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「よし、じゃあご褒美にまたナデナデしてやろう」
「はい……はいですワン」
ファルフナーズが頬を赤く染める。
だがその目線はあくまで熱っぽく。
さわっ
優しくお姫様のピンク髪に触れる。
ふるるっ
ピンクの髪の間から伸びている大きな犬耳が小刻みに震えた。
丁寧に撫で付けてやると、お姫様は目を細めてうっとりとしてきた。
「わふぅ……はぅ~」
ご満悦の声が漏れ出ている。
「よ~しよし、ファルフナーズはえらいなー。頑張ってるなー」
「はふ……マサト様にお世話になっている身としては、ふにゃあ……当然ですワン」
にゃあなのか、ワンなのか。
ちょいちょいブレるな。
だがご褒美ナデナデなので突っ込まない。
がっつりナデナデだ。
ナデナデ。
ナ~デナデ。
「ん~、ファルフナーズは良い子だなー」
「はうう……い、妹のシャフルナーズもお世話になっているものですから。ワン」
ナデナデ。
ナデナデ~~
「ファルフナーズは良い子だから、耳の所も撫でてあげよう」
「ひゃんっ!? 耳は……耳は少々デリケートなのですワン」
ほう、そうなのか。
だが拒む事も嫌がる素振りも無い。
むしろ……
では一際優しく、指先で。
さわ……
さわわ……
「きゅううぅ」
鳴き声じみた声を漏らしてきた。
目をきゅっと細める。
口も小さくすぼめて……
声が漏れるのを我慢しているような感じだ。
フレーメン現象かな?
耳と髪の境目辺りをナデナデ。
「くぅ~ん……ま、マサト様ぁ」
「ん~? どうしたー?」
唇が艶を帯びて来ている。
いつもの瑞々しさが更に熱を帯びて更に湿ってきているような。
耳の周りを集中して撫で付けている。
すると徐々に耳が柔らかさを増し、ぺたりと垂れてしまった。
垂れ耳、かわいいじゃないか。
「凄くたくさんナデナデして頂いたのですワン……」
「ははは、何を言う。まだこれからが本番だ」
「えっ……こ、これ以上ナデナデされてしまうのですか? ワン」
「俺はまだ片手。そう、片手しか使っていないんだぜ!」
ここまでファルフナーズの髪と耳を撫でていたのは右手。
まだ左手はフリーハンドだったのだ。
「りょっ、両手でナデナデされてしまったら私は……私は」
ファルフナーズは言葉を続けられずに飲み込んだ。
聞く必要なんて無い。
これから存分に見せてもらうのだ。
さあ第2ラウンドだ。
ナデナデ。
ダブル・ナデナデ~
「ひゃふぅ~……っん」
お姫様の目が潤んでくる。
頭を右手で撫でつつ、左手で耳をこしょこしょと。
「んんうっ! 耳と髪を同時は~……あっ」
声がちょっとすねた様な、それでいて甘えているような声になる。
犬耳なのに猫なで声。
「耳と髪、同時はダメか。ならば――」
左右両手でファルフナーズの両方の犬耳を攻め始める。
ナデナデ。
ダブルお耳ナデナデ~
「――っひゃうんっ! みみっ、耳わっ……きゅうぅん!」
「耳は? どうなんだ?」
「マサト様の……意地悪ぅ」
潤んで目尻に涙をたたえた瞳で見つめられる。
上目遣いがとても可愛らしい。
ビクッと体を震わせ、綺麗な眉を歪ませた。
「ひゃあああっ」
よーし、良い調子だ。
このままもっと……
あれ?
ひょっとして、ファルフナーズって……
凄い美人なんじゃね?
「ああっ! マサト……様っ……お手が、首すじにぃ……」
いやいや、そんなはずはない。
確かに地球でなら一番の美少女だろうけども。
まだ16歳の子供のはずだ。
でもこの潤んだ瞳が……
かなり大人びていて。
「んんっ……そ、そんなに首を撫で……撫でてはぁ……」
いやいやいや
と、とにかくナデナデだ!
