ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~焔の子~   作:早起き三文

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第6話 風の暗殺者達

「へんな奴らだったな」

 

レヴィンは立ち去っていったアゼル達一行を見送りながら呟く。

 

「ふん、あの赤い髪のクソガキ!!」

 

シルヴィアはまだ怒っているようだ。

 

「許してやれよ……」

 

レヴィンは苦笑しながら、腰に差してある笛を取り出した。

 

「なぁに? それ?」

 

「まあ、見てなって……」

 

レヴィンは笛に口をつけて鳴らし始める。

 

「さすが吟遊詩人」

 

シルヴィアは感心したように手を叩く。

優雅な旋律が笛から辺りに流れる。

 

「ん~?」

 

シルヴィアがレヴィンの周りを羽が舞っているのを見る。

羽は光輝きながらレヴィンの上方の空を覆い隠す。

 

「うわっ!?」

 

羽の中から一人の女が出てきたのにシルヴィアは驚く。

 

「レヴィン様!!」

 

女は顔を真っ赤にしてレヴィンに怒鳴る。

 

「あれほど、私を呼ぶときは事前に風を使い連絡しろと言ったではないか!!」

 

下着姿の女はそう言いながらレヴィンを睨み付ける。

 

「すまん、フュリー」

 

レヴィンは首を傾げながら、女に謝った。

 

「はて、自動的に風が伝えるはずであったが……」

 

「知りませんな!! そんな都合!!」

 

「おかしいな……」

 

首を傾げ続けるレヴィンを尻目に、女は仕方なく羽で身体を隠す。

 

「シルヴィア、すまんが何か服を買ってきてくれ」

 

「え~!?」

 

シルヴィアは嫌そうな声を出した。

 

「金は出すぞ」

 

「あたし、この女嫌い」

 

「何で?」

 

「たちの悪い女の匂いがする」

 

シルヴィアはフュリーと呼ばれた女を睨み付ける。

 

「酷い言いぐさだな、はしたない格好をしてる女のくせに」

 

「あんたの方がはしたないだろ!?」

 

「育ちの悪さが見てとれるわ」

 

シルヴィアにフュリーは冷笑しながら笑う。

 

「いい加減にしろよ、お前達……」

 

レヴィンはそう言いながらも、辺りを見渡す。

 

「クブリの奴も呼んだはずだが……」

 

「ここにいますよ」

 

レヴィンの後ろから声がする。

レヴィンが振り返ると、そこには年配の男が立っていた。

 

「食事中に急に呼び出すとはねぇ」

 

クブリと呼ばれた男は骨付き肉を片手にレヴィンに微笑む。

 

「気配を消していたか?」

 

「レヴィン様に通じるとは思いませんでしたがね……」

 

クブリはもう片手に持っていた酒を飲み始めた。

 

「全く、さすがだな……」

 

「ふふ……」

 

レヴィンとクブリは不敵に笑い合う。

 

「おおう?」

 

クブリはシルヴィアの姿を見て、感嘆の声を上げる。

 

「見事な身体をした娘を手に入れましたなあ!! レヴィン様!!」

 

「んだと!?」

 

さっきから苛立つ事ばかりが起こっていたシルヴィアは相当怒りっぽくなっているようだ。

 

「ヒヒ爺が!!」

 

シルヴィアの蹴りがクブリに当たった……かのように見えた。

 

「ありゃ!?」

 

シルヴィアが奇矯な声を上げる。

 

「ふん!!」

 

シルヴィアの脚を掴んだクブリがそのままひね上げる。

 

「とっ……と!!」

 

「ほう?」

 

ひね上げられながらもクブリの手から脚を離させたシルヴィアに今度はクブリが驚いたような声を上げた。

 

「小娘」

 

「何だよ!!」

 

「生業は何だ?」

 

「踊り子だよ!!」

 

「嘘だろう?」

 

クブリは腕をさすりながらシルヴィアに酒を投げて渡してやる。

 

「嘘じゃあない」

 

酒を飲みながらシルヴィアは答える。

 

「副業は教えない」

 

