一部を除いて。
「弟よ、お前はAV男優になろうと思ったことはあるか?」
リビングで酒を飲んでいた俺に、とある高校で担任をしている姉が何の前触れもなく意味不明な事を尋ねてきた。
「…………」
(何を言っているんだ、この人?)
そう思いつつ俺は数瞬、AV男優になろうとしたか考える。
(AV男優……ないな。だって自分が女性とエッチしている姿をカメラマンや監督など人に見られるんだろう?それにAVが発売されれば不特定多数の人に俺の痴態が広まる。……そんな恥ずかしいこと、俺には耐えられない)
「……いや、ないけど。どうしたの、急に?」
「いやなぁ」
そう言って姉は額に人差し指を当て何かを思い出すように目を
「実は今日、生徒の進路指導があってな。生徒の中に『第一志望、AV男優』と書いた奴がいてな。そんなになりたい
「……まぁ、女の子と
「何?そうなのか!?」
俺の言葉に姉は目を丸くする。
「え?」
姉の反応に俺は同じように目を丸くする。そんな俺を無視して、姉は続ける。
「私は言ったんだ。『AV男優は射精をタイミング良く出せるか。相手が老婆など自分の好みでもない女性、はたまた男性でも
「………………」
俺は二重の意味で固まった。女性に自身の男性器について真顔で尋ねられた男子生徒への同情と生真面目な姉が真面目にAV男優について語っているということに。
だがこの時、俺は何十年もの付き合いにも関わらず忘れていた。目の前の女性が俺の心を
「『ちなみに部屋でエロ本を見ながら自分を慰めていた私の弟は中学二年の時点で
「やめろおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」
記憶の奥底に封印していた、中学生の頃に部屋で自分を慰めていた所をノックもせずに現れた姉に見られた時の記憶がよみがえり、俺は姉の言葉をかき消すように絶叫した。
『3-Cの担任の弟は巨根』。
その噂を俺が聞いたのは翌年に開かれた姉が勤める学校の文化祭に行った時だった。