ナデナデにかけろ!
ナデナデ。
ダブルハンド・ナデナデ~
「んんぅ……い、いやぁ。マサト様あ……」
無心でお姫様のピンク髪と耳を撫でつける。
そうだ。
ファルフナーズはナデナデで喜ぶ犬耳少女なのだ。
ちょっとイタズラしたくらいで心を動かしてはイカンのだ。
あれ?
でも俺って、前は割と年下もストライク・ゾーンだったんじゃね?
ナデナデ。
全力でソフト・ナデナデ~
「マ……マサト様っ……お手が、お手がドレスの中にっ……ひゃあんっ!」
俺も20歳になったせいか、年下を勝手に切り捨てていた気がする。
いや、むしろそれはファルフナーズが家に来たからか?
ナデナデナデ。
「お手が、私の……あっ、そこはダメぇ……」
つまり、俺はファルフナーズを意識すまいと……
俺自身が無意識でブレーキをかけていたのか。
ふにふに。
「あんっ、あっ! マサト様んっ! 揉んで、揉んでしまっているのですわ……」
でも意識してしまっても良いんじゃないか?
ファルフナーズだって悪い気はしてないような素振りが……
結構あった気が。
俺の気のせいだろうか。
ふにふにっ。
「あっあっあっ! んっ、くぅ……ん。も、もう私もおかしく……」
でも俺の思い違いで、変に意識してしまっても。
何かこれ以降の生活が気まずくなりそうだし。
むにょんむにょん。
「やっやっ……んっ! マサトひゃまぁ~ も、もうファルフナーズは……」
こうなってはもう意識せざるを得ない。
しないようにと思っても、ファルフナーズを一人の女性として。
ふにむに。
両指で挟みっ
くりくりりっ
「きゅうううぅんっ! んっんっ! 先っぽらめぇ~!」
くりくり……
ん?
くりくり?
俺は一体何を触ってる?
「も、もう体の力抜け……腰が……」
ガクン
ファルフナーズが膝を付いて床に崩れ落ちた。
「はっ!? どうしたファルフナーズ!」
ようやく我に返った。
深く考え込みすぎて、ナデナデ中だったのを忘れてた──
って!
いつの間にこんな事になっていた!?
脱衣所で四つん這いに倒れこんだファルフナーズ。
俺は倒れこんだファルフナーズに釣られて、覆い被さるような格好だ。
そして彼女の頭をナデナデしていたはずの俺の両手は……
ファルフナーズのドレスの中で、その豊穣な胸を揉みしだいていた!
「こ、これは一体何がどうなったんだ……」
肩越しに振り返ったファルフナーズの瞳が涙で潤んでいる。
紅潮した頬と目尻が少し緩んで、いつもの朗らかさが無い。
変わりに眠たげな表情にも似た色香が漂っている。
「マサト様ぁ……私はもう……はぁッ!」
ふるるっ!
ファルフナーズがきゅっと目を瞑り体を震わせる。
こ、これは……!
―――
貴方は犬を飼った事があるだろうか?
厳しい上下の社会性を持つ彼らは特にボス・主人への忠義に厚い。
そして主人が彼らの忠義に十分報いた時に、犬の興奮は最高潮に達する。
ついには最高の悦びを表すためか、あるいは興奮で緊張が緩むのか……
いたすのだ。
粗相を。
おしっこを。
―――
「あっあっ……あーーッ!」
シャアアア……!
