俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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#19「君の罠」

「よし、第2階層にチャレンジだ」

「マサト様のおバカ、マサト様のおバカー」

 

 人の話を聞けって。

 ……と、言っても無理か。

 

 大笑いしてしまったからな。

 なだめるのに30分ほど費やした。

 

 って、どう見てもまだなだめきれて無い。

 

 

 帰ったらガチャ回される事になった。

 ああ、この探索が永遠に終わらなければ良いのに。

 

「さあファルフナーズ、次の階層への扉を開けてくれ」

「……マサト様のおバカ、ですわ」

 

 ごめんて。

 

 扉をくぐると昇り階段だった。

 一段一段を慎重に昇る。

 

「なあー ファルフナーズー、もう許してくれよー」

「とてもとても辱められましたわ。ですが一時忘れますので、ダンジョンに集中してくださいませ」

 

 一時的に、か。

 

 よし、こうなったらダンジョン攻略に夢中にさせよう。

 それで忘れてもらうしかない。

 

 階段を何十段か昇ると再び同じようなアーチ状の扉に出くわした。

 

「さて、俺とファルフナーズ、どちらが開けるべきなんだろう」

「私からでしょうか。マサト様がお開けになると、どこに繋がるか分かりませんから」

 

「そだなー じゃあファルフナーズ頼んだ」

「かしこまりましたわ」

 

 ギ、ギ、ギィ……

 

 ゆっくりと開いた扉の向こうは――

 

「別のダンジョンか? 壁と床の材質が全然違うし、じめじめした感じとすえた匂いが無い」

「本当ですわ」

 

「モンスターが見当たらないな。こりゃラッキー」

 

 

 ピンッ

 

 ヒュヒュンッ!

 

 

「ん? 足に何か……」

「きゃあっ!」

 

 カンッ! カンッ!

 

 べちべちっ

 

「いててっ! 後頭部に何か当たったぞ」

「矢! 矢ですわ!」

 

「何が嫌だって?」

「違いますわ! 弓矢の矢が私に!」

 

 ファルフナーズが指差した足元には確かに矢が転がっていた。

 彼女の無敵バリアー的なモノに弾かれて、俺の後頭部に跳ね返ったのか。

 

「何て恐ろしいのでしょう」

「お前は無敵なんだから気にしなくていいのに」

 

「そういう問題ではありませんわ! 本当に怖かったのですから」

「むしろお前から跳ね返った矢で、後頭部すりむいた俺のほうが痛かったのに。プロテクター類は全部前面からの防御しか出来ないんだからなー」

 

 …

 

「ん……?」

「どうかされまして? マサト様」

 

「こ、後頭部に擦り傷、だと!?」

「それが何か……」

 

「俺の貴重な毛根(フレンズ)さん達が!」

「は、はあ……」

 

 

 そうだ、これがあった!

 

「魔法の回復薬! 急いでこれを――」

「マサト様、落ち着きください!」

 

 キュポン!

 

 ニュルニュルル~

 謎の触手がこんにちわ。

 

「あああ! 瓶の蓋を<開けて>しまった……済まない、俺の毛根達」

 

 俺が何かを開ければ、そこは小さくてもダンジョンの入り口。

 それがダンジョン・オープナーの能力だという事を忘れていた。

 

 貴重な回復薬はニュルニュル触手を癒して潰えた……

 

 崩れ落ちるように床に手を着いてしまう。

 

「もう駄目だ。この世の終わりだあ……」

「マサト様、嘆くのは戻ってからですわ」

 

 戻ったらガチャ回されてもっと酷い事になるんだけどね?

 主に君のせいで。

 

 だがファルフナーズの言う事は最もだ。

 今の俺に振り返るなんて贅沢は許されていない。

 

「何よりマサト様、ダンジョンで追った傷であれば毛根と言えど死亡と復活時に戻るのでは?」

「あそっか、それもそうだよな。でも、万が一で毛根だけは復活しない、くらいの意地悪をされてそうだがな」

 

「それでしたら、何度も焼け死んでおられますし、そもそも最初に頭部を破壊――」

「言うな。皆まで言うな」

 

 …

 

「よし、更に慎重に進むぞ。どうやら2層目からは罠も張り巡らされているようだからな」

「かしこまりましたわ!」

『良い心がけだ。主にしては』

 

 にゃろう、一言余計なんだよ。

 

 

 カチッ

 

「まあ、今何か私の足元で」

 

 ぶおんっ!

 

「巨大岩石だ! 避けろ!」

 

 壁に張り付いて姿勢を低くする!

 

「えっ? 巨大がん――」

「ああっ! ファルフナーズーッ!」

 

 ファルフナーズが岩石に弾き飛ばされた!

 振り子の玉のように俺の身長より大きい岩石が突然飛来したのだ。

 ひと往復すると、振り子岩石は霧のようにこつ然と消えてしまった。

 

「ファ、ファルフナーズも消えてしまった……」

 

 

 ででぅででぅででぅ

 

 

「何だこの音、うおっ!?」

 

 ダンジョンの床からファルフナーズが「生えてきた」。

 

「……」

「……」

 

「おかえり」

「ただいま、ですわ」

 

「残機いくつ?」

「はい!?」

 

「お前マジで無敵だな。痛くないの?」

「全く。岩と壁に挟まれたと思った途端、床からせり上がりって来ましたわ……」

 

『怪我が無くて何よりである』

 

「と、ともかくファルフナーズも十分注意してくれよ。いざと言うときはぐれたりしたら事だからな」

「申し訳ありません。重々気をつけますわ」

 

 …

 

 

 カチッ、バタン!

 

「ん!? ファ、ファルフナーズ!」

「マーサトー様あああー!」

 

 床が跳ね戸のように開いて、ファルフナーズが深遠に吸い込まれていった。

 

 

 ででぅででぅででぅ

 

 

「……」

「……」

 

「おかえり」

「ただいま戻りましたわ」

 

 …

 

「おっと、ここにトラップを発動させる鉄線が張ってある。絶対足を引っ掛けるなよ?」

「分かりましたわ」

 

 

「きゃっ!」

 

 石畳のつなぎ目につまづくファルフナーズ。

 もちろん倒れた先には鉄線が。

 

 もう助ける気にならない。

 

 ゴオッ!

 

 天井の石畳が丸ごと一瞬で降りてきてファルフナーズを押し潰した。

 

 

 ででぅででぅででぅ

 

「……」

「……申し訳ありませんですわ」

 

「おかえり」

「ただいま、ですわ」

 

 

「天丼って昨日食べたじゃん?」

「は、はい……!? それが何でしょうか?」

 

「あれ、同じ海老の天ぷらが2個乗ってたじゃん?」

「ええ、大変美味でございましたわ」

 

「その事から、同じボケを繰り返す事を天丼って言うんだよ」

「……」

 

 ……

 

 …

 

「……今日からお前のあだ名は天丼プリンセスな」

「ひぃーん」

 

 

 サクサク引っかかるからな。

 罠に。

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