衛宮士郎に憧れた男   作:黒幕系神父

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だって衛宮さ、笑わないじゃん。


8話「妹・前編」

文化祭

僕にとってはどうでもいいイベントで、関わろうとはしなかった。

とても面倒な仕事を押し付けられてるバカを見て、嘲笑しようとしたのが最初だ。

でもソイツが作った物は到底面倒だから、で片付けられるようなもんじゃなかった。

完璧だった。ソイツは人が投げ出す仕事を、嫌な顔一つせず完璧にこなした。

だからだろうか、ふと、興味がわいたのは。

 

「へぇ…。なかなかいい仕事するじゃんお前。」

それがアイツ、衛宮士郎との出会いだった。

 

その後、親友と呼べる程度には仲良くなった衛宮と旅行にいったり、桜と一緒に遊んだりした。

桜は完全に衛宮に惚れていたのだが、まあ隠していたからな。アイツは気づいていなかった。

 

そんな、どうでもいい、けれど退屈じゃない日々。僕は確かに楽しんでいた。

 

 

 

 

高校で僕は弓道部に入った。中学では弓道部は無かったけど、ずっと習ってきたことだ。だから腕の自信もある。僕が一番誇れる趣味。アイツにも弓の楽しさが分かってくれると思って、誘ってみたりした。

 

アイツは弓道部入らなかった。ちょっとだけムカついたけど、でもアイツの人生だ。そこまで強制することも出来ない。でも、一緒に部活を楽しめたら、そんな想いも確かにあった。

 

だから、ある日。僕はためしにと弓道部道場で藤村に弁当を持ってきたアイツに弓を薦めたんだ。

 

 

――――化け物だった。アイツはどうしようもなく弓の腕があった。一時間もすれば、僕の全てを越えていた。

それだけならいい。アイツが弓をするというのなら、貴重な大会での戦力だから。

 

でも、アイツは弓道部に入らなかった。アイツほどの才能があれば、間違いなく優勝できるのに。

まるで僕がしてることなどオママゴトだといってるようで、どうしようもなくムカついた。

 

その後、僕は自分自身に魔術師の適性が無いことを知り、衛宮が魔術師と知ったことで、余計に溝は生まれていった。

 

 

で、結局。僕達は殺しあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある廃ビルの屋上で、

 

 

 

 

「シンジィイイイイイイイイイ!」

そういって手を差し伸べたアイツの顔は酷くボロボロで。

 

でもまあ、そんな奇跡都合よくおきるはずもなく。

 

僕は手をつかむことなく、墜ちていった。

 

 

墜ちていく。

 

落ちていく

 

墜ちて――――

 

 

 

 

 

体の感覚がない、暗い。暗い。暗い

 

 

――――ああ。終わったのか、僕は。

 

でも、何故だろうか、何で意識があるんだ。あれ――――

生きている?

 

 

希望はある、もしかして、と。

ふと、目を開けようとする。目は開いた。そこには光があった。

確かに、外が、光がある。生がある。生きている。

僕は、生きている。

 

何故…?

 

 

 

ふと、後ろから声が聞こえた。

 

「私が魔術を使ったんです、兄さん」

 

 

――――は?

 

 

そんな、そんなことがあるわけが無い。

だって…!

「嘘だ!お前がそんなことをするわけが無い!だってお前は―――!」

 

 

 

 

「よろしくお願いします。兄さん。」

最初は、ただの同情だった。

なんせ魔術師の家なんかの養子に来たんだ。そんな奴がまともな人生を送れるとは思えなかった。

だからまあ、妹になったのだし助けてやるかと、出来るだけ面倒を見ることにした。

「ああ、こっちこそよろしくな」

 

 

ぜんぜん笑わない奴だったけど、たまに僕にだけは笑顔を見せるようになった。

 

でも、結局アイツの笑いは嘲笑だった。

アイツは魔術を使えて、僕は使えない。そんなことを知ってから僕達の関係は急変した。

 

 

アイツはいつも僕といるときだけ笑っていた。

僕は魔術を使えないのに、そんな態度をとる妹の姿がとても不愉快で、だから僕は桜を手荒く扱った。

それこそ、殺されても仕方が無いくらいには。

 

 

だからあり得ない。

 

お前を虐げ続けた、大嫌いな僕を助けるわけが無い。一緒に住んでるんだ、隠していても分かる。お前は僕が嫌いになったはずだ。そして、お前が大好きな衛宮を殺しかけた僕を絶対許さないはずだ。

 

なのに、なんで―――

 

 

「帰りましょう。兄さん」

 

 

なんで…!

 

 

 

 

 

「そうか…。慎二。桜。仲直りしたんだな」

 

案外簡単に慎二は見つかった。

 

今まで見たことが無かった、仲睦まじい兄弟の姿。桜の肩を掴むように帰っていく慎二をみて、ふと

 

 

「あ…れ?」

涙がほおをつたった。

 

 

 

 

 

瞼が痛い。涙が止まらない。

ああ、そうか。

この体は借り物。衛宮士郎という殻。だからか。

 

兄と戯れる妹を見て、それで体は反応したんだ。

 

そんな記憶はないけれど、でも。俺が衛宮という名を切嗣に与えられる前。この体の持ち主の■ ■士郎には確かに。俺には確かに妹がいた。血の繋がった、俺が好きだった妹。

 

それが例え義理の関係でも。それでも、彼らの関係はとても美しく見えたんだ。

 

この光景を忘れない。どんなことがあっても、彼らを助けようと。そう、俺はその時決意した。

 




というか最近忙しすぎるので2週間に1回更新にします、すみません。

弓の腕:衛宮士郎の殻としての才能。ただ無茶な魔術の修行はしていないため100発100中ではない。あくまで鬼才程度。英雄ほどではない。


衛宮士郎の実の妹:原作で名前も出てこないが、微妙に示唆されている恐らくいたであろうキャラ。大火災で亡くなった。美遊やイリヤではない。故人であるため本編には出てこない。

涙:士郎(偽)ではない、衛宮士郎自身の涙。

桜:士郎が好き。なお士郎本人は気づかない模様。桜が必死に隠している。


今回の話は漫画版fateの7巻に凄く影響を受けています。
慎二の過去の掘り下げもあるしオススメ。

次回・士郎視点での過去慎二
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