奴らは時として牙をむき、君達を襲ってくる。
「拙僧は一度として悟った事は無い」
新しくやって来たサーヴァントの、
強面の僧侶親鸞さんは、彼を尊敬するのエレナ・ブラヴァッキーを愕然とさせた。
「どうしてっ!? 日本ではあなたを知らない仏教徒はいないとまで言われるあなたがどうしてそのような事を」
「この身が今を以って尚、未熟の極みにある故に。才の欠片も無い故に」
何処か希望に縋る様なエレナを叩き切る様に言い放つ男、親鸞。
彼はあの、浄土真宗の祖である。
「…あらゆる苦行を天才的に踏破したあなたが悟りを開けないというのなら、私が視た悟りは何だって言うの?」
「…それが悟りであるかどうかは拙僧には判断できない。拙僧にできるのは御仏の御名を唱える事だけ」
そう、それが親鸞という男だった。
若き齢から仏道に入り、秀才的な才覚であらゆる修行を積み、しかしとて満足をしたことは一度たりともなかった。
そして求道者としての飢えに苦しんでいた時、彼の師となる法然が言葉を説いた。
「これだけやって来たのにどうして悟れないか、苦しんでおるな?」
「あっ、貴方はっ!?」
「儂は法然。そなたのその苦しみは――――――所詮ただの驕りに過ぎぬのよ」
その時、親鸞はこれだけやって来た自分なら悟れるはずだという驕りに気が付いた。
そしてその様では悟りには程遠いと。
ならば――――――――――――――
「では、どうすれば悟れるというのですかっ!!」
親鸞は慟哭した。
それは奇しくもエレナや他のもの達が彼に縋った言葉と同じだった。
それ故に、その言葉を思い出した親鸞はエレナに師の言葉をそのまま伝えた。
「儚い人の身には所詮限界がある。愚かな人の智には所詮限界しかない。
ならばこそ、驕りを棄てて御仏のお救いに縋る他は無いのですよ」
そう語る彼の背後からは、どこかこの世の理を超える何者かの力が溢れているような気がした。
…。此処までならば只の良い話だった。
彼は所詮未熟な人の子。自称する通りならそう言うお話だった。
だが、今ゲーティアの神殿で無限に蘇る魔神達を相手に無双しているお坊さんを見ながらだとその言葉がどうでも良くなる。
「御仏に感謝拳ッ!!」
一体の魔神が身体を突き破られて消滅した。
「御仏に感謝竜巻蹴ッ!!」
三体の彼を囲んでいた魔神が身体を細切れにされて消滅した。
「御仏の無限光に超感謝ッ!!」
凄まじい光が世界を焼いていく。阿弥陀仏の語源たる
うん、これで悟りには程遠いってどんだけさ。そう言いたくなるのは解る。
きっと法然や親鸞の悟り基準は根源の向こう側辺りにあったのかも知れない。
自分が見つけた悟りに急速に自信を無くしていくエレナの気持ちが誰もが理解できた。
仏教に詳しい彼女だからこそ、こんなスーパー仏道人な親鸞が自分でさえ未熟だと言った時にショックを受けたのだろう。
僕も今まさにショックを受けている。
「拙僧の様な者には地獄をおいて居場所はあるまい。
さあ、地獄の悪鬼どもよ、御仏の教えに帰依するが良いっ!!」
周囲を仏具が高速で回転しながら絶対の防御を構築しながら、その中から聞こえてくる木魚の音が、
物理的な斬撃となって魔神達を倒していく。
…いや、寧ろ
そんな気がする。
仏教徒のサーヴァント達も熱狂的に親鸞を応援している。
そんな親鸞は自分では無く御仏を崇めなさいと、ズバッと諌め、
皆の『南無阿弥陀仏』の合唱で御仏の力を呼び出した。
「「「「「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」」」」」
その願いは輪廻の果てを光の無量大数倍速く駆け抜けて、
極楽浄土の中央から、超合金御仏DXを召喚した。
その超合金御仏DXは凄くいい笑顔でゲーティア達の方を向いた。
其れだけでゲーティア達は綺麗に成仏し、
世界は御仏の救いで再び、生きるに苦しく、それでも愛と勇気と優しさの絶えない何時もの日常を取り戻した。
おしまい。
そう、救われるのさ。南無阿弥陀仏ならね。