クリス「………ふふっ」
エルフナイン「!」何かに気づき、周りを見る。
奏「エルフナインの部屋はあたしの部屋でいいな」
セレナ「公平に決めましょう、私、くじを用意してます」
翼「エルフナインは私が守るっ」
未来「………そうなのね響………」
マリア「海水浴………セレナと一緒に楽しい海水浴………」
切歌「楽しみデースっ♪」
調「……………………私がしっかりしないとッ!」
始まります。
青い空に白い雲………
「私には似合わない」
剣崎響、いま海にいる。
司令から言われ、特訓と言う名の、装者の心身を休ませるための期間。
翼は特訓と信じて挑むため、奏がにやにやしながら見ていた。
「響、どうしたの?」
「少しね」
あの後、色々なことがありすぎた。
奏、セレナの聖遺物を一真が回収、一真の本気………
そしてエルフナインを物にしようとしたが、司令が立ちふさがる。
私のギアはイグナイトモジュールを持たせ、切歌と調も強化完了。
マリアのアガートラームも強化完了。本来なら時限式であるマリアから、セレナへ譲渡するのが戦略なのだが、このギアはなぜかマリアしか纏えないと言う事態。
結果奏とセレナは戦線離脱を余儀なくされ、未来と共に海水浴に来ている。
「エルフナイン、肌焼かないようにしないとな」
「は、はひっ。セレナさんに日焼け止めしてもらいました」
「チッ」
奏とマリアの監視が厳しい。セレナ達も、なにげにエルフナインに構いだしてるぞ。
戦いの中、魔剣の制御はとりあえず、
「響さんは高確率で制御可能と思われ、クリスさんや翼さんはイグナイト成功ですね」
泳ぎ休み、その話をする一同。やはりと言うか、私は制御できそうらしいし、感覚からもできると判断できる。
「制御するか………抜剣した時、流れ込んだあの感覚」
「確かに、剣崎さんが危惧するのには納得がいく。一歩間違えれば暴走していただろう」
そう言い合う二人。そんな中切歌は、
「どうやって制御したんデスか?」
と聞くと、
「………一真を殺したい」
と当たり前なことを言うクリス。
光が無くなった瞳でぶつぶつと、一真を殺したいと言うことを告げる。翼が肩を揺さぶるが止まらない。
私も考え込む。未来がやめてと横で訴え始めるが、やはりやめる気は無い。が、
「だけど一番許せないのは、私だ」
「雪音?」
「明日を一真からもらって、平和な世界で、力を振るわなきゃいけない自分が許せなかった」
その言葉に、一同は黙り、翼も頷く。
「ああそうだな。剣崎さんが守った明日に、私達はあの力、イグナイトを用いる不甲斐なさ」
「だからこそ、だとしても私達は暴走しないよ。選んだのは私なんだって気持ちが強くなったら、イグナイトを纏ってた」
なんとなくわかる言葉を聞きながら、私はガングニールを握りしめる。
一真、私は………
◇
「これは」
「私の研究、フロンティアと共に使用したレイラインマップです」
緒川、という方と共に、彼らに現在の異変について、少々話し合うことになった。
「レイラインマップ?」
「私はフロンティアで、月遺跡の掌握に多くのフォニックゲインが必要でした。ですので、地脈、竜脈と言う、この星のエネルギーの流れを利用し、人々からごく僅かですが、フォニックゲインを集めてました」
いま球体として見せているレイラインマップを見せつつ、ごく最近の変化を伝える。
「ここ最近、そのレイラインの流れが変わり、少しずつ変化している。これはつまり」
「何者かが、レイラインを利用していると?」
