OB(オービー:アウト オブ バウンズの略):
バスケットボールやゴルフでボールが規定のプレイエリアから出てしまうこと。
/!\ プレイエリアの外です、的な意味だが物語の本筋には関係ありません。
「よし、ステータス確認だ」
「それよりもマサト様、こちらの衣装を」
「いやそれハイレグ水着だよね!?」
「絶対マサト様に似合うと思うのですわ!」
似合わないよ。
もし似合ったら逆に嫌だよ。
押し切らないとビキニアーマー風ドレスを着せられそうだ。
お姫様が口を尖らせてスネたように言う。
「姫巫女の正装ですのに……」
「その格好で人前に出るのか。ぜひ着て見せてくれ」
「流石に儀式以外で着るのは少々恥ずかしくありますわ。でもマサト様も着てくださるのでしたら」
腰元のアイテムバッグからもう一着取り出す。
深い絶望感に襲われる。
「2着あるのかー……」
「はい、予備としてもう一着。お揃いにできるのですわ」
お姫様が楽しそうで何よりです。
でも、そんなのお断りだ。
ハイレグだぞ。
あんなもん男が着た日には……
股間の愚息がOB間違い無しだな!
お見せできない! お見せできないよ!!
しかもペアルック。
「そ、それよりもスタータス確認をしよう。ダンジョン攻略には大事だ」
「ではこの衣装はその後で」
キャンセルできないのかー
何の罰ゲームだろう。
「私も魂さえあればマサトと同じ服にするのに」
とは、死神少女デスノさんの言。
「では確認致します。マサト様のステータス画面ですが――」
「よし来た」
「マサト・オコノギ 20歳、身長161cm、体重72kg、童貞」
「そこは読まなくて良いのに」
「ひんっ、申し訳ありませんですわ」
このお姫様はまだ童貞の単語の意味を知らない。
一生知らなくて良いと思うよ!
「体重5kgも減ったか……」
「ご無理をなさらないで下さいね」
死ぬたびに減っているんじゃないだろうか。
デス・ダイエット。
「レベル37、ダンジョン・ディーパー」
「まともな称号になった気がするな。ディーパーって何だろう?」
「この場合は、より深くに潜る者、との意味かと存じますわ」
「なるほど。神様迎えたし、ボスっぽい風の精霊王も倒したしな」
レベルも以前の3倍だ!
確認を怠っていたのはちょっと迂闊だったが。
あれ? ひょっとして……
「俺、意外と頑張ってる?」
「はい、とても素晴らしい成績を残していると思うのですわ」
ファルフナーズが柔らかな笑顔で太鼓判を押してくれた。
元ヒキニートの俺でもやれば結果が出るものなんだなあ。
ちょっとうるっと来た。
「特性【3柱主天使】【絶対時間軸】【錬金術】【未来視】」
「増えたなあ。3柱主天使って何だ?」
「神様は1柱2柱……と数えるのですわ。この場合3つの神様に仕える最も偉い天使、という意味かと」
「ふ、ふ~ん……仕えてるのか、俺」
部屋を振り返る。
ベッドの上でドラゴンボールのコミックスを読んでいる、銀髪少女のスクルド。
ノルニル3姉妹という神様らしいが普段はただの10歳児。
未来とか機械っぽいのを何とかする神様らしいが、正体は漫画を読む神様に違いない。
シーツにこぼしたコアラのマーチの食べかすは自分で掃除してもらおう。
壁に垂直に座り、エクササイズで前屈ぜんくつしようとして25度ほどしか傾むかず、痙攣しているのがハーちゃん。
ソロモンの悪魔、ハゲンティという悪魔らしい。
色気満点お触りOKなのに、触ると無意識レベルで俺の毛根をドレインしてくる真の悪魔だ。
泣きぼくろが雰囲気ある金髪美女なのだが、頭の中身はスクルドより幼い。
俺の真後ろ20cmにピッタリくっ付いて、首元に鼻息を送り込むことに勤いそしんでいるのが死神少女デスノ。
死に戻り能力を持つ俺の魂を送り返す死神なのだが、そこで俺に惚れたとか何とか。
ややクセのある青髪がクールな印象を受けるが、中身はただの煩悩少女だ。
表情があまり変わらないが、頭の中身は一番忙しそう。
「仕えてるのか~……」
「お、御神々の常識は我々人間のそれとは、かけ離れておりますので」
ファルフナーズも多少は思う所があるらしい。
3人の神様達は俺の視線を感じて返事をよこす。
「お世話になっているのじゃー」とスクルド。
「いっぱいサービスしちゃいます、ですって!」とハーちゃん。
「夫婦は協力し合うもの。ワタシもマサトの力になる」とデスノ。
「……ま、いっか。全員好意的な神様だし」
「マサト様は御神々に気に入って頂ける才能があるに違いないのですわ」
嬉しそうにお姫様が言う。
そんな才能あったらヒキニートになってない気もするけど。
「ともかく続きを頼む。他の3つの特性は?」
