"要塞空母デスピナ" スターティングオペレーション!   作:SAIFA

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1話だけだと、EDFも艦これも何も関わっていないと言う衝撃(笑)の事実が発覚したため、2話目を投稿します。


第一章:新しい人生《ふなで》
第2話:転生空母-デスピナ-


ハッと我に帰る。

 

撤回する。帰れない。

気がついたらとんでもない重さの物を背負って大海原のど真ん中とか、明らかに迷子の次元を超えている。

そして、何故水面にに二本脚で立って……いや四本脚の動物でもそうそう液体の水の上になんて立てたものではないのだが。

ここは落ち着いて、状況の確認だ。パニックになるなどもってのほかである。

 

まず、

 

裕一「ここどこだよ?」

 

いくら異世界に転移させると言っても、もう少し転移先の立地くらい選べない物なのか。

しかも海の上て……。折角異世界転生と言う全国の二次元好き憧れのシチュエーションなのに、人に見つけて貰えず終いだったら最悪孤独死、バッドエンド確定。現実は非情である。さてはあの女の子は鬼か。

現在どこの海域にいるのか全く検討がつかないため、闇雲に動いてすぐ事が進展するとも思えない。と言うか動き方すら分からない。

 

とりあえず、自分の格好を確認する。

まず服装が、ブレザーとネクタイで構成される高校指定の制服ではなく、紺色の学ランのようなものに変わっており、頭には帽子を被っていた。

左耳のスピーカーからマイクが伸びたような形のヘッドセットをつけていた。

 

被っている帽子を取りデザインを確認する。全体的に色は服と同じく紺色で、正面に金色で錨をあしらった装飾が施されていた。帽子との組み合わせと、階級を表す肩章が無い事から、着ている学ランは大方、旧日本海軍の下士官用第一種軍装モチーフと見た。

 

左腕には1mはゆうに超えるであろう分厚い長い板のような物があり、右腕の前腕には手首から肘くらいの長さの直方体の箱のような物、中指には赤色の宝石がセットされた青みがかった銀色の指輪を嵌めている。どこかで見たようなデザインだな……。

背中には、とても大きいゴチャゴチャしたメカニカルな物を背負っており、それの左右には軍艦の船体のように一部が赤色で塗装されたデザインの装甲版のような物をこしらえていた。艦橋らしき物も延びている。

自分の体より一回りほど大きいであろうそれは、腰から腹回りにガッチリと固定されている。しかし、大きさの割には随分軽いようにも感じた。

そして両足の腿の前後にはプロテクターのようなものが装着されていて、右腕についている物と同じ箱のような物が、横に一つずつ装着されていた。前腕のそれと腿のそれには、先のほうに2つずつハッチのような物がついている。

脛の前後にも腿と同じくプロテクターのような物が装着されている。

 

自分の格好といい、身につけているものといい、まるで艦娘の艤装だな。そういえば、確かあの女の子は艦これの世界に転生させると言っていた。自分の置かれている状況と格好から察するに、どうやら俺は艦娘として転生したらしい。

 

裕一(俺、男のままなんですけど……?)

 

艦娘ならぬ艦息ってか。ハハッ笑えねえ。

艦種はなんだろうか? 艤装の大きさと、左腕に飛行甲板らしきものをこしらえている事から、おそらく大型の空母系だとは思うのだが、艦これのそれ以上にやたら重武装な気がする。

 

 

 

――まぁ、そうでなきゃ納得は出来ないがな。

 

 

 

裕一(あれ…? 何だろうこの感覚)

 

それはそうとして、

 

裕一(あっついなぁもう……)

 

こっちに転移してくる前は6月下旬。日本全国の学生諸君が「あと半月ほどで夏休みだ!」と浮かれているのに対して、梅雨前線による独特のじめった嫌な空気と、いつ来るか分からない雨のせいで、洗濯篭を抱えたお母様方が天気予報から目が離せなくなる時期でもある。

 

重ねて言うが、とにかく暑い。梅雨だと言うのに雲が少なく晴れていて……いやここが日本近海とは限らないんだけれども、服の生地が厚い上に色が黒に近いため熱が篭る篭る。

上着のボタンを外して前を開けたいが、背負っている艤装のせいでそうもいかない。

 

??「すみません、ちょっといいですか?」

裕一「うおっ」

 

突然肩の方から声が聞こえた。右肩を見やると、そこには5cmほどの小人がいた。考え事しているところに耳元で急に喋りだすものだから、声に出してビックリした。

 

裕一「君は?」

??「申し遅れました。私はデスピナ艤装の副長妖精です。これより貴方の補佐を務めさせて頂きます」

 

ちんまりとした体でビシッと敬礼をする。

なるほど。ちまっこいコイツが()()()()()()

 

裕一「あ、それはどうも。俺は山本裕一って言います」(デスピナ……)

副長「……なるほど。あなたが……」

 

何か含みのある事を呟く。

 

副長「で、こちらがデスピナ兵装の指揮官、砲雷長妖精です」

砲雷長「よろしくお願いします」

 

