一真は一真で勝手に動く。
こうして物語は形を変えながら、進みだす。
二課にて、
「聖遺物の機械的安定起動方法に時間と労力を割いていた機関。そして私の次なる器候補を集めていた。という程度しか認識していなかったが、まさか聖遺物『神獣鏡』をステルスに使うとは」
「それ、物凄く覚えがあるんだが」
奏の言葉に、了子はばつが悪い顔になる。正直彼女の親が見つけた物だが、了子が調査の為に他国に流したのだ。
奏の両親はノイズにより死んでいる。天羽奏以外、生存者無しであり、彼女がけしかけたものである。
物凄く居心地悪そうに、静かに小さくなり、情報を提示した。
「この聖遺物は装者が見つからず、また聖遺物としてはかなりランクが下がるために、機械によるステルス機能が可能になったようだ。だから装者の襲撃並び、ヘリの出現や追跡ができなかった」
「はあ、厄介だな。それと、装者達が遭遇した聖遺物。名をネフィリム。これが私の記憶通りなら、聖遺物を食べる」
「聖遺物を?」
「そうよ。本来は複数いた個体が共食いし合い、ネフィリムと言う個体になった孤立型完全聖遺物。私が知る限り、何かしらの実験に失敗、のちに活動を停止した。そう聞いている」
そう言いながらコーヒーを飲み、一息つき、そこから考えられるのは、
「ネフィリムで何をしたいか分からないが、少し検討する」
「頼む、俺達は装者達探索か」
「それと、私が流したリンカーの情報から、アンチリンカーを生成したのでしょうね。響ちゃんの話じゃ、建物に入ってからギアが重くなっていったと言う当たりガス状。今後屋内戦闘は避けるべき案件だ………」
そう締めくくり、その中で彼が現れなかったことも気になる。
「剣崎一真、此度の事件、どう関わるか」
了子はそう言いながら、クリスと響が物凄い勢いで獣のように、一真の写真を殴るものや壊すものに貼り付けていたので、奏が呆れる。
「ったく………好きな奴なのに、どーしてあーなるんだかね~」
「子供なのよ、まあ分からなくは無いわ。人がせっかく、櫻井了子として生きると諦めたのに、まったく気づかないから、核爆弾でも用意したくなる時があるわ」
「やめてくれ、誰だろうと使用しないでくれよ」
弦十郎の言葉に、了子はため息をつき、奏は少しばかり頬をかく。
◇
私は布団でくるまりながら考える。
「しらべ~平気デスぅ?」
覗き込んできた切ちゃんに、顔だけ出して、話をする。
「ごめんね………」
「謝らなくていいデス、私も怖くてマリアとセレナとで一緒に寝たほどデスから」
後で二人にも謝らないと………
聞いていた話と全然違う、何もかも違い過ぎだ。
あれは英雄じゃなくって魔王だよ。
「それもあるけど」
「アジトが無くなって、ネフィリムを育てるのに、聖遺物が必要………」
つまりあの人と戦わなければいけない。少なくても、すぐに聖遺物を所持する組織は、あの人がいる場所しかないのだから、当然だった。
「………やろう切ちゃん」
「調」
お布団から出て、私は静かに起き上がる。
私よりも辛いのはセレナとマリアだ。
マリアはフィーネの魂に塗りつぶされて、セレナは本当のお姉さんが変わっていくのを、黙って見ているしかない。
二人とも、本当の家族じゃないけど、私達にとって大切な人。このままなんて、いやだ。
「行こう切ちゃん、マリアは戦わせることはできない。セレナはマム達の護衛をしている、動けるのは私達だけ」
「デス、そうデスね」
「天羽々斬、時限式のガングニールを」
