君の瞳のその奥に   作:楠富 つかさ

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第9話 ルームメイトとの日常

うだうだと考えているうちに一週間近くが経っていた。

 

「今日も相変わらず辛気くさい顔してやがりますねー。昨日はちっとマシだったってのに。豆乳クッキーでも食べて元気出すですよ」

 

寮ではわりといつも通り振る舞ってるつもりだったけど、心配性のルームメイトには見破られていたらしい。まぁ、高等部になってからずっと同室だからか。

 

「バストが1センチ小さくなったでありますか?」

「違うわ!」

 

恵は私の失恋を知ってはいるけれど、今の気持ちは全然知らない。須川さんから昨日も声をかけられたが、校内新聞の記事の感想を少しといった程度の世間話に過ぎなかった。あとは少しだけ、寂しい胸元の話しで盛り上がるとまではいかないが悩みを共有できたことか。

 

「胸の薄さは悔やまれるばかりだよ、お互いに」

 

軽口を叩きつつも少しだけ恵に後ろめたい気持ちが湧く。今、恵はその多重人格から校内でも有名な十京ちゃんのことを気にかけている。恋の一歩手前なのか踏み込んだ後なのか、恵自身でも分からない部分があるようで、相談……とも言えないような軽口を交わしたばかりなのだ。何かと極端な一面のある恵のことだ、心配や不安もあって頼ってくれなんて言ってはみたが……今の自分の頼りなさは自分が一番分かっている。

 

「そう言えばさ、茶道部って星花祭どうすんの? 例年通り体験会?」

「そうなりますねー。そっちもいつも通りですかい?」

 

何だかんだ来週末に控えた星花祭、学校最大のイベントとも言える代物で、各クラスの出し物と各部活動の出し物がある他、有志団体によるバンドや楽器演奏なんかもある。クラスの出し物は部活動に参加している人たちのことも考えて軽めにしていいと例年言われており、クラスで決めた研究テーマのレポートを展示(なんて言うと堅く思われそうだが流行のファッションやスイーツが研究テーマになることが多い)をしたり、朗読劇というか紙芝居をやったりするクラスが多い。商業科や服飾科はもう少し真面目な内容や展示になるが。あとは委員長次第だがクラス単位でカフェやお化け屋敷といった定番っぽい企画も出来る。

 

「わたしんとこのクラス企画はあれや、紙芝居にちょっと寸劇を実際にやる桃太郎。剣道部の太刀花氏にどうしても桃太郎コスをさせたいって言いよる子がいてね」

「なんか分かる気がする。生徒会長は?」

「江川さんなら鬼の総大将でいやがりますよ。わたしは午前の部でナレーションですねー。昼過ぎからはお茶を点てないといけないんでね」

 

部活単位の動きもあるから当日は結構忙しくなる。部を掛け持つ私なんかは更にだ。

 

「なるほどー。こっちは至ってシンプルに展示ものだよ。ワッフルの歴史と流行について。何故ワッフルかはもう忘れた」

 

何せ決めたのは夏休み前だからね。その時の発案者が無性にワッフルが食べたかったかもしれない。

 

「星花祭、なんだか楽しみになりつついやがりますよ」

「そうだねー。私はまぁ、直前までまた取材で忙しくなりそうだけど」

 

そんな話をしながら、ゆっくりと時間は過ぎていった。

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