ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~焔の子~ 作:早起き三文
「ロプトの柱一つにつき麦一万ガット……」
シアルフィの領主シグルドは険しい顔で小高い丘の上から呟く。
「二つなら二万ガット……」
シグルドは自嘲する。
「天との取引であるよ……」
柱に括り付けられ、足元から火を焚き付けられる村人の姿を冷酷に見ながら、シグルドは乗騎の踵を返そうとした。
「シグルド様」
配下の騎士がシアルフィ公シグルドの元へとやってきた。
「申せ」
「基準以上のロプトを立てている者がおりました」
「首を取って参れ」
「すでにアレクとアーダンの部隊が」
「うむ」
シグルドは城へと戻ろうとする。
「ああ、それと……」
「ん?」
「北方の街道で旅人が野盗に襲われているようであります」
「ふん……」
シグルドはしばし考える。
「その野盗を生け捕りにせよ」
「ロプトに……?」
「ロプトの血を引かなくとも、少しは効果があるであろう」
「はっ……」
赤い鎧を纏ったその騎士は数人の部下を連れて、北の街道へと駆けていった。
「ふん!!」
レックスの聖斧スワンチカが野盗の剣ごと身体を切り裂く。
「しゃあ!!」
野盗が弓矢をレックスに放つ。
レックスはその矢を避けようともせず、斧を構える。
キィン……!!
乾いた音がして矢がレックスに触れる直前に地面に落とされる。
「それがスワンチカの加護か……」
レックスの隣にいるアゼルが呻く。
「不死身の斧だ」
レックスはそう言いながらも、慎重に野盗との間合いを詰めていく。
野盗が獲物をレックスに振るう。
ガッ!!
三人の野盗の武器の内、一つを無効化できずに、レックスの鎧から火花が散る。
「しかし、無敵ではないのだ」
レックスのその言葉を聞きながら、アゼルは火線の術を野盗に放つ。
火の閃光が野盗の胸を貫く。
シュウウゥ……!!
遠くから雷光がアゼル達を襲う。
「雷光の魔法か……!!」
アゼルは火球を飛ばしてその雷光を迎撃しようとするが、雷光に打ち負かされる。
バァン!!
スワンチカの前で雷光が消散する。
「魔法も防げる」
が、レックスの額からは血が流れ落ちる。
「そうそう上手くはいかないがな……」
アゼルは兄からもらったファラの炎を懐から取りだし、素早く術を唱える。
ファラの炎がアゼルの頭上で巨大な火球を生み出す。
「せぇあ!!」
アゼルはその火球を術使いの野盗へ投げかける。
野盗は雷光で迎撃しようとするが、雷光は巨大な火球に飲み込まれる。
ズァ!!
火球が野盗の身体を消滅させる。
「ファラの書か?」
「兄から少し分けてもらった」
アゼルは得意そうに胸をはる。
「あれなら、不利な雷光の術も関係ない」
「強すぎるだろ……」
ちいさなクレーターになっているファラの炎の爆心地を見ながら、レックスは呆れる。
野盗達が撤退していく。
「怖じけづいたか?」
「それもあるが……」
レックスの言葉にアゼルは接近してくるシアルフィの騎士達の姿を指差す。
「シグルド公の手の者か」
「だね……」
その騎士達はアゼル達の前で止まった。
騎士達に案内をうけながら、シアルフィの街道を行くアゼル達。
「ロプトの柱がやはり多い……」
柱に括り付けられた人間の姿を見ながら、アゼルは顔を伏せる。
「仕方あるまい……」
赤い鎧を着けたシアルフィの騎士は溜め息をつきながら答える。
「こうすれば、次の年の豊作が約束される」
「……」
アゼルとレックスは無言で街道を歩いていた。
「何故、ロプト教団や古のロプトの血を引くものの方が作柄がよくなるのだろうか……」
「さあな……」
アゼルの言葉に騎士は投げやりに答える。
「ナーガの意思か?」
レックスが呟く。
「その言葉はグランベルでは重罪にあたるよ、ドズルのご子息」
騎士が注意をする。
「ふん……」
レックスはそれきり黙っていた。
「アゼル殿」
シアルフィの王城でシグルド公が訊ねる。
「ディアドラは元気か?」
「元気ですよ……」
「ふふ……」
アゼルの不機嫌そうな声の理由が解るシグルドは微笑む。
「アルヴィスもあの女の魔性に惑わされたか」
「笑い事ではありませんよ、シグルド様……」
その言葉にシグルドは再び笑う。
「そうそう、アゼル殿」
シグルドが思い出したように話し始める。
「ロプトゥスとか言うマムクートがお前に会ったらよろしくと言っていたぞ」
「彼女が?」
「無断でロプトをやっていた者を愉しげに始末しておったわ」
「ふぅむ……」
アゼルはその竜人の女の顔を思い出しながら訊ねる。
「彼女はどこへ?」
「エッダへ行くと言っていた」
「ならば、好都合です」
「お主達もエッダへ?」
「クロード大司祭に会いに」
アゼルの言葉にシグルドは無言で頷く。
「よい知恵をもらえると良いな」
「兄はあまり期待しないようにと言っておりました」
「そうであるな……」
シグルドは深い溜め息をつきながら、呟く。
「我もロプトをやり過ぎて……」
シグルドは無表情で話す。
「とうに心が無くなったわ……」
苦笑いをしながらアゼルに微笑むシグルド。
「バーハラやアグストリアの者に比べてはシグルド様はまだまともでありましょう……」
「そう言ってくれると助かる」
シグルドは玉座から立ち上がり、政務へ戻ろうとした。
「また、いつでも来るとよい」
「はい……」
アゼル達も玉座の間から去っていった。
「馬車で行くのか?」
シグルドの配下の重騎士が疑問の声をかける。
「エッダまでは平穏でありましょう」
「どうかな……」
重騎士の隣にいる、緑の鎧を纏う細身の騎士が呟く。
「問題があるか?」
レックスが訊ねる。
「あの街道も決して安全ではない」
「そうか……」
「護衛がいるかな?」
騎士が申し出る。
「いや、なんとか無事にやり過ごす」
「強気だねぇ……」
細身の騎士が感心したように口笛を吹いた。
「ではまた……」
「お元気で……」
アゼル達とシアルフィの騎士たちは別れの挨拶をした。