俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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#35「勇ましくて素敵だと思います」

「よし、階層突破ボーナスだ」

「天使様が降りて参りましたわ」

 

 ゴブリンを軽く退治すると、例の鐘の音が聞こえてきた。

 何気に倒せたが、思えば強くなったものだ。

 

 カラーン コローン

 

「来たなイタズラ天使! 今度こそお灸をすえてやる!」

『大人気無い事、この上ないのである』

 

 子供天使2人はそれぞれが靴らしき物を片方ずつ持っている。

 それをニヤニヤと笑いながら俺に投げつけてきた。

 

 カキーン!

 

 ははは、ホームランだ!

 

 べちゃっ

 

 時間差で投げられた、靴のもう片方が俺の顔面にヒット。

 マスクが無かったら鼻血が出てる所だぞ。

 

 子供天使はキャッキャと笑いながら天井に吸い込まれて消えていった。

 打ち返した靴は天使に当たらず、ややライト方向へ逸れて天井にぶつかった……

 

「バッティングの練習もせねば。あいつらに勝つために」

『目的はともかく、良い事である』

 

「もー、マサト様ったら、本当に大人気無いのですわ」

 

 ぷりぷりと文句を言いながらファルフナーズが飛ばされた靴を拾いに行く。 

 小言を漏らしながら靴を拾う姿は、ちょっとメイドっぽくて良いな。

 

「マサト様、この靴は浮遊靴(レビテーション・ブーツ)だそうですわ。まあっ! <耐久度減少中>ですって!」

「……やっぱ、俺が金属バットさんで打ったから?」

『間違いないのである』

 

 靴屋で直るかな?

 

「壊れたら直せば良いのだ。さあ、効果と使い方を教えてくれ」

「かしこまりました。ええと……履くと自由落下速度が100分の1になる、のだそうですわ。精神力を込めて空中を『蹴る』事によって上に昇る事が可能、防御点+3点、以上ですわ」

 

「すげえ、まともな魔法の品だ! ようやく、それらしくなってきた気がするな」

『新たなライバルの登場に、焦りを禁じえぬ我であった』

 

 バットのライバルってブーツなの?

 

「どれどれ、使ってみるか。うわ、足を入れたらサイズ広がった。キモい」

「サイズ調節の魔法もかかっているのですわ」

 

 そりゃ便利でいいけど。

 こう、ニュルッという感じで変わるのはちょっと慣れそうにないな。

 

「では記念すべき第一歩だ!」

 

 気合を入れて空中に足を踏み出す。

 ググッ

 

「おお! 昇れた! まるでここに見えない階段があるかのようだぜ」

 

 一度空中に上ると、そこが平面であるかのように感じる。

 

「どれどれ、このまま歩いて……うおっ!?」

「きゃっ! マサト様!?」

 

 空中で足を踏み外し、床に転げ落ちてしまった。

 尻を打って痛い。

 

「おー痛て。……なるほど、全ての歩みに精神力を込めないとダメなんだな」

『勇み足ならぬ、勇まぬ足である』

 

 わけわからん。

 

 精神力を消耗するような感覚はサッパリ無いが、気を緩めれば突然落ちる。

 泥のぬかるみや新雪の中を確かめつつ歩むような、そんな感じで昇ったり歩いたりしないとダメだな。

 

「じゃあこのまま練習がてらに次の階層の扉を開けていこう」

「かしこまりましたわ」

 

 地面と階段の少し上の空中を一歩一歩、確かめながら昇っていく。

 

 ふんぬっ、ふんぬっ

 

『主、主。声が漏れているぞ』

「いいんだよ。最初はちょっと格好悪くても」

「そんな事ありませんわ! 勇ましくて素敵だと思います」

 

 お姫様の感性は良く分からないなー

 

「よし、まずは聞き耳を……」

「何も聞こえませんわ」

『どれどれ我も聞き耳を』

 

 うるさいよ。 君らが騒がしくて聞こえないよ?

