俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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あらすじ:マサト達、階層ボスをボコるの事。


#57「こちらの桜色ドレスを着て頂きましょう!」

「よし、先へ進もう」

「かしこまりましたわ」

 

 タクシーのおっさんを次元の狭間に追い返しつつ考える。

 車は本当に自動的に元通りになるんだろうか……

 違った。そこじゃない。

 

 右の通路と左の通路、どちらに進むべきか。

 

 

「ま、手当たり次第って事でこのまま右側から行くかー」

「迷ったら右、ですわ」 

 

 クラピカ理論だろうか。

 

 通路は100mほど真っ直ぐに進み曲がり角になる。

 更に100mほど進むと――

 

「行き止まりだ」

「ただの壁のようですわ」

 

「何も無い通路でバグベア達は何をしてたんだか」

「マサト様が扉を開けた瞬間に生成されるインスタント・ダンジョンでございますので」

 

 インスタントって言うけど、3分待たなくていいのかな。

 後ろで静かにしていた死神少女デスノも首をかしげている。

 

 言葉はよく理解できないが、俺が扉を開けることで新しいダンジョンが作られるらしい。

 きっと風来の不思議な商人みたいな何かなのだ。

 

 ダンジョン入り口を経由して反対側の通路へ。

 右側の通路と同じように曲がって100mほど進む。

 

「扉だ。ボス部屋かな」

「気を引き締めて参りましょう、マサト様」

 

 合点だ。

 

 

 部屋に切り込む体勢を整えながら、ファルフナーズに扉を開けてもらう。

 

 この獣臭、さっきと同じ――

 

「ボスもバグベアか!」

 

 やはり10匹のバグベアが一斉にこちらを振り向いた。

 もうこいつらのクセは見切った!

 

 囲まれないよう、転ばされないようにすれば楽勝。

 

 疲れるけど。

 

……

 

「よし、残るは1匹だけ!」

 

 リーダー格なのか、後ろで控えてたバグベアが居た。

 流石に息が上がっているが、俺はそいつに詰め寄る。

 

「はひー、仕上げだ金属バットさん! 派手に燃えろ!」

『今日の我が主は実に勇ましいのである。感涙にむせぶ次第』

 

 大上段から一撃!

 

「真っ二つだぜ!」

 

 今日一番の快打だ。

 

『待て、我が主よ。何か変だ。手応えが無さ過ぎるのである』

 

 真っ二つになったバグベアの死体が真っ黒になりドロリと溶ける。

 あっという間に黒い塊が人の形になった。

 

『新手のスライムであるか!?』

「いや、名探偵コナンの犯人に違いない!」

 

 人型の黒スライムが大きな口でニタニタと笑う。

 全身タイツじゃなかったのか……コナン君の犯人の中の人。

 

「マサト様、お気をつけ下さい! 変身型のモンスターでございますわ!」

「変身能力か。次は何のモンスターに変身するんだ?」

 

 挑発するように金属バットさんを突きつける。

 今のうちに呼吸を整えて、変身する隙を突こう。

 

 と、思ったら一瞬にして別の人型に変身しやがった!

 隙をうかがうヒマも無い。

 

 

『なんと!!』

「まあっ!」

 

 金属バットさんとお姫様が驚きの声をあげる。

 

 

 どう見ても、そこらに居る冴えない人間の男姿だが。

 ちょっとだけ親近感湧くが……

 

 ファルフナーズに聞いてみる。

 

「……知り合いか? このダサいダメ男風モンスター」

「ええ、とても良く存じておりますわ……」

 

「ははは、ファルフナーズにもこんなショボい友人がいるのかー」

 

 

 お姫様は申し訳なさそうに身じろぎしながら、上目遣いで言葉を紡ぐ。

 

 

「その……マサト様のお姿ですわ」

 

 

 

 はあ?

 

 

「これが、俺?」

「はい、服装まで同じの瓜二つですわ」

 

 右手を上げる。

 目の前の男も上げる。

 

 

「えー!? 俺、こんな格好かー!?」

「とても勇ましいと思うのですわ」

 

 うん、薄々感付いていたけど。

 このお姫様の美的センスは明らかにアウトだ。

 

「いやいや、いくら俺似でももうちょっと、こう……シュッとしてない?」

「……シュッ、でございますか?」

 

 シャドーボクシングをしてみる。

 

 シュッシュッ!

 

 目の前の男もシュッシュッ!

 

「……今日から筋トレしよう」

 

 

 右手の平を前に出す。

 目の前の男も出した。

 

「お手手のシワとシワを合わせて」

【幸せー】

 

「しゃべった! しゃべったぞコイツ!」

「マサト様の残機、と言うのが増えたのでございますね?」

 

 違うと思うよ。

 

 

 左手も出して、俺の瓜二つと両手を合わせる。

 

「これで俺が不思議な力に目覚めたり……しないか」

 

 両手を合わせたまま顔を近づける。

 向こうも近づけてくる。

 

 

 そのまま2人は目を閉じて唇を……

 

 

 チュッ

 

 

 おや、唇の感触じゃないぞ。

 

 目を開けると、そこは白い手袋に包まれたお姫様の手だった。

 

「マサト様、それは、それだけはいけませんわ」

 

 ファルフナーズに真顔で止められてしまった。

 

「冗談だ、冗談」

 

 首をフルフルと振り続けるファルフナーズに言い訳しておく。 

 モテない男は一度くらい鏡に向かってやるもんなんだよ。

 

 ……やるよね?

