少し不機嫌で、マスターを探るような、女の目。
その瞳があまりにも美しかったから。少年はその時の金色の髪の少女にどうしようもなく惹かれた。
それは彼が何よりも衛宮士郎だった証なのかもしれない。
地獄を見た。
彼らは叫ぶ。殺さないでくれと、自分達は何も悪くないと。
彼らの存在は人類に影響を及ぼす。ゆえに殺さなくてはならない。
地獄を見た。
泣き叫ぶ声、血まみれの人形。その全てを破壊しつくした。
せめて苦しまないよう、一瞬で。
地獄を見た。
いずれ辿る、地獄をみた。
「ッハ!…はぁ…はぁ…」
今のは…恐らく英霊エミヤの記憶。
彼は死んだ。俺の目の前で。だからあり得ないのに
「俺に何を求めているんだ…。」
関係ない。俺はエミヤを衛宮士郎と決して認めない。
あんな軟弱な、自分殺しをするようなやつ決して正義の味方とは認めない。
でなければ俺が衛宮士郎になる前、何のために彼らを殺したんだ。何のために衛宮士郎になったんだ。
だってそうだろう。そうじゃなくちゃ、俺は正義の味方にならなくちゃいけない。
その為の犠牲だ。だからあの時、俺は誰も救えなかったんだから。
俺はエミヤを否定しなくちゃいけない、でないと俺はなんのために、あの地獄を生き延び、見送られたのか…。
エミヤのあんな顔なんか、知るものか…!
例えどんなことがあっても
俺は、正義の味方を張り続ける。
そうして彼は、現実から逃げるようにその理想に蓋をした。
翌日
衛宮が休学届けを学校に提出したらしい。アイツのことだ。なんかヘマをしたんだろう。
一応無事ということは電話で確認してるし、アイツが聖杯戦争で失敗してもまあ問題はない。第2プランに移るだけだ。というか藤村がうるさい。そんなに気になるなら家にいけばいいのに…まあいいか。
僕は必ず桜を助ける。それだけが、僕の唯一の願いなんだから。だからがんばってくれよライダー。
俺は10年ぶりに火災の焼け跡にきていた。ベンチ以外何もない、まるで荒野のような場所。芝生でもまけばいいのに、と思ったがなるほど、体が重い。まるで呪われたようだ。
こんな場所誰もよりたがらないし、仮に芝生を撒いたところで腐り落ちるだろう。
なぜこんな場所にきたのか、俺の中の衛宮士郎が英霊エミヤとなんらかの共感をしたのかわからない。
ただここにきてよかったと思う。自分の中の正義を再確認できる、けして、決して10年前のあの事故を、今回の聖杯戦争で起こさせない。
いつの間にか夕方になっていたようだ。夕食も作らないといけないし、マスター殺しをしたであろうキャスターを探さなくてはならない。俺が死んでしまってはアヴァロンを桜に渡す計画もセイバーを召喚できなかったので出来ない。アヴァロンはアーサー王の魔力がなければその性質を発揮しない。それでは桜を助けれない。
だが、第2のプラン。キャスターの力を持ってすれば桜を助けることなど用意だろう。だからこそ、俺は消えそうになっているであろう神代の魔女を探す。
それが俺に出来る、唯一のことだった。
数日後
収穫は何もない。藤ねぇからの電話ラッシュもスルーしてたら家にまで突撃してきたのには驚いた。
とはいえ藤ねえの相手は楽だ。気負わなくていいし善性でもある。切嗣の生前の知り合いに会っていたといったら笑って許してくれた。が、もう会ったのなら学校に来いとのこと。そろそろ休学届けも取り消すつもりだったしちょうどよかった。慎二とは電話で話しをしているが直接会ってこれからの計画も練っていきたいというのもある。
今日で最後の日。だが、結果は敗北。キャスターは見つからなかった。今は夜、明日から学校にいかなくてはならない。まあ、死にかけの女性を見つけるなんて元々無謀である。あまり期待はしていなかったので落胆はない。それに、なんの成果がない、というわけでもないだろう。今日、もしかしたら彼女が来るかもしれない。だからまあ、夜まで公園のベンチで待ってから帰っている。明日に備えるとしよう。