あ、もう一体出てきた。丁寧にお辞儀をしている。

 

簡単な自己紹介を済ませ、改めて副長妖精、砲雷長妖精と名乗った小人を見る。

体躯が圧倒的に小さく、デフォルメしたイラストみたいに等身が低い事を除けば、姿形は人間の女性のそれとあまり変わりない。

艦これの兵装や艦載機と一緒に描かれている、いわゆる「妖精さん」と呼ばれるアレらと雰囲気がよく似ていた。

 

服装は、海軍に用いられているような、副長が半袖の白い略服に白い帽子、砲雷長も服は同じだが、帽子の色が青色である。

 

裕一(あ、ずるいぞお前らは夏服とか。でもコイツら何だ? ホムンクルス? コロボックル? 日本語は通じるみたいだけど)

 

そして、今チラッと名前が出たデスピナなんて名前の艦は――

 

 

 

――いや……デスピナとは俺の――

 

 

 

副長「この艤装についてと、扱い方を説明したいと思いますので、《コマンド》と思い浮かべて下さい」

裕一「っ、わかった」(コマンド)

 

我に帰り、とりあえず言われた通りにする。

さっきからチラチラと頭によぎるものは、どうやらデジャヴのそれでは無さそうだ。

 

目の前に長方形のホログラムのような何かの画面が出てきた。

すこぶるどうでも良いが、コマンドーとかでも反応しただろうか。

 

裕一(今度やってみよ)

 

副長「この画面では主に、レーダーやソナーによる位置情報、船体情報、海図などを確認するのに使います。兵装を使用するのも、この画面からです」

裕一「ふむふむ」

 

画面の左半分ほどが、円形のレーダーのようなものと方位計で占められている。右半分には、上から2分の1くらいのところに項目メニューが二列と、残りの2分の1は艤装(船体)の状況を示す見取り図が表示されている。

 

項目メニューは、左列上から"兵装一覧" "艦載機管理" "航空管制" "レーダー/ソナー表示切替"、右列上から"海図表示" "システムリンク" "船体情報" "戦績確認"の8つがある。

 

軽く弄ってみる。レーダーやソナーによる索敵結果を表示したり、片方だけ非表示にしたり。全画面表示にしたり。

海図表示の項目をタッチすると、別ウインドウで自分のいる位置を中心に海図が表示された。

現在地をちょっと探ってみたり、人差し指と親指で拡大縮小したり。レーダーも同様に操作出来た。

 

裕一(おーこれは分かりやすい)

 

まるでタブレット端末を操作しているみたいだ。現代かそれ以上の技術でなければ実現出来ない代物だなこれは。

兵装一覧と艦載機管理は、自分の艤装の規模から察するに面倒くさそうなので後回し。

 

 

 

――違う、見るまでも無いだけだ。艦載機なんて殆ど――

 

 

 

なんだが頭痛がしてきた。

とんでもなく嫌な事を思い出しているような……。

 

裕一「……なるほど……。そうだ、俺の艤装について詳しく知りたいんだけど」

副長「わかりました。では説明いたします」

 

頭の痛みを紛らわすため、そしてさっきから気になっている事を確かめるため、正直考える意味も薄いと思えるほどの仮説を立てる事にする。

 

副長がチョイチョイと肩の上で動くと、ホログラムの画面が切り替わった。そこには、

 

 

デスピナ級要塞航空母艦デスピナ

機関

・重力制御式熱核融合炉

電探

・広域多機能レーダー 探知半径 約500km (半球状空間)

・射撃管制用レーダー 探知半径 約130km 探知高度 約600m

音探

・アクティブ/パッシブソナー 探知深度600m以上

対水上/対地兵装

・スーパーメナス電磁投射砲(レールガン) 単装砲4基

・ライオニック巡航ミサイル 即応弾150発/総弾数600発

・N5巡航ミサイル 即応弾40発/総弾数120発

・NX大型巡航ミサイル 即応弾=総弾数6発

対潜兵装

・ASROC対潜ミサイル 即応弾40発 総弾数120発

対空兵装

・スタンダードミサイル 即応弾200発 総弾数800発

・対空ミサイル 即応弾100発 総弾数450発

・CIWS レーザー対空迎撃システム 4基

・CIWS パルスビームファランクス 4基

艦載機

・戦闘機 EJ24 12機

・戦闘機 ファイター 180機

・戦術爆撃機 カロン 72機

・戦術爆撃機 ミッドナイト 36機

・制圧攻撃機 アルテミス 36機

・大型攻撃機 ホエール 4機

・大型輸送ヘリ ヒドラ 12機

(現在搭載機合計:352機)

艤装固有設備

・エレメンタル戦術情報演算システム

・弾薬製造設備

支援兵器:衛星軌道兵器ノートゥング

・サテライトブラスター

・スプライトフォール

・ラグナブラスター

 

 

と表示されていた。いやいや……。

 

裕一「……は? 何だこのチート性能!? いや嬉しいけど、俺に使いこなせるのかなぁ」

 

いくら強力な武器や防具を持っていても、基本的な扱い方すら分からずに性能に頼りきりとかただの恥晒しである。実際に()()()()()俺は、()()()()()()()()()に生き恥さらしてきたらしい。

 

いや、それよりも航空機が、全て生き残っている!?

