ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~焔の子~   作:早起き三文

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第8話 竜の国

竜の国であるイザーク王国の連峰の中にひときわ高くそびえ立つ城がある。

 

「時は来たり」

 

王城「ティルナノグ」の謁見の間に一人佇むマナナーン王は背中の竜の翼を広げながら、玉座から立ち上がった。

そのまま天守閣の窓の外から身を乗り出す。

 

「ふん……」

 

マナナーン王は窓から地上へ身を投げたかと思うと、そのまま巨大な飛竜へと身を変えた。

 

 

 

「マリクル」

 

アイラはバルコニーで夕焼けを見上げている兄に戦力の状況を告げる。

 

「トラキアとの支援が約束できた」

 

「トラバント王子め……」

 

マリクルは苦笑する。

アイラにはその兄のトラキア嫌いの気持ちが少しは解る。

 

「かの国も我らと同じ竜の王国である」

 

「きゃつはまさに俗物ぞ?」

 

「悪い男ではない」

 

アイラは笑みを浮かべながらマリクルの腰の剣を見る。

 

「バルムンクと同じく」

 

アイラは腕を伸ばして槍の形を表現する。

 

「かの槍も真の竜の聖遺物である」

 

「グングニルな?」

 

「竜の牙であるよ……」

 

「堕ちた竜人族よ。トラバントも、そしてトラキアの者もな」

 

マリクルが嘲笑する。

 

「世俗の事にしか興味はない」

 

「半竜であるマムクートの生き方を満喫している男ではある」

 

「言うなよ……」

 

「我らの生き方が高慢なだけである」

 

「アイラには誇りは無いと?」

 

「私も世俗のマムクートであるからな」

 

「俺とてマムクートであるよ」

 

「兄上は竜の神の生き方に憧れているであろうに……」

 

「父上程ではない」

 

「父上はマムクート、半竜とは言えないであろう」

 

アイラは夕陽を見上げながら微笑む。

 

「オードであるからな」

 

「竜の姿が本性である」

 

「俺たちとは違うな」

 

マリクルはそう言いながら、腰のバルムンクを見やる。

 

「だが、父上の牙は俺が持っている」

 

「扱えるか?」

 

「難しい」

 

マリクルは険しい顔で頷く。

 

「振り回されている」

 

「私が使おうか?」

 

「アイラでは使う事すら出来まい」

 

「父上は何ゆえバルムンクの封印を解いたのだ?」

 

「さあ……」

 

マリクルは首を傾げる。

 

「人の力も必要と思ったのであろうか……」

 

「誇り高い父上が?」

 

「父上とて、竜族の理想だけでは戦には勝てないと思っているのかもな……」

 

「ふむ……」

 

二人は無言で考え込む。

バルコニーで夕陽を眺めている二人の目前に巨大な飛竜が舞い降りてくる。

 

「父上」

 

二人は膝をつき畏まる。

 

「人の国、グランベル」

 

竜は低く唸る。

 

「かの国を攻める」

 

「父上」

 

マリクルが訪ねる。

 

「やはり、人間は許容出来ませぬか?」

 

「所詮は地に這う地虫である」

 

竜はそう言いながら、低く咆哮する。

 

「我ら竜族に跪く存在である」

 

「はっ……」

 

「だが、我は」

 

竜の翼が小刻みに羽ばたく。

 

「レンスターの者共こそ、真に討ちたいぞよ……」

 

「父上……」

 

マリクルが苦笑する。

 

「一応、同族でありましょうに……」

 

「人間どもに媚びを売る姿勢はトラキアの者共の比ではない」

 

竜が夕陽を目を薄く細めて見つめる。

 

「もはや、竜はおろか竜人ですらない」

 

「ふふ……」

 

アイラが忍び笑いをする。

 

「父上こそ人間臭くありますぞ……」

 

「申すなよ……」

 

竜は低く笑い声をあげたようだ。

 

「レンスターの者共を少しからかって来るよ……」

 

竜はそう言い、翼を大きく広げ始めた。

 

「お気をつけください」

 

マリクルが父である竜に忠告する。

 

「伊達にイザークとトラキアに挟まれて生きてはおりませぬ」

 

「うむ」

 

竜は夕陽に向かって咆哮すると、そのまま空の彼方へと飛び立っていった。

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