"要塞空母デスピナ" スターティングオペレーション! 作:SAIFA
2017年2月9日(金)、敵の潜水艦隊との距離を180kmから80kmに修正。流石に、そんなに遠くの音を聞くことが出来るソナーは無いと思われますので……。
2018年12月28日(金)、ASROCのコマンド画面上での挙動を修正。
2018年7月9日(月)、"デスピナ"とあるべき主人公の名前が"裕一"のままになっていた箇所を修正。
副長「方位と距離は!? 何隻ですか!?」
CDC妖精「方位0-7-4、距離450km、数6! 本艦に向けて接近中!」
副長妖精が小さい体から声を張り上げ、状況を確認する。
俺はレーダーを確認しつつ、敵のいる方角の水平線を見つめる。
450kmも離れた所にある目標が目視で確認できる筈がない。
しかし今、俺の命を狙いに来ている明確な"敵"が、確かに水平線の影にいるのだ。
副長「敵艦隊の編成は!?」
CDC妖精「戦艦2、重巡2、駆逐2。いずれもeliteクラス!」
待って、初の戦闘がいきなりelite艦隊って、え?
副長「デs…裕一さん」
デスピナ「デスピナで良い。どうやらこれが、俺の名前らしいからな」
副長「…了解です。では、デスピナさん、早速ですみませんが、敵艦隊に補足されましたので、これより迎撃にあたります。今から説明する通りに操作してください」
デスピナ「了解」
俺は気持ちが昂ぶって来るのを感じつつ、心を落ち着けるため呼吸を一回。
デスピナ(落ち着け、落ち着け。初めてでも、焦らず急ぎつつ、確実に対処すれば間違いは無いはずだ)
デスピナとしてだけでなく、裕一としての俺も強く出てきているためか、どうにも緊張する。
副長「まずは、コマンドから兵装一覧を選択してください」
選択する。艤装に搭載されている兵装一覧が別ウィンドウで出てくる。その中に、対艦兵装の項目に分類された兵装が4つ表示されている。
副長「今回はミサイルを使います。ライオニックを選択して、レーダーから目標を指定してください」
ミサイルのカテゴリからライオニック巡航ミサイルを選択。レーダー上の赤い点が緩やかに明滅する。
副長「目標をタッチすれば、撃ち込む弾数を指定できます。今回は戦艦と重巡に2発ずつ、駆逐艦には1発指定してください。あとは、レーダー下の発射ボタンをタッチすれば攻撃します」
デスピナ(ええと、戦艦と重巡に2発2発、2発2発……。駆逐艦に1発、1発っと)
ターゲットを指定し終え、発射ボタンをタッチする。
砲雷長「ライオニック、ファイア!」
砲雷長妖精の号令で、背負っている艤装のミサイルハッチから、左右に計10発のミサイルが発射され、白い噴射煙を吐き出しながら深海棲艦のほうへ飛んでいく。レーダーにも、ミサイルを示しているのだろう、高速で敵に向けて移動している細長い三角形が10本表示されていた。
背中の方から、ガシャガシャウィーンと艤装の機構が動く音がする。おそらくミサイルを再装填しているのだろう。
その後、敵にミサイルが当たったのか、レーダーから敵の反応が全て消失する。
デスピナ(まるでゲームのチュートリアルだな、この艤装からしてみれば)
あっさりと勝利してしまった。何も問題なく敵を仕留められたに越したことは無いのだが、戦いがあまりに一方的過ぎたために勝ったという実感が沸かなかった。
さらに言えば、深海棲艦を生で見ることも叶わなかった。
なんて事を思っている間にレーダーに新たな反応が現れる。
CDC妖精「敵艦隊を多数発見! 本艦を包囲する布陣で展開していた模様!」
デスピナ「なにっ!?」
包囲された? 何それ危なくない? これチュートリアルじゃなかったっけ?あ、実戦でしたそうでした。
CDC妖精「方位0-1-0、距離80km、深度45に潜水艦6! 方位2-4-5、距離420kmより12! 方位1-8-5、距離350kmより42! 方位3-0-2、距離410kmより36! 全てflagshipクラス! 戦艦と空母と重巡洋艦により主力が構成されている模様!」
副長「どうやら、潜水艦が周囲の深海棲艦を呼び寄せたみたいです。先ほど一艦隊撃破したので、退路の確保が出来ているのが幸いですね」
eliteの次はflagship? 当然かも知れないが、向こうさんは本気で俺を殺しに掛かって来ているらしい。
さっき海図見たときに詳しく確認し損ねたが、俺はホントに一体どこの海域にいるんだ?