「手に入れるデスっ」
ま、まずは、弱いところからね………
◇
それは秋桜祭。私立リディアン音楽院にて行われる学祭、それの歌を歌うステージ。
板場を初めとした仲良し三人組、彼女達と言うより、板場の目的、アニソン同好会を設立したいらしく、この優勝すれば生徒会権限の範囲なら叶えてくれる商品の為、ステージに立ち、歌う。
だが、チーンと鳴る。
「くうぅぅぅ、だが、まだ切り札があるッ。そう、お願いビッキィィィィィィィ」
そう叫ばれ、私はステージを歩く。
その衣装は未来が用意した為、なぜかボーイッシュになるが、曲の内容が内容の為に、致し方なしだし、私はひらひらしたものより、こういうのがいい。
「特撮ヒーロー物っ、頼むよビッキー!!」
「頼まれた以上は、歌ってやるよ」
それになぜかきゃあぁぁぁぁぁぁぁと言う悲鳴が響くが、怖いからとかじゃない。未来が時々、ワンピースとか着た時にあげる声に近い。
そして私は選ばれた選曲を歌う。
なぜか、一真達、仮面ライダーが頭をよぎった………
◇
私はいま切ちゃんと共に、敵の本拠地へ侵入している。
「調、平気デスか」
「うん………」
あの人の顔が過る。偽善者と思っていたあの人の顔が怖くて、夜眠れない。夢の中で私を追ってきたんだもの。マリアの布団に入ったのは悪くない。
おかしい、話と全然違うのだ。偽善者、いまを知らずに、英雄扱いの人のはずなのに、あんな人だなんて知らない。思わない。怖い。
『都合の悪い時は人殺し、都合が良い時は英雄。第三者の言葉が私は嫌いだ』
どういうことなの? 話と全然違い過ぎる印象。
正直会いたくない。会ったら………何されるか分からない。
(けど、マリアに無茶はさせられない。聖遺物を使えば、フィーネの魂に塗りつぶされる。マリアがマリアじゃなくなる、セレナや私達を置いて………そんなの嫌だ)
そして私達は勇気を振り絞って、前へと進む。
◇
「ほう」
なんで見ているのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!
聖遺物を手に入れる為に、私達はお祭りのステージに立った。
なんでも好きな物が手に入り、イチイバルの人が歌っていた。だから私達は聖遺物を手に入れるため、ステージに飛び入りする。
そしたらステージの観客席、その奥にあの人が静かに笑みを浮かべた。
笑ってる。
こっち見てる。
なんでいるのッ!?
切ちゃんが涙目で生まれたての小鹿のように震えている。
(けど)
それでも、
(勝つよ、マリア)
私達は戦う。
私達は歌うよマリア。
◇
「ん、響がサブミッション系を思い出したり、中を壊す方法を考え出してる気がする」
そう思いながら、静かに何かが起きるのを待つ。
草野球チームの練習を手伝いながら。
「いくぞッ、俺の昔の取り柄」
暇なとき、こいつらと出会ってから、時々こうして教えている。子供達からはケンジャキと呼ばれている。
どうしてこう俺は滑舌が悪いのだろうか、オノレデケーロっ!
そんなことを考えていると、ん?
「ん、三人足りないですね」
「あっ、はい。彼奴ら、剣崎さんが来てから楽しんでるのに………」
監督さんがそう言う。おかしいな、フォークの投げ方とか教えてくれって言ってたのに。
「ケンジャキさん、ボール行ったぞぁぁぁぁ」
「ウェェェェェェェイィィィィィィィィィィィィィ」
考えていると、ボールがこっちに飛んでくる。
ボールを取ろうとしたら顔面に当たる。鼻血はまずい。
