戦姫絶唱シンフォギア~未来へと響くは始まりの音楽~   作:Dr.クロ

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あの暴走から二日後、響達はクリスの過去を知る…


第十二話~しばしの落ち着き~

前回から2日経った。

 

響は今…翼と未来に土下座していた。

 

響「二人とも、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!」

 

未来「ひ、響頭あげて!?」

 

翼「そ、そうだぞ立花!そんなに必死にやらなくても;」

 

大きい声で謝る響に未来はそう言い、翼も慌てて続く。

 

目が覚めたと思った所で2人に気づくとすぐさま床に正座したと思ったら土下座をし始めたのだ。

 

響「でも私は暴走したあげく二人に攻撃をしちゃったし…」

 

覚えていたか…とミューチェは困った顔で響を見る。

 

ミューチェ「(どうしましょうかねこれ……)」

 

項垂れる響に翼は膝を付いて顔を合わせる。

 

翼「立花…間違いをしたのなら、そうならない様に心がけるべきではないか?」

 

響「え……」

 

そう言われて響は顔を上げる。

 

翼「私もまた、貴方に向かって間違いを犯した。そういう意味ではお互い様だ」

 

響「お互い様…ですが」

 

まだ言おうとした響の指に翼は指をあてる。

 

翼「だからここまでだ。気にするならば次ので挽回すれば良い」

 

未来「そうだよ響。それに、落ち込んでいるより元気でいる響に私も元気になるから」

 

響「未来…うんわかった!次頑張るよ私!」

 

2人の励ましに響は笑みを浮かばせて頷く。

 

それを遠目で見ていた弦十郎と奏は微笑ましく見ていた中で弦十郎が近づく。

 

弦十郎「ちょっとほんわかな雰囲気の中ですまないが、あのネフシュタンの少女…雪音クリスくんについて皆に教えておきたい事がある」

 

響「クリスちゃんのことで?」

 

真剣な顔で言った弦十郎のに3人は弦十郎へと顔を向ける。

 

弦十郎「ああ、まさか彼女とは本当に驚きを隠せない」

 

未来「司令はクリスちゃんのこと知っているんですか?」

 

ああ…と弦十郎は未来の問いに頷いた後に話す。

 

弦十郎「彼女は…シンフォギア奏者候補であったんだ。なぜ候補だったのか彼女の父は世界的ヴァイオリニストの雪音 雅律(ゆきね まさのり)、母は声楽家のソネット・M・ユキネで、クリスくんは音楽に関わる2人を両親に持つ音楽界のサラブレッドだったんだ」

 

響「音楽界のサラブレッド……クリスちゃんが?」

 

未来「見えなかった…よね?」

 

弦十郎から出て来た彼女の家族関係に響と未来は驚く。

 

と言うかミューチェや翼たちも同じだった。

 

ミューチェ「(驚いたわ…まさかクリスがあの二人の子供だったなんて)」

 

いや、ミューチェは別の意味で驚いていた。

 

と言うよりも、ミューチェは響と未来と会う前に2人の奏でる音楽が大好きであった。

 

弦十郎「ただ…8年前、NGO活動に参加する両親に連れられ、訪れていた南米バルベルデ共和国の紛争に巻き込まれ…クリスくんの両親は死亡した…」

 

響「えっ……」

 

未来「そんな……」

 

ミューチェ「(あの二人……死んじゃってたのね…)」

 

告げられた事に響と未来は顔を青くし、奏と翼は顔を歪める。

 

ミューチェは悲しい顔で2人に黙祷した。

 

弦十郎「その後、クリスくんは捕まり、捕虜生活を送った。しばらくして国連軍の介入により救出され、2年前に日本に帰国したのだが…すぐに行方不明となった」

 

響「そうだったんですか…」

 

未来「クリスも過酷な過去を持ってたんだね…ううん。私達よりも酷過ぎる…」

 

締め括った弦十郎のを聞いて響を顔を伏せて、未来は涙を流す。

 

ミューチェ「(これだから戦争って嫌なのよね…)」

 

ふうとミューチェは嫌悪感を持って頭を振る。

 

その中で響は気になった事があった。

 

響「あれ?2年前に帰国後行方不明って……コンサートのと同じ時期ですよね?後、シンフォギア奏者候補って事は翼さんや奏さんが持っているの以外にも聖遺物があったんですか?」

 

未来「あ、もしかしてそれってガングニールと一緒に来た…」

 

気になったので聞いた響のに未来もデュランダルの時にガングニールとデュランダル以外にもう1つあるのを聞いたのを思い出して呟く。

 

それに弦十郎はあー…と困った感じに目を泳がせる。

 

弦十郎「確かにあったはあったが…10年前に二課設立と前後して失われてしまってな…名前はイチイバル。狩猟神ウルと言う北欧神話に出る神様が扱っていた弓の聖遺物だ」

 

響「イチイバル……弓の聖遺物…」

 

未来「あ、もしかして……」

 

