俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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あらすじ:ガチャ回しまくります

一押し二金:諺。女性を口説くには一に押す事、二にお金、三に男前という昔から言われている事。
朝三暮四:諺。うわべだけ変えて中身が同じ事の例え。また、そのように巧みに人を騙す事。

コマネズミ:コマのようにクルクル回るネズミ。かわいい。でも由来は高麗ネズミ。
 高麗(現朝鮮半島)ネズミなのに中国産。しかもくるくる回るアクションは欧州でジャパニーズワルツと呼ばれていた。
 とことんワケのわからないネズミさん。可愛いよ。


#70「回せ! コマネズミのように!」

「よし、気を取り直して4回目ですわ!」

「まだ心折れないのかー」

 

「まだ、まだ終わらないのですわ。たかがメイン眉を持っていかれただけなのですわ」

「エゴだよそれは」

 

 良く分からない方向に燃えているお姫様だ。

 

 綺麗に描き直した両眉が意志の強さを物語っている。

 ちょっと吊り気味の眉に憧れていたのかな。

 

 普段のゆるふわお姫様眉のほうが良いと思うんだがなー

 

「ま、一押し二金とも言うしな。条件はイーブンだ。やるなら俺は止めないぜ」

「流石はマサト様ですわ! 二度ある事は三度あるのですわ! とおおおう!」

 

 それはダメな方の諺じゃないかな。

 

 ドラム・リールが出現し運命が回り始める。

 

 

 ドゥルルル……デデドンドン!

 

 

『ダンジョン・オープナー』『アンコモン』

 

 くっ、俺か!

 

 左足にプチプチと痒かゆい様な刺激!

 

「やられた! 左足(の毛根)を持っていかれた!」

「足(の毛)なんて飾りですわ!」

 

 偉い人が言うんだから間違いないね。

 

 足元に転がってくるキレニウムと言う強化素材。

 

 ジーパンの裾をまくってスネを確認する。

 

 うーん……つるっつる!

 

「これでマサト様もタイツを履くのに相応しい足になったのですわ」

「左足だけな……いや、履かんけど」

 

「えー、なのですわ。スネ毛を処理したら履いてくださるとおっしゃってましたのに」

「うん? 言ってないよね?」

 

「では右足の毛も無くなれば観念するに違いないのですわ」

「朝三暮四だな。ってか、どんだけ俺にタイツ履かせたいんだよ」

 

「四の五の言っても無駄なのですわ! とおおおう!」

「うわっ、唐突に回すな!」

 

 テンションがおかしくなっているな、このお姫様。

 腹を括った王族は恐ろしい。

 

 ドゥルルル……デデドンドン!

 

『姫巫女』『アンコモン』

 

 よしっ、セイフティ!

 

「いやああんっ!」

 

 ファルフナーズがなぜか黄色い悲鳴をあげる。

 

 悲鳴姫。

 

 どうした、と聞くまでも無い。

 左脇押さえてるし。

 

「腋毛を持っていかれたかー」

「ひ、姫巫女には腋毛なんて生えないのですわ」

 

 おや? 西洋人は腋毛を気にしないと聞いていたが。

 異世界西洋人はそうでもないのだろうか。

 

「まあ、きわどい衣装着るしな」

「何の事をおっしゃっているのか、さっぱりなのデスワー」

 

「毛根が無くなる辛さが五臓六腑に染み渡るだろう」

「ですが、ここで退く訳には参りません!」

 

 ぐぬぬ…やはり頭髪が逝かないとダメか。

 

 足元に転がってきた強化素材、キレニウムを拾いながら考えた。

 また金属バットさんが強化されまくるな。

 

 

「六……六と七の諺が無いのですわ」

「ですよねー」

 

 気にしないで回そう。

 ロクでもない、このガチャを。

 名も無き毛根を捧げて。

 

「七難八苦を乗り越えて、必ずやスーパー・レアを獲得してみせる所存ですわ!」

「頑張りどころの方向音痴め……」

 

 だが受けて立つしかない。

 俺にとってはリスク2分の1状態。

 しかも頭髪以外の毛根ならダメージも少ない。

 

 ここでファルフナーズのガチャ欲を存分に満たすしか無いぜ。

 

 辛い事を分かち合ってこそ、ふう……いや、何でもない。

 

「ファルフナーズ、回せッ! コマネズミのようにッ!」

「かしこまりましたわー! くるりんっ、とおおおおおう!」

 

 照れ隠しの勢いで回させてしまった。

 お姫様がその場でスカートを広げて一回転しつつ指を突き出す。

 メゲてる様子が微塵も無い。

 頼もしいやら怖いやら。

 

 ドゥルルルル……デデドンドン!

