図書館で学生がテーブルを囲み、勉強する。
「ねえねえ聞いた? 噂の」
「ああ、噂の」
それは最近の噂。
「なんでも幽霊が出てるらしいよ」
「マジらしいな」
そんな噂が町に広まる。
「なんでも、テレビ局で………」
その裏で、ある男達が動き出す
◇
S.O.N.G.の本部にて、装者全員が呼び出され、風鳴弦十郎は静かに見渡す。
「全員そろっているな」
「司令、今日はどういったことで」
「うむ。マリアくん、翼なら耳に入っていると思うが………ここ最近、テレビ局、またはその関係各所にて、妙な噂が流れ出ている」
「噂って、幽霊ですか?」
「おいオッサン、いくらなんでも幽霊の一つや二つであたしらが出ることに」
「実はなっている」
そう聞き流そうとした雪音クリスはびくりと硬直し、立花響は青ざめる。
切歌と調はお互い抱きしめ合って、マリアは疑問に思う。
「ですけど、そう言った噂はよくあるんじゃないのかしら?」
「それが、そこに行方不明と言う単語が無ければ、我々も調査に動きません」
「!?」
緒川からそれを聞き、少しばかり話を聞くと、
「ここ最近、若手アイドルやアーティストの女性の行方が途絶えているんです」
「それは………少し聞いたことがあるわ」
「はい、我々のところでも調査したのですが難航しています。なにより」
「そのエージェントからの連絡が途中で途絶えた、故に我々が動くことになった」
「というと、なにか考えがあると」
「ああ、少々危険ではあるが」
◇
「それでは次の方」
「デース♪ 霧島翠デース」
「赤羽宇佐美です」
装者二人、暁切歌と月読調が偽名にて潜入調査。
アーティスト候補のオーディションに入り込み、囮捜査である。
その少し離れた位置で、二人組が建物の屋上から、オーディションの屋内を観察していた。
「彼奴ら大丈夫か?」
雪音クリスはそう呟きながら、飲み物を飲みながら、望遠鏡でその様子を覗き込む立花響。
「クリスちゃん、暑いね」
「言うなバカ、先輩らならともかく、あたしらが芸能事務所の中に入れないから、こうして見張るしかねーんだよっ」
そう言いながら、渋々望遠鏡などを持って見張る。
運悪くカフェなどは近くに無く、応募も年齢制限に引っかかり、こうして見張るしかない。
そんな二人のインカムからエルフナインから連絡が入る。
『お二人の様子はモニタリングしているので、熱中症になる前にアシストしますっ』
「できればぁ、こんな炎天下にいる必要のないアシストがよかったよ………」
◇
それは静かに近づく。
「しっかし、幽霊ね………」
疑問を呟くクリスに、響は嬉しそうに顔を覗き込む。
「あれれ~クリスちゃん、怖いの?」
「ば、バカ言ってるんじゃねぇッよっ。あたしはともかく、後輩達が心配なだけだしっ」
そんな楽し気な会話の中、それは近くに来た。
手に持つ青竜刀を構え、静かに近づき、そして………
≪チェンジ≫
光弾が見えない空間へ放たれ、爆発する。
二人の装者が戸惑う中、二射目が放たれた。
二人はそれに気づき、すぐに距離を取る。
「敵だっ、姿の見えない敵がいるっ」
そうクリスが叫ぶと、何か感電するように空間がズレ、何者かの姿が現れた。
「なっ」
「嘘だろっ!?」
『!? 未知のエネルギー反応感知っ、響ちゃん達のすぐそばですっ』
『なにをしてたッ、そこまで接近を許すとは』
「とはいうが、いきなり」
それと共に、風を纏い、ハートのような模様をモチーフにした者が唐突に現れた。
「な、なにが」
「青竜刀眼魔、貴様を封印する」
「援護は派手に任せろ」
その声と共に何者かがコインを弾丸のように放ち、クリスは驚き、次の瞬間、彼らは消えた。
「これは」
