プリンセス・プリンシパル ~London Has Fallen~ 作:アルビオン王国ハドソン湾会社
『ロンドンの壁』崩壊と共に、盛況を誇った超大国『アルビオン王国』は一夜にして滅んでいった。
だが、それは国家という想像の共同体の崩壊であり、そこに住む人々は生き続ける。今日この日、この瞬間からアルビオン王国は大きく生まれ変わるだろう。破壊と再生……それはまだ産声をあげたばかりだ。
歴史の転換点を見つめる者たちは未来に想いを馳せるとともに、過去に消えゆく者たちにも思いを馳せた。
ドロシーもまた、炎に燃え行く過去の中にシャーロットとして生まれ、アンジェとして死んだ少女の存在を想った。
「なぁプリンセス………アンジェは一体、何者だったんだろうな。私は長いことアイツと一緒に組んでるが、詳しいことは何一つ知らないんだ」
ドロシーが尋ねると、プリンセスはにっこりと微笑んだ。
「いいえ、貴女は彼女の事をよく知っているはずよ」
プリンセスの瞳は、燃え盛り崩れ落ちる『ロンドンの壁』の先――――その先にいる人々の姿を見つめている。
「彼女の名前はシャーロット、アルビオン王国のプリンセス」
驚いたような顔をするドロシーに向けて、さらに続ける。
「そして共和国のスパイ、アンジェ・レ・カレ」
空中で大きな花火が爆発する。色とりどりの光が、暗い夜空を煌びやかに染め上げてゆく。
「またの名を、黒トカゲ星から来た黒トカゲ星人」
壮大な音楽と華やかな花火に見送られ、ひとつの時代が終わろうとしていた。
「チーム白鳩のメンバー、貴女の頼れる相棒で、私の大切な友人」
旧体制の象徴であった『ロンドンの壁』は崩壊し、新しい時代が始まろうとしている。
「そのどれもが、彼女なのよ」
難攻不落に思えた『壁』も崩れてしまえば、まるで初めから無かったかのようであった。全ては白紙に戻された。
残されたのは、そこに住む人々の姿………そして彼らは気づいた。
自分たちを苦しめていた全ての壁――差別、偏見、階級――は虚構であり、人びと自身によって作り上げられた幻想なのだと。それはおとぎ話であり、作り手によって悲劇にも喜劇にも変えられるのだと。
人もまた、その在り方は1つではない。己の意志で、自らを何者にも変えられる。
かつてシャーロットとして生まれた少女が、自ら“アンジェ”として生きたようにーー。
パーティーはお開きを迎えようとしていた。集まった人々は夜空を彩る花火を見つめ、これまでとこれからに思いを馳せた。
そこにはチセがいた。ベアトリスがいた。マリラがいて、洗濯工場の少女たちがいた。リリやキャメロンら、クイーンズ・メイフェアの生徒たちがいた。
『コントロール』のメンバーがいて、スリの少女も、借金取りのフランキーも、モルグの死体処理業者たちに堀川公、ガゼルやイングウェイ少佐もいた。
研究者のエリック、ドロシーの父親、委員長、藤堂十兵衛やモーガン委員、ゼルダにノルマンディー公………この場にいないはずの者も、きっとどこかで同じ光景を眺めているはずだ。
そしてアンジェと呼ばれた少女も、きっとまた―――。
最終話のタイトルは原作のEDをもじって。
今作はこれで完結とさせていただきます。
最後に、ここまで読んでくださった読者の皆様に感謝いたします。つたないストーリーと文章でしたが、無事フィナーレを迎えることが出来ました。
本作を読んでくださった方々へ、本当にありがとうございました。