戦姫絶唱シンフォギア/ブレイドッ!!   作:にゃはっふー

38 / 54
第11枚・歌姫の歌声

 それは変わらなかった。

 

「貴様はなんだ」

 

「………またか」

 

 呆れながら、変わらない男は変わらず答えず、ただ戦場を駆ける。

 

 変わらない。危険な物を封印し、戦場を駆け、人知れず人々を救う。

 

 だが誰も感謝しない、当たり前だ。どこの世界に、化け物に感謝する者がいる。

 

「オレのもとに来いっ、その力、その性質はオレの物だッ」

 

「断る………この力を誰かに渡す気は無い」

 

 何度も繰り返し、時に途切れ、時に偶然再会する。

 

 変わらなかった。男の考え………生き方………

 

 また出会った時、その時………

 

 

 ◇

 

 

「世界を壊す、歌を聴けッ!!」

 

 絶叫を使いながら、私達を追い続けるキャロル。

 

「なんで錬金術師が」

 

「七つの惑星と七つの音階、錬金術の深奥ため宇宙の調和は、音楽の調和、ハーモニーより通じる絶対真理」

 

 先史文明時、人類は二つの道を選んだ。万象を知ることで通じ、世界と調和することが錬金術。

 

 言葉を超えて、世界と繋がろうとしたのは歌。

 

「錬金術も歌も、根源としてはバラルの呪詛により、相互理解を失った人類が模索した知識。失われた統一言語を取り戻す為にある」

 

 インカムから何かうめき声が聞こえる。了子の声。

 

「どうやら、先史文明の巫女はよく理解しているようだな」

 

「そんなところまで」

 

 その瞬間、光がより強まり、一真が弾き飛ばされそうになる。

 

「強く握りしめるんだな一真。東京とはレイラインの中心部とも言える、そこから放たれる世界分解の力、お前を上回る前に弾かれては困る」

 

「テメェ、一真の力、万能の力を」

 

「当たり前だろ? その一万年も前の時代、統制者なる何者かにより授けられた力。錬金術、果ては異端技術全てを用いても、理解できないその不死性。それを知ることもまた世界を知ることだッ」

 

「ふざけ………!」

 

 無数の攻撃を避けながら、向こうはエネルギーが無限なのか!?

 

「力が無限と思うか? 当たり前だ、オレの使う錬金術は本来、思い出の焼却を求める燃費の悪い品物だった。だが記憶を司る脳器官を再生させる一真の力が、オレのデメリットを極限まで下げている。このオレですら驚愕するほどになッ」

 

 歌が響くたびに、光が強まり、それに口元を釣り上げる。

 

「不死と無限がぶつかり合い、いずれ不死を超えたときッ、オレは世界を知ることが、一真をオレの物として手元に置ける………誰にも邪魔は」

 

 その時、光が僅かに揺れた。

 

「! これは」

 

 光の陣を作り、僅かに顔をゆがめた。

 

「生きていたかドクターウェルっ」

 

『おあいにく様、シャトーのプログラムを書き換えてるんで、話しかけないでくれませんかねぇ』

 

「シャトーの、まさかッ」

 

『錬金術の工程は、分解と解析、そして』

 

「機能を反転し、分解した世界を再構築する気かッ。バカな、そんな運用に、シャトーが耐えられるものかっ、お前達ごと飲み込んで」

 

『そうッ、爆散するッ。嫌がらせってのは最高だっ』

 

 

 ◇

 

 

 そんな話が聞こえた………

 

 こんなに身体がおかしくなるのは何年ぶりだ?

 

【気を付けなよ。レンゲルのように、封印したつもりで僕に支配されないようにね】

 

 コーカサスビートルアンデッド。

 

【ああ、いつもそうだ。君はそうやって、苦しむ。僕の心を満たす】

 

 お前は異次元の、お前だけの世界に封印した。お前は、

 

【そう、君の幻聴さ。アンデッドの本能、戦うと言うね】

 

 ………

 

【君はなぜ、バカな道ばかり選ぶ? ほんっと、見ていて飽きない】

 

 だから?