水上の敵の布陣の中央である方位2-4-5――おおよそ西南西の方向――へ回頭しつつ、ややキレ気味に敵状を整理する。
デスピナ「えーい、すべて撃沈する! 方位2-4-5をa群、方位1-8-5をb群、方位3-0-2をc群、方位0-1-0をd群とする!」
今度は自分で指示を出す。攻撃の要領は分かった。
まずはd群の潜水艦隊にアスロックを2発ずつ指定。
砲雷長妖精「アスロック、ファイア!」
艤装から12発のアスロックが発射される。
レーダーでも12発の飛翔体を確認した。
次はa、b、c群の目標90隻に向けてライオニックを2発ずつ発射しようと思うのだが、目標がやたら多いため一発一発指定するのはいささか面倒くさい。
そう言えば、レーダーをはじめとして、コマンド画面の操作はすべてタブレット端末やパソコンのマウス操作のそれとよく似ている。
デスピナ(と言うことは……)
裕一としての記憶を頼りに、艤装の操作に一工夫をしてみる。
ライオニックを選択する前に、レーダー上の敵陣bの左上をダブルタップ&ホールドし、敵陣abc全てを囲うように、右下にスワイプする。
やはり左上を起点として長方形のフレームが現れ、水上の敵表示すべてが明滅する。ロックを掛けることができたようだ。
すると、レーダー上に兵装ボタンが2つ現れた。「ライオニック」「N5ミサイル」と書いてある。
デスピナ(なるほど、あらかじめロック対象を決めたら兵装が自動選定されるんだな)
総弾数の都合上NX大型ミサイルは使えないのだろう。
デスピナ(あ、そう言えばN6とN7ミサイルが無いのは何故だ? 別に無くてもそこまで困ることは無いと思うが)
指で操作し頭で分析・思考しつつ、手早くミサイルの発射指示を進める。
あ、テンペストも無い。
再びライオニックを選択する。
今度は数字と、
数字の表れる入力欄のようなところには"1"と表示されていたが、プラスの三角形をタッチした事で数字が"2"に変わった。
再び発射ボタンをタッチ。
砲雷長「ライオニック、ファイア!」
艤装からまずライオニックの即応弾150発が全て飛び立つ。飛び立つと言っても、艤装の構造上左右に水平発射なのは、凄く違和感を覚えるぞ……。
発射された物から順次再装填され、追加の30発も続けざまに飛翔する。
デスピナ「けほっけほっ……」
ミサイルの噴射煙が物凄く煙たく少し咳き込んだ。これも艦息として転生した故か。
背中と左右が真っ白である。
かまわず俺はレーダーを見続ける。親父の吸っていたタバコの副流煙と同じだこんなもん。
CDC妖精「d群の潜水艦隊より魚雷24! a群、c群より艦載機発艦中!」
レーダー画面に魚雷の形をした小さいマーカーが沢山映っていた。大分前にこちらに向けて扇状に撃ってきたらしい。
a、c群のほうには飛行機の形をしたマーカーが少しずつ出現していた。
副長「魚雷の予測進路を出せ!」
デスピナ「え、そんな機能あんの?」
またまた驚きの新機能である。
レーダー画面上の魚雷の先に細長い三角形が連なり、波打つように明滅して進路を教えてくれる。
俺はスクリューを高速で動かし、魚雷の予測進路から外れる。
情報は逐次更新され、魚雷の進むであろう道のりも少しずつ修正されていた。
デスピナ(実戦でこんな事は気にしちゃいけないんだろうけど、流石にちとズルすぎやしないか)
是非とも活用させていただこうじゃないか。
使える物は何でも使う。それが俺のポリシーだ。
魚雷の直撃コースから確実に外れたのを確認し、次は対空戦闘に移る。
デスピナ「敵の航空機の数は!?」
CDC妖精「128機です!」
デスピナ「そっちで兵装の操作は出来るか!?」
CDC妖精「指示さえ頂ければいつでも!」
