どうか耳かき棒などを片手に用意してお読みください。
「よし、マサト様こちらへ!」
「なんだなんだ?」
ファルフナーズが正座して自分の膝をポンポンと叩く。
その手には耳かき棒が。
「先日お話した耳かきプリンセスの異名、披露させて頂くのですわ」
「うん、いきなり身の危険を感じるよ?」
「大丈夫なのですわ! ご信頼くださいませ」
「毛根だけでなく、俺の穴という穴全てを駆逐するつもりか!?」
「何か言い方がいやらしいのですわ」
「気のせいだ」
ともかく逃げ出さなければ。
俺の本能が命の危機を告げている。
俺の背中を指でツツーとするのに勤しむ死神少女デスノに合図を送る。
(デスノ、扉を開けて退路を確保してくれ!)
デスノはいつもの無表情のまま頷きを返してきた。
助かる。
持つべきものは物分りの良い死神だ。
シュルシュル……
「誰が服を脱いでと言ったかな!?」
「ワタシに夜伽を命じたのかと」
くっ、この娘は色々手遅れだ!
お姫様が耳かき棒を片手に手招きをしている。
あれはきっと耳かき棒ではなく、拷問道具に違いない。
前門の拷問吏
「別に取って食べようと言うのではございませんのに」
「お前の国は人を食べるのか!?」
「まさか、うふふっ」と笑うお姫様。
「耳しか食べないのですわ」
「や、やはり……ッ!」
サァーッ!
血の気が引く音。
「冗談なのですわ。ささ、早く」
「なんだ……冗談か。脅かすなよー」
胸を撫で下ろし、促うながされるままお姫様の太ももへ。
「――はっ!? しまった! 勢いで、つい」
「マサト様もお人が良すぎなのですわ」
王族こわい。
流れるように自分のペースに引き込んでくる。
くっ、ファルフナーズの左手が俺の頭をロックする。
覚悟を決めるしかないのか!
せめて容赦を乞う事しか出来ない俺だった。
「や、優しくして……」
「もちろんなのですわ。先っちょ、先っちょだけですわ」
会話がおかしい。
ああ神よ、俺を救いたまえ。
「マサト、準備と覚悟はできた」
俺の呼びかけに応えたのは死神だった。
しかも下着姿で。
「これが俺の遺言になるかも知れない……デスノ、風邪をひく前に服を着なさい」
「くぴゅんっ」
可愛いクシャミの音と同時に、地獄の耳かき棒が侵略を開始した。
……
…
「こ、こんなの初めて……」
「ふふふっ、マサト様もすっかり私のトリコなのですわ」
「耳が幸せ~」
「ここですか、ここが良いんですか~。えいっ、えいっ」
「あっあっあっ……」
人に耳かきをしてもらうのがこんなに幸福だったとは。
「はーいマサト様、もうちょっと首を前へ傾けてくださいませ~」
「ん~……」
「よ~しよし、コーリコリ、か~りかり」
「はひぃ~」
変な声、出まくり。
脳みそがとろける~
「あっ、動かないでくださいませ~、ちょうど大きいのが」
「ゴロゴロ音が聞こえる~」
「はいっ、できました。お粗末様なのですわ」
「ふー、ありがとう。気持ち良かった」
「うふふっ」
「認めよう。ファルフナーズは一流耳かき姫だと」
「お褒めにあずかり、光栄なのですわ」
「耳かき姫の野望、大志」
すっかり満足して起き上がる。
「あっ、マサト様お待ちくださいませ」
「ん?」
「まだ反対側が残っておりますわ。さあ今度は左耳を」
「おお、スマンな。頼むよ」
頭の向きを逆に、再びお姫様の太ももへゴロン。
下はニーソ越しの太もも、上は耳かき、これぞ極楽。
しかも体の位置を反対側に変えるのではなくて、頭を逆向きにしただけだから……
今度は太ももとスカートの境界が目の前に。
目を凝らせばその奥の白い生地、魅惑の雪原とも言うべき――
「もうっ、マサト様ったら、どこを見ようとされてるのですか! めっ」
「い、いやぁ~、首の座りを最適な位置に」
見え見えのウソで誤魔化したりして。
スカートの裾を直されてしまった。
俺の頭が乗ったままなのに、器用な事だ。
「さあ、参りますよ~」
だが、デスノがここで横槍を入れた。
「待って。姫が両耳ともやるのはズルい。マサトの左耳はワタシのもの」
「今日のマサト様のお世話当番はこの私、ファルフナーズなのですわ」
そんなローテーション組んでたの?
