暖かな日だまりに向かう少女。
だが闇に潜むモノは………
響は座り込み、静かに睨んでいる。
あの後別れた後、しばらくして拾って帰ったら凄いことになった。その後はこうして無駄に時間が過ぎていった。
そして視線の先にいる、一人座り込む少女は静かに睨み返す。
そこに、
「邪魔するぞ」
そう言って買い物袋片手に、雨の中やってくる。弦十郎さん。
「こりゃまた、大変だな」
「ええ………」
あの後、クリスを拾って帰り、こうして寝床はギスギスした空間になった。
クリスと響は睨み合いながらも、寝床の廃屋で俺と共にいる。弦十郎はそれを知りながら、静かに食べ物を持ってくる。
お弁当の割りばしを割ったり、カップラーメンを取り出し、慣れた手つきでお湯を沸かす響。キャンプ用のコンロを使いながら、クリスは俺の様子を見ながら、菓子パンを食べだす。
「君は、彼女も助けたのか」
「これでも何発も撃たれた」
「一真を傷つけていいのは私だけだ」
「アァ? なに言ってるおもらし女、一真を殺していいのは私だけだ」
「ウェイ!? サギンノコハオバイ!?!」
拾って連れて来た時は、真っ先に刺された。なぜか鋭利な刃物を持ってた響、その後はクリスにも撃たれた。なぜか睨み合いが始まった。
来る人も増えた。未来ちゃん、響の親友。その子から、
「俺のことは虎太郎が残した本で知ったんだったな」
「ああ、君の仲間か」
「………」
静かに頷きながら、思い出す。
最初の戦い、俺がまだ人間だった頃。BOARDで仮面ライダーブレイドとして戦い、ジョーカーになった、始まりの戦い。
「俺は数年間、始。始まりのジョーカーと別れ、烏丸所長らが、封印したハートの2以外のカードを保管して、全てが終わったはずだった」
「ハートの2?」
「始祖ヒューマンアンデッド。人間の始祖だ………始、53体目のアンデッド、ジョーカーはそれで人間の身体を保っていた」
だが、一向に戦いを始めないアンデッドに対して、54体目を世に出した。
54体目、アルビノジョーカーの出現。それに一度戦いが再開しかかった。
「その戦いじゃ、巨大な力を秘めた存在を復活させて、俺達を倒し、封印されたアンデッドを開放するなりして、アンデッドを一体にしようとした」
「その戦いは」
「なんとかバニティカードという、それを呼び起こすカードを利用してそれで封印した。アルビノジョーカーもその時に封印した」
だが、それだけで全てが終わらないことが、その時に知ってしまう。
「モノリスや統制者は戦いを望んでいます」
このままじゃ俺か始、どちらかが最後の一人に成るまで戦うか、封印されたアンデッド達、ヒューマンアンデッドを開放するしかない。
「だけどもうヒューマンアンデッドの勝利も、この世界じゃ、もう現人類の破滅が決定してます」
「それは本当かっ!?」
「本当だよ、新しく人類を作る。それが統制者って言うシステムらしいよ」
「だからヒューマンアンデッドの封印を開放して、一真達ジョーカーが封印されても、意味が無いんだと」
そう言いながらご飯を勝手に作り、食べ始めている少女達。この二人にはもうすでに昔話として話している。弦十郎は静かに聞きながら、
「それで君は、バトルファイト関係全てを、自分の中に封印する選択を選んだのか」
「ああ、それしかもう、バトルファイトを起こさせることを止めるためにも、これしか無かった」
元々、自分はアンデッドとの融合、適合率が高く、アンデッドになった。
ならば、アンデッドジョーカーになった自分は、ありとあらゆるものへ適合し、融合することができる。