『いま感知しましたっ、錬金術によるテレポート。これはキャロルが最も使用していたものによる転移です!』
「なんだって!?」
『今そこで何が起きたっ』
「ええっと、変なスーツ姿の人と、唐突に変なものが現れて、何言ってるんだか全然わからないよ~っ」
◇
醒弓カリスアローを用いて、接近戦をしながら、森の中を走る。
「貴様っ、よくも邪魔を。なにより眼魔を探知できるのかっ!?」
「俺はジョーカー………人とは違うッ」
すれ違いざま、腰ベルトからカードを取り出し、振り返ると共にラウザーへと通す。
≪チョップ≫
斬ると共に手刀の一撃を同時に放ち、距離を取られてもすぐに身体をずらす。
その瞬間、無数のコインが弾丸のように命中する。
「がっ」
「貴様は少々地味過ぎる」
「フンっ」
カリスアローで敵を貫き吹き飛ばすと共に、カリスラウザーへ二枚カードを通す。
≪チョップ トルネード スピニングウェーブ≫
風を纏い、そのまま敵に手刀を叩き付ける。
距離が開いていたが、それでも大地を砕き、一閃の刃の如く、眼魔と言う敵を討つ。
「敵が地味過ぎた」
そうポーズを取りながら、一人の人形が静かに呟いた。
◇
「レイアのような攻撃、ですか」
「ああ間違いない」
クリスはそう言い、切歌を遠いところを見ながら、話し合っていた。
「キャロルの使用したテレポートジェムは錬金術師なら誰でも再現可能です。ですけど、レイアのようなものとなると」
「私は彼奴とガチで戦ったからな、彼奴の言い方や攻撃、間違いねぇよ」
「デス………」
「っていうか、切歌ちゃんはどうしたの?」
魂が抜けた顔で椅子に倒れ込む後輩に、二人は首をかしげ、周りは言いにくそうにしていた。
「う、うむ………知っての通り、例の事務所に我々の手を回すのはいささか危険と判断したため、本来のスペックで受けるしかなかったのだが」
「切ちゃん、第一審査で落ちちゃって………」
調が第一審査合格の紙を持ちながら、切歌は落選の紙を持っている。緒川が言いにくそうに、
「内容が若手アイドルで、求められるのが可愛い系の、家事などができるアイドルでして」
「あの子に家事関係は無理だったのよ」
「デスゥ………」
マリアと翼はとりあえずと区切り、クリスと響になんとなくスーツの男と、変なものを書いてもらったが、余計変なものになったとしか言えず、分からない。
そうした話をしていると、未来が入ってくる。
「こんにち、あれ響っ!? 服替えたの?」
「ほへ? なに言ってるの未来」
おやつなどを持って来てくれた未来は、妙なことを言う。
「なにって、フード付きの服着てたじゃない。私が声かけたんだけど、そのまま人込みの中に走って………」
「えっ? 私はずっとクリスちゃんと、これ書いてたよ」
「なにこれ???」
「いや、私も分からなくなったよ」
そんな会話の中、静かに歯車がかみ合い始める。
◇
「それでは第三審査お願いします」
(第三審査まで来ちゃった………)
私は月読調、正直この名前はF.I.S.で付けられたから、赤羽宇佐美の名前も少しの練習でどうにかこうにか、対応できました。
切ちゃんは時々反応が遅れた所為で落ちてしまいました、けしてデスデスやオヨヨ~の所為ではありません。
二次審査はただの食器洗いでした、正直簡単すぎで、翼先輩たちにコーチされたダンスなど、まだ披露していない。
ある程度の受け答えも、緒川さんから色々模範解答を用意してもらっている。これなら問題………
「赤羽宇佐美さん、少しこちらへ」
「はい?」
問題発生っ、急にプロデューサーの方々に呼び出された。
どうしよう………
「赤羽宇佐美さん、貴方は第三審査はそのまま横に置き、そのまま合格が会社関係全員の意見で決定しました」
別の意味でどうしようっ!?