 

『姫巫女』『アンコモン』

 

 ナムサン、ナムサン。

 

「ひゃあああ!」

「余りはしたない声をあげるなよー」

 

 心のこもってない声で注意する。

 右脇も逝ったようだ……

 

「こ、これで釣り合いが取れたというもの! ですわ」

「メンタルだけは王侯貴族の名に恥じないな」

 

 願望達成のためには困難も何のその。

 ガチャを回す事自体が願望だから達成も何も無いか。

 

 しかし──

 これは実質ボーナスステージだ。

 なぜなら、ここまでお互いに頭髪が持っていかれていない。

 

「よし、確信した」

「何をでございますか?」

 

「この部位ランダムガチャは頭髪が含まれてないか、極端に低いかのどちらかだ」

「まあ……」

 

「十中八九そうだ。その代わりなのか、部位丸ごと持っていかれてる」

「そう言えば……確かに」

 

 おっと、十まで含んでしまったな。

 

「確か人間の片眉は700本くらいだ。これまで1回300本の頭髪比べて代償が大きいだろう」

「なるほどでございますわ」

 

 

 しかしさっきの光景を思い出したが……

 眉を引く時って何で鼻の下を伸ばすんだろうな。

 お姫様がいかに美少女だろうと、少々面白い表情になっていたぞ。

 

 言ったら根に持たれそうだから黙っておこう……

 

 

「そうと分かれば遠慮は無用なのですわ!」

「しまった。そう来たかー」

 

 迂闊な発言だった事を後悔してしまう。

 

 そう、女性にとって大事な毛根は頭髪と眉。

 眉は既に落ちたファルフナーズにとって、もはや失うモノが無い状態だ。

 

 まつ毛とか鼻毛も逝くのかな……

 流石に日常生活に支障が出過ぎるので、そこは無い気もするが。

 

「つまり、今の私とマサト様は無敵なのですわね!」

「え、いや、それはファルフナーズだけの話で……」

 

「とおおおおおう!」

「人の話を聞けー!」

 

 

 ドゥルルルルル……デデドンドン!

 

『姫巫女』『レア』

 

「それ見た事か」

「ひゃいいいいんっ!」

 

 体をすぼめて右足を押さえるお姫様。

 

「これでファルフナーズもタイツからすね毛がコンニチワしなくなったわけだな」

「元からそんなに濃く生えていないのですわ!」

 

 本当かな?

 実はこっそり処理してるんじゃないかなー

 

 ゴッ

 

 

「いてっ」

「マサト様の頭に大きな金の鍵が……ですわ」

 

「どんな効果の鍵だ? マスターキーか?」

「ええと、はい。【スケルトン・キー】という名称で、所持していると【どこでも扉】の機能と性能を強化拡張する、とありますわ」

 

「なんで金で出来てるのにスケルトンなんだろう?」

「説明が少々長くなりますが、よろしいですか?」

 

「あ、いえ。長いならいいです」

「左様でございますか」

 

 実際に使う鍵じゃなくて、ただの強化アイテムだし。

 

「で、どう強化・拡張されるんだ?」

「はい。以下の行為がマサト様自身にしかできなくなります。扉の設置、扉自体の移動や拡張縮小。そして扉の開け方が引き戸・押し戸・上下左右スライドが任意にできるようになる、のだそうですわ」

 

「ふーん……風の精霊王の時みたいなミスは防ぎやすくなるけど、地味だなあ。【魔扉】の魔法で十分な気がするぜ」

「そうですわね……」

 

「第一、設置なんて誰でも……ははあ、分かったぞ。ファルフナーズ、どこでも扉を1つ出してくれ」

「かしこまりましたわ。ただ今」

 

 受け取ったどこでも扉を空中で水平に倒して……

 

「ここに設置」

 

 宣言して、どこでも扉から手を離す!

 

「この通りだ!」

「まあ、どこでも扉が空中に浮いているのですわ!」

 

「扉の強度次第だが、足場にもなるし物も置けるって訳だな」

「これでバグベアーや狼との戦闘のように、挟撃を防ぐ事もできるわけですね」

 

「そこまでは思いつかなかったが、確かにそうだな。扉が破壊されるまで時間を稼ぐ事ができる」

「とても心強いアイテムなのですわ」

 

 地味な割りに使えそうな気はしてきたな。

 レアなだけはあったか。

 

「せいぜい有効に使わせてもらおう。何せファルフナーズの眉と腋毛で作られた鍵だ」

「そっ、その鍵が私の毛で編まれている訳ではないのですわ!」

 

「ははは」

 

 笑いながら鍵をこしょこしょ

 

「もーっ! マサト様ってば! 鍵をくすぐっても私は何ともないのですわってば!」

「ははは。万が一、と思ってのイタズラだ。許せ許せ」

 

 

「天罰で次の部位ガチャはきっとマサト様が対象になるのですわー」

「お、おい。まだやるのか!?」

 

「もちろんなのですわ。スーパー・レアを手にするまで、くじける事はありませんわ!」

「最高レアなんてそうそう出るもんじゃないんだがなあ」

 

 今度はどこの毛を持っていかれる事やら。

 

 リスク低めのお姫様は気楽なもんだ。

 まあ俺もだが。

 

 ん、何か引っかかるな……何だろう。

 一瞬だけ嫌な予感が脳裏をかすめた。

 

 その予感をかき消すファルフナーズの気合の入った声。

 

「参りますわ! とおおおおおう!」

「やれやれ、禿げる前に白髪になってしまいそうだぜ」

 

「白髪は九十九髪(つくもがみ)とも言うのだそうですわ」

「無駄な知識があるなー。そんなマイナーな日本語までインプットされてるとは」

 

 

 禿げるのと白髪になるの、どちらが早いかな……

 ドラム・リールの回転を眺めながらそう思った。




感想とかすね毛とかお待ちしております!

ストックが尽きたため、更新ペースが落ちる事になります。
楽しみにして頂いたお方には申し訳ありません。
頑張ります!
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