「あ、はい。【絶対時間軸】、修正された時間の流れを記憶・知覚できる、とありますわ」
「何を言ってるかさっぱりだ」
デスノが耳元で囁く。
くすぐったい。
「それはワタシからのギフト。人間には知覚不可能な時間の流れを感知し、記憶と意識を保持できる」
「OK、ますます分からなくなった」
人間には知覚不可能って……時間の流れなんて時計を見れば一発で分かるからな。
「次から死んだ時、死に戻るまでのワタシとマサトの、愛の巣での蜜月生活を忘れなくなる」
「そこは忘れておきたい」
…
「ええと、次の【錬金術】ですが――」
「はいはいっ! それはハーちゃんからのギフト、ですって! 物の形や材質を自在に操れる、ですって!」
ハーちゃんがファルフナーズに割り込んで説明してくれる。
それは良いんだが、代償が常に俺の毛根なのが使い辛い。
「で、最後の【未来視】って何?」
「はい。【未来視】、限定的な運命線感知により回避・命中にボーナス、だそうですわ」
「そりゃワシからのギフトなのじゃー! ありがたく使うのじゃ!」
「うわっ、食べかす飛ばすな! 食べてる時にしゃべるなって」
(そりゃ済まなかったのじゃー)
(頭の中に直接語り掛けないでください)
「さあ次、次」
「かしこまりましたわ、ええと……命中点52+114(金属バット、詳細略):銀戦士級」
「銀戦士?」
「はい、トリピュロン王国の神話で世界最初の王に仕えてた戦士の一団ですわ」
「ふふふ、この俺も神話級に手が届いたというわけか」
「ただ、その、どちらかというと端役
「だめじゃん」
「申し訳ございません」
言葉を慎んではいたが、要は雑魚なんだろうなー
恐らく、金の戦士の引き立て役ポジションなのだろう。
「ええと、打撃点52+114(金属バット、詳細略):銀戦士級」
「常に金属バットさんには2倍の差があるな」
「次に回避点52+0:スーパーマウス級」
「結局ネズミじゃねえか。しかも敵の攻撃を回避した試しあったっけ?」
『思うに回避しようとしなければ無理なのではないだろうか』
「スッ、馬鹿め、そっちは残像だ。とか、やりてーなー」
「……」
俺と金属バットさんの言葉を聞いたファルフナーズが作り笑顔で無言になっている。
言いたい事は分かった。
俺が回避すると自分に攻撃がー、とか考えてる顔だ。
「そして防御点59+32(鉄壁のプロテクター)+17(鉄壁のマスクとレガース)+10(高級な浮遊靴):ダイヤモンド級」
「おお、ダイヤモンド級とは! 世界で一番硬い物質だな」
「マサト様の世界ではそうなのですか?」
「お前の世界違うの!?」
「ええ、ミスリルやアダマンチウムとか」
「ミスリルは聞いた事あるな。実在するのかー」
「私のこのティアラの装飾にも……ほら、ここの」
「ふーん……銀と同じに見える。あっ、銀より良い匂いがする?」
「ちっ、違いますわ! それは私の使っている香水の香りで……」
「へぇ~……シャンプーも換えた?」
「あっ、はい。お母様が私用にと素敵な物を」
「あーっ! マー君がドサクサに紛れて姫を口説いておるのじゃー! スケコマシなのじゃー」
「ちゃっ、ちゃうわい!」
なんだか妙な空気はスクルドによって中断された。
助かったのか残念だったのか。
俺も妙な空気に尻のあたりが妙にむずがゆい気がしてたけど。
お姫様も鼻先でピンクの髪を指にくるくると絡めてモジモジしている。
コホン、と咳払いでファルフナーズが仕切りなおした。
「で、ではお次に体力点120:伝説のサンドバッグ級」
「お前の世界にはサンドバッグにどんな伝説があるんだ」
「さあ……」
「トレーニング好きの暑苦しい勇者でもいたんだろうなー」
「幸運値:99+(極上人生)」
「カンストの上って事だろうか」
「カンスト、でございますか?」
「カウンター・ストップの略な。計測の上限を越えたってことだ」
「なるほどでございますわ」
「この値だけは俺のステータスの中で唯一のオアシスだ」
「そして最後に魔力点45でございますわ」
「タクシーのおっさん呼び放題だな」
「あ、呪文一覧のページに新たな呪文が追加されておりますわ!」
「マジか! どんなのだ!」
「魔扉、と書いてあります」
「まっぴ……? 変な名前だな。効果は?」
「手を触れずに、離れた所の扉の開閉を自在に行える。同時に開閉する扉1つにつき魔力点2を使用する。単純な物理錠であれば解除される、とありますわ」
「なるほど、風の精霊王をこっちの世界に逃がした時みたいなミスを防げるかもしれない魔法か」
「地味に見えますが、応用の利きそうな呪文なのですわ」
「ようやく呪文らしい呪文をゲットしたぜ」
「どれどれ……魔っ扉ー!」
自室のドアに向かって手をかざし魔力を込める!
