俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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あらすじ:マサト達、神殿の決闘に勝つの事。


#60「俺の知ってるツンデレと違う」

「よし、今日もダンジョンで稼ぐぜ」

「頑張って参りましょうね、マサト様」

 

 バリバリ稼がないとな!

 神様3人──3柱か──を食わせるのも大変だ。

 

 ファルフナーズに取り出してもらった【どこでも扉】をオープン!

 いざ、ダンジョンへダイブ!

 

 

「おや、凄い広い……これは、舞台?」

「マサト様、これは神殿でございます」

 

 神殿なのか。

 何か巨大なピラミッドのてっぺんを切り取ったような。

 やたら真っ白な階段と舞台が目立っている。

 

「北斗の拳であった聖帝十字陵を真っ白にしたみたいだ」

「ほく…? 何でございましょう、それは?」

 

 お姫様はマンガに興味を示さない。

 読み方知らないだけかな?

 

 

 俺の後ろから三者三様の声が。

 

「ほう」とスクルドの声。

「ですって!」とハーちゃん。

「マサト、これは……」とデスノ。

 

 何だ何だ?

 

 神様お三方が一斉に声をあげたぞ。

 

 

「ここに何かスペシャルなイベントでもあるの?」

 

 問いかけると、女神達は互いの顔を見合わせている。

 ひょっとすると、また新しい神様でも出てくるのだろうか。

 

 スクルドが俺の肩に手をポンと置いた。

 

「マー君、ここは頑張りどころなのじゃー」

 

 多くは語らない。

 だが、スクルドの表情は固くはない。

 自然なで優しい笑顔だ。

 

 と、なれば風の精霊王ほどの危機でない事は容易に想像できる。

 

 でも何かしらの運命の分かれ道に差し掛かったんだろう。

 

 

「マサト様、一体ここに何があるのでしょうか」

 

 

 ファルフナーズが不安げに問いかけてくる。

 

 仕方無い、少し安心させてやるか。

 

 

「大丈夫だ。せいぜいファルフナーズが1ヶ月プリンを我慢する程度の試練さ」

 

 一瞬、きょとんとした表情になるお姫様。

 だがすぐに苦笑を漏らす。

 

「もう、マサト様ってばこんな時に」

「ははは、まあ任せておけって」

 

 

 緊張と不安は解きほぐせたようだ。

 

 

「――いえ、やはりプリン1ヶ月は死活問題なのですわー!」

 

 

 ダメだ、この食いしんぼプリンセス。

 

 ふんすふんすと鼻息を荒くしている。

 斜め下に食い気スイッチ・オン。

 

 

 巨大な白い神殿の階段を昇っていく。

 

「何十段あるんだ。昇るだけで疲れるなー」

「マサト様、私を置いてマサト様だけでも先へ……」

 

 ファルフナーズがへたり込んでしまう。

 

 

「諦めたらそこで探索終了だよ」

「マサト様ぁ……」

 

 感動のあまり俺に尊敬の眼差しを向けるピンク髪のお姫様。

 

 

 なんだこれ。

 

 

 俺もそうだが、ファルフナーズは特に体力が無い。

 休み休みしながら、100段以上の階段を昇りきった。

 

 

 そこは──だだっ広いだけの広間だった。

 

「何も無いなこれ」

「はひはひ……いえ、マサト様、はふはふ……」

 

「呼吸を整えてからで良いぞ」

 

 あんなに甘い物を毎日食べてるくせに。

 その栄養はどこへ……

 

 

 考えるまでも無かった。

 

 呼吸で上下する小柄な体に半テンポ遅れて動く双丘だ。

 

 平たく言えばおっぱい。

 丸いけど。

 

 ありゃ中身はプリンだな。

 食べさせろ。

 

 

「マサト様から邪よこしまな視線を感じるのですわ」

「い、いやらしい事なんて考えてないぞ!」

 

 ちょっとしか。

 

「どちらかと言えば、頓狂(とんきょう)な事を……」

「お前、本当に俺の心が見えてるんじゃないだろうな!?」

 

「もうっ、どんな事を考えていたのでございますかー」

「そりゃあ、将来はファルフナーズの胸を下から支える仕事に就きたいと――」

 

 しまった、口が滑った。

 

 お姫様の視線が痛い。

 

 

 ぷいっ

 

 サササッ!

