ついにネフィリムと言う聖遺物を破壊し、その一部を食らうが暴走。
我に返り、ウェル博士を逃がし、暴走を止めた響達に背を向けて歩く………
どこかの廃棄された工場施設、そこで目を閉じ、静かにしている一真。
静かに座り込みながら、眼を開く。その瞳は青色で、すぐに黒に戻る。
「………無い」
ネフィリムが自分の中に無い。
破壊したのだろうかとも思うが、自分の中にあるネフィリムの細胞から、もう少しだけ、情報を拾っている。
「ネフィリムの細胞、独立する聖遺物か………コアが無いとすぐに消滅するな」
そのコアが関係あるのか?
もう少し調べてから、動くことにしよう。
だが、同時に思い出す。
「………響」
あの時、あの顔を思い出しながら、首を振り、また中を見始める………
◇
「………」
私はいま、全身検査、メディカルチェックを受けている。
了子は静かにその結果を見ながら、
「はあ、まずいわね。上半身だけじゃなく、全体に聖遺物の融合が見られるわ」
「欠片の融合、侵食が早まってる………」
「こればかりは長期で当たらないと無理ね」
難しい顔をする了子。つまりは、
「私は戦えない」
それでは一真に会えないじゃないか。
察したのか、了子は静かに、真剣にこちらを見る。
「いい、いまの状態なら、通常時でも侵食が始まっていると考えるべきよ。だから」
「ギアを纏うな、ってこと」
「そうよ」
それに拳を強く握る。イライラする。
一真は何を考えている。月の落下も、完全に明るみになった。これからどうなる?
分からない、分からないことだらけだ。
「一真………」
◇
「響、なにか悩み事?」
「未来」
上の空の中、未来には気づかれたらしい。話したくないが、
「聞いて後悔と聞かなくて後悔、どっちがいい」
「………聞いて後悔」
「ん」
人のいないことを確認して、私はいまの状態を説明する。前々から理解はしていた、侵食による危険性。
それが少しばかり、明るみになった。
衝撃を受けるが、少しは覚悟していたからか、未来はその後私を見つめる。
「響は、どうするの」
「正直、死にたくないよいまは」
そう言いながら、静かに考え込む。
「まったく笑えるよ、昔は死んでもいいって思った、生きてちゃいけないって思ってた。けどね、いまは違う。死にたくない、けど、戦いたいと思う」
「………響」
心配そうな未来、一真は、
「一真もそうだったんだろうな、彼奴、私より優しくてバカだもん」
だから人を捨てた。
だから戦い続けると決めた。
愚かな、人間だ。
人間だから人間をやめたんだ。だけど………
「私は一真の選択肢は選びたくない、私は一真の所為で、それが悲しい選択だってことが身に染みてる。選びたくない、けど………選びたくって、選んだんじゃないんだろうな、一真」
そう、一真はきっと、仲間を裏切ったこと、人間であることをやめたことは後悔している。
いまはクリスと翼、奏は別行動で活動している。
いまの私は前線から外された。
「救える手があるのに、振るわない苦しみ………彼奴は永遠に味わい続けて、壊れたんだよ。私よりも、誰よりも」
「………」
何も言わず側にいる未来。それに少し寄り添う。
「未来はあたたかいや………日なたのよう」
「なら私にとって、響は太陽だよ」
「太陽は一真だよ………温かく照らすのに、近づくのは危険。彼奴は………」
ずっと一人で、世界を守ると決めてるんだから………
◇
「それじゃ、ふらわーでお好み焼き食べるんだね」
「なんで国家機密なのに、こう知られるんだろうね」
「まあまあ」
そんな会話をする。いつの間にか、友達と呼べるものも増えた。
未来達と共に、お好み焼きを食べに出向いて歩く。
そんな中、黒い車が前を横切る。
「………いまの」
あれは裏の人間だ。
そう思った時、車が出向いた先で爆発が起きた。
