プリンセス・プリンシパル ~London Has Fallen~   作:アルビオン王国ハドソン湾会社

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case12.9:夜明け前

         

 新王立寺院の外は完全に封鎖されていた。テムズ川には武装した巡視船が何隻も並び、大通りは戦車で封鎖され、上空には空中戦艦が待機していた。

 

 『ロンドンの壁』に通じる道と言う道にはバリケードが作られ、機関銃が不審者に目を光らせている。その後ろには幾つもの大砲が用意され、夜にもかかわらず持ち込まれた大量のサーチライトが昼のような明るさを演出していた。

 

 

 そして新王立寺院の正門前には、武装した装甲車の脇でガゼルが指揮をとっていた。海兵隊から選抜した特殊部隊に、職務に忠実な内務省軍、近衛騎兵連隊に王立騎馬砲兵……いずれも軍の最精鋭たる優秀な兵士たちだ。

 

 

(さぁ、来るなら来い――)

 

 

 ガゼルは戦力分散の愚を犯すことをせず、限られた兵力を重要拠点に集中配備することにした。ワンズワース、シティ・オブ・ロンドン、ウェストミンスター、グリニッジにケンジントン&チェルシー、そしてこの新王立寺院だ。

 

 合計で4万人近い兵力が、このロンドンに集結している。それも重火器で武装した王国指折りの強者たちだ。たとえ暴徒がいかなる数で押し寄せようと、ガゼルには守りきる自信があった。

 

 

「――グリニッジの近衛擲弾兵連隊から、民衆を発見したとの報告がありました」

 

 報告を行ったジェイク大佐の声には、かすかな不安が混じっていた。じろり、とガゼルが睨むと怯んだように背筋を引き締める。

 

「大佐、夜間外出禁止令を破った者は全て逮捕するよう命じたはずだが?」

 

 既に何度も命令でそう伝えてある。それとも王国軍兵士はこの程度の命令すらこなせないのだろうか?

 

 

 ジェイク大佐は逡巡していたが、ややあって気まずそうに口を開いた。

 

 

「いえ、近衛擲弾兵連隊からは“逮捕は不可能”との返答が」

 

「どういう意味だ?」

 

 ガゼルが鋭く問う。こちらは戦車も大砲も持っているのだ。たかだか粗悪品の銃や棍棒で武装した市民など、苦も無く逮捕できるはず。

 

「それが……」

 

 ジェイク大佐は大きく息を吸ってから、躊躇うように告げた。

 

 

「民衆の数があまりにも多すぎると言っております」

 

 

 

 **

 

 

 新王立礼拝堂チャペルの二層部分では、こっそり忍び込んだプリンセスとベアトリスの姿があった。

 

 本来なら人が入るべき場所ではなく、チャペルをより高く見せるための装飾に過ぎないのだが、そのおかげで二人が侵入しても気づく者はいなかった。

 

 

(なんとか間に合ったようね……)

 

 

 ひとまずプリンセスは安堵のため息をつく。眼下には女王陛下やノルマンディー公をはじめ、見知った顔が大勢整列している。

 

(それにしても、どうやってこれだけの王族や諸侯を一網打尽にするつもりなのかしら……?)

 

 暗殺計画の詳しい部分については、ドロシー達も知らされていない。まさかゼルダたちが文字通り“天井を落として”王国首脳部の全滅を図っているなどとは思うまい。

 

 だが、やるべき事は変わらない。

 

 

「―――ベアト、やるわよ」

 

   




 ちょっと短め。

 そういえばアルビオン王国には内務省軍があるらしいですね。国軍は基本的に外国との戦争に使うものなので、植民地の反乱鎮圧とかに使うんでしょうか?


 ちなみに作中に出てきたジェイク大佐は4話でドロシーの色仕掛けに引っかかってたCV:玄田哲章の人です
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