衛宮士郎に憧れた男   作:黒幕系神父

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生きる意志は何よりも強い。


6話「自己中心的」

衛宮士郎は主人公である。であるならば物語である以上、当然主人公補正、というものがつくのが道理だ。

補正。運命ともいうべきか。それがなければ決して衛宮士郎は英霊に勝つことは出来ない。それがなければ彼は英雄王に勝つことは不可能である。

 

では彼はどうだろうか。衛宮士郎に憑依した偽者。

 

人の逸話、生前の行動。それらの因果は生き返った所で決して外れない。

不幸な英雄はどれほど優れたマスターを得ても、決して幸運にはなれないように。

どれだけ武勇を重ねても、最終的に敗北する英霊がいるように。

 

彼、憑依者衛宮士郎。その生前は凄惨の一言につきる。そんな彼は当然ながら本来の衛宮士郎が持つ主人公補正がない、どころかマイナス方向に向いていた。

アラヤが支援しようがプラスマイナス0にしかできないほどの絶対的な因果。

 

 

主人公補正がない。それはアラヤですら想定していないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、セイバーには今から戦うであろうサーヴァントを倒してから説明すると言った。

急がなくては逃げてしまう、と。一応は納得してくれた。

 

 

シンジとは結局電話繋がらなかった。

理由は分からないけど、アイツのことだから心配はない。

一般人を巻き込むなんてヘマはしないはずだ。

魔術こそ使えないがそれ以外なら完璧にこなす。それが慎二だ。正直俺の計画が無くてもアイツ一人で桜を救うことだって出来るかもしれない。だから、問題はない。それよりも。

 

 

「――――なぁ、セイバー」

「はい、何でしょうかマスター」

 

そんな、どこかで聞いたような問答。

それらがとても心地よく感じる。

だが、それに浸っているつもりはない――――

 

 

 

 

 

 

セイバーに柳洞寺に行って、キャスターを探すというと同意してくれた。これほど心強い味方もいない。キャスターは危険を察知して逃げるかもしれない。急ぐとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――大きな階段。山頂にある柳洞寺に繋がる唯一の道。まったく遠すぎる。一成は毎日ここを上り下りしているのか。夜だからか、そこに気配はない。

少し緊張をほぐしながら階段をのぼっているとつい宙を見てしまう。習慣だろうか。それとも未練だろうか。

もしかしたら宇宙の果てには俺が生前いた世界があるのかもしれない。そう、思わず感傷に浸ってしまう。

どんどん星は近くなる。山道を上ってるのだから当たり前だが。それでも、決して星はオレの手には届かない。

星に手を伸ばしても決して届くことはないけれど――――。

 

それでも。

 

ああ―――いつも通り星がきれいだ。

 

 

そんな、俺を見て、金髪の彼女はクスリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――何だ…これ…。」

思わず声を失ってしまう。こんなこと、予想できるはずがない。

 

アサシンはいなかった。いや、正確にはそうではない。柳洞寺そのものが跡形もなく吹き飛んでいた。死体はない。

理由は分からない、が恐らく慎二だろう。原作との明白な乖離点はそのくらいしか思いつかない。

 

オレの原作知識はこの時点で完全に意味を失った。どんなサーヴァントが召喚されているか、マスターが誰か、などは有用な知識だが、だが、それだけだ。今の俺ではイリヤとヘラクレスの陣営に決して勝てない。これは、詰んだか――――?

 

 

 

キャスターが見つからない。そんな事想定していなかった。

これでは―――俺の計画は完全に崩れた。

もうどうすることもできない。ルールブレイカーを投影することも出来なくなった。

これでは桜は…

 

―――バカか。たかだかその程度の、それだけの理由で彼女を見捨てるなんて出来るわけがないだろう。そんな程度で諦めるなら、正義の味方なんて辞めてしまえ。

 

 

…仕方が無い。

策なんて今のところ思いつかないけれど、家に帰って作戦を練るか。

セイバーに現在の情報を渡せば、彼女がなんらかの策も思いつくかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか」

彼の自宅に帰った後、私は彼に事情を聞いた。どのようなことをしたいのか。どのように動きたいのか。どのような結末を望むか。

 

やはり彼は別の世界でも変わっていない。その信念は非常に好ましい。

だが…

 

「しかし、私はアナタのそれを許容できません。」

 

「何?」

 

「許容できない、と言ったのです。仮にアナタの言う、桜を救えたとして、それであなたが犠牲になるのでは意味がない。あなたは最終的に脱落するつもりでしょうが、そうはいかない。私の願いなど関係なく、シロウ。あなたには聖杯が必要だ」

 

そう。彼は自分を犠牲にしてでも自らの大切な人を守ろうとしている。

それはどこまで言っても愚かな行動だ。人は人を思わずして生きていられない。なるほどそうだろう。だが、人は一人でも生きていける。それも確かなのだから。

 

確かに、私は彼が好きだ。彼を見ているとあの頃の、初心に帰ったような感情になる。

だけど、それでもだ。私には聖杯が必要だし、そもそも彼は正確には別人だ。

 

だから、彼の言うことには聞けない。――――決して。

 

「アナタは自分自身を大切に思っていない。そんな、そんな人間が誰かを救うなどおこがましい。」

 

「アナタは正義の味方には決してなれない」

 

 

だからこそ、彼は矯正させる。それも私の願いの一つなのだから。




色々現実が忙しくなったので一週間に1回更新にします。申し訳ございません。


物語が進まないよ。いつになったら遠坂さんだせるのか。
自己解釈
主人公補正:運命を決める力。公式でもUBW士郎がギルガメッシュに勝てたのは奇跡扱いされていることから。英霊エミヤには存在しない。
生前の因果:サーヴァントが生前の因果に捕らわれるのなら、転生した人間もその因果に捕らわれるのではないか?という考えの元生み出された設定。
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