彼は偽者を見守り続ける。
そこには何も無かった。周りは白。虚無の空間。ふわふわと、体が浮いていた。
気づく。これは夢だと。
今オレは夢を見ている。こういうことはたまにある。夢だと自覚できる夢。
「ああ、ここは夢だ。正確に言えば君の心と言ったところか。」
ふと、後ろから声をかけられた。振り向くが…誰だろうか。
騎士のような格好。色素の薄い少年。美しいその顔はアルトリアに似てるが…。こんな顔、原作や外伝で見たことが無い。
何故だろう。オレは彼を知っている。だが、それを思い出そうとすると酷く頭が軋む。頭痛がきつい。
「ん?ああ。言い忘れていたな。私の正体を知ろうとしないほうがいい。」
そして
「そうだね。僕たちの正体は、君が耐えるにはまだ早い。3人目も来ていないことだし、今はそういう星の巡りでもないしね。」
彼とは違う、しわのある声が響く。老人であろう、白い髭を蓄えたフードを被った人物が少年の隣にいきなり現れた。
どうなっている…?3人目…?わからない。ただ、なんだろうか。俺は彼も知っている気がする。
「まあ、そう驚くことはない。僕たちは歴史によって捨てられた存在だ。」
「私たちは君と同じ偽者の烙印を押された存在だよ。贋作、と呼べばいいのかな。」
わからない。でも、彼らの言うことは他人事のように思えなかった。
そう。偽者。どこまでも俺を表す言葉。だが何故そのことを…?
「おや?何故かって?それはここは君の心の中で、私たちは君の中にいるからだよ。だから君の考えてることが手に取るようにわかるのさ。勿論記憶もね。」
少年が飄々と、そんなことを口にした。
――――何を言っている。
記憶も、とコイツは言った。
俺が転生したことを?
俺が彼を乗っ取ったことを?俺の過去を?
それは、つまり、俺が、衛宮士郎じゃないと…!
「おや、ここまで焦るとは。とはいえもう遅いんだけどね。僕たちは君の記憶を全て知っている。それにだ。」
その後の言葉は決定的な何かを否定するようで
「一人称はきちんとしたほうがいい。君は俺ではなく僕。そうだろう?」
それは俺の今までを否定するようで。
誰かすら分からない謎の人物。そんな奴の言葉なんて聞き流せばいいはずなのに。
無視出来ない。
―――そうだ。俺は衛宮士郎じゃない。本物の彼を奪った偽者。分かっている。
そんな事分かっている…!
「君は今迷っている。だから力がほしいのだろう?いいね。未来がない僕達と違って、若者には未来があるからね。」
「私たちは君の力となろう。それくらいしか、私たちは存在価値が無い」
それでも俺は…!
「ただ今教えることはないな。聖杯戦争だっけ?頑張れよ。私も応援してる。って聞いてないか。なんだかごめんな?」
そういって
アルトリアに似た少年は、快活な笑顔で俺の背中を押しだした。
――――――夢が、覚める。
「こういうことを言える立場じゃないけどさ。あの人を助けてやってくれると助かる。」
最後にその言葉を聞いて―――――
「とても美味です。士郎」
昨日ごたごたがあったが、そんなことは関係ないとばかりに俺の作ったものを食べてくれるセイバー。
やっぱり、うん。セイバーが美味しく食べてるのは様になる。
「じゃあ、俺は学校にいってくるから。留守番よろしくな?」
「はい。ですが…。」
「分かってるって。危なくなったら令呪を使うから」
「それならいいのですが…。」
昨日の夜、俺はある程度の情報をセイバーに教えた。現在召喚されているサーヴァントとマスター。
それらの真名とマスターの情報。原作とは違うこともあるかもしれないから、確証は無いといっておいたが。
それで、俺がこの聖杯戦争に挑む理由も。最も、それは否定されてしまったが。
それでも特にギクシャクすることなく、話は円滑に進んだ。
結局、俺は学校に行くことにした。協力者もいるし、イリヤは夜しか襲ってこないだろう。
ランサーが仮にクーフーリンだとして、学校には大勢の人がいる。その全てを殺すようなことはしてこないはずだ。マスターが言峰綺礼だとしたらなおさらだ。あれは終盤まで出張ってこないだろう。
