オレはいま、日本と言う国に来ている。
本来ならシャトー建設や奴らとの交渉など、やるべきことはあるが、次の身体に転写する前に、例の機関について、ある程度知っておきたかったからだ。
(人類基盤史研究所、BOARDか………)
それはチベット洞窟内で発見された、ある遺物を研究する機関。人類の進化をテーマに研究する機関。
(ある男が自身の財力を使って日本政府を動かし立ち上げた、徹底された非公開研究機関。存在を知ったのも、ほぼ偶然だったな)
オレがこの組織を知れたのは、当時の噂、都市伝説レベルで語られる眉唾物。
はっきり言えば表の人間なら信じない話、オレのような異端技術者ならば、ノイズか自立型聖遺物程度と、高を括る程度の話だ。ここに来たのも、半信半疑だ。
当時の噂も人類進化の謎を研究する機関があるという程度までの徹底ぶりだが、逆に言えばその程度の噂は消されなかった。
(まあ、数が数。消したくても消すことはできなかったと解釈するべきか)
ともかく、調べた結果BOARDなる組織はあるのははっきりする。
だがオレはため息を付きつつ、これ以上の情報は手に入らなかった。
念のため、施設があったと思われる町、そこの図書館で調べてみるが、それらしいものは無い。
だが、やはりおかしなところはあった。
(古い時期の新聞の一面が紛失している、よく調べてみれば現代情報源でもあるインターネットからも、当時の事件などが曖昧にされている。時期からして関係はありそうだが、いかんせん昔過ぎる………)
図書館で本を戻しながら、少しばかり自分の体格を見る。今回は裏目に出た。
(このガキの姿じゃ、できる範囲は限られるか。奴らを使うと言う手もあるが、これはオレが独占したい情報だ。なにより、ここまでやっておいてハズレの可能性もある)
ともかくこの時期に関する書物なりなんなり、なんでもいいから調べてみることにした。
だがまさか、それが功を成すとは………
「作者白井虎太郎………運命と戦う戦士、仮面ライダーブレイド………」
その街にある図書館、新聞など調べる傍ら、他に何か無いか調べてみると、当時のサイエンスライターの書いた本が収められていた。
ないよりマシかと思いながら、収められた本棚へと歩き出す………
◇
「ん~………どうするか」
現在、イチイバル並び天羽々斬を強化しているが、やはりエルフナインが提案した物、どうしても魔剣ダインスレイフを組み込んだシステムになっている。
弦十郎くんも現在悩んでいる。確実に戦力強化は間違いないのは目に見えているが、
「剣崎一真、奴の覚悟がな………」
「あたたかいものです」
「すまない」
友里から飲み物を受け取りながら、考え込む。
はあ、フィーネとして裏切った者としては、やはりまだ慣れない。が、いまは任されたことをするか。
プロジェクトイグナイト。それを組み込むべきか否か、現在の分岐点。
「司令はどうするんでしょうか」
そう藤尭が口にする。それに関しては、もはや答えは出ているのだろうが、
「分からんよ、私とて、アルカノイズの分解能力の耐性を作る為に動くより、魔剣を組み込んだ方が早いとしか言えない」
だがそれをすれば、不死身の戦士が敵になる。
あれの覚悟ははっきりしていた。
己が守る者を傷つけた。あれがそこまで
「そこまでなぜさせる? 確かに危険な賭けではあるのは確かだ」
あれから焦りを感じられる。なにか彼を追い詰めているか分からない。
「確かデメリットとしては」
「装者の暴走、だな。もし魔剣に飲まれれば強化どころの話ではないからな」
それでも、だ。
それでもあれがそこまで反対する理由。それが分からない。
私の見た限り、少なくとも時限式を除く装者は、その可能性は限りなく少ないはずだ。
そして、そうこう悩んでいると、
「了子くん、いるか」
クリスと翼、両名を連れて弦十郎くんが来た。
「結論は決まったか」
「ああ」
プロジェクトイグナイト。それが始まる。
◇
「それじゃ、一真さんとは」
「出会ったら戦う、事になるかもしれない」
そんな話をしながら、私達は雨の中を歩く。
未来には色々迷惑をかけた。だから話をする。
あの後の未来は私以上に動揺していて、おかげで落ち着けた。
なんか、ドライバー取り出して変身しそうなほど、黒い何かが出ていた気がしたが、おそらく気のせいだろう。
顔の傷は了子によって、元々できるはずもない痕も無く治った。チッ。
「私的には、一真と話せる機会になるからいいんだけど」
「響………」
「私は決めている、この拳、歌は大馬鹿野郎を殴って止める。私はそう覚悟した」
その時に現れるのは、不死身の怪物なのは分かっている。
だから………
◇
「テメェはお呼びじゃないんだよ、人形っ!!」
「人形じゃなくって、ミカ、って言うんだゾっ」
雨雲漂う帰り道、私は未来を巻き込み、敵と遭遇した。
そう言い、赤い髪の人形が現れ、アルカノイズが無数湧き出る。