本人、初耳なんですが。
耳かきだけに。
「耳かきはまた別。片方ずつ、今日の左耳はワタシがヤる」
「そ、そんなあ~」
デスノが手をかざすと、俺の体と耳かき棒が引っ張られる。
正座するデスノの太ももの上にすっぽりと俺の頭が納まった。
「私のマサト様の耳が~」
耳限定なのか。
だが、年下過ぎる2人とは言え、2人とも超をつけてもまだ不足なくらいの美少女。
その2人に取り合いされるのは悪い気がしない。
ヒキニートだったついこの間に比べれば大出世だ。
……と、ニヤけた思考になっていたのが運の尽き。
ドシュッ!
「!?」
「!?」
キィーン……
「……」
「……」
ツーーン!
「ぎゃあああああああ!」
「マサト、動くと危ない」
「危ないどころか! 既に大事故だ!」
「事後、だなんて……マサトいやらしい」
「血が! 血があああ~!」
「初めての時は良く出るって聞いた」
何の話だ!
左耳を抑えながら部屋を転げまわった。
……
…
左耳はティッシュを詰めるハメになった。
明日、耳鼻科にでも行くべきか。
「マサト、ごめんなさい」
「つ、次から気をつけような」
無言で頷くデスノ。
常に無表情なデスノがしょんぼり顔になっていると、流石に怒れない。
「鼓膜じゃなくて本当に良かったよ……」
胸を撫で下ろしながらベッドに腰掛けてつぶやいた。
だが、俺の目の前に立ちはだかる金髪の美女。
ソロモンの悪魔ことハゲンティ、通称ハーちゃんだ。
「ならばお次はこのハーちゃんの出番、ですって!」
「ちょ、待っ……」
言葉を失う。
ハーちゃんの右手には不定形な、動く銀色の耳かき棒らしきものが!
「錬金術は水銀が重要な触媒、ですって! それで耳かき棒を練成しました、ですって!」
「落ち着くんだ、ハーちゃん。水銀は確か人体に有害で……」
「ハーちゃんの異名もフルメタル・耳かきスト、だったんですって!」
「わけがわからないよ!」
後ずさりしてハーちゃんから逃れようとする。
背中に柔らかい感触がぶち当たる。
振り返るとそこには銀髪幼女の女神スクルドが!
しまった! 囲まれた!
「ならば先にワシの番なのじゃー」
その右手にはブリキと木で出来た、からくり仕掛けの謎の物体。
尖った先端はスプーン状になっている――
キュイイイイイン!
「耳かき棒が出して良い音じゃねえ!」
「ワシの権能で作り出した、時計仕掛けの
どうみてもただのドリルです。
「さあマー君、観念するのじゃー」
「ああああーーーーーッ!」
……
…
世界に静寂が訪れた。
正確には、俺から見た世界は無音になった。
難聴系主人公(物理)
ファルフナーズが何か言っている……
「え? 何だって?」
申し訳なさそうに頭を下げる3柱の女神。
結果、ギフトとして特性【悪魔の聴力】を授けられた。
地獄耳になった。
「別に、死に戻りすれば回復するだろうから、いらなかったのに」
「わ、悪ノリし過ぎたお詫びなのじゃ……許して欲しいのじゃ」
ファルフナーズが胸を撫で下ろしながら言う。
「マサト様の広いお心に感謝するのですわ。スクルド様方は私がキツく叱っておきますので」
3柱の神達が震え上がる。
叱られゴッド。
調べたら耳かき回なんて言葉は存在しなかった。
感想とか耳かきしてくれる美少女とかお待ちしております!