それに静かに頷く。そして考えられるのは、
「このようなことができるのは、剣崎さんと、もう一人。錬金術を利用する者と、櫻井了子さんとも同意見です。なんにしても、エネルギーが集まる場所を掴めれば」
「彼女達の行動を止めることができるやも知れない、ですね」
そして今現在、我々は動き出します。
◇
「くっ、かっこいいチョキが」
「いい加減にしろ翼」
「切ちゃん、好きなもの買い過ぎ」
「これは買い出し班の特権デスっ」
そう言いながら、私達は買い出しでコンビニから出ていく。
私、暁、月読に奏と、海辺に残る皆のもとへ戻る。
◇
「はあ、暇だ」
「ううっ………恥ずかしいです」
エルフナインを抱きしめている私。未来がずっと見ているけど気にしなくていいか。
すべすべの肌、真っ白な肌でぷにぷにしている。
このまま全てを私の物にしたいが、いまは監視の目があるからやめておこう。
気のせいか、こちらの思考に気づいて、怯えている。可愛いものだ。
私がぼーっと海を見ていると、身体がざわめく。
「誰だ」
その瞬間、水が立ち上り、全員が身構える。
だが、
【邪魔だ人形】
氷のメイスが海を吹き飛ばす。
「なっ、イモータルっ。ガリィちゃんの邪魔しに来たのかっ」
「一真っ!!」
バニティアンデッドで現れ、すでにガリィは見向きは起きないが、
「マリアは未来たちをっ、一真とは私が話す」
「お前じゃねえッ、私が話す」
………
「「抜剣ッ」」
「貴方達っ!?」
私達はあまりにもたやすく、イグナイトを纏う。
その様子を見て、一真は、
【くっ………もう魔剣の影響が】
「違うからッ、それは違うわよ一真っ」
「「「なに名前呼びしてる」」の姉さんっ」
セレナと共に叫ぶ中、セレナ、未来、エルフナインを連れていくマリア。
私達は抜剣を纏い、一真へと向かっていく。あとガリィ。
ばらまかれたアルカノイズ。一真は、
≪チェンジ≫
コーカサスビートルアンデッドに変化し、カードをばらまく。
≪リモート≫
無数のアンデッドも現れ、砂地に下りて煙を立てる。だが関係ない乱戦だッ、私達は滅茶苦茶暴れる!!
◇
森林の中に走り込む私達、いまはギアを纏い戦うより、エルフナイン達を守る方が最優先だ。
だが、水柱が舞い上がる。
「そ~かんたんには」
ガリィと言うオートスコアラーが現れるが、
「行くと思うか?」
それには全員が戦慄する。
「うそっ」
「なんでイモータルがッ!? 他の装者と遊んでるんじゃ」
「無数にリモートを投げたとき、カメレオンアンデッドを混ぜた」
舞い上がる砂に紛れ入れ替わり、こうして彼はここにいる。
ガリィは憎々し気に一真を見て、一真は静かに、
「悪いが、優先順位を間違えるほど、俺は本能に飲まれていない」
そう言いながら私たちの前に立ち、ガリィはそれに舌打ちして、すぐにどこかへと消えた。
それを静かに見届けてから、こちらを見る。
「マリアちゃん、アガートラームを渡してもらおうか」
「待ってくださいっ」
その時、エルフナインが前に出る。そしてエルフナインを見た一真は、僅かに顔をゆがめた。
「キャロルが俺の、アンデッドの情報を利用して作ったのか………子持ちか」
「認知するんですか一真さんっ!?」
「セレナそこはいま関係ないから!!!」
「いえ大事なことですよマリアさん」
「小日向未来っ、お願いだからいまは抑えてっ!!」
それと、血から情報取られて、そこから色々あってホムンクルス作られたからって子供じゃないわよ一真っ。
なんでいま、こういう話になるのよっ!