ライダーシステムのそれと、さらにアルビノジョーカーが使った生贄を封印するカード。バニティカード、それに目を付けた。
「バニティカード、アルビノジョーカーが邪神復活に使った力、アンデッドじゃないものをカードに閉じ込める力。そこから思いついた、全てを俺の中に封印し融合するって」
だからこそ、バニティ、ライダーシステムによる融合。これにより、橘さん、睦月からカードを奪い取り。ダイヤとクラブを取り込んだ。
「スピリット、人間の始祖とは一度、話はついていた。アンデッド化の影響で、テレパシーみたいにね。その後は万能の力で人の姿、相川始の姿を彼奴に渡す算段はついた時、モノリス、統制者はアンデッドの封印を一体だけ解き、世に出した」
それを察して、もうこの手しかないと思い、それを封印した後、行動に移った。
ダイヤ、クラブのカードを取り込み。最後にジョーカーが持つカードを取り込む。
「戦いに俺が勝ち、始を封印しようとするモノリスから、統制者が持つ万能の力を奪い取る。それが目的だった」
「君は………」
あの日、みんなの顔は、人間の意識がある間は忘れられないな。忘れるためには、獣になるしかないほど、鮮明に焼き付いた。
俺は仲間たちを裏切った。その事実だけは変わらない。
「力を利用して、俺は万能の力、統制者の力、アンデッド達の力を手に入れた。始には、人の姿を与え、ジョーカーの力を俺は奪い取った」
「なぜ君はそこまで?」
「………始には、人として過ごす過程で、大切な人ができた。ジョーカーのままじゃ、彼奴はその人達と別れる日が来る。普通よりも早い、別れが………」
それを認めることはできなかった。
彼奴は、栗原家のみんなと生きるべきなんだ。
これは俺の勝手な願いだ。それでも、俺にとって叶えて欲しい、小さな思いだ。
「始は人の中に生きるべきだ………彼奴が、人間を愛した彼奴の、小さな願い。人間を愛した彼奴は、人間の中に生きてて欲しかった」
「………相川始と言う、仲間の人生のために、君は君の人生を捨てたのか?」
「………彼奴は最後まで、俺の名前を呼んでいた………」
きっと許してないだろう。こんなことをした俺を………
それから海底の、深海で隠れるようにしたな。地上では仲間が探しに来そうだったから。
時々地上に出たりして、分からないくらい時が過ぎたとき、海底探索の気配を感じて、渋々移動した。
その後は、もう本能に近い。
誰かのために戦う本能、ジョーカーとして戦う本能が混じり合い、戦っていた。
仮面ライダーとして、ジョーカーとして、ただ人を守ると言う戦いをしていた記憶しかない。
危険物を自分の中に封印したりもしたが、なにがどう危険なのか分からないことが多い。本能で危険なもの、ことだと思ったからだ。
「その時クリスを助けて、クリスに今の世界を聞きながら五年過ごした。その後は国連にクリスを任せたはずだった」
「………ふん」
ご飯を食べながら、食べ終えて毛布にくるまる。その様子に残念がる弦十郎。
「俺はその子、雪音クリスの保護を命じられていてね。装者候補として彼女の名前が挙がっていたからな」
「………連れていく気か」
「いや、無理に連れて行って、君達と敵対する気は無い。一真くん、悪いが」
「別にかまわない、この子の面倒も見るよ」
「すまない」
こうして弦十郎は、
「ああそれと、響くん。未来くんが携帯ぐらいは持ってほしいと言っていた」
「………そ」
そう言い、こっちも毛布にくるまる。
その様子に何も言わず、今日は帰っていく。
だが二人して後で殴ってきた。ナジェ!?
