ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~焔の子~   作:早起き三文

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第5話 アグストリアの吟遊詩人

「うわっ!?」

 

アゼルが地面に落下する。

 

「きゃあ!?」

 

ティルテュがその横に落ちてきて、さらにその上にクロードが乗りティルテュを押し潰す。

 

「司祭様!! 重い!!」

 

ティルテュが地面に顔を付けながら、クロードに文句を言う。

 

「あいたたた……!!」

 

少し離れた場所にレックスが落ちている。

 

「ん?」

 

アゼルは自分の手に何か柔らかい物を掴んでいる事に気づいた。

 

「うわっ!?」

 

アゼルの下に若い娘が横たわっている。かなりの薄着の女である。

 

「何やってんのよ!!」

 

その踊り子風の娘は怒りに震えながら、胸を掴んでいるアゼルに強烈な平手打ちを放つ。

 

バァン!!

 

平手に吹き飛ばされたアゼルは何が起きたか理解できないまま、地面に倒れこんだ。

 

「な、何だよ!?」

 

倒れこんだままのアゼルに近づく足音がする。

 

「手前!!」

 

吟遊詩人風の男がアゼルに剣を突き出す。

 

「うわっ!?」

 

アゼルは慌てて腰の剣を抜く。

 

カァン!!

 

一合合わせただけでアゼルの剣はあらぬ方向へ飛んでいく。

 

「レヴィン!! そのマセガキをやっちまえ!!」

 

踊り子風の女が囃し立てる。

 

「くそっ!!」

 

アゼルは熱風の術をその男に放とうとする。

 

「ふん、術師か」

 

レヴィンと呼ばれた男は鼻で笑うと、その唇を少し動かした。

 

「うわっ!?」

 

アゼルの熱風の術が反射され、その熱さにアゼルは顔を手で覆う。

 

「シャツァ!!」

 

男が一声叫んだと思うと、一陣の風がアゼルの脚にまとわりつく。アゼルは尻餅をついて転んだ。

 

「甘ちゃんだな……」

 

吟遊詩人の男はそう言い、アゼルの目前へ剣をちらつかせる。

 

「おい、そのくらいでいいだろう?」

 

レックスが男に詰め寄る。

 

「ふん……」

 

男は不愉快そうに言うと、剣を腰に戻した。

 

「レヴィ~ン……」

 

踊り子の女が不満そうに男を睨み付ける。

 

「許してやれ、その小僧を」

 

「ちっ……」

 

踊り子は転んでいるアゼルに軽蔑の目を向けながら、吟遊詩人の男に近寄る。

 

「命拾いしたね、マセガキ」

 

踊り子の女がアゼルに舌を出す。

 

「全く……」

 

レックスがぶつぶつ言いながらクロードに文句を言う。

 

「ここはどこなんだよ……」

 

レックスは辺りの森を見渡して呟く。

 

「アグストリアだよ」

 

吟遊詩人の男が冷たく言い放つ。

 

「アグストリア!?」

 

ティルテュが呆れたように叫ぶ。

 

「司祭様ぁ!!」

 

「ははは……」

 

クロードは頭を掻きながら苦笑いする。

 

「どうやら、ワープの転送ミスのようだな」

 

レヴィンと呼ばれた吟遊詩人風の男は冷たく笑う。

 

「バカな奴ら……!!」

 

踊り子風の女は嘲笑いながら、倒れたままのアゼルの頭を軽く蹴る。

 

「おい!!」

 

アゼルは立ち上がり、女を睨み付ける。

 

「何だよ、痴の漢の坊主?」

 

「く……」

 

黙りこんだアゼルに変わり、ティルテュが娘に掴みかかる。

 

「こいつをバカにして良いのは、あたしだけなんだよ!! この露出狂!!」

 

「んだと!! 小娘!!」

 

娘がティルテュを蹴りあげる。

腕を蹴られたティルテュが痛みに顔をしかめる。

 

「やめろ!! シルヴィア!!」

 

「うるさい!! レヴィン!!」

 