「すいません………」
「そ、それよりも、イグナイトモジュールはキャロルの万象黙示録、世界の分解を止めるために必要なんです」
「ばんしょう………キャロルの願いは、世界を知ること。父親の願いを叶えることのはずだ」
………その辺り、彼は知らないのね。
「一真、キャロル達は、エルフナインに作らせていたチフォージュ・シャトーと言う物を使って、世界を分解しようとしているの」
「………キャロル………そこまで………」
「………なにか分かるの?」
「あの子はいつも言っていた、俺の物になれ、オレは世界を知ると………」
少し懐かしむような、複雑そうに考え込み、そう呟く。
「世界を知る………パパの命題、キャロルは世界を分解して、世界を知る気。一真さんを求めるのは、一真さんが錬金術における四代元素を現す、全にして一の存在だから………」
小さく呟くエルフナイン。錬金術の考え方だけじゃなくても、一真は研究者としては欲しい逸材なのだろう。
「お願いですっ、危険は承知ですが、このままイグナイトを見逃してください!!」
その言葉に、
「無理だ………」
その瞬間、青のジョーカーに成る一真。
私はすぐにエルフナインの前に立ち、セレナは衝撃を受けながら聞く。
「どうしてですかっ、私達が暴走する、だからですかっ!?」
【そうじゃない………そう、がっ】
その時、彼は胸を押さえながら、すぐに人の姿に成る。
膝を突き、眼の色は青いまま、肩で息をしていた。
「ど、どうしたの一真っ」
「………イグナイトは、その力は………俺の中にある、魔剣を呼び起こすんだ」
「魔剣………まさか」
「どうしたのっ!?」
エルフナインが青ざめた顔をしながら、首を振り、一真を見る。
「皆さんのイグナイトが、一真さんの中に封印された魔剣ダインスレイフを呼び起こす………貴方はその結果、アンデッドの本能に刺激されている。そうなんですか」
目を見開き、自分の胸を握りしめるように力強く握り、歯を食いしばりながら、静かに頷く。
「元より、聖遺物は………ヒューマンアンデッドの武器が使われている物が多い」
「それじゃ」
「アンデッドはどうしようもなく、闘争本能のみでできているんだ………俺も例外じゃない」
「闘争本能………貴方の本能を向ける対象、敵は」
「ギアを纏う、私達装者っ!?」
セレナは叫び、それには静かに後ろに下がりながら、一真は、
「イグナイトにより、俺の中の本能が、魔剣によって呼び起こされ始めてる………忘れるな、俺が意識を失えば、俺はお前たちの敵なんだ………」
そう言い彼は去る。
彼はなりたくてなっていたんじゃない。
彼の中の怪物が、そうさせていたんだ………
◇
「あっ、ああ………アァァァァァァァァァァァ」
【苦しいね、辛いね、我慢できないね?】
「黙れッ」
【楽になりなよ? 君は全てを壊す怪物で、彼らは敵だよ?】
「違うッ」
人のいない無人島で、暴風に吹き飛ばされたように地形が変わる。
人でもない、数多の姿になりながら、暴れる力を抑え込む。
「俺は、俺は諦めない!」
【君は何度繰り返すんだい? 何度自問自答して、何度】
「黙れ」
その時、無人島を叩き割る一撃を地面に放ち、水が噴き出し、獣は吠える。
元の姿に戻り、そして空を見た。
「何度だって俺は悩むし苦しむ、それでいいさ………それが、俺が選んだ生き方だ」
【………】
「黙ったな、黙るよな。それがお前だからな」
そして歩く、一歩一歩引きずるように。
「何度迷って、苦しんで、悩んでも………」
人で無くなっても、これだけは迷いなく言える。
「俺が剣崎一真だ、そうだろ………みんな」
誰に言う訳でもなく、そしてまた歩き出す。
◇
「姉さん………」
夕焼けの中、砂浜で黄昏ていると、セレナが近づいて来た。
「セレナ………」
思えば当たり前か。彼はアンデッドの所為で人間の中から離れている。
セレナ、あの時の彼はおそらく、闘争本能が勝っていたのだろう。でなければ、彼の性格ならば、施設を壊しているのだから………
「私の為に、離れたんだね………」
「色々、私達は間違っていたのね」
いまも苦しんでいるのだろう。一真がアンデッドの本能と戦うとき、いつも一人でいるらしい。
自分達は安全な場所に預けたり、居るように言ってから、どこかで苦しんでいる。
「………」
それでも私は………
考え込んでいると、エルフナインがビーチでボールを打つ練習をしていた。
「エルフナイン」
「あっ、マリアさん、セレナさん」
話してみると、記憶の中の知識と照らし合わせ、打つ練習をしている。
そして私は話し合う。
「他の皆さんも、今回の事は心を揺るがすことでした………ボクの考えが足りませんでした、一真さんが魔剣を持っているのなら、可能性があったのに」
「………それでも、私達は魔剣を手にしていたわ。より強くなるために」
弱いがために何も守れない、あの日の自分。
それが嫌で、力を求め、だけどその結果、あの人を傷付ける。
「一真のように、強く有れば………」
その時、
「響さんたちとは違う事を言うんですね………」
「「えっ」」
私達姉妹は揃って驚く。
「響さんとクリスさんは言ってたんです、一真は弱いって」
「あの人が」
「そんなはず、あの人は一万年も続く戦いを終わらして、いまも多くの人々をまも………」
その時、あの子達の言葉を、顔を思い出す………
そうだ。一真がいるから、いまがあるんだ。
なのに私達は、力を欲して、危険に向かう。
彼は何を望んで人を捨てた?
