とある普通の家
一人のサラリーマンが疲れきったくらい顔で家の扉を開けた。
「あぁ。俺の人生って悪いことばかり続くよなぁ」
家に入ると30代前半の男は服に手を掛けながら歩を進める。
「大体なんで課長はどうでもいい仕事を
電車の場合は自分が前もってやっておくなり
仕事の愚痴や今日起きた出来事への不満をぶちまけながらリビングに入った時だった。
「そんなつまらんことでふて腐れるとは。たいした男ではないな、お前も。あと愚痴は他人に聞かれないように言え」
免許証を提示しなければ酒も買えないくらい童顔の女性が、ソファーで酒を飲みながらリビングに入ってきた男の愚痴を切り捨てた。
「……なんだよ、姉さん」
男は(女性に年齢を聞くのは失礼ではないか)歳の姉を
「悪いことというのはいい経験をした上で比較しなければわからんものだ。旗から見たら幸せそうに見える人でも、不平不満を口にする人はいる。良いことも悪いこと過去を振り返ってみれば続けて起こっているものだ」
「……」
姉を睨みつけることをやめないが、それでも姉の言葉に耳を傾ける。
「本当に悪いことばかりと愚痴るなら。戦争中で生きるか死ぬか、餓えで今日1日を生きられるか否かという環境で生きてからにしろ。家帰ったら『俺の人生って悪いことばかり続くよなぁ』と愚痴って酒飲んで寝られる。それ自体が幸せだと気づけよ」
そう言って姉は残った酒を一気に飲み干す。
「こうして愚痴を言えるだけ幸せなんだよ。その幸せに感謝せず、あろうことかけなすことばかりほざいているとずっと悪いことが起こり続ける」
「……」
姉の正論過ぎる正論に、弟はただ唇を噛むことしか出来ない。
「うんしょっと」
姉はコキコキと首や肩を回して立ち上がり、弟の方へ振り返る。
「悪いことが続いているんじゃなくて、今ある幸せに感謝するのを忘れているだけなんだよ。だから『俺の人生って悪いことばかり続くよなぁ』というアホまるだしのことがいえるんだよ」
そう言って姉はリビングを後にした。
モデルは筆先文十郎と姉です。
実際姉に言われて(似たようなことを言われて)カッとなったことを脚色しつつ小説化したものです。