「! みんなはここから離れてろっ」
「響っ」
駆け出し、走る。
その先に、きっと………
◇
「くっ、化け物が!!」
【人殺しに言われたくない】
巨大な剣オールオーバーと、盾ソリッドシールドを持ち、コーカサスビートルアンデットの姿で、ウェル博士を追い詰める。
【この前倒した時、ネフィリムは俺の中になかった。あるのは残滓、ならば核となる心臓は………】
その時、ソロモンの杖を持つウェル博士は青ざめ、何かを布で巻いた物。それを隠すように後ろに下がった。
【それか】
「い、嫌だっ。これがないと英雄に、僕は英雄になるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
無数のノイズが放たれるが、カードを一枚取り出す。
≪リモート≫
瞬間、身体から無数のカードが飛び出て、アンデッドになる。
AとダイヤQ、ハートとダイヤのKを除く、上級アンデッド達が、武器を構えながら現れた。
【あぁぁぁ………】
青のジョーカーになり、コーカサスも解放し、静かにマンティスとデスサイズを構え、ノイズを殲滅する。
「ひいぃ、化け物がっ」
【ああ、この世界最強だ】
その時、ノイズが風で吹き飛び散る。その様子に、エネルギー波を放った者を見る
【響っ】
「一真っ」
「ま、また出たっ」
そして彼は戦慄する。
【馬鹿なっ、平常時でも侵食し出してるのかっ】
アンデッドの目で見る響の身体は、ほとんど神経に繋がるように聖遺物が融合している。
「………やっぱりか」
そうマフラーで素顔を隠しながら、拳を構える。
【馬鹿やろうっ、すぐにギアを解けっ。カテゴリーKっ】
四体のアンデットを放つが、それに、
「へいき、へっちゃらだこの程度っ」
そう言い、四体の上級アンデッドの攻撃をかわして進む。
【ちっ、後ろもうざいッ】
マンティスでノイズを吹き飛ばし、腕の刃物を構え、突き刺す。
そのままネフィリムのコアを封印する、全てはその後。
だが丸鋸が現れ、火花を散らす。
【!】
「この身に宿るシュルシャガナは、おっかない見た目よりもずっと、汎用性に富んでいる。防御性能にだって不足ない」
「それでも、全力の二人かがりでどうにかこうにか受け止めてるんデスけどね」
攻撃を止めたのは二人の少女。
そう言われながら、丸鋸が腕の刃を受け止め、後ろから緑の子が支える。
だが、
【だがジョーカーは止められない】
そのまま腕に力を籠める。青色に光り、腕を上に振り上げ砕く。
「デスっ!」
「!?」
【聖遺物程度で、アンデッドは止められ】
その時、吹き飛ぶカプリコーン。
【なにっ!?】
◇
突然のことに驚き、俺は後ろを見ると、響が炎を纏い、闇纏う姿で、赤い眼光で見ていた。
「ぁう………」
「調っ」
なぜか調と呼ばれた子が酷く怯えているが、アンデッドを地面に建物にめり込ませて動けなくする響。
そして鉄柱や、建物の中にある鉄の骨組みで磔のように差し込んでいた。
全身を緑色に染めながら、静かに、
【今度は一真の番、そして………し・ら・べちゃあぁぁんのばぁぁんだよぉぉぉ………】
「!」
あっ、この響調って子いじめてる。そして俺もか。
ともかく、先に俺がどうにかするか、
「くっ、プレゼントですよっ二人とも!!」
そう言い、薬品の入った銃のような注射器を、首筋を当てて使った。
二人とも仲間のはずの男から離れ、薬を打たれたところを抑える。
「なにをしやがるデスっ」
「これはリンカー?」
「効果時間にはまだ余裕あるデス」
「だからこその連続投与ですよ! あの化け物たちに抵抗するには、いま以上の適合率でねじ伏せるのです」
「ふざけるなッ、なんで私達があなたの為にそんなことをっ」
「するでしょうっ、いや、せざるを得ないのでしょう。貴方達は連帯感や仲間意識で助け出そうとはしないでしょうっ。大方、あのおばはんが倒れたから、おっかなびっくり駆けつけたのでしょう!!」