バタン!
「……」
「……扉の向こうは宇宙だった」
暗黒の空間にきらめく星が無数に見える。
「コズミック・ダンジョンですわ」
「これもダンジョンなのかー」
「無数の小さな光の1つ1つが大地なのだそうで」
「うん、知ってる。でも宇宙旅行はゴメンだ」
再び魔扉を使って閉める。
「結局俺が使うとダンジョンを開くだけか。閉じる用途にしか使えないな」
まあ嘆く事も無いか。
上位互換の呪文とか出てくるかも知れないし。
…
「以上でマサト様のステータス確認終了ですわ」
「わかった。ありがとうファルフナーズ」
「では、労
「待て待て、待って。どこでそんな話になった?!」
「マサト様が頑張ってたくさんレベルアップしてくださいましたので、半額特典でたくさん回せるのですわー」
「ファルフナーズ、落ち着こう。落ち着いてその指を下に降ろすんだ」
気分は凶器を振り回す犯人と警察官だ。
あながち間違っていない。
お姫様があの指を前に押し出すだけで、俺の大事な毛根達が150本ずつ天に召される。
阻止せねば!
「喉が渇いたなー。ファルフナーズ、お茶を淹れてくれないか」
「……」
お姫様がジト目になる。
「きょ、今日は暖かい紅茶が飲みたいな~」
「……」
お姫様の唇が尖って頬をふくらませている。
「い、1回だけな?」
「……30回は回せるはずですのにー」
と、言いつつもファルフナーズの口元がにへらと笑みになる。
「必ず良い物を引き当てるのですわ! とおおおぉう!」
プチプチプチィ!
くぅぅぅ!
さらばマイ毛根達!
空中にドラムリールが出現して回る。
ドゥルルルル、デデドン!
『アンコモン』
魔法の巻物、一枚ふわりん
「また武器強化の巻物かー」
「残念ですわ。では次を」
「一回だけ、って言ったよな」
「でもでも! もう一回だけ回したいのですわ!」
ファルフナーズがいつものように俺をポコポコ殴ろうとする。
――今だ!
回避発動ッ!
スッ
「ふっ、馬鹿め。そっちは残像だ」
スカッ
お姫様の手は空を切った。
「やったぜ、回避能力はこのためにあったのだ」
正直、叩かれても肩叩きにすらならないくらいお姫様の力は弱いのだが。
一度やってみたかった。
夢が叶うって素晴らしい!
「私のストレスを受け止めてくださらないのですねーっ」
挑戦精神的な所を刺激されたのか、ファルフナーズがドヤ顔で腕まくり。
追いかけてきて再度ポコポコしようと……
スッ
「ははは、残像だよファルフナーズ君」
これは良い気分。
「マサト様ーっ」
「あははっ、捕まえてごらーん」
ポコッ、スウッ、スカッ
ポコッ、スウッ、スカッ
「きゃっきゃっ」
「ふふっ」
……
…
「また珍しいイチャつき方しとるのー」
「うらやましい。ワタシもやりたい」
「ハーちゃんの四次元重力殺法で捕まえてみせます、ですって!」
神々も黄昏
でも追加で3回ガチャされた。
計マイナス600本。
感想とかステータスとかお待ちしております!