 

 

 突然ファルフナーズが叫ぶ。

 

「思い……出しましたわ! これはドッペルゲンガーです!」

「ドッペンゲルガー?」

【ドッフルギャンガフフフフフ】

 

 うるさい、俺の偽者は黙れ。

 

「マサトチョップ!」

 

 べちっ

 

 

「ドッペルゲンガーですわ」

「ドッペン……ドッペルゲルガー」

 

「ゲンガー」

「ガ……ゲンガー」

 

「その調子ですわ。さあ、もう一度、ドッペルゲンガー」

「ドッペルゲンガー」

 

 

「はい。ドッペルゲンガーはあらゆる生物の姿を真似する事が出来る、邪悪なクリーチャーです」

「えっ、コイツ邪悪なの? 間抜けな顔してるけど」

【お前の顔を真似してるんだが】

 

 うるさいな。

 

「マサトパンチ!」

 

 ごすごすっ

 

「か、顔はともかく――」

「いやそこだけはフォローしてくれ。後生だから」

 

「私は素敵だと思っておりますが」

「あいや、真面目にフォローされると恥ずかしい」

【ツンデレ! ツンデレ!!】

 

 ええい、邪魔臭い。

 全然ツンデレの定義から外れている。

 

「マサトキック!」

 

 バキッ! カキーン!

 

【バットで殴るのはキックと言わない……】

 

 

 

「ともかく、人の姿を写し取ってこっそり摩り替わる邪悪なモンスターですわ」

「顔はともかく、行動も間抜けに見えるけどなあ」

【お前にだけは言われたく無い】

 

 いちいち言い返してくるヤツだ。

 

「マサトアッパー!」

 

 スパーン!

 

 ドシャッ

 

【あ、足払い……】

 

 

「……」

「弱いな、こいつ」

 

 

【真似する対象が悪かった、ぐふぅ】

 

 余計なお世話だ。

 

「姿形だけ真似ても無駄なんだ。せめて武器と防具もセットじゃなきゃな」

『お役立ちにござるのである』

 

 金属バットさん、常に俺より攻撃力高いしな。

 

 

「あ、思い出した。後でステータス確認しておこう」

「かしこまりましたわ。最近、確認してませんでしたものね」

 

 ファルフナーズもポンと手を叩いて同意してくれる。

 

 

『主! また奴が姿を変えるのである!』

 

 シュウウウウッ!

 

【武器は無理だが、防具なら……くくく、これで貴様もお終いだ】

 

 俺と瓜二つの姿の体表面が白くなる!

 

 

 こ、これは――!

 

 

 

 ドッペルゲンガーは新たな防具を纏った。

 

 それは最強最悪の姿だと言わざるを得ない。

 

 

「俺の姿で、ファルフナーズの服、だとぉ!?」

 

『ミニスカ親父なのである』

 

 

 きもーーーい!

 

 

 我が姿ながらこれはキモい!

 

 いい歳した男が白い超ミニスカ制服風ドレス!

 

 ウサギ耳のヘアバンド!

 

 そして光沢テカテカの白いニーソ!

 

 

「あ、悪夢だ……」

 

「マサト様! とても勇ましくて可愛らしいお姿ですわ!」

 

 

「えっ?」

「えっ?」

 

 

「お前はあれが可愛く見えるのか?」

「マサト様はあれが可愛く見えませんので?」

 

「どう見てもニーソの繊維の隙間からすね毛がコンニチワしてるのだが」

「そこは御愛嬌ですわ。後ほど処理しましょうね」

 

 いや、俺じゃねーから。

 俺のドッペルゲンガーだから。

 

 

「何でファルフナーズの服なんだ! 俺の衣装を真似ろ!」

【最強の防具をコピーするのは当たり前、ククク……】

 

 ある意味最強だ。

 

 

「マサトビーム!」

 

 ガツガツガツッ!

 

『どう見ても突き攻撃なのである』

 

 

 俺の八つ当たり攻撃を食らったドッペルゲンガーはフラフラとよろめく。

 

「最強の防具どころかただの服じゃねえか。あっ! てめぇ! 内股でよろめくな!」

 

 内股になった俺の女装姿は最高にキモい!

 

 

 へたり込んだドッペルゲンガーは降参の意を示した。

 

【も、もう戦えないわ……許して】

「女言葉になるな! ヨヨヨと泣くな! ハンカチを出すなーー!」

 

 

 粗悪コピー品にはご注意を。

 

 ……

 

 …

 

 

「試合に勝って、勝負に負けた。そんな気分だ」

『愉快なものを見れたのである』

 

 ちくしょー、自分の姿でやられたら、そんな事言えないんだからな!

 

 へたり込んだ俺と瓜二つの姿は、太ももの付け根から純白レースのパンツが顔を覗かせていた。

 夢に出そう。

 

 

 後ろでファルフナーズとデスノがキャッキャと嬉しそうな声をあげている。

 

「マサト、とても綺麗だった」

「デスノ様も御目が高いですわ! 戻ったらマサト様に、こちらの桜色ドレスを着て頂きましょう」

 

 

 

 うちの女性陣は……

 揃いも揃って美的感覚がおかしい。

 

 真顔でしきりに頷くデスノを見ながら、この帰り道が永遠に続けば良いのにと思っていた。

 

 

 

 ファッションショーをさせられた。

 

 ファルフナーズの衣装で。




お食事中の方、ごめんなさい。狙いました。

感想とか桜色ドレスとかお待ちしております!
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