俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

44 / 71
一将功成りて万骨枯る:一人の英雄の影に、無数の兵士の犠牲があるんだから調子に乗んな、的なことわざ。
 良い意味では、ここは俺に任せてお前は先に行け! 的なアレ。


あらすじ:ガチャを回す事になった


#44「一姫ガチャ成りて、万毛枯る」

「よし、今日もダンジョンに……ファルフナーズ?」

「マー君や、姫は先日のダメージから立ち直れてないようじゃの」

 

 朝、俺の部屋に顔を出したと思った途端、ファルフナーズが押入れに飛び込んだ。

 何がどうなったんだ?

 

「すまんがスクルド、押し入れを開けてくれ」

「少しでも探索に関わる事を手伝うのは、本当は駄目なんじゃがのー」

 

 ぼやきながら、それでも押し入れを勢い良く開けてくれた。

 

 

 スパァーン!

 

 

 押入れの下の段、オタクグッズが満載でわずかしない隙間に膝を折り曲げて、ファルフナーズが両手で顔を押さえていた。

 

「き、昨日の事を思い出してしまって……恥ずかしくてマサト様に合わせる顔が無いのですわ」

「俺と顔を合わせた途端、記憶が一気に蘇ったのか」

『昔の我が主を見ているようである』

 

 

 ふるふると震えて耳まで赤いファルフナーズ。

 小さく、コクコクと頷いて俺の言葉を肯定している。

 

「ワシもじゃー マー君に乙女の秘所をまるっと晒したのじゃー」

「見た目は子供、中身は神様だからスクルドのはセーフ」

 

「なんでじゃ! 神差別は良くないぞえ!」

「いやいや、スクルドの主天使としては当然シモの世話をだな」

 

 ぽんぽこと俺の背中を叩くスクルドの手を、俺の肩に誘導。

 特に意味も無くスクルドの方へ振り返りながら、重々しく頷く。

 

 ターゲット・ロック、いつでもどうぞ。

 

 ものの数分のうちにスクルドは楽しくなったのか、リズムをとって俺の肩を叩いていた。

 

 単純か。

 頭の中まで子供か。

 

 ゴッド・肩叩き。

 

 さてスクルドのほうは上手く誤魔化せたとして、ファルフナーズをどう立ち直らせるか。

 俺の目を盗み、さり気なく押入れのフスマを閉めて引き篭もろうとしている。

 

 ああもう、どいつもこいつも。

 

 フスマを手で押さえて、ファルフナーズの目を見つめる。

 反射的に再び顔を抑えて俺と目を合わせようとしない。

 

 放っておいたら、ドラえもんみたいに押入れに住みかねないな。

 

 

「おーい、姫えもん」

「私はそのような名前ではないのですわ」

 

「この国では押入れに住む者の名前に、『えもん』を付ける慣わしがあるのだ」

「せ、せめてファルえもんと呼んでくださいませ……」

 

 どうせならフナえもんと呼びたい。

 おっと、話が脱線してきた。

 

「ファルフナーズ、そろそろ腹が減ったぜ。朝飯作ってくれないかな」

「……い、今しばらく時間が欲しいのですわ」

 

 

 意外と重症だな。

 

 困った……

 

 日常的な行動と会話を重ねて、羞恥心を薄れさせてしまうのが一番なんだが。

 

 

 そうだ、何も普通の日常である必要も無い。

 ちょっとしたスパイスで上手く誤魔化そう。

 

 

 だがっ……!

 

 いや、ここは仕方無いんだ!

 

 分かって死んでくれ、俺の毛根達(フレンズ)よ。

 

 

「そうだ、ファルフナーズ。連日たくさんレベル上がっただろ。またレベルアップ・ボーナスで半額だからガチャを――」

 

 ファルフナーズが体をビクンと跳ねさせて反応した。

 よし、食いついた!

 

 

「3回くらい、やっちゃおうかなー……なんて」

「7回ですわ」

 

「えっ」

「一昨日に5回、昨日戻った時に更に2回レベルが上がったのですわ」

 

「な、何も全部使わなくても……それは後日の楽しみで」

 

 

 ススス……

 

 

「閉めるな閉めるな、フスマを。お前……本当はもう立ち直ってるだろ!」

「はしたないとは思いながらも……ガチャの楽しさには抗あらがえ無いのですわ」

 

 照れてはにかみながら押入れから出てきた。

 あら、良い笑顔。

 

 

 だがその笑顔のために、俺の毛根達(フレンズ)がまた死地へ赴おもむくのだ。

 

 

 一姫ガチャ成りて、万毛枯る

 

 

 

「では行きますわ! とおう!」

 

 ファルフナーズが宙に向かって指を突き出した。

 ステータス画面にガチャのボタンがあるらしい。

 ファルフナーズにしか見えていないのだが。

 

 お姫様が勢い良く指を突き出すと、後頭部に鈍痛が湧き上がる!