出て来た名を呟く響の隣で未来は響が暴走していた時にクリスが呟いたのを思い出す。

 

弦十郎「どうしたんだい未来くん?」

 

未来「実は響が暴走していたときクリスがあれを使うかって言っていたんです。もしかしたらそれって…」

 

その言葉に弦十郎は未来の言いたい事を察する。

 

弦十郎「なるほど…もしかするとイチイバルもあちらの手にあるかもしれないと言う事か…」

 

響「出し惜しみしてる感じなのかな?」

 

ミューチェ「(……ちょっとおかしくないかしらこれ?)」

 

そんな中でミューチェは疑問を持つ。

 

ミューチェ「(なんでこうも簡単に二課から聖遺物や装者候補が敵の手に渡っているの?これじゃあまるで……)」

 

二課にスパイがいるのではないかとミューチェは思わず考えてそれに当て嵌まりそうな人物を思い浮かべる。

 

ミューチェ「(……櫻井了子)」

 

彼女ならば監視カメラや記録などを弄って持ち出す事など容易い筈だ。

 

それに情報関連のを纏めてるのならば簡単に隠避出来る。

 

ミューチェ「(それに二人の身体検査の時異常なしって言ってたわね…)」

 

続けて今度は身体検査のでもしも異常があったのにそれを隠した可能性があるならば…と考える。

 

ミューチェ「(…まあ今はこれぐらいしかないわね)」

 

話すべきか考えて今は無理だと判断する。

 

実体のない自分が伝えるなど出来ないし、まだ弦十郎達より年下の響達から話しても弦十郎はともかく、他の人が信じられるかと言われると否に近い。

 

ミューチェ「(まだ情報不足だし、未来はともかく響が隠し切れそうにないから確信が出るまで保留かしら…)」

 

弦十郎「とにかく、彼女と遭遇したら彼女に聞くしかないだろうな…」

 

響「クリスちゃん…」

 

未来「とにかく、クリスと出会ったら聞いてみようか」

 

ミューチェが考えてる間にそう纏めた弦十郎のを聞きながらクリスの事を考える響に未来はそう言い…

 

未来「クリス、今どうしているんだろ…」

 

その後に天井を見上げて呟いた。

 

 

時が変わり、早朝と呼ぶにはまだ早いが、深夜と言うには無理がある時間帯。

 

白んだ空の下、湖畔に佇んだクリスはその手にソロモンの杖を持ちながら湖畔を見ていた。

 

クリス「…………」

 

脳裏を過ぎるのはデュランダルの起動した時の事…

 

クリス自身、ソロモンの杖を起動させるのに半年はかかった。

 

だが、デュランダルはその眠りから瞬く間に目覚めた。

 

クリス「(……三人の装者の歌でか…いや、違うな…)」

 

あの場にいたクリスは自身の過去の経験と勘から、起動に関わったので一番だったのは響と未来ではないかと考える。

 

確かに翼はベテランで歌も見事だとクリスは思うが、力と言う意味での強さはあの2人の方が強かったとクリスは思う。

 

翼の歌が人々の心を鼓舞するなら、響と未来の歌は安らぎを与えそうだと考える。

 

だからこそ、だからこそ自分は響に惹かれ、未来もついでに手にしたいと心から思ったのだとクリスは思った。

 

自身の成し遂げたい事の為に…一緒にいて欲しい存在が…

 

クリス「……でも……」

 

グッ!とソロモンの杖を握り締める力が強まる。

 

クリス「(あたしの成し遂げたいことをあの二人は止めようとするんだろうな……)」

 

脳裏に響と未来を思い浮かべた後に首を横に振る。

 

あの2人を自分のにするのは終わってからだと改めて決めると背後から感じた事のある気配にクリスは振り返る。

 

そこには黒いワンピースに幅広い帽子をかぶった女性、フィーネが佇んでいる。

 

そんなフィーネにクリスはソロモンの杖を投げ渡す。

 

クリス「返すぜ、ソロモンの杖。そんなのなくたってあたしはやれる。これもだ!」

 

そう言ってネフシュタンの鎧も展開した後に弾け飛ぶようにクリスの体から外される。

 

その後に…翼が持っていたのと同じのを取り出して次はこれで行くと言わんばかりに見せた後に見上げる。

 

フィーネ「成程、嫌っていたそれを使ってでもあなたは自分の目的を…戦う意思と力を持つ者を滅ぼすのをやり遂げる気になったのね…」

 

クリス「ああ……そのためにもあたしはあの二人を……ブッ飛ばす」

 

再確認する様に言うフィーネにクリスは顔を歪めながらそう返す。

 

それにフィーネはまだ若いわね…と内心呟く。

 

フィーネ「(まあ最後の活躍、見てみましょうかね)」

 

もう彼女を使うのは無理そうだと感じながらフィーネはクリスの背を見る。

 




クリス「次回!『ガングニールVSイチイバル』だ!待ってろよ」

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