ここで少し新聞部の話をさせてもらいたい。新聞部は音楽系を除けば文化部の中でも比較的大きい四十二人体制の部活で、月に一度校内新聞を発行している。A3の紙を二枚使って八面の新聞だ。長期休み明けの増刊号ではその二倍になる。まさに今、その十六面もある大きな新聞を作るべく部員は奔走しているわけだ。とはいえこの校内新聞の全てを新聞部が作っているわけではない。文芸部や漫研には連載のお願いもしているし、図書館通信を兼ねている面もあるため図書課の先生や図書委員とも繋がりがある。園芸部の植物紹介やこの時期だと天文部の星の見方講座なんていう枠もある。各運動部のインターハイでの結果やそのインタビュー記事も載せる。私の主な担当は文芸部、漫研、イラスト部、掛け持ってる放送部、運動部は少なめで剣道部と陸上部だけ。新聞部員の全員が記者ではないから、五十以上ある部活のうち複数を担当しないと間に合わないのだ。そして記者役の部員はおおよそ高等部の生徒と中等部の生徒がコンビを組んで活動するようになっている。
「恵玲奈先輩!!」
ただし増刊号の時期は二人一組だと手が回らないため個別に動いてる。私が後輩で相棒の清水文佳と別れ個人で須川さんのインタビューに行っていたのもそれが理由だ。
「太刀花様と一対一でお話出来て私感激ですわ」
文佳ちゃんは中等部二年で良家のお嬢様らしいふんわりと上品さを漂わせる美少女である一方で、学園に三割いるとされる公言する程の生粋の百合娘だ。高身長の年上が好みらしく私は対象外だ。ほぼ同じ身長だし。……でも胸は中二のくせに私より……ぐすん。
「でもさ、太刀花さんってもう相手いるんでしょう?」
「それでも構いません。あぁいった剛毅な方ならきっと何人だって。ほんの少しの寵愛をいただければそれでいいのです。はぁ……恋しいです」
そこまで素直になれる彼女が少しだけ羨ましいと思っているのも事実だ。もし彼女みたいに素直になれたら……私も叶美の恋人になれたかな。ううん、叶美の恋人が私だけってことだってきっと……。私は女の子が好きってわけじゃなくて、叶美だから好きになったんだもん。紅葉ちゃんやかおりちゃんだって可愛いけど私だけだったら……。一番近くにいたつもり、なんだけどな……。このぽっかりと空いた心を須川さんなら……って何考えてんの私!
「先輩? 顔を赤くなされてどうなさったのですか?」
「ううん、何でもないって。文佳ちゃんだって少し赤いよ? やっぱり暑いもんね」
「そうですわね。夏休み中はクーラーがかかってませんし、でも私は太刀花様に会えて昂揚しておりますわ」
窓の向こうの青空に目をやりながら、はたと妹のことが気になった。
「星玲奈はどう? 元気してた?」
西星玲奈は私の妹で文佳ちゃんと同じ中等部二年で寮も同じ部屋だ。剣道部で頑張っている自慢の妹。夏の大会は三回戦で負けちゃったけど頑張りの成果はちゃんと現れていたと思う。
「せれちゃん今日も頑張ってましたよ。太刀花様も褒めていらっしゃいました」
運動部は夏の大会で代替わりだ。今の剣道部は太刀花さんが主将をやっている。主将に褒めてもらえるなんてやっぱりうちの妹はすごいや。
「さーて私も妹に負けないよう頑張ってお仕事しますか!」
「そうですね、私もこの高揚感を忘れないうちに原稿を仕上げてしまいたいですわ」
仕事に集中して雑念を追い払いたい、そんなことも少しだけ思いながら部室へと足を運んでいた。