◇
食い物の買い物に出てた彼奴と出会った。
「一真っ」
「………奏か」
たまたま出会ったため、そのまま連れ歩く。
近くの公園に、ベンチに腰掛けながら、静かに買い物袋などを見る。
「大買いだな」
「響もクリスも食う方だ………響は最近、欠片の侵食が少し早い。変に感情が不安定だと、進行が普通の状態でも酷い」
「そうなのか」
少し立ち上がりかけたが、それを抑えられた。
「安心しろ、俺の中にある力で、初期化させているし、最近は安定してる」
「なら、いいんだが………」
そしてしばらく一真を見る。
「あんたがあの日、私や他の観客を守ってくれたんだよな」
「………分からないな、それで悲しみの連鎖は消えなかった」
「それはお前の所為じゃないっ、あたしが、あたしが時限式だから………響の傷だって、あたしがしたようなもんだ」
そう言う中、一真は何も言わない。
「事実は変わらないな、だけど未来は、運命は変えられる」
「………そう思うのか」
「俺は終わらない戦いを終わらせたり、彼奴、始を救えたと思ってはいるよ。勝手に決めつけてはいるけどね………俺は人間の中で大切な家族を得た彼奴や、他の仲間達に、明日を作れたと思っている。それだけは、信じられる」
「………強いな」
「響やクリスのおかげだ………俺の手を握ってくれた」
その時、僅かにジョーカーの姿がブレて見えた。
あの姿、いまの姿が本当なんだろうが、
「………戻る気は無いのか」
「戻ることはできない、俺の中に、全てを封印してるんたから」
それを聞き、それは永遠にこのままだと言っているようなものだ。
だから、
「だから俺はあの二人を助けられたし、奏ちゃん達も助けられた」
「………あんたは」
「俺はこの手が振り払われてもいい、もう人間じゃないから………だけどやめられないんだ。どうしても、俺は人間であった時の、あの温もりを守りたい」
そう言った彼奴の顔がまっすぐで、あたしは僅かに心が温かくなる。
そうか、だからあの二人はこいつを慕うんだ。
こいつは人を信じて、愛してる。
愚かでも、こいつは人間の心を持っているんだ。
「………頼みがある」
「頼み?」
「今度翼とコンサートするんだ、あの日の、あの会場で」
「! それは」
「頼む」
あたしは決意する。あたしは、あたし達は前に進みたい。
だから聴いてほしい。響に、クリスに………
(なにより、こいつに届けたい。あたしの、あたし達ツヴァイウィングの歌を。絶対に長い時間の中でも歌われる。こいつを支える歌を、あたしは歌いたい)
私は静かに、決意した。あたしの、進みたい、羽ばたきたい世界を………
◇
「「一真がいるなら」」
それが二人の答えであり、奏に会ったことを言うと二人して攻撃してきた。ニャンデ!?
会場では同じように呼ばれた未来ちゃんと出会い、友達と紹介される。
響は嫌々な顔をするが、三人の友達は気にせず、クリスも挨拶されていた。
俺のことも気にせず、挨拶する三人。
(コンサートか)
あの日、全てが変わった。
あの日、忘れられない傷が多くの人々の人生を狂わせた。
それでも、前を向いて向き合うと、決めた者達だっている。
(俺は)
その瞬間、身体の中が騒ぎ出す。
「また、かぁ………」
俺はアンデッド、その身体は闘争本能でできていて、何かと戦い続けることが生命維持のように求めている。
戦わないことは呼吸しないことであり、俺は怪物である証。
「キングで早く倒したのに、まだ無理矢理、ギルドラウズの力を使った反動が」
未来ちゃんを助けたとき、安定したと思っていた。ちゃんと制御するように、手順通りにギルドラウズカードの力を使用したから、問題ないと思ったが………
「敵なんて、そう、都合よく………!」
都合よく、感じ取った気配に気づき、僅かに黙る。
ノイズが大量に現れ、警報が鳴り響く。
「タイミングが良いのか悪いのか………」
身体がふらつきかけ、いまジョーカー化はまずい。
だがこの大量のノイズの進行を止めなければ、コンサートが中止になる。
ならば、やるべきことは一つ。
≪エボリューション≫
13のカードが舞い上がり、身体の中に入り込む。
立ち止まる気は無い。幻でも夢でも………
ワイルドカリスの姿で、ノイズの群れに飛び込んでいく。
