、静かな声であり、静かにネフィリムへと近づくと、手元から巨大な剣が現れ、瞬間、左足のレリーフが輝くと加速した。
『ガルルルルッ』
巨大な剣と腕がぶつかり合う中、もう一本、別の剣を取り出す彼は、黄金の輝きを纏いながら、ネフィリムと斬り合う。
ネフィリムの圧倒的な力、高エネルギーの火力を真正面から受けても動じず、彼は切り続けた。
瞬間、右足のレリーフが輝き、蹴り飛ばす。
吹き飛ぶネフィリムと距離を取り、一枚のレリーフが輝くと、一枚のカードが飛び出し、短い剣へとスライド。読み込ませるような音が鳴り響く。
≪マグネ≫
瞬間、鉄を含む瓦礫が浮かび上がり、ネフィリムへと押しつぶすように飛来する。
「電気………磁力?」
その時、彼の鎧、その顔を覆う兜の目が光ると共に、五つのレリーフが輝き、カードがまた飛び出す。
大きく巨大な剣を振り上げ、腕を伸ばして、剣を軽く掲げた。
カードは静かに、スロットのようなところへと吸い込まれる。
≪スペードⅡ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ ストレートフラッシュ≫
五つのカードを描く光が、二つの剣に宿ると共に駆けだした。
『ウオォォォォォォォォォォ―――』
輝き、雷鳴を纏う双剣で斬りかかる。
ネフィリムは両腕を交差していた。並みのエネルギーや兵器では傷も何もできないはず。なのに彼は、咆哮するネフィリムを建物の外に吹き飛ばした。
閃光が辺りを一瞬照らし、土煙が僅かに辺りを包む。
それを静かに見つめ、短い剣を消すと、
「トドメだ」
その瞬間、また五つのレリーフからカードが浮かび出て、それを手に取る。
≪スペードⅩ J Q K A ロイヤルストレートフラッシュ≫
重々しい剣を地面に刺すと、建物どころか大地や空間自体が揺れた。
静かに手をかざし、腰を少し下げる。目の前にカードに酷似した光が現れ、それと共に彼の黄金の鎧が、金色へと光り輝いていた。
「ウッリィヤアァァァァァァァァァァァァァァ」
彼は飛び上がり、身体を捻り、光に変わる。カードをくぐりながら、ネフィリムへと飛び蹴りを放った。
巨大な爆音と、爆発の中、私はただ見ているしかなかった。
強烈な光が消えると共に、私は建物の外に出る。
◇
「ネフィリムが………」
ネフィリムは完全に機能が停止していて、まるで剣が刺さった痕のように沈黙していた。
そして、彼らしき青年がいた。
「あ、あのっ」
その人は静かに振り返るが、トルネードと言う音と共に、風が吹き荒れ、姿を消した。
私は僅かに胸に残る鼓動と共に、その姿を忘れない。
あの日見た、黄金の騎士。
彼のことを、私は、私たち姉妹は忘れない………
◇
本能のまま、彼は歩く。
「なん、で………あの、子は、ちが、う。ウウッ」
戦いを求める。乾く、戦えと、戦い続けろと、内に秘めた力が騒ぐ。
僅かに蘇る意識の中、彼はその場から去っていく。
「戦う………戦えない人達の為に、助けを願う者達の為に………ウオォォォォォォォォオォォォォォ」
そう叫んだ彼の姿は、先ほど倒した怪物よりも異形の姿、それでも彼は歩みを止めない。
◇
「………マム、セレナ達はどうかしら?」
『問題ありません、いま時間がある間に、辺りの観光などをしていますよ』
それを聞きながら、私は少しだけ心配になった。切歌は好きなものだけ食べるし、マムは肉しか食べない。ドクターは論外。
あれから数年、まさかあの日の出来事を引き起こした聖遺物が鍵になるなんて………
(あの日の彼は知ったら、どう思うかしら………)
あの日、私達姉妹とマムを救った彼。
私は見ていない、日本人らしき彼は何者だったのだろうか?