「よりにも未来がいる時、また無関係な奴がいる時にッ」
ともかく廃屋へと逃げ込む。
「未来っ、次の建物に入ってから隠れてっ」
「う、うんっ。けどどうして」
「この辺りは昔の、私達の庭だよっ!!」
昔の寝床もある建物だ、地の利はある。
ともかく一真を殴る前に、この事態を退けなければいけないな。
◇
「アルカノイズの反応を検知」
「位置特定、モニターに出ますっ」
モニターに映るのは、響、未来を追う赤い人形。
「ついにミカも動き出した………」
エルフナインがその画像を見てそう呟き、弦十郎は叫ぶように指示を出す。
「急ぎセレナくんに連絡を。急げッ」
◇
「およ? 逃げるのはもういいのかだゾ?」
廃屋のビル、未来は奥に隠し、静かに構える。
「壊してやんよっ」
爆炎と暗闇が舞い上がる。
初めからクライマックス、暴走モードで壊してやるよ。
「オヨ? なんだそれ、ミカ聞いてないゾ」
【この世の絶望を、壊す歌だッ】
◇
「ぼ、暴走状態っ!! 響さんっ、これは」
ボクはその光景を見て驚く。
黒い影に覆われながら、熱量により炎を纏う響さん。これは、
いまは動けないクリスさんと翼さんも、その光景に驚いていた。
「あのバカ、まさか」
「プロジェクトイグナイトは、本来暴走を抑えて強化するシステム。だが」
「それよりも早く、暴走形態を維持できる精神力の持ち主………響さんのデータは、プロジェクトの成功率を上げられそうです………」
「ヤンデレって………」
藤尭さんのやんでれというのは、いったいどのようなことを言っているのでしょうか?
プロジェクト成功の為、後で響さんに尋ねてみましょう。
そしてモニターの先で、戦いが始まります。
◇
【行くぞ赤いのッ】
「赤いのじゃなくって、ミカ、だ、ゾっ!!」
無数のアルカノイズを爆走しながら砕き、攻撃は全て見向く。
紅い眼光が軌跡を描き、アルカノイズの分解を受けず、ミカへと連撃し続けた。
【硬い、だが】
一点に全て拳を叩き込み、バンカーを伸ばし、強化した蹴りを突き刺す。
「オヨ?」
巨大な爪のような腕に僅かに軋みを聞き、再度体制を整えるが、
【そこだ】
瓦礫を蹴り上げ、シュートする。
「いっ!?」
【性根の腐ったガリィかッ】
物陰からこちらを窺うガリィに気づき、舌打ちしたガリィは無数の水柱と氷柱を巻き起こす。
それはこちらを含まれているが、狙いが僅かにずれている。
これは、
【狙いは未来かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ】
私が避けると、物陰などを巻き込む攻撃。これは隠れている未来を狙っての攻撃だ。
攻撃を砕きながら、地面に着地する。
(とはいえ、未来を守りながら全攻撃受けずってのが無理か。この場から離脱に切り替えるっ)
すぐに未来がいる瓦礫へと突貫し、粉砕すると共に飛び出ていく。
「響っ」
未来を抱き上げながら、崩れて壊れている壁を見る。
【息止めてッ】
言われた通り息を止めた未来、急いでそこから飛び出ていく。
後を追うアルカノイズは、空中で身体をひねりながら、飛び出るアルカノイズを蹴り飛ばす。
また廃屋のビルへと飛び降りるが、
「まだ来るっ」
【くっ】
顔を上げたら、無数のアルカノイズが向かってくる。
すぐにバンカーを伸ばし、すぐに飛び、離れようとしたとき、
無数の炎が撃ち抜いた。
「!」
【これは】
◇
私達が見たところに、一つの炎がいました。
「ギャレン………」
炎の昆虫、クワガタと言うべきギャレンが空を飛び、ミカと言う人形へと斬り込む。
重醒銃キングラウザーと言う武器には刃が付いていて、剣のように振り回して、ミカへと斬りかかる。
「響」
【………いまは未来が大事】
そう呟いて、響は私の為に、一真さんを無視して去る。
その後すぐ、私達がいた廃屋ビルは、紅蓮の炎に包まれました。
◇
「………これは」
ギャレンの炎でしょうか、司令さんに言われ、時限式では無い私が駆けつけました。
マムの下に顔を出していたときの連絡で、マリア姉さん達も飛び出そうとしましたが、マムに止められ、私はアガートラームを纏い、駆けつけたときには、すでに終わっています。
そこに、
「………ぁ………」
私は雨雲すら撃ち抜いた弾丸、そこから照らされた太陽光の下に、彼を見つけた。
光の門が現れ、それを通り抜けると、あの人がいる。
「一真、さん………」
「………また」
「えっ………」
「また微妙な状態で会ったな」
そうだ。この人はプロジェクトイグナイトに反対して、そのプロジェクトを司令さんが決行すると決めたいま、私達はまた敵同士だ。
「一真さんっ、どうしてプロジェクトイグナイトを、魔剣ダインスレイフを危惧しているんですかっ」
「………君の名前、確かセレナちゃん、だっけか」
「セレナでいいです」
「分かった………」
正直、この落ち着いた話し方の時は、他人行儀だと響ちゃん達に言われている。
