彼はなんのために戦い、なぜ全てを捨てたのだろう?
それでも彼は止まらない。
それ以外に道を選べないから………
それは何度目かの出会いであった。
何度も逃がし、何度も話し合う。
「貴様の力はオレの物だ剣崎一真ァァァァァァァァァァ!」
キングフォームと成りながら、黄金の斬撃が放たれ、重醒剣キングラウザーを構えなおす。
「キャロル、俺の力は人間には渡せない。僅かな力ですでに分かっているはずだ」
「ああ分かっているともッ」
風を放てば風が、雷は雷、炎は氷の壁。
時には時間を止め、高速に動き回ったり、数多の姿を持つ。
その力を垣間見る度に、オレの心は胸躍る。
世界の始まり、いまの世界を構成した戦いの力。
バトルファイトの戦士。
「貴様の細胞から創ったこの身体、思い出の焼却を必要とせず、万の病魔への免疫力、人の、いや生命がたどり着かない頂きの力。オレはその力を持って、世界を知る!!」
「世界を知る、何の為に」
「貴様には関係ない、大人しくオレの物になれ剣崎一真ッ」
錬金術のスピードも増す中で、一真は静かに構えなおす。
≪チェンジ≫
それこそが一真の真なる姿、万象を現す四元素を身体で表し、聖杯、こん棒の杖、硬貨、剣。
一にて世界を現す全、そうだ。お前は世界だ、奇跡だ、だからこそ、
「貴様は俺の物だ………剣崎一真」
その災いを形にした姿で逃げられたあとで、オレは決意する。
その奇跡を壊してこそ、そして知ることがオレの命題、パパから託された命題の解明に繋がるんだと確信できた。
諦めてなるものか。
奇跡を壊し、世界を知る。
お前を知って、壊して、オレの物にすることが、オレの命題なんだ
「一真………」
そう、この長い間、オレから逃げながらも、オレを見続け、向き合い続けたお前を………
絶対に手に入れてみせる。
◇
≪チェンジ≫
鳴り響くはバニティアンデッドのカードの音。
そして現れたのは、
【Aaaaaaaaaaaa―――ッ!!】
完全に生物から外れた、何かだった。
巨大な顔から角のように竜の頭部が生えて、巨大な尾は昆虫の針、魚のひれを持つ獣の尾。
昆虫の羽根、鳥類の翼、機械のブースターが腰に付いていて、様々な種類の蔦が鎖と共についている。鎖の刃先は種類様々な刃物だ。
腕らしいものも両腕合わせて六本もある。異なる武装などで、力を繰り出す。
籠手のような武装する腕には剣と杖のようなメイス。
もう一つの両腕は腰から生え、巨大な三つ爪が付いた籠手を纏い、覆い隠した腕。
最後の両腕は、肩に付いたような腕。聖杯と護符のように言葉が刻まれたコイン状の盾を持つ。
【なん】
生物では無い生物は咆哮を上げた。
地面が砕け、雲が消し飛び、飛来してくる。
「んな重量でッ」
クリスは叫びながら、全員がその場から飛び立つ。大地を削りながら飛翔するそれは、機械の鎧すら纏っている。
「もはや生き物ですら無いっ!?」
「翼、クリス響っ」
奏やセレナが来るが、巨体を旋回させ、空の上に鎮座するそれは、一種の神話の怪物だ。
聖杯から風をこぼし、剣は雷鳴を呼び、炎の文字を灯す貨幣の盾、杖から冷気を、氷を形作る。
「また体当たりするかもしれないが」
「ちっ、強化した矢先の相手が、不死………」
その時、全員が凍り付く。
クリスが言いかけた言葉、不死身。
そう不死身なのだ、この怪物は。
体当たりでは無く、口開き、両腕の三つ爪は光を灯し、武器を持つそれらは各々の力を同時に吐き出すと共に、ミサイルや弾丸が放たれる。
「なんでもありかッ」
「来ますっ!?」
大地に降り注ぐ災厄を避けながら、それはまた接近する。
六本の腕で一人一人対処するが、ここには私、クリス、翼、奏、セレナしかいない。
剣が薙ぎ払われ、私達は吹き飛んだ。
【ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ】
暴走が解け、すぐに地面にバンカーを伸ばして止まろうとするが、
≪ロック メタル バイオ チェーンバインド≫
瞬間草木のように鉄が生えて、私に絡みつく。
「ラウズカードォォォォォォォォ!?!」
≪タイム≫
おそらく、空中でクリス達含め、世界は停止した。
≪サンダー ファイア トルネード ブリザード エクストリームショット≫
次の瞬間、世界は全てのみ込まれた。
◇
翼を閉じて、大地に下りる時、通常のバニティアンデッド姿で着地する。
イグナイトモジュールが解けて、その場に倒れる装者達。
響なぞ、ギアが解けていた。
だが、それよりダメージを受けている。セレナ、奏を見る。
「………ガングニール、封印」
≪バニティ≫
ラウザーにカードを通した後、奏へとカードを投げる。
奏は気づいたとき、カードがスーツに刺さり、ガングニール。ギアがカードの絵の中に吸い込まれていく。
