それは変わらなかった。
「貴様はなんだ」
「………またか」
呆れながら、変わらない男は変わらず答えず、ただ戦場を駆ける。
変わらない。危険な物を封印し、戦場を駆け、人知れず人々を救う。
だが誰も感謝しない、当たり前だ。どこの世界に、化け物に感謝する者がいる。
「オレのもとに来いっ、その力、その性質はオレの物だッ」
「断る………この力を誰かに渡す気は無い」
何度も繰り返し、時に途切れ、時に偶然再会する。
変わらなかった。男の考え………生き方………
また出会った時、その時………
◇
「世界を壊す、歌を聴けッ!!」
絶叫を使いながら、私達を追い続けるキャロル。
「なんで錬金術師が」
「七つの惑星と七つの音階、錬金術の深奥ため宇宙の調和は、音楽の調和、ハーモニーより通じる絶対真理」
先史文明時、人類は二つの道を選んだ。万象を知ることで通じ、世界と調和することが錬金術。
言葉を超えて、世界と繋がろうとしたのは歌。
「錬金術も歌も、根源としてはバラルの呪詛により、相互理解を失った人類が模索した知識。失われた統一言語を取り戻す為にある」
インカムから何かうめき声が聞こえる。了子の声。
「どうやら、先史文明の巫女はよく理解しているようだな」
「そんなところまで」
その瞬間、光がより強まり、一真が弾き飛ばされそうになる。
「強く握りしめるんだな一真。東京とはレイラインの中心部とも言える、そこから放たれる世界分解の力、お前を上回る前に弾かれては困る」
「テメェ、一真の力、万能の力を」
「当たり前だろ? その一万年も前の時代、統制者なる何者かにより授けられた力。錬金術、果ては異端技術全てを用いても、理解できないその不死性。それを知ることもまた世界を知ることだッ」
「ふざけ………!」
無数の攻撃を避けながら、向こうはエネルギーが無限なのか!?
「力が無限と思うか? 当たり前だ、オレの使う錬金術は本来、思い出の焼却を求める燃費の悪い品物だった。だが記憶を司る脳器官を再生させる一真の力が、オレのデメリットを極限まで下げている。このオレですら驚愕するほどになッ」
歌が響くたびに、光が強まり、それに口元を釣り上げる。
「不死と無限がぶつかり合い、いずれ不死を超えたときッ、オレは世界を知ることが、一真をオレの物として手元に置ける………誰にも邪魔は」
その時、光が僅かに揺れた。
「! これは」
光の陣を作り、僅かに顔をゆがめた。
「生きていたかドクターウェルっ」
『おあいにく様、シャトーのプログラムを書き換えてるんで、話しかけないでくれませんかねぇ』
「シャトーの、まさかッ」
『錬金術の工程は、分解と解析、そして』
「機能を反転し、分解した世界を再構築する気かッ。バカな、そんな運用に、シャトーが耐えられるものかっ、お前達ごと飲み込んで」
『そうッ、爆散するッ。嫌がらせってのは最高だっ』
◇
そんな話が聞こえた………
こんなに身体がおかしくなるのは何年ぶりだ?
【気を付けなよ。レンゲルのように、封印したつもりで僕に支配されないようにね】
コーカサスビートルアンデッド。
【ああ、いつもそうだ。君はそうやって、苦しむ。僕の心を満たす】
お前は異次元の、お前だけの世界に封印した。お前は、
【そう、君の幻聴さ。アンデッドの本能、戦うと言うね】
………
【君はなぜ、バカな道ばかり選ぶ? ほんっと、見ていて飽きない】
だから?