奏さんたちをちゃん付けするのも、そう言ったところらしい。私は外れたっ。
「魔剣ダインスレイフは、その逸話は一度鞘から放たれれば、生き血を得るまで解き放たれる負の力。聖遺物魔剣ダインスレイフもまた、そういうものだ」
「………はい」
「………魔剣ダインスレイフは、誰が作ったと思う?」
「えっ………」
魔剣ダインスレイフは、北欧の闇の妖精、ドワーフのような種族に作られた。のはず………
そう私が考え込んでいると、彼は静かに、
「その魔剣は、一万年前の一人の戦士が握りしめていた」
「………一万年前?」
あれ? それはまさか………
「かつて生物最強の戦士の刃は先史文明時に人々の手に渡り、加工され、魔剣ダインスレイフと言う名の武器へと変わった」
その言葉に、過った予想が形になる。
心臓の音が早まる。もしもそれが本当なら、聖遺物は、
「その刃が、人類が、生物として頂点に立つ手助けをした物と知らずにね」
心臓が………爆発しそうになる。
「まさ、か………」
「俺も、
そう言って、彼が手をかざすと、黒い剣が現れる。
剣先が欠けた、音叉のような刀身の、黒い魔剣。
「ヒューマンアンデッドが愛用した武器を加工し、生み出された、人類を生物の頂点へと導いた武器、魔剣ダインスレイフ。俺はこれを人の手に渡す気は無いんだ」
それに背筋が凍る。この光景をモニタリングしているみんなもどうなのか分からない。
そして彼は静かに、剣を収める。
「なぜ、ヒューマンアンデッドが、始まりのジョーカーや、他のアンデッドに勝てたと思う?」
「それは」
そう言えば、この人はジョーカーの姿になることは多いけど、そのジョーカーに勝った、ヒューマンアンデッドになることは無い。
言われてみればおかしな話だ。なぜ強い姿にならない?
力の安定ができないのなら、ジョーカーの姿の方が、力が安定しない気がする。
なによりリカバーやタイム、サンダーなど、かなり強力なラウズカードも使っている。だけど、ヒューマンアンデッドのラウズカードは?
私が知ったり、聞かされたりする限りでも、強力な効果があるのに、まったく知らない。
「ヒューマンアンデッドの力は、人になる。ただそれだけだ」
私の疑問に答えるように、あの人は答えてくれた。
「それだけですか?」
それだけでどうして? バトルファイトのルールは確か、モノリスや統制者によって管理されていた。
一万年前のバトルファイトは、敗北者はモノリスによって封印されている。
ヒューマンアンデッドはその戦いを、ジョーカーと言う存在を退けて勝ち上がり、万能の力と種の繁栄の権利を手に入れた、勝利者だ。
だけど、そのカードが人になるだけでは、勝利者になれるとは思えない。
「人の力、ヒューマンアンデッドの力の具現化は、俺の青のジョーカーから分かる」
「青の………アンデッドの」
その時、私は気づく。
青のジョーカーは、アンデッドの『武器』を操る。
「ヒューマンアンデッドは、武器を使う………それが」
「ヒューマンアンデッドがバトルファイトに勝利したのは、武器防具、知恵による勝利。そしてヒューマンアンデッドが残した武器防具は、その後どうなったと思う」
「………まさか」
そして静かに、あの人は頷く。
「聖遺物、人はそれに加工し、新たに争いを始めた」
私は自分の身体、アガートラームのギアを見る。
これが、かつて世界の繁栄を賭けた戦いに使われた道具。その加工品。
ただ静かに聞きながら、あの人は静かに歩き出す。
「もし魔剣に手を出すのなら、俺はアンデッドとして戦いを挑む。あれは一番、当時の力を持った聖遺物だから………」
「ま、待って一真さんっ」
「………」
だけど彼は振り返らず、そしてその場を後にする。
結局その後、プロジェクトイグナイトは決行するしかない。
あの人と戦うことになろうとも………
◇
【さあまたバトルファイトが始まる、君が止めた戦いがまた】
「………」
【ねえねえどんな気分だい? 必死に、全てを捨てて止めた戦いが、必死になって守った者達によって再開される気分はっ】
「………」
【どれほど事実から目を反らしても、現実は変わらない。新たな戦いが始まるんだ】
「………」
【世界が滅茶苦茶になる、さあ、君はどうなるんだろうか?】
そして声が消え、それを無視しながら、静かに歩く………
◇
この事実がもたらした出来事は大きなものでも………
私達は、その力を手にするしか、道は無かった。
一真さん、私達は、貴方の思いを、裏切っているのでしょうか………
私は貴方に会いたい。
もう一度、貴方と話したいです………
かつての勝利者、ヒューマンアンデッドは、知恵より生み出した聖遺物にて、アンデッドの戦いに勝利した。
それが新たに発掘され、人々は自分達の力へと変えた物。それが完全聖遺物、シンフォギアを初めとした、異端技術の始まり。
ヒューマンアンデッドは、異端技術全ての、始祖である。
お読みいただき、ありがとうございます。