「なっ」
「アガートラーム、封印」
≪バニティ≫
同じ手順でセレナに投げると、セレナにも同じ現象が起き、二人とも前を隠すよりも、カードを掴もうとするが、それは回転しながら、主の下へ戻る。
カードを持つ一真は、その絵柄を見せる。
変化したカードは槍と銀色の腕が描かれたカードであった。
「聖遺物を」
「封印した………」
そしてカードは手の中に取り込まれ、一真の中に封印された。
それに驚愕しながら、
「天羽々斬、イチイバル。封印」
≪≪バニティ≫≫
今度は二枚連続に投げ、それは真っ直ぐ、翼とクリスへと向かっていく。
二人は顔を上げ、クリスは弾丸を放つが、それも砕けて、その破片すら中に吸い込まれながら、接近してくる。
(まず)
その時、轟ッと言う音が鳴り響き、カードは叩き落された。
「ぇ………」
「なっ」
【………】
叩き落されてもカードはくるくると回転し続けた。
だがカードはそのまま、一真の下に戻り、戻ってきたカードを掴み、現れたそれを睨む。
「存外と硬いな」
そう言いながら、手を振り、アップし出すは、
「オッサンっ」
「旦那!?」
「司令さんッ」
「叔父上」
「司令………」
歌姫達は驚愕する中、セレナと奏に着る物を持ってくる切歌と調。
風鳴弦十郎、静かに目の前の怪物を見る。
「君にしては、少しばかり強引過ぎるな。一真くん」
【魔剣ばかりは、人の手に置けないからな。悪いが怪我はさせたくないんだが】
武器は持たないが、構える一真。それに弦十郎は構える。
「悪いがそれでもこれは、俺達の希望だ。おいそれと渡すわけにはいかない、奪った聖遺物、返してもらうぞ」
【………行くぞ】
◇
私、響は目の前の展開についていけない。
「翼、貴方の家は怪奇の血持ちか」
「言いたいことは分かるが、風鳴の血は防人の血、怪物にあらず」
「けど旦那のあれ見ればな………」
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――!」
【ウッイィィィィィィィィィリヤャャャャィィィィァァァァァ―――!】
轟ッ、ガンッ、バンッと大気を鳴らし、大地を揺らす二人。
海が二人の余波で舞い上がり、空が割れる。
どちらも血を流しながら、撃ちあっていた。
「翼先輩、オッサンはトライアルシリーズなのか?」
「知っているぞ雪音っ、叔父上は人間だっ」
「人間の動きじゃないですよ………」
セレナの言いたいことは最もだ。どこの世界に一真と生身で互角に戦える人間がいる。
ここにいたよ。
また巨大な揺れをたたき出した後、距離を取る二人。
そして………
「!」
一真は人間体へ変わる。
だけどその目の色は人の物では無いように、発光していた。
「一真くん?」
「………弦十郎さん、魔剣ダインスレイフは、ヒューマンアンデッドの最後の兵器、その一つ。そして、俺の中のシステムと呼べる物を、進化させた」
ビキビキと何か音が鳴り響き、一真の傷が癒える。
だがこんな奇怪な音を響かせながらなんて、初めてだ。
「アンデッドの戦いに必要なものは、闘争本能だけ………魔剣ダインスレイフは、まさにうってつけの力を持つ、バトルファイトを勝ち残った証だ」
「………君の本音は、響くんたちの安否か」
それを聞き、私達は驚く。
一真は否定も何もしない。
だが構えることはやめなかった。
それに苦笑しながら、一真へと拳を構える。
「君は、キャロルくんのことも一人で解決する気か」
「何をいまさら………俺はそう言う道を選んだバカだ………」
拳を握りしめ、静かに構えると共に、司令も構えた。
「君は心の中に仲間を持つ、そして運命と戦うのだろ」
「ああ、けれど、それを無視してでもやらなければいけないこともあるんだ………俺は仮面ライダーで、剣崎一真で………化け物だ」
瞬間、二人は跳んだ。
耳を響かせ、空間を揺らす一撃が激突して、そして………
司令は吹き飛び、一真は立ち尽くす。
「司令さんっ」
「一真………」
だが一真は目の色を変えながら、静かに歩き出す。
「いまの状態で封印はできない、俺が俺で無くなる………いまはそれは困る」
そう言いながらラウズカードを取り出す。
「響、翼ちゃん、クリス。調ちゃん、切歌ちゃん。そしてマリアちゃん………魔剣を組み込むと言うんなら、俺はそれを封印する。それは人間が持つべきものでも、歌でもない」
そう言い、一真はフロートの風を巻き起こしてどこかへと去っていく。
とりあえず、私はこの後、司令に弟子入り頼もう。
◇
「………負けたか」
「建物の被害を考えれば、よく死者が出なかったものだ」
了子くんがそう言いながら、俺の治療をしている。
すでに痛みも何も無い。これならすぐに動けるか。
「錬金術師達は?」
