"要塞空母デスピナ" スターティングオペレーション!   作:SAIFA

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最後の更新から3ヶ月弱、14話投稿からは実に3ヶ月以上と、執筆を開始して以来最長の放置期間となってしまいましたが、ちょくちょく過去に上げた話の編集や修正は続けておりましたSAIFAです。
それでも待って頂いた読者の方には心から感謝致します。

この三次創作自体覚えておられる方がどれほどいらっしゃるか分かりませんが、一応執筆は続けて行く所存でございます。


第二・五章:(引き続き)めざせヨコスカ
第15話:航空参謀(クゥ)と愉快な仲間たち【艦娘視点】


――side 空母艦娘【翔鶴】――

 

 

 

翔鶴「こちら機動艦隊翔鶴、横須賀鎮守府、応答願います」(連合地球海軍――日本支部――EDF――……)

 

瑞鶴に持って貰っている無線が繋がるまでの間、デスピナさんの所属していると言う組織の名前を頭の中で反芻する。

しかし、艦だった頃の前世はもちろん、私が艦娘として生きてきた中で得た記憶にも、何一つ引っ掛かるものは無い。

 

提督《こちら横須賀。何かあったのか? 翔鶴》

翔鶴「状況の報告と、それから、いくつか確認して頂きたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

提督《ふむ…聞こう》

翔鶴「まず報告ですが、30分ほど前に、私たちは件の"要塞空母デスピナ"と名乗る男性艦娘と接触。敵意は無いと判断し、彼を同伴して10ノットで航行を続けています。母港への予定帰投時刻は、2日後の23:00(フタサンマルマル)頃になります」

提督《了解。それで、確認したい事とは?》

 

私はどうやら、デスピナさんを命の恩人としては信用していても、一隻の艦娘としては――いえ、一隻の艦娘に過ぎないからこそ、彼の挙げた戦果をまだ信用しきれていなかったらしい。

 

翔鶴「南鳥島の現在の状況は、どうなっていますでしょうか?」

提督《…離島棲鬼が健在の筈だが、それがどうかしたのか?》

翔鶴「つい先ほど、デスピナさんが私たちと合流するまでの事を本人から聞いたのですが、彼は昨日、航空隊を私たちの援護に向かわせると同時に、離島棲鬼への攻撃を敢行した、と言っているんです」

提督《なに?》

翔鶴「そして、そのまま破壊してしまった、と」

提督《単艦で戦艦棲姫と離島棲鬼を? そんなバカな…》

 

やはり、なかなか信じられる話では無いみたい。

断片的にとは言え、デスピナさんの持つ"力"を瑞鶴の偵察機を通して知っている私ですら、単艦(ひとり)で鬼と姫を同時に相手取るなんてとても考えられない。

その話を聞く人が、日本国防海軍の主要鎮守府を一つ預かる提督なら尚更の事。

 

提督《…分かった。すぐに確認を取る。他には?》

翔鶴「つかぬことをお聞きしますが、彼は自身の所属組織を、『連合地球海軍』や『EDF』などと呼んでいるんです。これらの名前に、お心当たりはございませんか?」

提督《まるで聞いたことが無いな……その艦娘の、国籍は分からないか?》

翔鶴「彼本人は、その組織の『日本支部』の所属である、と述べています」

提督《ふむ……》

 

日本国にとって、首都防衛の要である横須賀鎮守府の提督ならあるいはと思ったけれど、特に思い当たる節もなさそう。

 

提督《……いずれにせよ、君達の撤退を支援した事実に変わりはない。その要塞空母デスピナは、君達に同行しているんだな?》

翔鶴「はい、私たちと同じ船速で、横須賀に向かっています」

提督《離島棲鬼の件も含めて、彼からも話を聞きたい。その事を伝えておいてくれないか?》

翔鶴「実はデスピナさん本人から、自身の事について提督に説明したいと要望を受けているんです。受諾していただける、ということでよろしいでしょうか?」

提督《そうか、なら話は早い。君達が帰投次第、すぐに話を聞こう。艦娘"要塞空母デスピナ"の、横須賀入港を許可する》

翔鶴「ありがとうございます」

提督《デスピナの所属組織については、過去の文献と資料を少し探ってみるとしよう。もう伝えておく事は無いか?》

 

そう言われてわずかに沈黙する。伝えるべきことはこれ以上はない筈だけれど…。

 