施設の研究者やエージェントが調べたが、どこの誰か分からないままだった。
彼が全てを消したのは、理由はおそらく、彼らと関わる気が無いからだろう。私ですらそうするし、そう思う。
何者であろうと関係ない。彼は私の大切な家族を守った。それだけで十分。
(だけど、セレナは………)
気持ちは分かる。私も………
そう思い首を振る。
彼はセレナの大切な人、私は恩人。それだけでいい。
そして静かに、休憩室で一人過ごす。
願わくば、彼にあの日の恩を返せることを願いながら………
◇
「………おいしい~~~」
「おいしいデス~」
「うん、おいしい」
お好み焼き屋で、三人の娘はお好み焼きを頬張りながら、幸せそうにしている。
「マリア姉さん達にもお土産に買わないと」
「デスデス、きっとドクターは食べないのでドクターは無視するデス」
「うん、あの人お菓子しか食べないから」
「そうだね」
そう言いながら、買い物を済ませ、そのお店を出る中、フードを深々とかぶるフードパーカーの少女とすれ違う。
◇
「ん」
なんだろう。何か敵な気がしてしまった。
先ほどの客の一人、年上の、姉か保護者。敵と感じてしまったのはなぜだろう?
ここ最近、イライラすることが多い。
それとクリスや奏が敵らしい。最近は翼も怪しい。
あれはよく動き回るから、分からないことだらけだ。
いまはとりあえず、ノイズと戦い続けよう。そのためにも、
「おばちゃん、お肉大盛り、特性スペシャルで」
「はいよ♪」
ご飯をよく食べ、備えよう。
一真に出会った時………
(逃げられないくらいに殺す為に………)
◇
「ったく、やってられるかよ」
「なによ、学校で何かあったの?」
了子、まだ少し慣れないが、いま愚痴を聞いてもらっている。
「私が学園祭なんて、なにすればいいんだか」
「あら? クリスは可愛いんだから、なにしたっていいじゃない。学生は学生の時しかできないわよ?」
「………だけどよ」
ため息を吐く了子。それに頭を悩ませながら、コーヒーを飲む。
「情報整理しても、ノイズがソロモンの杖の所為で出やすくなったせいか、各国に目撃例がある。それと共に、煤のみと言う結果もね」
「………彼奴か」
それに静かに頷く。
「自壊するには早すぎるし、人と共に自壊したわけではないから、破壊されたのだろう。だいぶ動いているが、少し動きが早い」
「彼奴らしい」
静かに考え込む。ここから出ていくことは得策じゃない。
タイム、フロート、マッハに色々ありすぎる。
その気があれば、あれは世界からも逃げていく。
(絶対に責任取ってもらう、彼奴だけは逃がさない)
できれば了子から不老不死の方法くらい聞き出したいが、沈黙を守っている。
まあいい、いま年取らなくなっても困るしな。
そう思いながら、いまはいま、彼奴がくれた日々を生きる。
◇
「久方ぶりの大舞台か」
そう呟きながら、私はペンダントを取り出す。
スペードと剣のペンダント。初めて私の歌をほめてくれたお兄さんが付けていた物だ。
それを見ながら考え込んでいると、
「つばさ~いる………うわぁぁ」
現実に戻された。
また部屋が物で溢れている。
何故いつもこうなるんだ?
「いや、片付けないからだし、飲み物もキャップをちゃんとしろよ。ったく………翼は何年経っても世話が焼ける」
「奏は意地悪だ」
そう呟きながら、これだけは無くさないように、大事に箱にしまった。
どこかで聞いてほしい、私の歌………
◇
「ブヘッション!! ???」
どこかの外国で、コートを羽織った青年は大きくくしゃみをする。
周りに誰もいないことを見る為、辺りをキョロキョロするが、誰もいない。
いるはずもないか、ここは、
「ブヘッタナ、ボイブ!!」
海底なのだから。
「ヴボォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
そう叫びながら、彼は姿を変え戦う。
ノイズを殲滅するため、人々を守る為に、戦い続ける。
◇
「最近は安定したかな………」
海底から這い出て、岩場に腰を下ろす。
いまは各国のありとあらゆる場所に現れながら、空間から漏れ出るノイズを倒す事しかできない。
ここ最近、とある組織の者達に追われていたが、ようやく姿を見せなくなった。
ともかく、ノイズはシンフォギアと言うシステム以外は、一応倒せない。
できるとしたら、それ以上の能力を持つ、自分などしか思いつかない。だからと言って、人の側にいるわけにはいかないのだ。
深夜、人気も無い海辺。そこの岩場で静かに、
「………日本か」
そろそろ包囲網は無いだろう。
歌姫と呼べる少女を思い出しながら、一目見るかとも………
カードを握りしめ、ラウズカードを取り出す。
≪チェンジ≫
イーグルアンデッドに変化し、その場から飛び立つ。
目指す地は、自分を思う者達がいる日本へと………
いま、また歯車が動き出す。
一真さん、ノイズ倒しに世界中巡りました。
けど逃げて、超逃げて。
お読みいただきありがとうございます。