【しっかり世界を見たらどうだい? いまだ世界は戦いに、闘争に満ちている。僕らのバトルファイト。一万年に一度行われる戦いを強制的に終わらせても、戦いは終わらない。むしろ、悪くなってるよね?】
………
【世界のリセット、本当は世界を壊すことはもう決定していた。だけど君らが抗ったために、この世界はまだあり続ける。その結果が、あの子じゃないか?】
………
【あの日、世界が滅んでいれば、立花響は戦わずに済んだ】
………
【あの日、世界が滅んでいれば、風鳴翼は戦わずに済んだ】
………
【あの日、世界が滅んでいれば、雪音クリス、天羽奏は両親を失うことはなかった】
………
【あの日、世界が終わっていれば、暁切歌、月読調、カデンツァヴナ姉妹は犯罪者になることは無かった】
………
【あの日、全てが終わっていれば、小日向未来は、親友を失わずに済んだ。みんな君の所為だ剣崎一真】
………
【君が戦いの結果を変えたから、終わらず、彼女達が苦しみ、辛い道を進む。全部君の所為だ】
………
【そして君は彼女達を、敵、として見ている。当然だ、彼女達はアンデッドと戦う道具を使ってるんだからね】
………
【………何か言いなよ】
だからどうした。
【ッ!?】
そんなことは分かってるんだッ。
だけどそれでもそれを否定することを、俺にする権利は無いッ。
いまを生きている命全て、あの日終わっていればよかったなんて言う権利は、神だろうが万能の力を持つ俺だろうが、誰にも言う権利は無い。
それでもあの子達はいまを生きてるんだ。
キャロルも、生きてるんだッ
【!? 君は、まだ抗うのか。ここまで間違えているくせに、まだ間違いを】
それを決めるのも、俺じゃない………
それが罪と言うのなら、罰と言うなら背負ってやる。
それでも、決めるのは俺じゃない。いまを生きる、あの子達だ。
俺は、間違いだと分かっている。それでも、それでも俺は、俺は戦う。運命に、世界に、この生き方にッ。
俺は………
「俺は仮面ライダーだッ。消えろッ、俺はお前に、けして負けない」
【………せいぜい覚悟するんだ。お前の中にある限り、その力を解き放つ】
「なら俺は間違えない………その力で誰かの自由を守る………」
【なら守ってみせろ】
◇
「お願いやめて、ワタシとパパの邪魔をしないでッ!! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
その瞬間、世界が光に包まれた。
◇
「なに、が………」
光り輝きが、全てを包み、全てを吹き飛ばす。
シャトーの広間、パイプオルガンのようなものがある広間。ドクターウェルは気を失い、その左腕は元の腕に戻り、マリア、セレナ、調、切歌がいる中、キャロルを見る。
「お前、一真、な、にを、いったいなにをしたッ」
一人の男が、そこに立ち尽くしていた。
「全てを封印した、俺の中に、シャトー全ての機能を」
「!? そんなことも、可能なのか貴様」
その時、人の形態なのに一真から植物や動物、機械の身体。
もはやつぎはぎのように翼、腕? そのような異形を生やし、目の色も滅茶苦茶に輝く。
「お前、もう人の姿が保てないほど………」
「もうやめるんだキャロル、お前の命題、答えが違う」
「黙れッ、そんなわけあるものかッ。パパの命題の答えが他にある、違うなんてことあるものか! それならば殺されたパパの無念はどうなる! お前に分かるものか、何も知らないくせに」
「キャロル」
『錬金術の到達点は………世界と調和すること』
「! 言って無いッ、パパが、そんなこと言うものかッ」
どこからかエルフナインの声が響く。
『分かっていたはずだよキャロル………ボクの中にも、一真さんの記憶がある。キャロル、ボクらは、キャロルは一真さんの背中を、パパと重ねていたじゃないか』
「違うッ、やめろッ。そんなわけ、一真がパパなわけない!!」
『その一真さんを見て、いまの、響さんたちのために戦う一真さんを見て………答えは出たよキャロル。いや、キャロルはもう出ていたんだ、命題の答えを』
「黙れ、黙れぇぇぇぇぇぇぇ」
『だったらボクが代わりに回答する………命題の答え、パパの願いは』
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