翔鶴「……あの、提督、もう一つだけお願いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

提督《ん、何だ?》

翔鶴「デスピナさん、離島棲鬼への攻撃と私たちの支援のために、南鳥島を挟んだ反対側から墳式の艦載機を多数動員していたんです。つきましては、彼の艤装と艦載機にも、燃料と弾薬を補給して差し上げることは出来ませんか?」

 

私たちの上司は、他の鎮守府の提督よりも「危機管理意識が薄い」などと言われている所を、風のうわさで耳にする事が偶にある。

けれどそれは、沢山の艦娘達を指揮する海軍の主要人物の一人としては、心配になるくらいに「お人好し」で「懐が深い」事の裏返しなのだ。

 

提督《無論、必要な補給は施すつもりでいる。部下が世話になったんだ、入港が済み次第、艤装と艦載機共々彼にはゆっくり休んでもらうとしよう》

翔鶴「はいっ、ありがとうございます」

 

いくらデスピナさんが私たちを救った恩人だとしても、正確な所属が不明な上に"どこから来たのかすら分からない男性の艦娘"を、現場の艦娘が無線で一言二言報告しただけでこうもあっさりと信用することが出来る人は、きっとこの人しかいない。

 

提督の寛大さに改めて感謝しつつ、通信を終える。

 

瑞鶴「良かったね、翔鶴姉」

翔鶴「ええ。なんとか横須賀には案内出来そう。――デスピナさん」

 

振り返り、たった今横須賀への招客となった彼に話しかける。

 

デスピナ「…っ――はい、何でしょうか?」

 

少し疲れているのか、デスピナさんは頭を回して首の筋肉をほぐしているらしかった。

 

翔鶴「横須賀への入港後、すぐに提督がお会いになるそうです」

デスピナ「本当ですか!」

翔鶴「はい。それから、デスピナさんの艤装と艦載機への補給も、実施して頂けることになりました」

デスピナ「あ、ありがとうございます! すみません、ワガママ聞いてもらって…」

瑞鶴「気にしないで! 借りが出来たのは私たちの方なんだから、これくらい融通利かせないとこっちが申し訳ないし」

 

デスピナさんは自身の挙げた戦果を、終始あっけらかんとした様子で話していた。それは、戦艦棲姫と私たちを襲った深海棲艦の艦隊を沈め、離島棲鬼から飛び立った多数の敵機をすべて撃墜し制空を奪ってしまった艦載機たちの戦闘力に根拠するものなのか。それとも彼自身が、悪く言えば命知らずとも取れるくらいの胆力を持った男性なのか……。

 

どちらにしろ、私たちはデスピナさんの決断のおかげで命拾いしたことに変わりはない。

彼が先日の海戦をどう思っているかは分からないけれど、少なくとも私たちにとっては、彼に大きな借りが出来てしまった戦いなのだ。

 

離島棲鬼を破壊したと言うデスピナさんの証言も真実ならば、昨日の海戦の結果は私たちだけでなく、横須賀にとっても――ひいては日本にとっても、彼の挙げた戦果はとても無視できるものではない筈。

 

瑞鶴の言う通り、ほんの僅かなことでもお返しできなければ、私の気は治まりそうにない。

 

金剛「そうデスよーデスピナ。私と妹たちも、ユーの決断(decision)に助けられたんデスから、補給(supply)くらいバチはあたらないはずネー」

航空参謀「――って話っすよ旦那ァー。せっかく受けとってくれって言ってるんすから、いちばん高いやつ……かはともかく、もらえるモンはもらっときやしょー」

デスピナ「お前ってやつは全く……」

 

霧島さんが手のひらで転がしていた妖精さんの一人からも声が上がった。

妖精さんにしては打算的な進言に、デスピナさんは釣られて苦笑い。

 

翔鶴 (クゥちゃん……だったかしら? ちゃっかりしてるのね) クスッ

 

デスピナ「まぁ、そこまでおっしゃって頂けるんでしたら、是非、お言葉に甘えさせて頂きます……」

 

少し照れ屋な性格なのか、デスピナさんは頭の後ろを右手で掻きつつはにかんだ。

その仕草を見ていると、彼が二百数十機もの墳式機を一度に操り、遠く離れた海域で交戦している多数の深海棲艦や敵機を、慣れたように沈めることが可能なほどの力を持っていることを忘れそうになった。昨日私たちに披露してくれた果敢さは、今はまったく感じられない。

 

デスピナ妖精a「いよっしそれじゃ、まだまだ長旅になりそうって話だから、ここらで一発、あらためておれたちデスピナ航空妖精の自己紹介といきますか!」

デスピナ妖精b「つっても、名乗るような名前はないけどな。まぁいい」

 