シルヴィアと呼ばれた娘はレヴィンという名らしい男を一喝すると、ティルテュを足払いして地面に転ばした。

 

「アマがぁ!!」

 

地面に転ばされて怒りが頂点に達したらしいティルテュの指先から電光が生まれる。

 

「ちっ!!」

 

その電光を見たシルヴィアは慌ててレヴィンの後ろに隠れる。

 

「レヴィ~ン!!」

 

「全く……」

 

レヴィンの指先が軽く動く。

 

「小娘、少し痛いが我慢しろよ……」

 

「色男がよぉ!!」

 

ティルテュの手から電光が放たれようとしたその時。

 

「喝!!!!!!」

 

地をも動かす程の大声でクロードが怒鳴る。

その声にティルテュもレヴィンも呆気に取られる。

 

「もう許してやってくれ、お二方……」

 

レックスが苦笑しながら、レヴィン達に両手を突き出すようにしながら笑いかける。

 

「大人な対応をしろってことかよ、え?」

 

「こいつらはガキなんだよ……? 分かる……?」

 

「そうみたいだな……」

 

アゼルとティルテュ、そしてシルヴィアを順に見ながら、レヴィンは苦笑した。

 

「え~と、レヴィンさん?」

 

クロードが穏やかな声で吟遊詩人レヴィンに話しかける。

 

「ここはアグストリアの何処なんでしょうか?」

 

「アンフォニー」

 

レヴィンはそう言い放ちながら、周囲の森を見渡す。

 

「マクベス王の領地だよ」

 

「マクベス王って?」

 

アゼルが訪ねる。

 

「嫌な王さ」

 

レヴィンは冷笑しながら、マクベス王がいる城の方へ指を指す。

 

「金稼ぎの為に、ロプトの柱の犠牲を立てることを躊躇しない奴さ」

 

「ふうん……」

 

アゼルはレヴィンの指差す方向を見るが、森に囲まれてその城は見えない。

 

「ま、もう残り少ない命だがねぇ」

 

レヴィンは唇を歪めながら呟く。

 

「病気か?」

 

「そんなもんだ」

 

レヴィンの顔からは冷笑が消えない。アゼルは何か背筋が寒いものを感じた。

 

「えーと」

 

クロードがレヴィンに訊ねる。

 

「ここっからブラギの塔に行くにはどうしたらいいんでしょうか?」

 

「あんな遺跡にか?」

 

「ええ……」

 

レヴィンは少し考えながら答える。

 

「この森から出て、アグストリア大街道を北に行く」

 

レヴィンは地面に地図を描いてやる。

 

「マディノの街へ着いたら、そこから船で渡ると良い」

 

「地図を買える所はありますか?」

 

「大街道へ出て、王城アグスティの城下町で買える」

 

「なるほど……」

 

クロードがメモを取る。

 

「海賊が出る」

 

レヴィンが事も無げに言う。

 

「ですかね……」

 

「少し海賊に包んでやると良い」

 

「話は分かる海賊みたいですね……」

 

クロードが真剣に話に聞き入る。

 

「包む?」

 

「少し金を渡してやるって意味だよ……」

 

レックスがアゼルに説明してやる。

 

「坊主、お前のケツでも差し出してやればいいんじゃないの?」

 

シルヴィアがアゼルに笑いながら言う。

 

「何だと……」

 

「こいつ……」

 

「喝!!!!!」

 

いきり立つアゼルとティルテュにクロードから檄が飛ぶ。

 

「神父さん……」

 

レヴィンがクロードを同情するように見る。

 

「苦労人だな……」

 

「いやいや……」

 

クロードが苦笑いをする。

 

「せいぜいがんばってねぇ~ 痴漢坊主とその御一行さん~」

 

またもやシルヴィアが茶化すように言い放つ。

 

「フン……」

 

「ティルテュ……」

 

ティルテュをなだめるレックスの姿にレヴィンは顔を綻ばせる。

 

「大変だな……」

 

レヴィンがまたもや笑った。

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