そうこうしているとき、
「ブ、ゾロゾロブバイバ」
「いつもすいませんね」
「ブエ」
そろそろ別の場所に移動しようと、一声かけて抜けることにした。
鼻押さえながらだから発音がおかしい、仕方ないか。
そしてバイクに乗り、ヘルメットを付けた瞬間………
「!」
ノイズの気配に気づく。
◇
「おやぁ?」
その男は目的を達した。だが目撃者である少年の三人組を見つける。
少女達は叫ぶ、だが聞く耳を持たない。
(やめてっ)
その少女の叫びに、
『ターンアップ』
光の門がノイズの進撃を防いだ。
「!」
そしてバイクごと通り抜け、金色の戦士が、バイクから雷鳴と共に現れた。
「………」
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
少年たちは異常事態に逃げ出し、その様子にほっと胸をなでおろす。
そして、
「貴方は、カードの使い手ですか、邪魔を」
「黙れ」
ノイズが無数、ブレイドに放たれるが、黄金の波動がそれを吹き飛ばす。
静かにバイクから降りた瞬間、大地が揺れた。
「貴様は………俺の本能を刺激した」
「! くっ」
無数のノイズが現れる。
「どうやらあなたも英雄希望のようですが、英雄は一人で十分なんですよッ」
「知るか」
鎧が輝き、ノイズを吹き飛ばす。
それに驚き、再度取り出そうとするが、空間から現れた瞬間、黄金の輝きに焼かれて、ノイズは煤に変わる。
「なっ、なっ!?」
重醒剣を取り出し、引きずりながら、近づいていく。
「………」
だが不意に顔を上げ、獅子のレリーフが輝き、振り払うように、銀の腕を弾いた。
「がっ」
『セレナっ』
いまの彼はインカムの音声が耳に入り、静かに顔を上げ、煤を見渡しながら、銀の歌姫を見る。
一瞬驚くように顔を上げ、しばらく見つめていた。
「………なぜだ」
「………あなたは」
「なぜ君は、彼らを助けるのが遅れて現れた」
「っ!?」
その瞬間、僅かに心音が早まり、動揺している。
ソロモンの杖を持つ男はその隙に逃げようとしたので、キングラウザーを片腕で投げ、その前の地面をくり抜いた。
「ひいぃぃぃぃい」
しりもちをつく男は無視し、再度見る。
歌姫は、いまにも泣きそうな顔で、彼を見た。
「………君は、僅かに躊躇った。もしくは、気付くのに遅れたな」
◇
それは少し前でした。
「ドクターっ、マムお願い!! 私に米軍の兵士と戦わせて」
いま私たちのアジトに、米軍の工作員が現れ、対処しなければいけなくなった。
だけどドクターは、ノイズを使って彼らを確実に殺し、抹殺している。
私は、こんなことを、私達はこんなことをしたいわけではない。
だけど、
「無理を言うのではありませんセレナっ」
「ダメよセレナっ、なら私が」
「マリア姉さんが戦うのは駄目っ、リンカーで身体が、なにより、フィーネに近づく」
その言葉に、姉はなにか衝撃を受けたように固まる。
そしてマムは、
「セレナ、貴方が出ることは許しませんっ」
そうマムが告げた。
なぜなの、私達がやりたいことと、全く違うのに。
私は部屋から出て、モニターから、現実から目を背けた。
扉の奥から、悲鳴が聞こえる。姉さんはどうして、マムは………
『おやぁ?』
その時、姉さんが叫んでいる。
それに気づいてモニターを見たら、無関係な民間人に、ドクターは手を向けようとしていた。
私は急いで外に出た。そして、
「………」
どうしてあなたがいるんですか?
どうしてこんな形で会わなきゃいけないの?