『世界の調和、世界の仕打ちへの許し………そして』
―――キャロル。世界を知るとかそんなことを願ったんじゃなくって、お父さんは、キャロルには笑っていて欲しいんじゃないのか?―――
「ぁ………アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――」
涙を流しながら、キャロルは叫び声を上げる。
全てを失ったように、頭を掻きむしり、そして頭から手を放す。
「………まだだ」
その瞬間、無数の糸が一真へと巻き付く。
「キャロルっ!?」
「お前は世界だ一真………バトルファイト、世界の勝利者を決める全てッ、そうだ、お前が世界だ一真ッ」
片腕が切られ、全てが血まみれに斬れる。
「一真っ」
だが不死身の力故に生きていて、一真に接近するキャロル。
キャロルの腕に糸が集まり、槍のように鋭く、それが一真を貫いた。
「きゃ、ろる………」
「お前の全てを知れば、まだ命題が、パパの願いがッ」
だがそのまま静かに、キャロルを抱きしめる。
「!?」
「キャロル………ごめんな、やっぱり俺は………中途半端だ」
「な、にを」
「ずっとお前が苦しんで………一人で苦しんでいた………けど、お前が時々見つけてくれるのに………やっぱりおれ………あまえてたんだ………」
キャロルは糸の力を強める。
緑色の血が舞い上がり、どたどたと大量に落ちていった。
「ク、リスも………響も………ひとを捨てきれないから、いぞんさせてた………だけど、おれは」
「黙れ………黙れえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「もう運命から目をそらさないッ」
無理矢理力で吹き飛ばし、キャロルはまた突風を放つ。
だがその前に響が現れ、それを防ぐ。
「ガングニール装者っ」
「………」
切れた片腕がくっつきながら、一真は立ち上がる。
それと共に振り返り、その襟をつかむ。
「また、一人で抱えるのか、またなのか」
「響………」
キャロルを睨みながら、拳を構える。
「………私たちの方が、一真の優しさに甘えてたんだ」
そう背中を見せながら、
「一真、一真のおかげで、私はやっと立ててるんだ。だから見ててよ、一真が守った明日は、間違いじゃないんだ」
「何を言う小娘」
「一真の代わりに、私がお前を止めるって言ってるんだッ」
ギアが輝く、それはみんな同じだった。
「貴方だけだと思う?」
「一真さん、私達姉妹も、みんな同じです」
「響だけ、響一人になんかさせない!!」
「防人として、いま我々は羽ばたくッ」
「あんたには、まだ言いたい事、話したいことが山ほどあるんだあたし達はっ」
「一真だけが、誰かのために戦ってるんじゃないってこと、見せてやるッ」
「行くよ、切ちゃんっ」
「デースッ」
そして光が柱と成り、その中で、響は、
「………行くよ、エルフナイン」
一人だけそう、呟いた。
巨大な鼓動音が鳴り響き、一真から魔剣が解き放たれた。
◇
「なんだ………」
一人だけ明らかに違う光を放つ。エクスドライブが終わり、全員がそれに驚愕していた。
「………響」
「なんだこの光、イグナイト、いや違うッ。なんだ、なんなんだその光はッ!?」
「イグナイトッ、エクス!! ドラアァァァイブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
その姿は、魔剣ダインスレイフを鎧として纏い、色を、性質を全く異なるものへと反転させた。
長い髪をなびかせ、紅い瞳と金色の瞳を輝かせて、巨大な爪を持つ装者。
鎧のような上半身に、足を覆う獣の爪を模した鎧。
黒と白の翼を広げ、獣のように構えながら、拳を握りしめる。
「エルフナインがくれた、お前を止める、力だッ」
「ふざけるな………ここで、ここでオレに、このオレに奇跡を見せるか………シンフォギアァァァァァァァァァァァッ!!」
町中にアルカノイズをばらまくキャロル。
いま最後の戦いが、幕を開ける………
聖剣に引き続き、魔剣を目指させる響、覚醒。
393「長い髪、ワイルド響、いいっ」
ケンジャキ「おれ腕切られた」
それではお読みいただきありがとうございます。