 ぐううう!

 さらば毛根達(フレンズ)

 

 

 空中にドラム・リールが出現し激しく回転し始める。

 

 ドゥルルルル、デデドン!

 

 

『スーパー・レア』

 

 

「きたあーー!」

「遂にやりましたわ!」

 

 ドラムが消え、そこから神々しいような演出でゆっくりと剣が舞い降りてくる。

 

 流石最高レアだぜ。

 乱暴に投げ捨てられてくるコモンのアイテムとは訳が違う。

 

 

 最高レア、無限ソードを入手した!

 

 テーレッテレー!

 

 

「おめでとうございます、マサト様!」

「良くやった、ファルフナーズ!」

 

 手に手を取って喜びを分かち合う。

 

『これで我の出番も終わったのである。嬉しさと寂しさの交じり合ったほろ苦い感情である』

「おいおい、金属バットさん。寂しい事言うなよ。2刀流って手もあるんだしさ」

 

 手元に降臨してきた無限ソードの柄を握って、誇らしげに構えた。

 いよいよ俺も勇者としていっぱしの武器を手に入れたのだ!

 

 

 ……勇者は言いすぎか。

 戦士、戦士くらいにしておこう。

 

 

「よしファルフナーズ。無限ソードのステータスを頼む」

「かしこまりましたわ。ええと……無限ソード、命中点MAX、打撃点10、刃の部分が延びて目標に絶対命中する名刀……」

 

 

「んん……?」

「……」

『……』

 

 

「ファルフナーズ、今の金属バットさんのステータスを頼む」

「はい。【伸縮自在の知的なファイヤ・ブランド】英雄級金属バット+9、命中点40、打撃点40」

 

 

「……」

「……」

『……』

 

 

「……ゴミだな」

「金属バットさん様の足元にも及びませんですわ」

『完全勝利である』

 

 

「絶対命中という利点を考慮しても……ダメージが低すぎる」

「金属バットさん様は武器エンチャントの巻物と強化で鍛えられてますから」

『日々の鍛錬の賜物なのである』

 

 

 それを鍛錬と言うかどうかは怪しいが。

 

 

「ま、いらんな」

 

 ポイッ

 

『流石に勿体無いのである』

「そうですわ、マサト様。物を粗末にするのは良くないのです」

 

「確かにそうだな。ファルフナーズ、アレを出してくれ。両替機」

「まあ、売却してしまわれるのですか」

 

 ファルフナーズが腰元の、見えないアイテム・バッグから両替機を取り出して手渡してくれる。

 見た目は炊飯器の上に漏斗(じょうご)が付いたような奇妙な箱だが、あらゆる物を換金可能なスグレモノだ。

 

 

「さぁーて。名刀、無限ソードおいくらハウマッチ!」

 

 両替機の液晶じみた表示パネルに文字が光って浮かび上がる。

 

『それを 売るなんて とんでもない!』

「ちっ、両替機が聞いて呆れる。そこは根性で買い取れよなー」

 

 

『マサト・オコノギの根性 を買い取ります。 1)銅貨3枚 2)200円』

「根性を買い取れとは言ってねえー! しかもえらい安いな!」

 

 

 ファルフナーズが口元を押さえてクスクスと笑っている。

 まあ、お姫様がすっかり元気になったようだから結果オーライ、という事にしておこう。

 妙に人間臭い両替機も、たまには役に立つもんだ。

 

 

「さあ、ガチャの最高レアも出したし。ファルフナーズ、朝食の用意を――」

 

「まあ! マサト様、ガチャ景品入れ替えだそうですわ! 今度のスーパー・レアは多機能ガントレット、覇者の篭手(こて)だそうですわ!」

 

「くっ、商品入れ替えとは余計な事を! 待て! ファルフナーズ、その指を下ろせ!」

 

 

 にまぁーっ

 

 ファルフナーズが笑う。

 

 その笑い方は美少女がして良いもんじゃない!

 色々台無しだ!

 

 

「何だか楽しくなって来たのですわー! とおおおおう!」

「待て! うわああああ!」

 

……

 

 

「朝から元気な2人じゃのー」

『今日も騒がしくなりそうなのである』

 

 

 俺の絶叫が6回響き渡った。

 

 

 首筋からうなじが無くなった。

 

 生え際くっきり

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。