 

 

 顔を背けても回り込んでくる。

 

 ごめんなさいするまで許してくれなかった。

 

…

 

「で、何があるって?」

「そうでございました。あちらに人影が」

 

「そりゃ悪い事したなあ……待たせちゃって」

「確かに。申し訳ないのですわ」

 

「だがほぼ確実に敵だろうし、むしろ焦らし効果があったかも知れん」

「ものは考えよう、ですわね」

 

 慎重に人影のある方へ近づいていく。

 

 

「どうやら2人だな」

「とても長身の男性と、小柄な女性のようですわ」

 

 

 小柄な女性のほうが声を張り上げた。

 

「よく来たわね! ここは姫巫女の決闘場よ!」

 

 

「何だって!? 決闘!?」

「まあ! そんな試練まであるのですか」

 

 だが同時に納得もした。

 確かに運命の分かれ道っぽい。

 

 背の高い男が気合の叫びを上げ、前に進み出てくる。

 

 前置きもロクに無しでいきなりバトルかよ!

 

 無茶苦茶マッチョで上半身はベルトのような物を巻いただけの半裸。

 巨大で分厚い剣を軽そうに振り回している。

 

 ぶっちゃけ顔が怖い。

 目が赤く光ってるし。

 

 無理だな。

 

 絶対勝てないやつだこれ。

 

 

「あたくしの戦士はレベル256よ! 貴女の戦士はおいくつかしら!?」

 

 小柄な女性が叫んでいる。

 かなり若いようで少女っぽい。

 逆光のせいで良くは見えないが、ファルフナーズの服に似た赤いドレス・アーマーを着ているようだ。

 

 

「私の戦士は……ええと、レベル37ですわ!」

 

 うちのお姫様も言い返す。

 

 気のせいかな?

 レベルの桁が違うよ?

 

『我が主よ、戦闘態勢を』

「大丈夫だ。負ける準備は万全だ」

 

『負け前提とは……』

「見た目的にもレベルも、桁違いだからなあ」

 

 

 だが、赤いドレス・アーマーの少女が言葉を続けて事情が変わった。

 

「あたくしが勝ったら貴方のその魔法の服をもらうわ! 白い姫巫女さん!」

「なっ――!? ファルフナーズの服!?」

 

 思わず振り返る。

 ファルフナーズの表情が真剣なものに変わる。

 

「どうやら相手の何かを奪えるルールのようですわ。ステータスの画面にそう文字が出ました」

「つまり負けたら、ファルフナーズがこの場で……脱ぐ!?」

 

「……」

「……」

 

「もうっ! マサト様ったら、こんな時にまで!」

「い、いや、別にわざと負けようとかしてないよ!?」

 

 でも結果的に負けちゃうんじゃしょうがないよね!

 

「ひーん、金属バット様、マサト様を何とかやる気にさせてくださいまし」

『応。我に秘策有りだ、姫よ』

 

 おお?

 この俺を説得するつもりか?

 

 腐っても元ヒキニート。

 動かざる事山の如しだぜ?

 

 

『我が主よ……こう考えるのだ。姫の着替えはまたいつでもチャンスがある、と』

「……なるほど!」

「何が『なるほど』でございますかーっ!」

 

 ファルフナーズが俺の背中をぺちぺちと引っ叩く。

 相変わらず力が弱すぎるので、むしろ撫でられている感じしかしない。

 

「理解した。向こうの姫巫女の着替えは今この場限りのチャンスだと」

『然り、である』

 

「マサト様のふしだら! ふしだらさんっ!」

 

 ちょっと可愛い言い方してる。

 面白い罵声を背に赤の姫巫女の方へ向かう。

 

 その容姿とスタイルを確認せねば!

 

 

「ちょっと! そっちの要求がまだじゃない!?」

 

 赤の姫巫女が非難するが知ったこっちゃない。

 だが、向こうの戦士とやらが俺の前に立ちはだかって赤の姫巫女をかばった。

 

 赤の姫巫女が叫ぶ。

 

「やっちゃえ! バサーカー!」

 

 バサーカーと呼ばれた勇者が俺に巨大剣を振り下ろす!

 

 

 だが、遅い。

 

 煩悩は俺の思考と行動を加速する。

 今の俺に攻撃を当てたければ、視界に入る前に攻撃するべきだった。

 

「回避発動、アンド【未来視】!」

 

 やつの動きは見切った。

 しかも予測できる。

 

 最小限の動きで剣の軌道を回避、バサーカーの背後に立つ。

 

 もちろん、あえて背を向けて。

 腕組み直立、肩越しに振り返る。

 

 

「馬鹿め、そっちは残像だ」 

 

 

 残像無いけど。

 

 次から意味も無く赤か黄色の長いスカーフを装備しよう。

 

 

「ヌウッ!?」

 

 

 巨大剣を地面に叩き付けたまま呻き声をあげるバサーカー。

 

 案外ノリのいいヤツだな。

 

 目の前にいる赤の姫巫女も驚きの声をあげる。

 

 

「は、早い……残像すら見えなかったわ!」

 