ふと――――風が吹く。
だが、何かがおかしい。その風には熱がなかった。まるで人が周りにひとっこ独りいないかのような、そんな、無機質めいた風。
――――どうも不自然だ。そもそもここは大通り、だというのに人がいない、まるでこれは。
そこに、確かな温かみを持った声が響いた。
「早く召喚しないと、しんじゃうよ?お兄ちゃん」
――――かかった。
食いついた。ああ。彼女のその言葉を待っていた。俺に接触するのはわかっていた。
俺のように養子ではない。衛宮切嗣の実の娘。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
まるで白い妖精のような、可憐な少女。だが関係ない。
彼女は殺す。まともな教育を受けてないためか善悪が狂ってしまった哀れな少女。
同情はするし、出来ることなら殺したくはない。が仕方がない
彼女は危険すぎる、ゆえに殺す。
すかさず投影した無名の剣で
彼女の首を切断――――
――――できは、しなかった。
鉛色の巨人が、巨大な剣を持って俺の剣戟を防ぐ。
ヘラクレス。
ギリシャ神話最強の英雄が、そこにいた。
「あはっ」
はしたないが、思わず笑みがこぼれる。英霊がいないとはいえいきなり殺そうとする奴に慈悲なんて与えない。
まだ見ぬ弟にワクワクした過去もあったがそれは昔、もう私には彼は切嗣の息子で、復讐すべき敵でしかない。
だから自分の奴隷に、確実な命令を下す。
「やっちゃえ!バーサーカー!」
――――失敗した。
失敗した、失敗した。失敗した。
当たり前だ。今は夜。いないはずがない。実体化させてなかっただけだったんだ。
ヘラクレス、最強の英霊、無敵の巨人。
その性質は12回殺さないと倒せない最強クラスの宝具にあらず、その武力は英霊最強。
そんな大英雄が確かに白い妖精を守った。彼女に傷一つつけないと、そんな狂気の目つきで俺を見ていた。
勝てない――――
そうだ、そんな事分かっている。だから、だからこそだ。
――――俺がとった行動は逃亡だった。
人は恐怖を得た際安心を欲する。その為彼が意識していなくても常日ごろ魔術のために居た屋敷の離れに向かったのは必然であった。
「ふーん、ここで切嗣と住んでたんだ。これは…ガラクタ?まあいいや、やっちゃえバーサーカー」
俺は
ではなぜだ。なぜここに来たんだ。
ああ、大英雄の腕が上がる、今にも振り下ろしそうだ。ああ、振り下ろされている、人は死ぬとき走馬灯を見るというがそれは事実らしい。
俺の頭の中によみがえるは、あの時の思い出、何も救えなかった前世の記憶。
死ねない。決して死ねない。死んでたまるか。その為に生きなければならない。
できない?関係ない、俺はやらなければならない。でなければ全てが消える。
俺が求めた理想の英雄。現実は違ったし失望はしたが、それでも彼は俺が求めた英雄だった。
彼にできた。ならば俺に出来ない理由はない。俺は衛宮士郎だ。
「――――
工程など関係ない、間に合わない、そんなもの凌駕しろ、最強のあの剣を思い出せ。所有者の技量を完全に憑依、経験させろ。
求めるは最強の自分。求めるは最強の剣。彼が死ぬ最後に見せたあの光輝く剣。
挑むべきは自分自身。あの時みた幻想を本物以上の形を作ることこそ俺の戦い。
早く、早く。
もっと速く!!!!
墜ちた。
確かに今、全てが消えた。完全に頭の中から、それを作り出すための燃料のような、そんなものが。
確かに、今頭の中から消えた。とても大切な何かが。
でも、今は関係ない。そうだ、俺の体は剣。ゆえに――――
――――今、ここに、幻想を結び剣と成す!