「錬金術師キャロルはすでに姿は無く、各施設を襲っていたオートスコアラー達も、アンデッドが現れた時点で逃走していた」
逃がしたか、それは仕方ないだろう。
だがやることは多い。
「どうせ、すぐに色々動く気なんだろ? 緒川達がすでに動いている、休ませたいのだがな」
「すまないな」
こればかりは悪いと思うが、
「とはいえ、プロジェクトイグナイトはどうなった?」
「………響のガングニールを始め、神獣鏡以外のギアに強化完了。これで剣崎一真と敵対は」
「確定、というわけか」
ため息をつくが、致し方ない。
彼の目的は分かった。アンデッド、一万年前のバトルファイトで使われた魔剣か。
闘争本能を求められる戦いで活躍した物。うってつけだったのだろうな。
「一真くん、不器用な男が。他にやりようがあるだろう」
だが分かる。装者全員、危険と知っていてそれを避けるような人間ではない。
切歌くんや調くんも、リンカーを躊躇いも無く、必要なら連続投与する。
罪の清算、譲れない信念、待ってはくれない戦い。
腹立たしいな。
「結局、俺は一真くんに、危険な物に手を出す子供を、無理矢理止める役を押し付けているだけじゃないか」
分かっているから無理矢理なんだろう。
そこまでしても止まらないだろう。装者達全員、皆そう言う性格だ。
俺は果たして、彼を咎める資格はあるか? 危険と知りつつ、戦いに出すこの俺が?
考え込んでいると、了子くんの治療で痛みが走る。
「余計なこと考えない、貴方は貴方のやるべきことをするだけでしょ?」
「………すまない」
「はあ………まったく、この世はやはり、呪詛がある限り、分かり合えないのだろうか」
そう言うが、
「いや違う、俺は少なくとも、彼の願いは分かり合えた」
「………そうか」
響くん達の絶対安全。
彼の願い、彼の願望、唯一の望み。
いまのままだろうと、俺は、俺達は叶えてみせなくてはいけない。
彼から明日を渡された、俺達の、いや、俺達が選んだ明日だ。
◇
「………一真さんに、裸にされたんだ私………」
「セレナっ、なんで嬉しそうなの!?」
「なら私達は」
「胸触られたデスっ」
「ほう………」
「つまりハチの巣になりたいわけか」
「奏は」
「んなもん気にしていられるか、ともかく、二人を止めるぞっ」
この後、弦十郎が医務室から帰還するまで、混乱が続いたらしい………
◇
そして、
「エルフナイン」
「あっ、響さんっ」
全ての作業を終えたエルフナイン、まるで合わせたように現れる響。
エルフナインは何も不審に思わず、響の下に近づいていく。
「ちょうどよかったです、いま響さんたちのシンフォギアの強化が完了しました。これが響さんのガングニールです」
「ありがとう、大事にするよエルフナイン」
そして響はガングニールを受け取ると共に、その手を離さない。
「? 響さん?」
「ところで、これからエルフナインはどこに住むの?」
「はいっ、このままけん「ダメだよ」きゅう………えっ?」
「エルフナインはね、今日から私の所に住むの」
「な、なんでですか? は、はなしてください響さ」
そして力づくで、エルフナインの身体を引き寄せ、抱きしめる。
その時、僅かに頬を舐めた。
「はひっ!?」
「………一真と同じか………」
「………響さん?」
エルフナインはこの時、初めて自分は危険な状況なのではないかと気づいた時、クリスが入ってくる。
「く、クリスさんたすけ」
その手に人一人入る袋と、縄を持って………
「ぇ………」
「………」
「………」
「交代な」
「おう」
「ひ、ひび」
そしてエルフナインの悲鳴がこだまして、その時、最後の良心風鳴弦十郎が立ちふさがり、響とクリスは御用となる。
「大変だったねエルフナインちゃん」
「ゼレナざん………」
「よしよし、いいこいいこ………」
その時、セレナは僅かに微笑む。
「セレナ?」
少し姉が何かに気づき、聞き返したが、優しく微笑む。
セレナからもエルフナインを回収され、しばらく装者は説教を受けることになる。
だが翌日、この話を聞いた小日向未来は静かに響に頷いて、会話していたらしい。
「そうなの………エルフナインちゃんたら………」
「私は必ず手に入れるよ」
「………そう………」
そう静かに相槌して、虚空を見つめる未来。
響は今日も平和だと呟いた。
バニティアンデッドジョーカーは、クトゥルフのような状態ですね。
機械も組み込まれた、常に姿が変わる生き物。
そして響もクリスも諦めてません。
セレナは静かに篭絡しようと動きます。守るのは、年上装者達ですが、奏は怪しいです。
後輩ズはそこまで堕ちてません。
エルフナインは完全な被害者です。
そして未来さん、エルフナインに憎しみは抱きません、ただ黒いものは抱いてますね。
それでは、お読みいただきありがとうございます。