 

【しっかり世界を見たらどうだい? いまだ世界は戦いに、闘争に満ちている。僕らのバトルファイト。一万年に一度行われる戦いを強制的に終わらせても、戦いは終わらない。むしろ、悪くなってるよね?】

 

 ………

 

【世界のリセット、本当は世界を壊すことはもう決定していた。だけど君らが抗ったために、この世界はまだあり続ける。その結果が、あの子じゃないか?】

 

 ………

 

【あの日、世界が滅んでいれば、立花響は戦わずに済んだ】

 

 ………

 

【あの日、世界が滅んでいれば、風鳴翼は戦わずに済んだ】

 

 ………

 

【あの日、世界が滅んでいれば、雪音クリス、天羽奏は両親を失うことはなかった】

 

 ………

 

【あの日、世界が終わっていれば、暁切歌、月読調、カデンツァヴナ姉妹は犯罪者になることは無かった】

 

 ………

 

【あの日、全てが終わっていれば、小日向未来は、親友を失わずに済んだ。みんな君の所為だ剣崎一真】

 

 ………

 

【君が戦いの結果を変えたから、終わらず、彼女達が苦しみ、辛い道を進む。全部君の所為だ】

 

 ………

 

【そして君は彼女達を、敵、として見ている。当然だ、彼女達はアンデッドと戦う道具を使ってるんだからね】

 

 ………

 

【………何か言いなよ】

 

 だからどうした。

 

【ッ!?】

 

 そんなことは分かってるんだッ。

 

 だけどそれでもそれを否定することを、俺にする権利は無いッ。

 

 いまを生きている命全て、あの日終わっていればよかったなんて言う権利は、神だろうが万能の力を持つ俺だろうが、誰にも言う権利は無い。

 

 それでもあの子達はいまを生きてるんだ。

 

 キャロルも、生きてるんだッ

 

【!? 君は、まだ抗うのか。ここまで間違えているくせに、まだ間違いを】

 

 それを決めるのも、俺じゃない………

 

 それが罪と言うのなら、罰と言うなら背負ってやる。

 

 それでも、決めるのは俺じゃない。いまを生きる、あの子達だ。

 

 俺は、間違いだと分かっている。それでも、それでも俺は、俺は戦う。運命に、世界に、この生き方にッ。

 

 俺は………

 

「俺は仮面ライダーだッ。消えろッ、俺はお前に、けして負けない」

 

【………せいぜい覚悟するんだ。お前の中にある限り、その力を解き放つ】

 

「なら俺は間違えない………その力で誰かの自由を守る………」

 

【なら守ってみせろ】

 

 

 ◇

 

 

「お願いやめて、ワタシとパパの邪魔をしないでッ!! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 その瞬間、世界が光に包まれた。

 

 

 ◇

 

 

「なに、が………」

 

 光り輝きが、全てを包み、全てを吹き飛ばす。

 

 シャトーの広間、パイプオルガンのようなものがある広間。ドクターウェルは気を失い、その左腕は元の腕に戻り、マリア、セレナ、調、切歌がいる中、キャロルを見る。

 

「お前、一真、な、にを、いったいなにをしたッ」

 

 一人の男が、そこに立ち尽くしていた。

 

「全てを封印した、俺の中に、シャトー全ての機能を」

 

「!? そんなことも、可能なのか貴様」

 

 その時、人の形態なのに一真から植物や動物、機械の身体。

 

 もはやつぎはぎのように翼、腕? そのような異形を生やし、目の色も滅茶苦茶に輝く。

 

「お前、もう人の姿が保てないほど………」

 

「もうやめるんだキャロル、お前の命題、答えが違う」

 

「黙れッ、そんなわけあるものかッ。パパの命題の答えが他にある、違うなんてことあるものか! それならば殺されたパパの無念はどうなる! お前に分かるものか、何も知らないくせに」

 

「キャロル」

 

『錬金術の到達点は………世界と調和すること』

 

「! 言って無いッ、パパが、そんなこと言うものかッ」

 

 どこからかエルフナインの声が響く。

 

『分かっていたはずだよキャロル………ボクの中にも、一真さんの記憶がある。キャロル、ボクらは、キャロルは一真さんの背中を、パパと重ねていたじゃないか』

 

「違うッ、やめろッ。そんなわけ、一真がパパなわけない!!」

 

『その一真さんを見て、いまの、響さんたちのために戦う一真さんを見て………答えは出たよキャロル。いや、キャロルはもう出ていたんだ、命題の答えを』

 

「黙れ、黙れぇぇぇぇぇぇぇ」

 

『だったらボクが代わりに回答する………命題の答え、パパの願いは』

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 

 

『世界の調和、世界の仕打ちへの許し………そして』

 

 

 