先ほどデスピナさんが私と瑞鶴の肩に乗せてくれた、クゥちゃんとは別の妖精さんが話しだした。

"デスピナ航空隊"と名乗る妖精さんたちは皆、現代各国の空軍や海軍航空隊で着られている様な、いわゆるフライトジャケットと呼ばれる上着を着こなしていた。

 

(デスピナ妖精b 改め)

ゼロ1「おれからでいいか?――あー…デスピナ航空隊所属、第零戦闘中隊"ファイターゼロ"の隊長やってるモンだ。単に"ゼロ1(ワン)"とか、ひとくくりに"ゼロ中隊"とか呼んでくれればいいぜ――零式艦上戦闘機(ゼロファイター)とはなんの関係もないぞ――。先日は南鳥島の偵察と、そちらさんの上空の制空確保に参加したな」

(デスピナ妖精a 改め)

ファイター1「おっ、その話もしちゃう流れか?――おれは第1戦闘大隊"ファイター1"の長機やってます。ファイター2の連中といっしょに、離島棲鬼から発進した蚊トンボの大群蹴散らしてました」

翔鶴「か、かとんぼ…ですか」

 

深海棲艦が扱う艦載機には、いくつか種類がある。

中でも最も多く確認されているものが、黒色の鋭角的なシルエットの、個体の戦闘力に合わせて緑・橙・青のいずれかの発光部を機体上部に一対、武装に1門の機銃と左右1つずつの懸下装置を搭載し汎用性に優れた『通常型』だ。

昨日の海戦で、撤退する私たちを追撃しにかかった敵空母から放たれた艦載機と離島棲鬼から飛来した航空隊は、すべて発光部の色の違いこそあれ通常型だった。

 

通常型は深海棲艦の航空機の中では"比較的"弱い部類に属するため、こちらの航空隊の錬度や機体性能がそれなりに高ければ、それほど脅威にはならない。

しかし、裏を返せば"質より数"で勝負を仕掛けてくることが多く、爆装や雷装を施して艦爆や艦攻として運用される場合もあるため、一度数で押し負けて制空権を取られてしまえば、先日の海戦のような醜態を晒すことになってしまう。

 

今私たちと話しているデスピナ航空隊の妖精さん達は、まさにその"数で圧倒する"空の軍勢を、いとも簡単に取り除いてしまったのだった。

 

デスピナ妖精c「まぁ、敵さんの機体はもう何世代前ってどころじゃないくらいにノロマっすからねぇ――あっいや、その、別にだからって翔鶴さんや瑞鶴さんたちの戦闘機がよわいってわけじゃないっすよ!? ファイターパイロットならレシプロ機の良さもわかってますし! これはアレです、時代差ってやつっすよ! おれらはホラ、超音速ですっ飛ぶミサイル戦が主体っすから、どうしても相手との速度差が気になっちゃうってだけでして、けっしてノロいからよわいとかジェット機とばす自分たちがつよいとか、そんなことかんがえてるわけじゃあ――」

瑞鶴「ぷっ…くく……!もう、そんなに捲くし立てなくても悪気が無いことぐらい分かってるから!」

ファイター1「なぁーに長話して気ぃ惹こうとしてんだよっ!w」

デスピナ妖精c「そうじゃないっ!」

翔鶴「……ふふっ

 

3人目の妖精さんは、その…"ふぁいたーワン"の隊長妖精が"蚊トンボ"と表現した深海棲艦の航空機に私たちが押されて劣勢に立たされていたことを思い出したみたい。敵の艦載機の大群に私と瑞鶴の航空隊が劣勢に立たされていたのは事実だし、この妖精さんの発言に他意は無いことも分かっているけれど、小さい体で身振り手振り、必死になって弁明している様子がちょっと可愛らしい。

 

瑞鶴「それで? その速くて強いあんた達のことは、何て呼んだらいいのかしら?」

(デスピナ妖精c改め)

ファイター2「あぁ、そうでした……ふぅ――おれは第2戦闘大隊"ファイター2"の隊長妖精っす。さっきファイター1が言ったとおり、みなさんの頭上の制空権確保につとめました」

デスピナ妖精d「んでんで! そこに突入して敵艦隊を粉砕したのが!」

デスピナ妖精e「このおれ達、デスピナ航空隊の主力オブ主力、第3爆撃大隊"ミッドナイト・アタッカーズ"だな」

 

また別の妖精さんが喋りだした。

 

(デスピナ妖精d改め)