無数のノイズの中、無双する。
≪チョップ≫
腕の一振りが、無数のノイズを吹き飛ばしながら、ワイルドスラッシャーを醒弓へ変えながら、全てを貫く。
「コンサートの邪魔はさせないッ。始っ!!」
13のカードが舞い上がり、一つのカードに変わる。
≪ワイルド≫
ワイルドサイクロンを放ちながら、波のように押し寄せたノイズを吹き飛ばす。
その様子を見ながら、静かに煤を見る。それでも一向に数は減らない。
「このタイミングでこれか」
二課の人達には声をかけているとはいえ、速い段階で倒さなければいけない。
そう思う中、巨大なノイズが三体も現れ、小型も群れがまだ建物の物陰から這い出て来る。
「………なら、橘さん、力借ります」
瞬間、左腕にラウズアブゾーバーが現れ、ベルトが変わる。
『ターンアップ』≪アブゾーブクイーン エボリューションキング≫
瞬間、爆炎の輪が放たれ、燃え上がりながら飛び立つ昆虫。
13のカードがダイヤのレリーフに収まり、装甲と一体化、火の粉をまき散らしながら、大銃。重醒銃キングラウザーが炎の中から現れる。
巨大な刃を持ち、静かにカードを広げる中、ノイズが槍のように向かってくるが、炎のバリアが発生し、それだけで防ぎ、突破されても、その装甲は貫けず、砕けた。
炎を巻き上げながら、昆虫のような羽根を広げ、空を飛びながら五つのカードを取り出す。
≪ダイヤⅩ J Q K A≫
アラームのように炎が音を鳴らし、昆虫の羽根に集まり、グリップを持ち、固まっている位置を狙いながら、構える。
五つのカードが飛び交い、銃口の周りを浮遊する。
≪ロイヤルストレートフラッシュ≫
瞬間、炎は輝きと成り、全てを飲み込んだ。
◇
熱気が漂う中、静かに下りるそれを、静かに見つめる二課。
「キングフォーム………これって」
「ギャレンのキングフォームだろう。あの本にも本来キングフォームは、Kのカードを軸に、ライダーシステムを強化するのだから、ブレイド、カリスの他に、ギャレン並び、レンゲルにもキングフォームがあっても不思議ではないか」
「そう考えると、それを凌ぐジョーカーと言う力。少々興味深いわね」
「了子くん、だからと言って、無理に彼を見ようとするのは」
「わかってるわよ弦十郎くんっ♪」
そう微笑みながら、
(ただ普通に検査したところで、数多くのDNAしか検出されないのだから、意味が無いか………)
融合症例第一号の他に現れた、始祖の全てを内に秘めた生命体。剣崎一真。
彼の経歴、過去はあまりに興味深い。
(あの方が現れる前か後か、私の興味はそこに尽きる)
あれはあの方が用意したシステムなのか、一体何なのか。
ああ………
(必ず手に入れる、そして必ず、バラルの呪詛を………)
◇
「途中からいなくなった」
「………悪かった」
「許さねぇ」
そう言い、廃屋のアパートに戻ると、目に輝きが無い二人がいた。
「響、ご飯作るけど、なにかリクエストある?」
「食えればなんでもいい」
「もう、そう言うのは駄目だよ。一真さんは戦った後だし、少しボリュームあってもいいよね? 電気と水道来てますか?」
「来てなかったらこれ使おうぜ、コンロがあるんだから鍋だ鍋」
「奏、なぜ私は離れた位置に置かれてる?」
なぜかほぼ全員いる中、響は呆れ、クリスもなんでこうなると言う顔で、一真を放さない。
奏もそれに、
「あたしらの歌聴かなかったからな、あたしらの料理食えよ一真」
「俺は、食わなくてもいいんだが」
「元人間なんだろ? そういうの無くすなよ、とりあえず適当に切って入れればいいかな野菜は」
「小日向、奏。私も」
「翼、お前は三人がどっか行かないように見張りだ」
「分かった、分かったが、釈然としないのは気のせいか?」
その後、女の子が男の人と一緒過ぎると未来が響に文句言うが、気にせず流す響。
クリスもまた流しながら、奏はまあまあと未来を落ち着かせ、翼は目を泳がせる。
鍋を食べながら思うのは、こんなわいわいした食事は、いつ振りかと思いながら、
「………」
もう自分はいらないかと、二人を見ながら、そう思った………
選んだのは自分。
責められると知りながら、裏切りと知りながら、選んでしまう愚かモノ。
その選択は、変わらない。
お読みいただき、ありがとうございます。