彼は何を願って、仲間を裏切り、人間であることを捨てた?
「彼は弱い………」
本当に強かったら、彼は挑まないのではないか?
彼は弱いから、いまもなお、運命に挑んでいる。
誰かを、明日を託す人類を、世界を守る為に………
「………私は、私達は彼のことを知らなさすぎる」
「姉さん………」
「彼は捨てたくて捨てたんじゃない、やめたくてやめたんじゃない………だけど」
彼が彼だから、選んだ道。
私は………
その時、また水が舞い上がり、すぐに構える。
私は弱い。勝手に誰かを強いと決めつけ、憧れ、強いと思い込んでいた。
だけど違う。あの人は弱い………
それでも、彼は彼だから選んだ道。それがあるからいまがある。
なら、託された私、罪を背負った私がするべきことは一つ。
「彼がくれた明日は、間違いじゃないと証明するためにッ。イグナイトモジュール抜剣ッ!!」
◇
誰が話すか、一真の話は私の話だッ。
一真の事を少しは理解したようだが、それだけの分際で得意げになって。行き遅れろッ。
「響、なんか顔怖いよ」
「………ごめん」
ガリィがあの後、マリアを襲ったが、イグナイトで撃退したらしい。
私達は夜食を買いに、コンビニに出向く。
あの後、あの姉妹は一真のことを聞こうとする。忌々しい。
「イライラする………」
そう言い、コンビニを見る。そこから男が出てきた。
それは、
「! お、とう、さ………」
「!!! ひ、ひびき………響っ!!」
◇
「放してッ、いきなりなんだよッ!」
少女は叫ぶ、泣き叫ぶように、睨んでいながら、今にも泣きそうな顔で、
「俺が悪いのは分かっているッ、響が苦しんで、一番辛いのは響なのに、自分が一番辛いと思って、家を出て行った………俺のことはいい、恨んでいい、罵っていいッ。けど母さんたちは違うっ、違うんだっ。母さんたちは」
「嫌だッ、聞きたくないっ!!」
その手を振りほどき、少女は男から距離を取る。
男はそれに、とても言い表せないほど動揺した。
「私は、私はこの手で壊したんだ………みんな、家族を、この手で」
「違う、違うっ。響が壊したんじゃない、俺が、俺が弱い所為なんだっ。響、頼む、俺はいい、俺だけはいいんだひび」
「やめろ近づくなっ」
それに男はふらつくように視界が歪む。
「響………」
「私は、私は」
響は静かに、その場から走り出す。
「ま、まっ」
その時、男はそれ以上何も、言えなくなる。
その場に崩れ落ち、首を垂れた。
何かに謝るように、誰かに謝るように………
もう一人の少女はすぐに友人を追う。
砂浜、夜の海、そこにうずくまる少女をすぐに見つける。
その少女は、彼と共にいた時のように、殻に閉じこもっていた………
出会ってしまった、出会いたくない出会い。
少女の闇が新たに顔をのぞかせます。
それでは、お読みいただきありがとうございます。