アタッカー13「おれは、翔鶴さんたちと交戦していた敵空母機動部隊にうしろから爆撃をお見舞いしてやった、ミッドナイト隊13番機"アタッカー13"っす。大隊隷下"B中隊"の中隊長って意味で"アタッカーB1"と呼んでもいいっすよ!」

瑞鶴「爆撃って、あの平べったい変な形のやつ?」

アタッカー13「みんなその全翼型(へんな形)っすけどね」

瑞鶴「水平爆撃で良くあんなに当てられるわね。凄いじゃない!」

アタッカー13「いやぁそれほどでも……へへっ///」

(デスピナ妖精e改め)

アタッカー25「機体の性能ほめられただけでなに照れてんだか――あ、おれはC中隊の長機やってます、"アタッカー25"っす。先日はその……"せんかんせいき"、でしたっけ? ようはまぁ、戦艦系のデカブツ艦隊を始末したのがおれ達ってことっす」

ファイター4「そして最後に、ゼロ中隊とファイター1,2が撤収する直前、ミッドナイト隊の護衛もかねてかけつけたのが、われら第4戦闘大隊"ファイター4"です」

瑞鶴「…つまり、私たちの見える所に来てくれたのが、あんた達ってことね。じゃあ、()()()()は?」

 

霧島さんの手のひらの上の妖精さんたちを見やりながら、瑞鶴は誰ともなしに訊いた。

 

アタッカー13「あぁ、あっちは南鳥島であばれまくってた「離島棲鬼攻略隊」の連中っすね――(あね)さぁーん! 昨日そっちの方どうなってなのか、また話してくださいよー!」

 

翔鶴 (この子は、ええと…誰だったかしら……順番的に、"みっどあたっかー"の……?)

 

"デスピナ航空妖精"と名乗った妖精さんたちは、1人1人頭髪や上着の色など少しずつ違う見た目をしているけれど……ごめんなさい、霧島さんの手のひらに乗っているクゥちゃん意外、もう誰が誰だか分からなくなってきたわ……。

 

航空参謀「ん、おーぅ!そっちでなんかやってんのかー?」

アタッカー13「簡単にいえば、きのうの自慢話兼自己紹介っすねー。こっちはざっと一巡りしたとこですぁー」

 

私の肩と霧島さんの手のひらの間で、妖精さんたちのやりとりが再び始まった。彼ら――で良いのかしら?――の間で呼ばれる「姐さん」はクウちゃんのことなのね。

 

航空参謀「ちょうどいい、今度は南鳥島(こっち)がわの話も交えてウチらの番だな! ――ウチは第3爆撃大隊"アタッカー"の隊長をかねてます、クゥこと"デスピナ航空参謀妖精"っす。昨日は「離島棲鬼攻略隊 第一次攻撃隊」として、A中隊引き連れて滑走路と砲陣地つぶしやした。んで、コイツはA中隊の2番機で――」

アタッカー2「どうもです」

航空参謀「こっちは護衛の第3戦闘大隊"ファイター3"」

ファイター3「――の、長機だ。そっちからは見えなかったろうが、大活躍したんだぜ」

航空参謀「もうひとりのコイツは、「第二次攻撃隊」として対空砲やら敵施設やらを片づけて、離島棲鬼にトドメをさした第1爆撃大隊"ボマー1"の隊長っすね」

ボマー1「よろしくな、空母さん方」

 

南鳥島に向かっていったらしい攻撃隊は2つ、いや3つかしら? デスピナさんの持つ航空隊の詳しい編成がどうなっているのかは分からないけれど、話を聞いている限りではかなり大規模な組織が存在しているみたい。

 

翔鶴 (それにしても、よく喋る妖精さん達だわ……)

 

航空参謀「あれ、ファイター5は?」

ファイター3「たぶんまだ寝てるっす」

航空参謀「あらまぁ……つーわけで、ウチふくめてここにいる隊の連中が、「離島棲鬼攻略隊」っす。まぁ攻略っつっても、テキトーに爆弾バラまいてかえっただけっすけどねw」

アタッカー2「いやいや、あの爆撃プランはどうかんがえても姐さんの指揮があってこそっすよ! 爆撃機で戦闘機ボコボコにすんのマジ楽しかったっす!」

ファイター3「姐さんの指示は的確だな。間違いはない」

ボマー1「その通りだ。おれたちが駆けつけたときにはすでに滑走路はつぶれて、沿岸砲台もほとんどが壊れていた。12機のミッドナイトであれだけの戦果挙げたのは、お見事ですよ姐さん」