圧倒的な輝くと王気をまとう、本来俺では理解すら出来ない存在。それを投影した。
それは所有者に勝利をもたらす、勝利すべき黄金の剣。カリバーン。
本来ではありえない、限りなく劣化を抑えられた、投影によって作り出された剣は確かに最強の剣であった。
「――――う、あッ」
プツンと、頭の何かが切れた感覚。
っ。体から剣が生えかけたのだろう、血まみれだ。頭も何かが壊れた気がする。
当たり前だ。今まで宝具の複製は成功しなかった。だのにいきなりこんなものを複製すればこうなるに決まっている。だが、今はそんな事気にしていられない。
「う、うぉおおおおおおおおおおおおお!!!」
その怒号とともに、真に迫った贋作は易々と大英雄の剣を易々と跳ね返した。もしかしたらヘラクレスはこちらを侮っていたのかもしれない。確実に殺すための力しか入ってなかったのだろう。
こちらは偽者とはいえ彼女の技量を憑依経験させている。ゆえに一度なら跳ね返すことは容易である。
とはいえ、所詮は贋作。ましてや本来の所有者でもない。カリバーンは俺に勝利をもたらさず粉々に破壊され、
「ふざけないで!確実に、完璧に殺しつくしなさい!バーサーカー!」
滅すべき敵の声が響く、くそ…もう投影はできない。そんな魔力はない。
もうだめだ。俺はここで潰える。決してそんなことは認めたくないのに。
俺は桜を助けるまで生きなければ、正義を執行しなければならないのに。
そんな焦りとともに恐怖で思わず目をつぶり
「そんな・・・!ありえない!どうして!?」
酷くあせる声、なんだろうか。思わず目をあけると
その瞬間、ヘラクレスの巨体とともに彼女は吹き飛んで言った。
あのことは今でも覚えている。
ああ。俺が衛宮士郎に憧れたキッカケ。そのあまりにも美しい瞳は原初の記憶を思い出させる。
全てが始まったあの時、俺は彼女にどうしようもなく惹かれたんだ。
俺が衛宮士郎である以上彼女との関係は切れない。
彼女に惹かれたからこそ、彼女に会いたいと願ったからこそ、無意識にここを魔術の修練場に選んだんだ。
死の恐怖を得てなお、ここに無意識にきたのは彼女を求めたからだ。
2度目の召喚だとか、桜だとか。色々な思考が彼女の美しさでまとめて吹き飛んだ。
俺が最初に愛した女性。その姿は初めて見た画面の中に住む偽者じゃない。
「サーヴァント・セイバー。召喚に従い参上した。」
エミヤは俺の本質は衛宮士郎と同じと言った。その意味が今ならわかる。
「問おう。あなたが私の、マスターか」
金色の髪をなびかせた彼女は、今まで出会ったどんなものより美しかった。
それは
憧れのエミヤが自害したせいで精神ボルボロのオリ主
UBW士郎以上に意地を張り続けた結果この始末
士郎(偽)はメインキャラに出会えて嬉しいとかそういう感情はエミヤとアルトリア以外ないです。彼は生きている全ての人間を平等に見ています。
まあアラヤが全面的バックアップするほどの人材だからそれくらいはね?
切嗣は家族2人と人類60億人で60億人を選びましたが士郎(偽)は家族一人と知らない人間2人なら知らない人間2人を選ぶくらいにはかっとんでます(勿論全員救う方法を模索して、それでも見つからない場合)
暗い過去もつ系主人公大好き。
独自解釈
2度目の召喚
キャスターがアサシンを召喚したように英霊→英霊は召喚可能である。だが原作において二度の召喚を可能とした魔術師はいない。
アニメFateUBW(TV)に登場するキャスター(メディア)のマスターはキャスターとの契約を切って、召喚されたサーヴァントと契約をしようとした。しかし、再召喚をしようとはしなかった。(この時セイバーやアサシンは召喚されていない)
魔術師はプライドの高い人種が多く、サーヴァント選びに失敗した等と悪評を立てられても仕方がないのに再召喚を行わなかった。
ゆえに同一人物による再召喚はなんらかの要因がない限り不可能である。