それは音になりきらない音でファルフナーズの太ももを濡らしていく。
暖かく、わずかの湯気を立てるそれが、彼女に密着している俺のジーパンをも濡らした。
凄い絵面になった。
四つん這いでお漏らしをする、お姫様ドレスのファルフナーズ。
それに覆い被さり、お姫様のドレスに両手を突っ込み胸をまさぐる俺。
「マサト様の……マサト様のバカぁ……」
ナデナデして気の緩んだ隙にちょっとおっぱいをツンツン、のつもりが……
大惨事になっているぞこれ。
「ここまでされてしまいますと、私……」
「あ……うん。はい」
市中引き回しの上、磔くらいは覚悟しよう。
死に戻り可能なうちにやってくれると有り難い。
……
…
無言で後片付けを終えたお姫様が、俺のほうをチラチラと見る。
かと思うと顔はそむけて、髪を撫でたり手をモジモジと組んでみたり。
まあ、そりゃ気まずいよな。
あんな事までされたものだから。
「その、マサト様……」
「あ、はい」
「こうなってしまっては……その」
「はい……」
死の予感。
さらばだ今生
すぐ復活するけど。
「その、責任を取って欲しいのですわ」
「分かってる。どんな仕打ちも覚悟の上だ」
「仕打ちだなんて。まずはお父様達に顔を」
「分かった。首を差し出すんだな? それとも顔の皮を……」
「えっ?」
「えっ?」
ファルフナーズが首をかしげて言い直す。
「その、責任を取って私と結婚して頂かねば、と申しておりますのですが」
「あーうん、結婚ね。結婚」
……!?
えええ!?
「おまっ、それでいいのか!?」
「もうマサト様の手で……お、お嫁に行けないカラダにされてしまったのですわ」
そりゃ、凄い事をやらかしたけど。
最後までしたわけでもないし……
だが、拒否はできまい。
いくら俺がヒキニートでも、そこまで男は下げられない。
むしろ玉の輿でしか無い。
「お、俺としてはその責任、絶対に取るが……ファルフナーズさえ嫌じゃなければ」
「そんな、嫌だなんて事は……」
モジモジしながら押し黙ってしまう。
「少しでも嫌なら、無かった事にしても良いんだぞ? 絶対秘密は守る」
「そんなに嫌では……もう! 恥ずかしいのですわーっ!」
恥じらいながら脱衣所から飛び出していってしまった。
手に持っていた、おしっこに濡れたニーソで顔を覆いながら。
パタン。
「――って! 扉を閉めていくなーッ! おーい! ファルフナーズッ!」
たっぷり1時間放置された。
ガチャリ。
シャフりんが扉を開けて助けてくれた。
「にーに? まだお風呂入り終わってないの?」
「脱衣所で閉じ込められてな。風呂場の方も開けられないし」
「本当に厄介な能力ね! ダンジョン・オープナーって!」
「全くだ……――ックシュンッ!」
風邪を引いてしまいそうだ。
何せ濡れた服を脱いでパンツ一丁だったから。
……
…
その晩はファルフナーズが照れて、一言も口をきいてくれなかった。
「なんじゃー? マー君と姫はケンカでもしたんかいのー?」
スクルドが訝いぶかしむのも無理はない。
気まずい雰囲気は早く払拭しなければ。
…
「っぶえっくしゅーぃ!」
クシャミと共に目が覚める。
あー、何か頭とか尻がムズムズする。
昨日は気まずいからさっさと寝てしまったんだっけ。
「マサト様、お早うございますですわ。お風邪を召したようで……」
ファルフナーズが起こしに来てくれた。
「まあっ! マサト様も!」
「えっ? 何?」
ふるるっ
耳を震わせて毛づくろいをする。
どうも今日は尻尾の据わりが良くないなあ……
「って!? 俺にも犬耳と尻尾が!?」
「うふふっ、マサト様とお揃いになったのですわ」
どうやら俺にもライカンスロープ病が移ってしまったらしいぞ。
だが、おかげでファルフナーズがご機嫌になった。
いい笑顔。
気まずかった雰囲気も吹き飛んで――
「待て、ファルフナーズ。その笑顔は何だ!? お姫様たるものニタリと言う笑いは……」
「昨晩はいっぱいナデナデされて、乙女の最も恥ずかしい姿を見られたのですわ」
「落ち着けお姫様。そのワキワキという手の動きはダメだ!」
「お返しにたっぷりナデナデして差し上げますのですわー」
「やめっ! ちょっ! ダメッ!」
あああああーーーーーーッ!
布団に七つの海が。
世界地図が出来た。
20歳でおもらしニート。
感想とかナデナデとかお待ちしております!
ナデナデシテー モルスァ!