「恵玲奈!」
寮に戻ろうとした都合、菊花寮の前を通った。そしたら、叶美に声をかけられた。
「泣きそうな顔してどうしたの!?」
叶美に手を引かれ部屋に招かれた。どうしても抗えなかった。今、叶美に会いたくなかったのに。でもどこか会いたくて……。
「叶美、私……今ね」
さっき起きたことをゆっくりだけど叶美に伝え始めた。自分でもどうしてそうしたかったのかは分からないけれど、須川さんに告白されたことを叶美に言うのは少し抵抗があった。それでも全部伝えた。
「叶美のこと好きじゃなかったら受け入れていたんだろうね、私」
「わたしは、誰かを好きになる気持ちを紅葉ちゃんとかおりちゃんから教わった。恵玲
奈はわたしのこと、どうして好きになったの?」
……それ、叶美が聞いちゃうの? そっか。まぁ、さっき須川さんに言ったから言っちゃおうか。全部、全部伝えてから一呼吸つく。
「叶美、お願いがあるの」
もし、叶美を好きじゃなかったら……。須川さんの気持ちを素直にうけ入れられるだろうか……。
「私をめちゃくちゃにして。叶美のこと、嫌いに……好きじゃなくなるくらい、無理矢理、強引に……犯して?」
叶美を悲しませるかもしれない。でもそれで、叶美が私のことを嫌ってくれたら……私も叶身のことを……。
「恵玲奈、無理だよ……」
かぶりを振る叶美。やっぱり、無理だよね……。
「わたし、してもらう側だから、その……」
そっか。叶美がネコなんだ。年下二人に奉仕してもらう叶美か、妄想だけで興奮しちゃうね。自分が生唾を飲み込む音がいやに大きく聞こえた。
「叶美」
「え、恵玲奈……」
叶美を押し倒して馬乗りになる。彼女の温もりを直に感じながら叶美のネクタイをしゅるりと解く。ボタンを外すと、淡い水色のブラに包まれた柔らかな双丘を目の当たりにする。フロントホックのそれを外すと叶美の匂いをより強く感じた。
「恵玲奈……」
抵抗しない叶美を無理矢理犯して私の心はどうなるんだろう。心臓がバクバクと煩いほどに音を立てる。身体が熱くて、呼吸が速まる。無理矢理にでも犯したいのか、傷つけたくないのか、中途半端な力で手を叶美の胸へ伸ばす。
「いいよ、おいで」
そっと、私の背中に叶美の手が回される。抱き寄せられ、叶美の胸に顔を埋めるような体勢になる。暖かくて、柔らかくて、甘い匂いに包まれて、自然と……涙がこぼれた。
「もし、わたしのことを滅茶苦茶にして恵玲奈の心が晴れるなら、わたしは恵玲奈の全部を受け入れるよ。でもね、恵玲奈がもっと苦しむならわたしは拒まないといけないの。恵玲奈は……どうしたいの?」
「叶美に嫌われたくない……叶美のこと好きでいたい。なのに、須川さんに告白されて嬉しかった。彼女なら……私のことを求めてくれるって……そんな気がして……」
「ごめんね、わたしがもっと早く恵玲奈の気持ちに気付いてあげられたら……」
「謝んないで。それだけは……言って欲しくなかった。……ごめん」
私だって何度も思ったよ。二年生になる前に叶美に告白していたらって……何度も何度も。でも、ダメなんだ……叶美が恋心に気付いたのはあの二人だったから。あの二人じゃなきゃ叶美は恋しないと思ったから……。
「ごめんね、叶美。私、部屋に戻るよ。恵にも心配かけちゃうし」
着衣が乱れたままの叶美に背を向けて、立ち去ろうとする私。
「恵玲奈、わたしは須川さんのこと全く知らないけど……恵玲奈のことを好きになるくらいだもん。素敵な人なのは分かるよ。だから……」
「うん、ありがとう」
叶美が言わんとすることは少しだけ分かった。少しだけ気持ちが軽くなったけど、結局自分自身がどうしたいかはまだ見えないままだった。