「えっ、あの、歌や踊りの審査は………」
「それらはおいおい。赤羽さんの努力次第でどうにかできますからね」
と言う訳で私はこのまま囮捜査し続けるとアイドルになりそうです。
助けて切ちゃんっ。
◇
「オヨヨ~いま、調が助けを呼んでる気が」
「いま彼奴第三審査の踊りとかだから、それじゃね?」
「デスね、ステップ覚えるのが大変デスから」
そう言い、今度は外にカフェがあり、そこで某スタジオの前を張る。
「だけど、まずいことになったわね」
マリアはいまクリスたち、芸能人側ではない方に顔を出して、情報交換をしていた。
「なにがですかマリアさん」
「調べてみたんただけど、少しばかり行方不明事件が本当にあるみたい」
「それでなんで大事になってないんだ?」
クリスの疑問に対して、マリアは、
「まず彼女達は新米と言ってもアイドル、大事にすることはできないから、水面下で警察が動いてることも関係してるわ。むしろ隠さず、すぐに行動したから私達が動いてるんだけど」
「そうなんですか、それでなにがまずいんですか?」
「攫われた子が全員、調くらいの子が多いのよ」
それに立ち上がり、マリアを見る切歌。
「待ってくださいっ、なら調も狙われるかも知れないじゃないデスかっ」
「落ち着け、元々そう言うのが目的だろ」
それに切歌はあっと言う顔になる。だから響やクリスは活動外なのだった。
そして別のまずい点は、
「手口が全く分からないのよ、それも全部」
「全部ですか?」
「ええ。用意された部屋などにいたはずのアイドルが、煙のように消える。あるのは通気口などくらいだけど、入口になりそうなところは鉄格子があるから、防犯は問題ない」
「他にも部外者が入れる可能性も無いですか」
「そうよ、だから謎。攫う子も、どうやって連れ出したか分からないから」
こうして私達が悩む中、静かにスタジオを見守ってる。
例え落ちたとしても、ここまで来れば最終審査を見学できるため、もう調は仕事を終えていると言っていい。
それ以上の展開になっているとは、微塵も思っていなかった。
◇
「ど、どうしよう」
私はいま別室にいます。
一応緒川さんが用意してくれた衣装に着替え、合格メンバーによる、一時的なダンスと歌を撮るらしい。
その後アイドルデビューと言うものであるのだが、
「何で私がセンターなのっ!?」
そうなのだ、私がメインなのだ。
なぜなの切ちゃん、切ちゃんがいないのにこんなところに居られないよっ。
そう思っていると、扉が叩かれる。
それにはさすがに警戒する。私は行方不明事件の囮調査をしているのだ、いくらなんでも警戒は忘れない。
「赤羽さん、本番です」
「はい………」
もし変な人なら、緒川さんに渡された護身用アイテムでけん制する。
そして異端技術の使い手なら、ギアを纏う。
リンカーが無いから、騒ぎに気づくようにして情報を持ち帰る。それが作戦の流れだ。
声の主は女の人だが、けして警戒は怠らず、私は扉を開ける。
「?」
そこには誰もいない、廊下の左右、人、呼びに来たスタッフが………
「!」
その時、急に視界が暗くなり、次の瞬間………
◇
「………暑いな」
「なにも起きないね」
「………! 翼からよ」
マリアがスマホを取り、すぐに出る。
『マリア、そちらに動きはあるかっ』
「どうしたの翼っ」
『月読が楽屋から姿を消したっ、他にも数名。予想より此度は被害が多い』
「なんですってっ!?」
「調っ」
そして入り口を見るが、それらしい怪しい人物どころか、誰も出入りしていない。
「オペレーターっ」
『衛星からのカメラでマリアさんたちが監視している場所並びに、各方面からモニタリングしてましたが、人っ子一人行き来してませんっ』
「どういうこと!?」
「………! まさか、姿を消す奴が姿を消して出て行った」
『それでもエネルギーの反応が』
『! いえっ、エネルギー感知はもう一人の、スーツの方の攻撃を受けてから感知しましたっ。ボク達は始め、感知することもできていませんっ』
それに戦慄しながら、私達に冷や汗が流れる………
◇
「………あなたは誰なの」
「………」
私はいま、親友の手を掴む。
だけど親友はいま、任務でスタジオで調ちゃんを守っている。
なら、この親友は、
「私は」
そう静かに、フードを外しながら、
「剣崎響、完全聖遺物の力を借りて平行世界から来た、ガングニールの装者だよ」
その時、二人の女性が現れた。
一人は分からないけど、もう一人は、
「奏さん………」
私は驚きながら、響は獣のように鋭い目つきで、スマホ画面を見て口元を釣り上げた。
「悪いけど、今回の事件の犯人と、それを追う知り合いが動いたから、話はここまでだ」
そう言い三人はギアを纏う、ガングニールの二人の装者に、アガートラーム?
彼女達は静かに動き出す。
あの親友は知っている。私が側にいなかった、平行世界の響だ。
だけど、
「剣崎って、どういうこと響………」
そう呟き、私は急いで司令さんたちに連絡をした。
剣崎響「けど未来はよく私を見つけたな」
奏「早くしろっ、見失うぞ!」
セレナ「本気走りでどうして追いついたんだろう………」
お読みいただきありがとうございます。