 

 残像無いしね。

 

 この子もノリが良いな。

 根が素直な少女に違いない。

 

「あれ?」

 

 この赤の姫巫女の少女、どこかで見たことが――

 振り返って確認。

 お姫様に問いかける。

 

「なーあー、お前って結婚してて娘とかいるー?」

「マサト様ー、何でございますかー」

 

 ファルフナーズがトコトコと走ってくる。

 

 とっとこプリンセス。

 

 相変わらず足が遅い。

 

 しかし……この距離を俺は回避しつつ一瞬で詰め寄ったのか。

 凄いな、俺の煩悩。

 

 ファルフナーズが近寄ってくると、案の定赤の姫巫女が驚きの声をあげる。

 

「ファル姉様!?」

「まあシャフルナーズですの!?」

 

 駆け寄って抱き合う2人。

 やはり家族だったか。

 

 姫姉妹、感動の再会――

 

 

 

 ゴッ!

 

 

「いってぇ!」

 

 振り返ると、バサーカーの剣で頭を殴られていた。

 

 くそっ、コイツ空気を読まないタイプだな。

 無言で更に巨大剣を振りかぶり、攻撃を続けてきた。

 

「ちょっ、待てって! 今あの姉妹が再会の喜びを分かち合ってるシーンなんだからさ!」

「フンヌッ!」

 

 ファルフナーズ達は抱きしめ合って喜んでいる。

 

「ふぁ、ファルフナーズさーん! 助けてー! 【魔法の盾】使ってー!」

「セイッ!」

 

 こっちの様子は目に入っていない。

 感動の涙を流し、互いに拭きあっている。

 

「ファルフナーズーーッ! 早く来てくれーッ!」

「ハアッ!」

 

 手に手を取ってピョンピョンと飛び上がって喜んでいる。

 

「ファルフナーズ様ーーーッ! お助けー!」

「ゴアッ!」

 

 あっ、座り込んで話し始めた!

 

 

「ちくしょー! 俺がピンチだってのに!」

『いや、主よ。どうやら思ったほどピンチでも無いようだ』

 

「なんでさ!?」

『先程、頭にもろ一撃入ったのに、主は平然としてるではないか』

 

 そう言えば……せいぜいコブが出来るくらいかな。

 いや、コブが出来るってのは十分痛いけど。

 

「良く分からないが、レベルの差ほど強くは無いって事だな!」

『そのようである』

 

「ならば次の攻撃を──回避発動アンド【未来視】! 馬鹿めそれは、ええい! 省略!」

 

 盛大に空振りしてバランスを崩した所を狙う!

 

「燃えろッ金属バットさん!」

『応ッ!』

 

「マサト・スマッシュ!」

『口で言ってるだけである』

 

 

 カッキーーン!

 

「グアアアアアーッ!」

 

 叫び声をあげながらバサーカーは吹き飛んでいった。

 床にバウンドして、またバウンドして、もう一回。

 転がって転がって……

 

「あ、階段から落ちてった」

『追加ダメージである』

 

 

 ふう。

 

 理由は分からないが、とにかく大した敵じゃなくて良かった。

 

 

 

「あら、マサト様。お疲れ様なのでございますわ」

「今頃気づいたのかよ!」

 

 ファルフナーズが気付いて立ち上がった。

 長生きするよ、このお姫様。

 

 

「マサト様、紹介するのですわ」

「お、おう」

 

 ファルフナーズは赤い姫巫女の肩を抱いて笑顔になる。

 赤く長い髪が鮮やかでドレス・アーマーと合っていた。

 

 切れ長のつり目がちな赤い瞳が印象的だ。

 

「私の妹、シャフルナーズですわ」

「ふんっ! あたくしの事はシャフリーンと呼んでもいいのよ!」

 

 わあ……ツンデレっぽい。

 

 

 と思ったが前言撤回。

 

 

 いきなり俺に抱き付いてきて頭をぐりぐりと擦り付けてきた。

 

「お、おい……?」

「申し訳ありません。マサト様の国の言葉でツンデレとか言う性格でして」

 

「俺の知ってるツンデレと違う」

 

 めっちゃハグしてくるツンデレなんて存在しない。

 唇から八重歯がコンニチワしてるけど。

 

「お義兄ちゃんって呼んであげてもいいんだからね!」

 

 

 んんーー!?

 

 

 どこかで扉が閉まり、鍵のかかる音が聞こえた気がする。

 俺に頬ずりしてくるシャフルナーズの柔らかさを感じながら、その言葉の意味を考えまいとした。 

 

 

 お義兄ちゃん……?




また新キャラを出してしまった。

感想とか義妹とかお待ちしております!
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