 ―――キャロル。世界を知るとかそんなことを願ったんじゃなくって、お父さんは、キャロルには笑っていて欲しいんじゃないのか?―――

 

 

 

「ぁ………アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――」

 

 

 

 涙を流しながら、キャロルは叫び声を上げる。

 

 全てを失ったように、頭を掻きむしり、そして頭から手を放す。

 

「………まだだ」

 

 その瞬間、無数の糸が一真へと巻き付く。

 

「キャロルっ!?」

 

「お前は世界だ一真………バトルファイト、世界の勝利者を決める全てッ、そうだ、お前が世界だ一真ッ」

 

 片腕が切られ、全てが血まみれに斬れる。

 

「一真っ」

 

 だが不死身の力故に生きていて、一真に接近するキャロル。

 

 キャロルの腕に糸が集まり、槍のように鋭く、それが一真を貫いた。

 

「きゃ、ろる………」

 

「お前の全てを知れば、まだ命題が、パパの願いがッ」

 

 だがそのまま静かに、キャロルを抱きしめる。

 

「!?」

 

「キャロル………ごめんな、やっぱり俺は………中途半端だ」

 

「な、にを」

 

「ずっとお前が苦しんで………一人で苦しんでいた………けど、お前が時々見つけてくれるのに………やっぱりおれ………あまえてたんだ………」

 

 キャロルは糸の力を強める。

 

 緑色の血が舞い上がり、どたどたと大量に落ちていった。

 

「ク、リスも………響も………ひとを捨てきれないから、いぞんさせてた………だけど、おれは」

 

「黙れ………黙れえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

「もう運命から目をそらさないッ」

 

 無理矢理力で吹き飛ばし、キャロルはまた突風を放つ。

 

 だがその前に響が現れ、それを防ぐ。

 

「ガングニール装者っ」

 

「………」

 

 切れた片腕がくっつきながら、一真は立ち上がる。

 

 それと共に振り返り、その襟をつかむ。

 

「また、一人で抱えるのか、またなのか」

 

「響………」

 

 キャロルを睨みながら、拳を構える。

 

「………私たちの方が、一真の優しさに甘えてたんだ」

 

 そう背中を見せながら、

 

「一真、一真のおかげで、私はやっと立ててるんだ。だから見ててよ、一真が守った明日は、間違いじゃないんだ」

 

「何を言う小娘」

 

「一真の代わりに、私がお前を止めるって言ってるんだッ」

 

 ギアが輝く、それはみんな同じだった。

 

「貴方だけだと思う?」

 

「一真さん、私達姉妹も、みんな同じです」

 

「響だけ、響一人になんかさせない!!」

 

「防人として、いま我々は羽ばたくッ」

 

「あんたには、まだ言いたい事、話したいことが山ほどあるんだあたし達はっ」

 

「一真だけが、誰かのために戦ってるんじゃないってこと、見せてやるッ」

 

「行くよ、切ちゃんっ」

 

「デースッ」

 

 そして光が柱と成り、その中で、響は、

 

「………行くよ、エルフナイン」

 

 一人だけそう、呟いた。

 

 巨大な鼓動音が鳴り響き、一真から魔剣が解き放たれた。

 

 

 ◇

 

 

「なんだ………」

 

 一人だけ明らかに違う光を放つ。エクスドライブが終わり、全員がそれに驚愕していた。

 

「………響」

 

「なんだこの光、イグナイト、いや違うッ。なんだ、なんなんだその光はッ!?」

 

 

 

「イグナイトッ、エクス!! ドラアァァァイブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

 

 

 

 その姿は、魔剣ダインスレイフを鎧として纏い、色を、性質を全く異なるものへと反転させた。

 

 長い髪をなびかせ、紅い瞳と金色の瞳を輝かせて、巨大な爪を持つ装者。

 

 鎧のような上半身に、足を覆う獣の爪を模した鎧。

 

 黒と白の翼を広げ、獣のように構えながら、拳を握りしめる。

 

「エルフナインがくれた、お前を止める、力だッ」

 

「ふざけるな………ここで、ここでオレに、このオレに奇跡を見せるか………シンフォギアァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 町中にアルカノイズをばらまくキャロル。

 

 いま最後の戦いが、幕を開ける………




聖剣に引き続き、魔剣を目指させる響、覚醒。

393「長い髪、ワイルド響、いいっ」

ケンジャキ「おれ腕切られた」

それではお読みいただきありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。