「ふふ……」

 

クブリは含み笑う。

 

「わしが本気で技を出したのは久しぶりだ」

 

「へえ……」

 

レヴィンが感心したように二人を見る。

 

「クブリ、この娘をどう見る?」

 

「二年仕込めば、わしを越える一流の暗殺者になる」

 

「やはりな……」

 

レヴィンはそう言いながら笑う。

 

「すでにあたしは一流だよ……」

 

「自分で正体をバラす時点で一流とは言えないな……」

 

「ジジイが……」

 

ヤケ酒を飲んでいるシルヴィアに二人の男は笑い合う。

 

「……っくし!!」

 

「あっ!! 忘れてた!!」

 

レヴィンはあわてて、フュリーに自分のマントをかけてやった。

 

 

 

「この国を?」

 

「ああ」

 

レヴィンは森を見渡しながらフュリーに答える。

 

「バカなマクベスの奴には勿体ない」

 

「手に入れる手段は?」

 

「お前を呼んだ事が手段だろうに……」

 

クブリは少し首を傾げる。

 

「領主一人を仕留めて手に入りましょうか……?」

 

クブリにレヴィンは一枚の紙を渡す。

 

「調べた」

 

クブリはじっと紙を眺める。

 

「領主の配下に忠誠心はなく、傭兵が主力でありますか?」

 

「仕留めた後に、傭兵に金をばらまく」

 

「ふん……」

 

考え込むクブリに今度はシルヴィアが話しかける。

 

「周りの領主達も」

 

シルヴィアはクスクス笑いながらはなし続ける。

 

「金ばっか溜め込んでいるマクベスに皆嫉妬している」

 

「やや、行き当たりばったりですな」

 

クブリは少し不満そうな顔をする。

 

「もう一つ」

 

レヴィンは南の方向へ指を指す。

 

「南の王であるエルトシャンとやらとは密約をした」

 

「ほう……」

 

クブリが感心した声を出す。

 

「あの王は潔癖性では?」

 

「ゆえに、そこを丸め込んだ」

 

「さすがは吟遊詩人……」

 

クブリの一言にシルヴィアが手を叩いて調子を合わせる。

 

「と、言うのは嘘だ」

 

クブリとシルヴィアは盛大に「ずっこけた」のポーズを取った。

 

「気があってますねえ……」

 

普通の服に着替えたフュリーが呆れたように二人を見る。

 

「エルトシャンは結構話が解る」

 

「暗黙の了解をうけたと……」

 

「うん」

 

レヴィンは自信ありげに答える。

 

「その上……」

 

「まだ何か?」

 

「傭兵団の団長とも手を組んだ」

 

「策士ですなぁ」

 

クブリはシルヴィアと顔を見合わせて笑いあう。

 

「意気投合か?」

 

やや愉しげなフュリーの問いにシルヴィアが元気よく言う。

 

「このジイサン、気に入った」

 

「わしも好みのタイプの娘だ」

 

二人を見て、レヴィンは苦笑する。

 

「と、まあ……」

 

レヴィンはその端正な顔に冷酷な笑みを浮かべる。

 

「楽な仕事だ」

 

「私は?」

 

フュリーが自分を指差して訊ねる。

 

「予備だよ……」

 

「酷い人じゃ……」

 

フュリーは苦笑しながら、ペガサスを呼ぶ笛を取り出した。

 

「シルヴィアを傭兵隊に送り込む」

 

「踊り子として?」

 

「傭兵団の団長が自分達が動けなかった口実を作りたいそうだ」

 

「なるほどね……」

 

シルヴィアが舌舐りをする。

 

「女に見とれてましたっと言い訳……」

 

「いざと言うときはペガサスでフュリーが助けて欲しい」

 

レヴィンのその言葉にフュリーは嫌そうな顔をする。

 

「頼むよぉ、綺麗なお姉ちゃん……」

 

「お主にお姉ちゃんと呼ばれる筋合いはない」

 

「一緒に踊らな~い?」

 

「ふん……」

 

