ここは最も南に位置する、そして敵の本拠地に最も近い鎮守府である、総人数約20名の艦娘で護られている、ここで疑問に思うだろう、敵の本拠地に最も近いのにそんな人数で大丈夫か?と!しかし、こうも思うかもしれない、少数精鋭か?!と、しかしどれもハズレである、練度はゼロに近く、火力も少ないからだ!
そんななか、同時期に出来た鎮守府は着々と戦果を出していく中、ここは全戦全敗
そんな落ちこぼれに、なるべくしてなってしまった最南で災難な鎮守府は上部の期待と、敵の本拠地に近いことからのストレスで次々と提督がこの鎮守府を去り、失踪し、遂には自殺する者が出た、この日も去った提督の代わりが来たのであった。
「ここ、か」
無感情で青年の様な声の、というか、青年はそう言った。
「迎えもいないのか?まぁ、いいか」ガチャ
誰も迎えに来ないことを不服に思ったのか、若干機嫌を損ねた声で呟いた。
キーーッと重い木製のドアの蝶番が軋む音が鎮守府の内外に響き渡った。
埃の舞った廊下、蜘蛛の巣がある天井、穴の空いた床、どこを見ても軍の施設とは思えない、オンボロの広い屋敷の様なものだ。
「なかなか趣のある鎮守府だな」
と、冷静に感想を述べ、案内板に書いてある執務室へ向かう。
「(しかし、これは流石によろしくないな、明日からでも掃除をするか)」
歩けば軋む床の音に流石の落ちこぼれ艦娘達も提督が着任したのに気づき、すぐさま迎えに行く。
「す、すいません司令官来ていただいてるのに気づきませんでした」
「いや、大丈夫さ、上の勝手で今日いきなり来たからね」
「君は・・・駆逐艦だね?」
「はい!駆逐艦の吹雪です!よろしくお願いします」
「はい、よろしく、じゃあ今日の執務内容を部屋に着くまでに大体教えて」
「はい、今日は鎮守府内の案内です」
「うん、それで?」
「へ?」
「いや、だから出撃とか遠征とか演習は?」
そう、一般的な鎮守府なら毎日あるはずのそれらは、この鎮守府においては当てはまらない、なぜなら────
「またまたご冗談を司令官、ヘタに外へでると死にますよ?」
「何故に?」
「この辺りの海域を彷徨いている敵艦はほとんどが重巡と戦艦、航空戦艦などですよ?」
そう、敵地に最も近いからなのか、敵の警備艦でも戦艦クラスがウヨウヨといる。
「私たちはほとんどが駆逐艦で構成されています、戦艦クラスに囲まれて砲撃なんかを喰らえば終わりです」
はぁー、とため息を吐く吹雪に提督は
「んー、お前らどうやって生き残ってきたの?てか、何でここは潰れてない?気になってた」
そう、敵の本拠地に最も近く、敵の偵察も来るほどなのだから空襲されたり砲弾の雨が降ったりしてもおかしくないはずなのだ。
そして、そう聞かれた吹雪は自嘲気味に言った
「生き残ってきたのも、鎮守府が潰れてないのも」
「私達が、相手の眼中に無いからですよ」
やっぱりか、と提督は内心思った。
それでも提督はこう言う
「そうか、でも明日から"出撃だ"」
出撃、駆逐艦ばかりの鎮守府で戦艦に挑む
「え?すいませんさっきの話聞いてました?」
困惑と驚愕の表情を同時に出した吹雪に
「出撃はほぼ死に直結します、私たちに出撃させるのは────」
「死ねと言っているのと同じだと?」
そう言ってしまった、いや言わなければ、ならなかった、言わなければ話が進まない。
「そうです!何故いきなり出撃なのですか?!」
声を張り上げて言う吹雪
「君はここをなんだと思っているんだ?ん?ここは国防の為の施設だ、国を守るためなら何でもするのが普通だ、死のうが苦しかろうが知ったことではない、まさか仲間と楽しく暮らせる場所だとでも思っていたのかね?さて、もう一度聞こうか?ここをなんだと思っているんだ?」
冷たく感情のこもっていないでも的確に彼女の心を刺すように言葉を吐く提督。
「・・・・すいません」
「まぁ、いい」
しかし提督の残酷な言葉は続く
「机の上にあった資料は大体目を通した、重巡青葉や軽空母龍驤もいるらしいが、この鎮守府は資材が少ない、よって、駆逐艦6隻の編成で行ってもらう以上だ、明日までに"君が"残りの5人を集めるんだ」
「なん・・了解しました失礼します」
吸い込まれるような黒い眼差し、でも刺されるような目だった。
ガチャン、と音を立てて執務室のドアが閉まる、その音は妙に重たく冷たい音だった。
────その頃食堂では
「今日着任する提督知ってる?」
黄色い髪の色の黒いセーラー服の駆逐艦 皐月
「知ってるっぽい、海軍兵学校全国最下位の落ちこぼれでしょー?」
薄い金髪の駆逐艦そして独特の語尾、夕立だ
「でもでもー、それは私たちも同じよー?」
柔らかい声の、紫がかった黒髪の駆逐艦 如月
「でもそんなので良く提督になれたのです」
これまた柔らかい声、茶髪の駆逐艦 電
「どうせコネでもあったんでしょ?」
少しツンとした声のピンクがかった髪色の
駆逐艦 曙
それぞれが提督の話で持ち切りであった、やはり年相応ということだろうか?