自分でしか薬を作れない。なら守れ、それは、
【貴様はどこまで、どこまで俺の本能を刺激するッ】
デスサイズを投げ、光速回転し、マンティスで光を放つ。
土煙が立ち、男の悲鳴が聞こえる中、すぐに接近する。
「くっ」
「来るなっ」
【動くな】
そう言い、鎌と丸鋸が展開されたが、無視する。
手を差し込むのと同時に、自分に食い込む刃。丸鋸は回転しているため、鮮血が舞い、鎌の刃は特殊なのか、身体の中で普通のものよりも食い込む。
だが、
≪リカバー≫
彼女達の中にある、リンカーとか言う薬を中から取り出す。
◇
「デスっ」
「な、に………」
【このままでもいい、だから離れるな】
薬を体内から取り出し、後ろに下がる化け物。
前にマリア達を、ネフィリムの暴走から守った人。
セレナは彼と敵対することで精神的に追い詰められてる。セレナから聞いた。
『私は、ううん私達………あの人のこと好きなんだと思うんだ。だから月の落下を止める。きっとどこかにいるあの人に、恩返しするために』
そうセレナは言っていた。
そして目の前にいる彼は、
「身体が、軽いデス………」
「これ、って………」
先ほどの光景、マリア達から教えてもらった話と合致する。
マリアも身体からリンカーの影響や、負担が消えていたと言っていた。
傷付きながらも、その人は私達を癒した。
それに何も言わないけれど、私達が傷つけた傷から血が流れる。赤では無い、その色は、あの人が人間じゃない何よりの証拠だ。
「どう、して………」
【………】
その時、銀のナイフ、銀の風が吹き荒れ、そして飛行船が、マムたちが来る。
【響】
「………」
あの人の側にいる。あの人は、彼の手を握りしめる。あの人とは思えない。
そして私達は見逃された。そんな気がする。
「あの人は、なんなの………」
分からないことが多すぎて、胸が苦しい。
私達は、何をしてるの?
◇
響の傷、侵食を消す剣崎さんがいた。
響から取り出したのは、鉱石であり、それを握りしめる。
【………】
「どこに行く気だ、剣崎さん」
私は前に出る。雪音や奏も、奏はまだギアを纏っていないが、雪音は違う。
そして響も、
「一真、どうして………」
【俺はジョーカーだ、人の中では生きられない】
「何を言っているっ」
私には彼の気持ちが分からない。だが、雪音や響の思いをこれ以上踏みにじらせる気は無い。
彼女達はいまは落ち着き、彼に異常なまでの依存はしていない。時折それらしい様子は見せるが。だが、彼の望む救いには向かっている。
だが、だからと言って彼がそこから消えていいはずは無い。
「剣崎さん、なぜ貴方は」
【俺の中でまた、アンデッドの本能が目覚めだした】
その言葉に、我々は言葉を無くす。
【最近、目覚めだしてるんだ。怪物としての意識、バニティアンデッド、ジョーカーとしての本能………闘争本能がまた、な】
「アンデッドの、だが」
【ああ、戦いは終わっている。俺が戦う相手は、人を傷つける何かだ】
確か、彼は紛争地域に現れたり、雪音を助けたりしていた。
その言葉に何も言わず、彼は立ち上がる。
【………クリスに会う前に戻りかけているだけだ。人とも獣とも言えない怪物に戻る】
「それって」
その時、小日向が駆けつけてきた。
肩で息をし、それで彼に、剣崎さんに近づく。
「それは響の側にいられないことなんですか」
【………俺は怪物だ】
「それでも、私の親友を救ってくれた、恩人です」
「未来………」
そう言い、緑の血に触れる。恐れず、静かに目の前の剣崎さんを見る。
だが剣崎さんは、顔を背けた。
【俺はいずれ、この世界に害あるモノを破壊する怪物に戻る。あの子、銀の歌姫達の施設でもそうだった】
「それって」