ライダーも協力者だし、アーチャーもいない。キャスターかアサシンが相手なら、どこにいようと関係がない。目立つ行動はしないはずだし、最悪でも俺が殺されるだけだ。
問題は何もない。
久し振りの授業。クラスメイトには色々聞かれたが、うまく話をすり替えることは出来た。
「葛木先生はお休みです。ですので…」
やっぱりか…。
それに慎二と一成も今日は休みだった。電話は繋がらない。一成はともかく、慎二はいったい何があったんだ…?桜は登校してるらしいし、放課後聞いてみるか。
放課後、弓道場に向かうも桜はいなかった。何でも屋上に向かったとか。何で屋上?桜の居場所を聞いた美綴は何故かニヤニヤしてたけど、恋愛事じゃないってのに。
まあいい、とりあえず屋上にいくか。
ふぅ、と思わずため息をつく。
しかし、何だって桜はこんなところに…。まあいいか。
そうして、屋上のドアを開けて。
悪寒。
それを知るころには
腕が、 切られ――――
シュン、と風が切れる音が響き
「ほう?今のをかわすか。中々良いぞ。ただ…サーヴァントがいないのではな。まったく、なめられたものよ。それとも、私の正体が凡庸だからと、そういうことか?少年」
死、それを何度も経験したからだろうか。俺の危機回避能力は尋常じゃない。だからこそあの時の火災でも生き残れた。
ギリギリだ、一瞬でも遅れたら腕はなかっただろう。
そうして、振り向くと後ろに長髪の、ダメだ。とりあえず逃げ――――
「へぇ…。のこのこサーヴァントを連れずに学校に来たんだ。衛宮くん。」
足が動かなかった。
その怒りに満ちた声に思わずひるんだか。
見たくない顔。屋上にいたのは桜ではなく
その先に
――――遠坂凛が、そこにいた。
「貴様、よもやそこま…ガッ!?」
黒い泥に満ちた金色。墜ちるは財。暗闇は光を飲み込む。
「衛宮から聞いたとおり、慢心の塊だね。それにいくら英雄王であってもこの泥には抜け出せまい。これで2人。あとはバーサーカーとアサシン。それとランサーだけだ。だろう?ライダー」
「…ええ。慎二。あなたなら必ず聖杯を手に入れることが出来る。」
「そうだろうそうだろう!やっぱ僕って天才なんだよね。桜を救うことなんてこんなにも簡単だったんだ!」
キャスターにも効いた。英雄王にも効いた。どんなサーヴァントでもこの泥を抜け出すことは不可能だ!
僕は勝てる!勝てるんだ!
セイバーも味方だし、これで桜を救える!そう!救うんだ!
ふう…落ち着け。とりあえず帰って…ん?なんだコレ。へんてこで悪趣味なバイク…。英雄王のか。
何で今も現世に残ってるか分からないが…。丁度いい。これならいくらか目立たず帰れる。
「ライダー!前に乗れ!帰るぞ!」
今日はもう帰宅しよう。愛しい妹が待ってる。
オリキャラは主人公である士郎(偽)以外出しません。
少年:一人称私。アルトリアに似ている。
老人:一人称僕。白い髭を蓄えている。フードを被っている。
現在判明している勢力
士郎偽&セイバー(アーサー王)
慎二&ライダー(メデューサ)
遠坂&アサシン(小次郎)
イリヤ&バーサーカー(ヘラクレス)
脱落
アーチャー(エミヤ)
キャスター(メデュア)
ギルガメッシュ
不明
ランサー
慎二シスコン化
作者が一番好きなのは衛宮士郎です。
また、この作品はアンチ・ヘイト作品ではありません。
一応書いておきます。
危機回避能力:ヘラクレスの時にも発揮した能力。これがないと主人公補正がないのに火災で生き残れるわけがない。
キャスター・アサシンは学校の生徒を襲わない:原作においてメデュアは葛木が知らない所で魂をすっていた&殺しをしていない=最悪殺されるとしてもマスターのみ、それもサーヴァントを持ってない自分しか狙わないだろうという考え。アサシンは小次郎なら生徒を殺そうとはしないでしょうし、真アサシン(ハサン)でもマスターが魔術師なので日中行動はしないだろうという考え。
次回、慎二の過去。サービスサービスゥ