しかも格納庫の容量一杯だと? ()()()()の時すらこんなに沢山は積んでいなかった……と思う。多分。

"()()"()()()()()()()()()()()()()()()()()()これ以上の贅沢はないが、良いのだろうか、俺だけがこんなに持っていて。

オマケにに弾薬製造施設? そんな贅沢なモン、どこの創作物でも訊いた事も無いぞ。

 

えぇい、さっきから何なんだ! この、懐かしいような気持ち悪いような、何とも言えないこの感じは!

 

副長「だいじょうぶ! そのための私ですから。これからいろいろ覚えてくださいね!」

裕一「…よろしくお願いします」

 

副長の声を聞き、また我に帰る。

そうだった。この子がサポートしてくれるんだった。ひとまずは安心である。

転生させられた時は、全て独りで全てやっていかねばならないのかと少し不安だったが、こういう時にやるべき事や出来る事を示してくれる人がいるのはとてもありがたい。

 

ここで、ようやく頭痛が治まり、さっきから頭によぎる感覚についての仮説も、ほぼ事実になった。

 

思い出した……いや、()()()()のだ。“もう一人の俺自身”について。

 

 

 

 

 

裕一(――俺は、連合地球軍……EDF海軍所属……)

《要塞空母デスピナ、スターティングオペレーション》

 

 

 

 

 

デスピナ(――デスピナ級要塞航空母艦一番艦、"デスピナ"……だった、のか……)

《要塞空母デスピナ、起動》

 

 

 

 

 

デスピナ「――俺は、デスピナ……?」

 

副長「!? まさか……!?」

デスピナ「ん、 どうした?」

 

副長「い、いえ、何でもありません。コホン…では、早速――」

 

そこから、艤装の扱い方に関する講義兼実地演習が始まった。

まずは機関の動かし方と、前進・後進、舵取りの方法を教えてもらう。少々ばかり機関始動(エンジンスタート)に梃子摺ったが、やり方さえ覚えてしまえば意外と簡単で、実際に航行してみると水上スキーに似ていて結構楽しい。

 

デスピナ「おぉ、すげー! 海の上走ってる! 俺!」

 

少しの間、適当に動いてみる。舵の効きが若干重い気がするが、意外に小回りは利く。

潮風が全身に当たる感覚は、人型である艦息ならではの醍醐味ではないだろうか。

顔面が涼しくて気持ちがいい。

 

なんだろう、初めての感覚な筈なのに、どこか懐かしさも感じる。

やはりデスピナも、図体がバカみたいにデカいとは言え、曲がりなりにも艦だからだろう。

 

ところで、さっきから自分の足に装着されている主機以外に駆動音がすると思ったら、背負っている艤装から二本の"脚"が伸びていた。脚先は水面についていて、自分の主機と同じく推力を生み出している。艤装の大きさの割りになんか軽いと思ったら、艤装の足先には"浮き"があるようだ。

旋回時、曲がる方向に少し体を傾けてみると、内側の艤装の脚が縮んで、外側の脚は伸びて、スクリューの回転エネルギーを無駄にしないためだろう、自動で制御される事を確認した。

 

"機関を動かして船体を進める"。文に書き起こせばたったこれだけで終わってしまう事でも、俺は一々驚き、喜んでいた。

そんな矢先、開きっぱなしだったレーダーにいくつか赤い点が。これはまさか……。

 

デスピナ「なぁ副長、レーダーに赤い点があるんだけど」

副長「!? それは敵、深海棲艦です! 総員戦闘配置!」

デスピナ「敵!?」

 

デスピナ(まさか、こっちの世界に()フォーリナーが!? て違うよな、流石に)

 

深海棲艦。裕一としての俺の前世でよく遊んでいたブラウザゲームに登場する、敵キャラクターの総称である。

流石にフォーリナーは居るわけないよな。……居ないよね?

 

何はともあれ、この世界で初の戦闘が、訓練でもなんでもなく実戦である。まだ艦息としての兵装の使い方なにも聞いてないのに……。

 

こうして、副長の講義は実戦と言う名の中間試験を迎えた。

 

そして今この瞬間から、俺の艦息としての長い長い第二の航海(じんせい)が始まった。

 

……の割には、いきなり命がけでハードな気もするが、もう一つの前世で要塞空母として産まれた代償では無い事を祈ろう。

 

デスピナ(頑張ろう。先は長い)




本家のデスピナ艤装より、艦載機の数を減らしております。

対空レーザー兵器は、イメージとしてはEDFシリーズに登場するウイングダイバー(≠ペイルウイング)の中距離兵器か狙撃兵器であるレーザーに近い……と思います。

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