【俺は一度、ネフィリムの反応に気づき、本能のまま、それと戦った記憶がある。が、前後の記憶は曖昧だ】
覚えているのは、ギアを纏う少女と目が合ったこと。または瓦礫に埋もれた人達、銀の子をかばった程度であり、それ以上は無いに等しい。
そしてネフィリムを半分機能を封印した後、その子に襲い掛かろうとした。
【俺があの時、施設を破壊すれば、あるいは】
「そればっか、一真はそればっかだっ」
響もまた、剣崎さんの手を握りしめる。
「かもしれない、あるいは、もしかすればばっかりだっ!! どうしてなんだよっ!? どうしてそう全部、悪いこと全部背負うんだよ!!」
【俺は】
「怪物でも、一真は響にとって大切なんだっ。いい加減にしろよ!!」
奏の一言にも、剣崎さんは何も言わない。
「あるいはなんて言葉、それは私達防人とて同じだ。戦場にて我々は、いつもそう思う」
「ああそうだよっ、一真だけ背負わないでくれよ。私は、私やそのバカは一真に救われたんだ」
そう言われながら、そんな中、
【………俺にはもう、分からないんだ】
そう言った瞬間、煙が立ち上り、すぐに剣で切り伏せたが、剣崎さんはいない。
「一真………」
誰もが戦うことしかできない剣に思いをはせるしか無く、なにも言えずにいた。
◇
あの彼が治癒したからか、身体が軽い。
マムからは念のために時間を置くと言うことになり、計画はいまだ進む。
私達は食糧調達をしていて、少し休憩する。
工事現場の跡地で、ご飯を少し食べることにしたけど、私は分からない。
分からないことばかりだ。
偽善者と思った人は、怖い人だった。
大切な人達の好きな人は化け物だった。
その化け物は、傷つけられても、私達を救おうと、敵を救おうとした。
分からない、分からな過ぎて何が正しいか分からない。
私達はフィーネの魂の器として、施設に閉じ込められて、私達の代わりにマリアはフィーネの器になった。
自分が自分で無くなる中、セレナは静かに戦っている。
家族のこと、大切な人と敵対しながら。マリアだって戦っているんだ。
(私は………私達は)
そう思い、立ち上がると立ちくらみがした。
「調っ」
切ちゃんの叫びと共に、
「危ないっ」
そう叫ばれ、無数の鉄が落ちる音が響いた。
◇
「アブネェェ………ナブネダンダトコイダンダキメラっ!!」
「えっ、えっと………」
「ご、ごめんなさい、デス?」
よく分からない。滑舌が悪すぎて日本語ですらない。
大人の人、男の人が私達を助けてくれたようだ。私達がいたところは、鉄パイプが落ちて土煙を立てている。
そして、
「あっ」
すぐに気づいて立ち上がろうとすると、足に痛みが走る。
その人は再度私達を支えてくれた。
「調っ、平気ですかっ」
「………大丈夫か?」
「すいま」
せんと言い終える前に、抱き上げられ、今度は彼のものらしいバイクの上に座らされた。
「あ、あの」
「足が少し、すぐに冷やした方がいいな。こっち来なさい、君も」
「で、デスけど」
「いいから」
そうして私達はその人に連れられていく。
バイクは走らせず、私を乗せたまま押して、カフェかな? それらしい場所に連れていられる。
この人には関係ないけど、分からないところで、危険を顧みずこうして優しくするその人に、私は余計に分からなくなっていく。
正しいとは? 正義や偽善とはなんなんだろうか………
ただ一つ言えるのは、
(………胸触られた)
恥ずかしくて、本人は気づいてないから言わない。
切ちゃんも頬を赤くしていた………
◇
「一真を殺したくなった」
「奇遇だな、私もだ」
いつものように、唐突に二人は謎の怒りを醸し出す。
そして………
(なぜあたしは………否定できないのはなぜだ?)
奏もそう考え込み、なぞの一体感を感じた………
………すまん一真。
それでは、お読みいただきありがとうございます。