フュリーは鼻を鳴らしながらも、レヴィンに承諾の意思を伝える。

 

「では、いいな?」

 

レヴィンはそう言い、笛を取り出した。

 

「善は急げですかな?」

 

「そう、善はねぇ……」

 

クブリの皮肉げな言い方にレヴィンは冷笑しながら、笛を吹き自分の魔力を高め始めた。

 

 

 

月が夜空を照らす。

 

「レヴィン様」

 

「ん?」

 

アンフォニー城の最上階に昇ったらレヴィンにクブリが風魔法で浮遊しながら小声で語りかける。

 

「シレジアは嫌いですか?」

 

「ああ」

 

「故郷なのに?」

 

「好きになれと言うのか?」

 

レヴィンは城の尖塔からの夜風を感じながら答える。

 

「あんな氷と雪だけの世界を」

 

「あなたの母上はあの国を愛しておられますぞ」

 

「母上の下らん感傷さ」

 

レヴィンは平然と言い放つ。

 

「ラーナ様は決してあなたにセティの風を譲りませんでしょうな……」

 

「必要もない」

 

「言いましたな……」

 

「俺は自分の力だけで国を作る」

 

レヴィンは腕を組みながら宣言をする。

 

「それが真の自由なる聖戦士のすることだ」

 

「コソコソした暗殺ですぞ……」

 

「ふふ……」

 

クブリの言葉にレヴィンは冷ややかな笑みを浮かべた。

 

 

 

豪奢なベッドで寝ていた肥満した男の首をレヴィンは風の刃であっさりと切り落とした。

 

「警戒が穴だらけだ……」

 

レヴィンの言葉にクブリが不満そうに愚痴り始めた。

 

「魔法を使うまでもなかったですな……」

 

「体術だけで充分だったな、クブリ」

 

「腕が鈍る……」

 

クブリの愚痴を無視して、レヴィンは領主マクベスの首を持とうとする。

 

「大変だ……」

 

レヴィンの顔が青ざめる。

 

「どうされました?」

 

「こやつ、禿だ」

 

「それは大変だ」

 

クブリの顔も青ざめた。

 

「どう、この城の兵に見せる為に持っていったら良いのだ?」

 

「蹴飛ばして持っていきましょうか……?」

 

「ふぅむ……」

 

レヴィンは仕方なく風でマクベスの生首を宙に浮かせた。

 

「危ない所でしたな……」

 

「ふふ……」

 

生首を前に「ぶら下げた」レヴィン達は城門へと向かって歩いていった。

 

 

「やったようだねぇ」

 

傭兵団の団長と酒を飲み合わせていたシルヴィアは城門のレヴィンの姿をみて笑みを浮かべる。

 

「やるな、あんたの大将」

 

その団長はシルヴィアに注がれた酒を飲み干す。

 

「姉ちゃん」

 

「ん?」

 

「あんた、本当は俺が裏切ったら寝床で始末するつもりだったんだろう?」

 

「分かってたの?」

 

シルヴィアが屈託ない笑顔を浮かべる。

 

「わかるさ……」

 

団長はシルヴィアの尻に手をやろうとする。

シルヴィアはその手を簡単にかわす。

 

「ふふ……」

 

男が口の端を歪める。

 

「あんたがあたしの踊りを見ていたとき……」

 

シルヴィアは酒をまた注いでやる。

 

「踊っていたあたしに鼻の下を伸ばした顔をしながらも」

 

シルヴィアも少し酒を貰う。

 

「あんたは猛禽のような戦士の目付きをしていた」

 

「すげぇな……」

 

団長は呆れたように言った。

 

「こんな小娘に見破られるとは」

 

酒を再び飲み干す。

 

「世界ひろしと言えども」

 

「言えども?」

 

「あんた位だったよ……」

 

「傭兵を廃業するかい?」

 

「いや……」

 

傭兵団長の男はニヤリと笑う。

 

「あんたの主人に賭けたくなってきた」

 

「レヴィンは喜ぶよ」

 

「顔が良い男という点は気に入らねえがな……」

 

シルヴィアは苦笑した。

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