デスピナ「スタンダードミサイルで迎撃せよ! トラックナンバーの割り振りはそっちに任せる!」
CDC妖精「了解っ!」
せっかく艤装の着用者になったので、艦長の気分で指示を出してみる。実際にこんなやりとりはしないだろうけど。
しかし俺は、
デスピナ(うーん、我ながらカッコ良かったぞ今)
別になんでもないことで悦に入っていた。裕一として。
砲雷長「スタンダードミサイル、ファイア!」
再び艤装のミサイルハッチが口を開け、艦隊空兵装の代表格――スタンダードミサイルが煙を噴出して飛び立つ。
またしても噴射煙が艤装を包み込む。
指示を出しておいてなんだが、もう少し煙少なくならないだろうか。
やがて、先ほどd群に向けて放ったアスロックが目標物のいる地点に到達したようで、レーダー上での動きが止まる。パラシュートを開いたのだろう。その後着水したと思われるタイミングで、コマンド画面上からは消えた。後は、短魚雷のアクティブソナーがしっかり動作してくれる事を祈るだけだ。
CDC妖精「ソナーよりd群の反応消失!」
無事、潜水艦は撃沈出来た。
敵航空機にも次々とミサイルが着弾し、レーダー上の飛行機のマーカーが全て消えた。
デスピナ(そう言えば、「スタンダードミサイル」て名前の割には随分と射程が長いような……)
絶対別物だろこれ。ブースター部が延長でもされているのだろうか?
あと「対空ミサイル」てナンだ? いやさっき撃ったやつじゃなくて、搭載されている兵装の名前ね。
さしずめサイドワインダーかシースパローあたりだとは思うのだが、正体や如何に。
更に水上の深海棲艦たちにもライオニックが着弾し、次々に反応がレーダーから消えていく。
敵艦隊のいる方角に黒煙が昇っているのが見えた。
CDC妖精「abc群、大半を撃沈。残りは戦艦と空母と思われる固体のみです」
デスピナ「なら、最後の仕上げだ」
残りの標的にライオニックを1発ずつお見舞いしてやる。
砲雷長「ライオニッ――ゲボッゲホ……!」
これまで通り号令を飛ばそうとした砲雷長がむせ返った。
デスピナ(大声出す前に茶なんか飲むな、砲雷長)
でもライオニックはちゃんと飛び出していった。
少しして、目標にライオニックが着弾。レーダー画面上からすべての深海棲艦の反応が消失した。
CDC「レーダー、ソナーに敵影反応無し」
デスピナ「終わったのか」
妖精達「「大勝利だ! EDFッ! EDFッ!」」
ふぅと一息、安堵の溜息。艤装内からは妖精たちの勝ちどきの叫び声。
副長「やりましたね。大勝利です! 初陣にしては見事な操艦でした!」
デスピナ「ありがとう。でも少し疲れたよ」
最初の戦闘がeliteとflagshipクラスなんて精神的に疲れるわ。
EDFシリーズで言えば、いきなりハードやハーデストに挑戦するような物である。が、デスピナに掛かればこんな物か。
戦艦と空母のflagshipなんてライオニック2発かましてもまだ沈まないんだもん。
次の瞬間頭上から砲弾降って来たらどうしようとか思ったぞ。まぁ、距離が距離だし、敵の艦砲射撃が届く事はまず無いだろう。何より要塞空母の装甲と耐久力は
砲雷長「要塞空母デスピナにはミサイルがある。敵には誤算だったな!」
副長「あっ、そのセリフ私が言いたかったのにー」
砲雷長はデスピナの乗組員だったのだろうか。
あと副長はそんな事で拗ねるな。次の戦いが終わったら言えば良いじゃないか。
砲雷長の言ったセリフは、EDF4(≠4.1)でデスピナの艦長を務めていた人のものである。ゲーム中に登場した時の声は、とても頼もしさを感じさせられた。
実際のデスピナの前世の艦長は、果たして生きているのだろうか。
確か、フォーリナーとの最終決戦で――
ズキィィィ……!