 

「何の音も聞こえなかった。モンスターは居ないようだな」

「では、開けますわ。とおーう!」

 

 面白い掛け声やめて。

 

 しかも威勢の良い声の割りに重々しく扉が開く。

 お姫様は力が無いからなー

 

 ギギッ、ギギッ、ギィーッ

 

「普通の石の廊下だな」

「鉄の像もモンスターも見当たりませんわ」

 

 第3層よりも、更に新しく清潔な感じは受ける。

 もうダンジョンというより、窓が無いだけのどこかの建物内に思える。

 

 

「少し進んでみるか」

「かしこまりましたわ」

 

 ファルフナーズがぴったり俺の真後ろに付く。

 罠を警戒してるのだろうけど……

 

「ファルフナーズ、近い近い。歩き辛いよ」

「こ、これは失礼しましたわ」

 

 真後ろに張り付くように着いて来るので俺の足がファルフナーズの足に当たってしまう。

 そろそろ転びそうだ。

 

「しかし長い通路だ……」

 

 

 カチッ ガゴン!

 

 

「んっ!?」

「い、嫌な予感がしますわ……」

 

 ファルフナーズがそろりと右足を持ち上げる。

 他のより一際小さい石畳がわずかに数cm落ち窪んでいた。

 

「も、申し訳ございませんっ!」

「気にすんなって。それよりどんな罠が来るか気をつけろ」

 

 ゴゴゴゴ……

 

「地鳴りだ。巨大モンスターか、はたまた転がる石か、動く壁か」

「こ、怖いのですわ……」

 

 後ろから俺にすがりつくファルフナーズ。

 あれ、ちょっと俺、勇者っぽい。

 

 まあこのお姫様、無敵なんですが。

 

 

 ガラッ! グラリ!

 

 

「うわあ!」

「きゃあっ!」

 

 足元が総崩れだ!

 突然、床が浮いたかのような感触がしたかのように思えた。

 

 だが実際は……床が全て崩れて落下し始めた!

 

「ファルフナーズ!」

「マサト様ぁ!」

 

 足に力を込めて浮遊靴で空中に留まる!

 手を伸ばしてファルフナーズを――

 

 掴んだ!

 

 辛うじて、伸ばされたファルナーズの手を掴む事に成功した!

 

 安堵の溜息を大きく肩で漏らした。

 

 

「マサト様……ありがとうございます」

「これ意外とキツいな……ちょっと重」

 

「重くありませんわ」

「あ、はい。すみません」

 

 何とかかんとかバランスを取り、ファルフナーズを引き上げる。

 

「あー、重……いや、疲れた」

「重くありませんわったら!」

 

「分かった分かった。ともかく、集中させてくれ。何も無い空中だからな。浮遊靴への精神力が途切れたら一転、奈落の底だ」

「私は1度、落とされておりますが」

 

「集中途切れるような事、言わないでくれる?」

 

 

 しかし、何だ。

 

 

 ファルフナーズが落ちないようにするためとは言え。

 この抱きかかえ方は……そう

 

 お姫様抱っこ、だ。

 紛れも無くお姫様だから、何の不思議も無いと言えば無いのだが。

 

 浮遊靴の効果で空中にいるせいなのか、レベルが上がってステータスが強化されたせいなのか。

 正直、妙齢の女性を抱えてるほどの重さは感じない。

 

 ただこう、ふんわりした柔らかい女性の体の感触と――

 

 

「マサト様、突然黙ってしまわれると恥ずかしいのですわ……」

「あ、ああ……」

 

「……」

「……」

 

 あれ、何だこの空気。

 集中しろ、集中!

 

 気を抜けば落ちて死ぬぞ、俺!

 

 

「まあ、何だ」

「はい……」

 

「何か色々大変だけど、俺は割と楽しんでやってるし」

「はい……」

 

「ファルフナーズも辛い事は多いだろうが……」

「そんな事ございませんわ。修行だと言うのに私、とても楽しんでおりますわ」

 

 

 あれ、何かこう……もうちょっと、いつもの……

 何か調子狂うな。

 

「まあ、何だ。その、とりあえず、これからもよろしく」

「こちらこそですわ。頼りにしております」

 

「……」

「……」

 

 

『お楽しみの所、申し訳ないが主よ、目の前に扉だ』

 

「たっ、楽しんでねーし!?」

「お、おほほほほ……」

 

 助かった!

 そうだよ、これこれ。

 

 おバカさが俺には必要なんだ。

 

 

「よし、ファルフナーズ。扉を開けてくれ」

「かしこまりましたわ」

 

 手を伸ばしてファルフナーズが扉を開ける。

 

 

『2人の初めての共同作業なのである』

 

 やめて!

 恥ずかしい!




帰る前にもう一勝負しちゃう。
次回#36「ゲームで勝負だ!」お楽しみに。

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