航空参謀「いいこと言うぜおまえら~!」ウリウリ~

「「うわーっ」」

 

クゥちゃんは仲間の妖精さんからの賞賛に喜んでは、一人ひとりの首を脇で抱きかかえて頭をくしゃくしゃに撫で回す。デスピナ航空隊の妖精さん達は、交情と団らんを重要視した集団のように思えた。

 

航空参謀「だけどおまえら、ウチら爆撃隊が活躍できンのも、ポーターズが輸送ヘリ飛ばせんのも、事前偵察の正確さと制空隊の頑張りのおかげだってこと、わすれんじゃねーぞ」

ボマー1「確かにそうですね」

ファイター3「おれもそう思います」

アタッカー2「名誉にかけて!」

 

少しばかりわざとらしく聞こえるやりとりも、彼らの結束力を良く表しているのが良く分かる。初めて聞く名前がまた二つ出てきたけれど、きっとクゥちゃんや他の妖精さんたちと同じように、お喋りが好きな子たちに違いない。

 

航空参謀「つーわけで、おーいゼロ中隊にファイターズ! 昨日のおまえらの活躍、もうちょっくらわしく話してみ。帰ってきたあとバタバタしてて情報共有あんまできなかったし、簡単な事後報告っつーことで! まず、ゼロ中隊!」

ゼロ1「んあ、おれからすか? いいすけど――まぁさっき言ったとおり、おれたち第零戦闘中隊の昨日の任務は南鳥島の偵察と、そこから離陸した敵航空隊の追跡だ。南鳥島の東南東490kmくらいのところから発艦して、低空で目標に接近。上昇して南側を通過しながら、まずは離島棲鬼偵察を敢行した。そんとき、そいつから戦闘機の増援があったが、まぁ適当にふりきってファイター1と2にうしろから叩いてもらったさ」

 

……本当にお話しする事が大好きなのね、この子達。さっき訊いたデスピナさんの所属組織らしい"EDF"と、何か関連性があったりするのかしら?

 

ゼロ1「姐さん、いちおう偵察結果の報告書は出しましたが――あぁ見てくれましたか――んで、無事に離島棲鬼の情報を後続のチームに伝達したおれ達は、ついでに北西に急行して艦娘達(そちらさん)の上空に到達、交戦。あとはまぁ、そのまま制空とって後続の爆撃隊が――ってかんじだな」

瑞鶴「あ、私の偵察機助けてくれたのってあんた達なのね、さーんきゅっ」

ゼロ1「へへっ、まぁな」

 

"ぜろ中隊"だったかしら? そう言えば、私たちの所に飛来した敵航空機の大群を撃墜したデスピナ航空隊の中でも、主力を成していた他の戦闘機たちよりも突出して私と瑞鶴の艦載機の援護に徹していた中隊がいたことを思い出した。

つまり、総勢百数十機いた大規模航空隊の中で、いの一番に駆けつけたのが、彼ら"第零中隊"と言う事になる。

 

ファイター1「こぉら、おれらの活躍端折ンな! 迫ってきた敵機の大群殲滅したのはおれらっすよ瑞鶴さん! ファイター2と二手に分かれて、散開した敵の航空団から制空とったのはおれ達っす!」

瑞鶴「分かってるわよ、ずっと見てたから。ありがとねっ」

 

私たち機動艦隊を挟み撃ちしようと左右に分かれた敵艦爆と艦攻の大群に対し、背後から襲撃を仕掛けた戦闘機隊が"第1大隊"と"第2大隊"とのこと。敵の航空隊に混じって飛来した時、瑞鶴が深海棲艦の新型機と誤認しかけたのも彼らだ。

 

アタッカー25「まっ、なんだかんだ言っても結局のところ、いちばん活躍したのは戦艦棲姫(デカブツ)どもを沈めた我々、ミッドナイト・アタッカーズだよな」

ファイター2「なぁーにしれっと手柄独占してんだよ! 終始生きるか死ぬかの空中戦やってたのはおれ達戦闘隊だぞ!」

アタッカー13「あんなノロマな蚊トンボ相手に無双されてもなぁw 制空とったっつっても、実際に空母連中たたいて制空完全に取り返したのはミッドナイト隊だし? おれの目が正しけりゃファイターさん達、むしろやつらのノロさに振りまわされてたようにしか見えませんでしたなぁw」

ファイター2「んだとぉー!?」

ファイター4妖精「そういや今回全然活躍できてないや……」

 

