ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~焔の子~ 作:早起き三文
竜の国であるイザーク王国の連峰の中にひときわ高くそびえ立つ城がある。
「時は来たり」
王城「ティルナノグ」の謁見の間に一人佇むマナナーン王は背中の竜の翼を広げながら、玉座から立ち上がった。
そのまま天守閣の窓の外から身を乗り出す。
「ふん……」
マナナーン王は窓から地上へ身を投げたかと思うと、そのまま巨大な飛竜へと身を変えた。
「マリクル」
アイラはバルコニーで夕焼けを見上げている兄に戦力の状況を告げる。
「トラキアとの支援が約束できた」
「トラバント王子め……」
マリクルは苦笑する。
アイラにはその兄のトラキア嫌いの気持ちが少しは解る。
「かの国も我らと同じ竜の王国である」
「きゃつはまさに俗物ぞ?」
「悪い男ではない」
アイラは笑みを浮かべながらマリクルの腰の剣を見る。
「バルムンクと同じく」
アイラは腕を伸ばして槍の形を表現する。
「かの槍も真の竜の聖遺物である」
「グングニルな?」
「竜の牙であるよ……」
「堕ちた竜人族よ。トラバントも、そしてトラキアの者もな」
マリクルが嘲笑する。
「世俗の事にしか興味はない」
「半竜であるマムクートの生き方を満喫している男ではある」
「言うなよ……」
「我らの生き方が高慢なだけである」
「アイラには誇りは無いと?」
「私も世俗のマムクートであるからな」
「俺とてマムクートであるよ」
「兄上は竜の神の生き方に憧れているであろうに……」
「父上程ではない」
「父上はマムクート、半竜とは言えないであろう」
アイラは夕陽を見上げながら微笑む。
「オードであるからな」
「竜の姿が本性である」
「俺たちとは違うな」
マリクルはそう言いながら、腰のバルムンクを見やる。
「だが、父上の牙は俺が持っている」
「扱えるか?」
「難しい」
マリクルは険しい顔で頷く。
「振り回されている」
「私が使おうか?」
「アイラでは使う事すら出来まい」
「父上は何ゆえバルムンクの封印を解いたのだ?」
「さあ……」
マリクルは首を傾げる。
「人の力も必要と思ったのであろうか……」
「誇り高い父上が?」
「父上とて、竜族の理想だけでは戦には勝てないと思っているのかもな……」
「ふむ……」
二人は無言で考え込む。
バルコニーで夕陽を眺めている二人の目前に巨大な飛竜が舞い降りてくる。
「父上」
二人は膝をつき畏まる。
「人の国、グランベル」
竜は低く唸る。
「かの国を攻める」
「父上」
マリクルが訪ねる。
「やはり、人間は許容出来ませぬか?」
「所詮は地に這う地虫である」
竜はそう言いながら、低く咆哮する。
「我ら竜族に跪く存在である」
「はっ……」
「だが、我は」
竜の翼が小刻みに羽ばたく。
「レンスターの者共こそ、真に討ちたいぞよ……」
「父上……」
マリクルが苦笑する。
「一応、同族でありましょうに……」
「人間どもに媚びを売る姿勢はトラキアの者共の比ではない」
竜が夕陽を目を薄く細めて見つめる。
「もはや、竜はおろか竜人ですらない」
「ふふ……」
アイラが忍び笑いをする。
「父上こそ人間臭くありますぞ……」
「申すなよ……」
竜は低く笑い声をあげたようだ。
「レンスターの者共を少しからかって来るよ……」
竜はそう言い、翼を大きく広げ始めた。
「お気をつけください」
マリクルが父である竜に忠告する。
「伊達にイザークとトラキアに挟まれて生きてはおりませぬ」
「うむ」
竜は夕陽に向かって咆哮すると、そのまま空の彼方へと飛び立っていった。