あの日、私たち姉妹を、大切な人を救ってくれた人は、
「………行くぞ」
私の敵として、現れた………
◇
少女は歌う、己のギアの性質を上げ、戦う為に。
青年は黄金を放ちながら、彼女を倒さんと、拳を振るう。
バッタのレリーフが光り輝くと共に、ジャガ―のレリーフも光る。
動きが速くなり、その蹴りが少女を襲う。
「がっ」
そのまま建物を壊し、中に入る。
そして追うように、ゆっくり彼は迫ってきた。
「………なんでだ」
「………」
――やめて………――
「なぜ君が、あの日、命を捨ててでも誰かを守ろうとした君が」
――やめてッ!!――
「こんなとこにいるんだ………」
――そんな悲しそうに、言わないでッ――
――あなたに知られるくらいなら、いっそ罵って、嫌って――
――あの日、救われた命なのに、私は、私、は………――
「………!」
槍が迫り、それを素手で掴む。
それに驚きながらも、
「マリア姉さんっ」
◇
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
マントと共に回転し出し、彼に対して立ち向かう。
「………」
コマのような形状のもの。触れるものを弾く、竜巻のような物。
なのに彼は手を差し入れるように、軽々と破り、自分の首を掴んだ。
「がっ」
「歌えなければ、装者は無力だ」
そう静かに言いのけ、手を差し込んだ。
「!」
「………いや………イヤアァァァァァァァァアアアア―――」
その光景を見たセレナ。悲鳴のような叫びと共に、銀の刃が彼を貫き、吹き飛ばした。
「………えっ………」
この世の物とは思えない叫び声に対して、今度は小さく短い悲鳴。
それは、赤い血ではなく、緑の血だった。
「………」
黄金の鎧から流れているのは、緑の鮮血が舞う………
◇
「がっは、はあはあ………」
肩で息をするマリア姉さん。なぜかスーツは傷付いているが、姉は無傷であり、私は困惑する。
目の前にいる戦士は、あの日の人。間違いない。
だけど、
「そ、それ、は………?」
「………」
傷口を抑えるはずが、すぐに手をどけた。傷はもう、無い。
緑色の血、人間の、生物では無い、血………
「あな、たは………」
「俺は怪物だ、あの日、俺は戦闘本能であれと戦っただけだ。君らを守ったのは偶然だ」
そう彼は言い、僅かに身体がブレた。
「………あの日から、歳をとってない?」
それに気づく、あの日の記憶と彼は瓜二つ過ぎた。
私は大人になったのに、あの人は変わっていない。
「………君らは綺麗になった」
そう悲しそうに呟き、また身体がブレる。
「!」
だけどその瞬間、無数の爆薬が点火された。
彼の足元が爆発して地下へと崩れる。
「マムっ」
『二人とも、ドクターは回収しましたっ。急いでその場から離れなさいっ』
いつの間にかドクターは逃げていた。
彼がいた位置は陥没しているが、これで終わるとは思えない。
マムの言葉に、静かに従い、今は去る………
「………」
だけど………
あの人の悲しそうな顔と声が、心から消えなかった………
◇
「逃がしてよかったのか………くそ」
しばらくして、地面を吹き飛ばして出る。
あのまま戦闘を続行してもよかったが、警報も無い事態だった。一般人の避難は十分ではない。
向こうは一般人を構わず巻き込むのなら、これ以上の戦闘は危険と考えた。
だが、
(………なんであの子が)
僅かに残る記憶から、あの日見た子、会話からもそれは間違いない。
腕から薬のにおいがする。これで問題は無いだろう。
だが正しいか分からない。
俺は間違ってばかりだ。
「………それでも、あの子のあの顔は、望んでいるわけじゃない」
ならやるべきことは一つだろう………
ともかくここから立ち去らなければな。
◇
「というわけで、決闘を申し込まれました」
あのチビ達は、私達にあの場、少なくとも学園内での戦闘行動はせず、場所を指定してきた。
正直、あそこで戦うのは、いまの私はできない。
ツインテは顔から血の気が無くなっていたが、いまは関係ないな。
気になるのは歌を歌い、クリスの聖遺物を手に入れようとしたこと。その時のあの子達は、テロリストなどの犯罪者でも、私のように心が壊れているようでもない。
それでも戦うことを選択するため、何か裏があるのだろう。それなら罠があるだろうが、彼女達の指定した場所に出向く。そう話を進めた。
「まあ罠があるだろうな」
あの子達ならともかく、どうもウェル博士だけは別だ。あれは信用できない。
そして、ノイズの出現。どこぞでノイズが発生。だが大量の煤だけで、なんなのかはいま調べている。
だけど分かる。一真がいた………
クリスも頷く、あそこに一真がいたんだ。
私は身体を休めて、静かに考えていた。
ノイズを倒すことは、シンフォギア以外では自壊を待つしかない。それか、仮面ライダーたちしかいない。
「考えるなんて、昔の私なら考えられない」
壊すことしかできないと思っている。いまも、そうだ。
「なら壊してやるよ、一真」
あんたも含めて悲しい運命なんて、
「私が全部壊してやる!!」
待ってろ、一真………
セレナと一真の関係がヒロインっぽいな。
物語はリディアン跡地で戦いが始まる。
それではここで、お読みいただきありがとうございます。