戦艦棲姫を含めた強力な水上打撃艦隊と、私たちを追撃していた空母機動部隊をたった数回の空爆で全滅させたのは、尾翼の無い、胴体と主翼を一体化させたような形の爆撃機を操る"アタッカー"たち。

 

アタッカー2「単純な戦果で言えば、完全にわれわれのほうが上のはずなんすけどねー」

航空参謀「ま、そう言うなって。ボマー1もお疲れさん」

ボマー1「うっす」

 

そして、同時に動いていた"離島棲鬼攻略隊"の皆。

 

アタッカー25「ハッ、離島棲鬼なんざ、目をつむってても当たる固定物じゃないすか! 我々は()()を多数撃沈したんすよ!」

アタッカー13「そーだそーだ!」

ボマー1「ずいぶんと小さい戦果で満足してるのなぁおまえ達。実質的に南鳥島っていう戦略級の相手を潰したって意味でも、おれ達の絨毯爆撃の方がいちばん効果あったぜ」

アタッカー2「あの、飛行場と砲陣地崩したのおれ達なんだけど……」

 

口ではそれぞれ反目し合っているように見えるけれど、彼らの口調や声色に嫌味の類いは感じられない。これもきっと、彼ら特有のじゃれ合いの延長なのだろう。

 

デスピナ「おーい、自慢話するのは良いけど、あんまり困らせるなよ。その人たち俺の大先輩なんだからなー」

 

周囲の警戒に当たっていたデスピナさんから、私たちの肩口手元に乗っている妖精さんたちに言い聞かせる声が聞こえた。

"大先輩"と思って貰えるのは嬉しい反面、大破している今の格好が格好なだけに少し恥ずかしい。

 

翔鶴「いえ、お気になさらず。皆個性的で、とても強い子達なのですね。良い事だと思います」

デスピナ「…ありがとうございます」

 

ほんの数分の会話だったけれど、自然とそう思えた。

もう少しだけ、彼らのお喋りに耳を傾けてみようかしら。

 

 

 

デスピナ「クゥー、そろそろお前達の機体の整備と補給作業が終わるから、皆集めて戻ってくれ」

 

間もなく敵の勢力圏を抜けきる頃だろうかと思いながら彼の声を聞いた時には、もう1時間が経過しようとしていた。デスピナさん所属の妖精さん達は皆、所属する母艦からの指示に従い、一言二言残してから帰投していく。

 

航空参謀「アイサー。デスピナ航空隊各員! 艦載機(相棒)の整備が終わった! 機嫌損ねないうちに帰っぞ! ――んじゃ霧島さん、ウチらはいちど旦那ンとこに戻りますんで、つぎ会うときは地上っすね」

霧島「ええ。横須賀で」

航空参謀「うっす。おら、ボマー1おきろ」ベシベシ

ボマー1「んぁ…

 

アタッカー25「世話んなりましたね、翔鶴さん瑞鶴さん」

翔鶴「いえいえ」

アタッカー13「勝利の立役者は爆撃隊っす! そう記録しといてくださいよ!」

瑞鶴「はいはい、分かったわよ」

 

副長「すみません、わたし達もこのへんで失礼します」

砲雷長「もしまた戦場で出会ったら、こんどはデスピナ砲雷科もたよりにしてくださいね」

榛名「ええ、その時には是非、よろしくお願いしますね」

 

デスピナさんが少しだけ増速し、妖精さん達を一体ずつ回収する。

彼らはデスピナさんの艤装の中に見えなくなるまで、短い腕を少し上げて手を振り続け、数日間の別れを告げた。

横須賀までは、あと2日半以上は掛かる。

 

――少し気になったのは、妖精さん達を回収するデスピナさんの顔色が、心なしか悪く見える事だった。




本当は14話を執筆してから早めに投稿する予定だったモノのために、例によって進展がロクにありませんorz
リアルが忙しく体力が続かず……。結局はSAIFAの無計画さによるものですハイ。

今回はEDFシリーズ(特に4/4.1)由来のネタを多めに入れてみましたが、気付きましたかね?

16話、誠意執筆中。この連休中には投稿出来るようにしたいと思います。
・5月7日(月)、ごめんなさいどんなに遅くとも今週中には形にします。撤回する(定型文)
少なくとも何ヶ月も更新が滞る事の無いよう、出来るだけ指を動かし続けたいと思います。

次回は御一行を横須賀に到着させて、裕一君を提督と対面させて、着任させて……。
……書き溜めをした方が良いのだろうかと思う、今日この頃。

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