デスピナ(――っ、くそっまた頭痛が!)
無理に思い出そうとするのはやめておこう。あまりボサッとしている訳にもいかない。
デスピナ「さて、喜ぶのも程々にして、改めて対水上・対空・対潜警戒を厳となせ。まだ敵海の中央にいる事を忘れるな」
副長「ふふっ、すっかり艦長気分ですね。カッコイイですよ♪」
突然おだてたれられ、ちょっとだけ気分が昂ぶる。
が、
改めて気を引き締める。
副長「さて、ミサイルの使用法はもうバッチリですね。次はレールガンを用いた艦砲射撃訓練ですよ!」
デスピナ「あ、やっぱりまだ続く?」
副長「あたりまえです! まだまだ教えることはたくさんあるんですから、移動しながら覚えてもらいますよ!」
デスピナ「はぁい」
ですよね。さらに後には一番のお楽しみである艦載機運用の講義もあるだろうし、まだまだ長そうだ。
デスピナ「……て副長、結局俺たちは、今どこにいるんだ? 当ても無く現在地も分からず動き回るのは、それはそれでどうかと思うんだが」
副長「デスピナさん、海図」
デスピナ「あっ……」
すっかり忘れていた。この艤装には色々な便利機能が盛り沢山じゃないか。
俺はコマンドから海図を開く。現在自分のいる場所から遠ざかるように、ピンチインの操作で表示範囲を広げていくと、大体の位置は掴めた。おおよそ、ハワイ諸島の南の方だ。
ついでにコマンド画面の右下に小さく表示されている時刻も確認する。このあたりの現地時間は真っ昼間だ。
デスピナ「太平洋のど真ん中、か」
副長「いちばん近い港は、ハワイのパールハーバー海軍基地でしょうか」
デスピナ「俺英語話せないんだけど」
副長「学校で習わなかったんですか?」
デスピナ「リスニングとスピーチはニガテだったんだよ……」
ごめんなさい盛りました。ホントは英語全般苦手っす。
どう言うわけか、ここは裕一としての面が強く反映されてしまっている。今の俺は多重人格と言うより、双方の記憶を同時に引き継いでいる状態のようだ。
さらに厳密に言えば、裕一の魂にデスピナの記憶がやってきたような……何だろうね。
抜け落ちている部分も多いとは言え、デスピナとしての記憶が多少はあるんだし、英語くらい覚えていても良いモンだと思うんだが、そう都合よくもいかないか。
こんな事になるならもっとちゃんと英語の勉強しておけば良かった。
いやある日突然太平洋のアメリカ領近くに放り出されるとか誰も想定出来ないだろうけど。
副長「仕方ないですね。では大分遠くなりますが、日本の横須賀鎮守府に向かうのはどうでしょう? 艦娘たちも大勢いるでしょうから、身を置くにもちょうどいいとおもいますよ」
デスピナ「そうだな。良し、進路を西へ! 本艦はこれより、横須賀に向けて出発する!」
再び主機を回し、方位をおおよそ270からもう少し北寄りに舵を取る。長い航海の始まりだ。
副長「では、目的地も決まった所で、艦砲射撃演習を実施します。対艦戦闘よーい!」
コマンド画面を見れば、レーダーには再び赤い点が現れ始めていた。
デスピナ(休む暇なし、か)
と言うか全然演習じゃないよこれ。
誰がどう見ても実戦だよ。
習うより慣れろってか。仕方ない。
デスピナ艤装の操作の描写やホログラム画面のデザインを考えるのは、大変ですが楽しいですね。
次回は、裕一君のデスピナ艤装の説明が"
第3話とはあまり展開上の繋がりは無さそうなので、こちらは数日空けてから投稿する事にします。