その場から少し離れた場所に座る青葉と龍驤、この子達は設立当時からいる、まさに百戦錬磨のはずがその時から資材の供給はほぼ無かったので他よりはマシの練度だが、そこいらの重巡や軽空母より弱い。
「なんやー?また新しい子かいなー」
「正直代わりすぎて取材の気さえ起こりません」
当然興味も薄れるであろう。
そんな、話をしている食堂へ足音が聞こえてきた。
それは吹雪であった
「ハァハァ、ハァー」
「あらあら吹雪ちゃん、どうしたの?」
と、驚いたように如月が聞く、当然周りもそっちに視線が行く。
「明日、し、出撃しろって新任の提督が」
その瞬間、吹雪の息をする音だけになった、そして数瞬置いてから
「・・・・・・はぁ!!??」
当然の結果、彼女たちの中では出撃=死なのだから
「いきなり着任して、死ねっての?!あのクソは」
「ちょっと待ってぽい!へ、編成は?」
「私が旗艦の駆逐艦6隻の編成」
それについても物議が飛ぶ
「ちょっとそれは難しくないかなー?提督に抗議しにいかない?」
地雷を踏みに行く皐月とその他が食堂を出ようとドアに手押しかけた瞬間
「まぁ、まちーな」
それまで一切駆逐艦の話には口出ししなかった龍驤が声を出した。
「アンタらみたいなんが塊で言っても何が出来るっていうん?吹雪は抗議した、それでも全く意味がなかったちゃう?しかも言い返せないように図星突かれたとか」
わかりやすく身をビクリと震わせた吹雪、またもや図星。
「でも」
それでも言い返してくる皐月に
「でももクソもないし、それより!さっきから手で押してるそれ!ドアちゃうよー」
指摘するように指をさして皐月が手押しているモノに視線が行くようにした、その手押しているモノとは。
「お前なぁ、いつまでかそうやってるつもりなんだ?」
股間を掴まれ、若干顔を引き攣らせた提督がいう。
「あーえーっとすいません」
後ずさりしながら目を泳がせる皐月
「まぁ、いいよ」
提督は適当に流すように言った。
「そんなことより、ほぼ死にに行く5人は決めたか?」
提督は寒気がするほど無表情で残酷なことを聞く
「えっとまだです」
いきなり話を振られた吹雪
「そうか、まぁあまり時間がないから急げよ?」
急かすように言ってどこかへ行ってしまった提督
「た、確かにあれは怖いわ」
如月が冷や汗を拭きながら言う
「そうっぽい」
緊張が一気に解けたのか物凄い疲労感が艦娘達を襲う
「そうですかー?普通だと思いましたけど」
と、呑気に青葉が言った
「あそこからやと分からんかもな、あの人、全く表情というか感情がね、感じられんのよ、すごい冷たい目で見られてな、でもイケメンやったでぇー?」
最後のは本当ではあるが、余計にも感じられたが空気が一気に軽くなった
「それは惜しいことをしました」
「そ、れ、よ、り!どーすんの?!死にに行く5人を選ぶんでしょ?!まぁ、私は良いけど」
死にに行くのを選ぶのは、誰を殺すのかと同じで、吹雪には酷なことだった。
「曙ちゃんが行くなら私も」
紹介しよう、影の薄い、でも胸の影は濃い
駆逐艦 潮
「私も行くっぽい!」
悩むところなのだろうが、死ぬ理由があるなら喜んで行く、それらは元々艦娘としての本能である
「じゃあ、あと2人か・・・むつ」
「いやだよ!」
名前を言う前に拒否された睦月に続いて
「睦月ちゃんが行かないなら私も行かない」
「私もパース、あんな司令官には頼まれても行かない」
如月と皐月も拒否し食堂から、出ていった。
「仕方ない、他の娘に頼んでみるか」
トボトボと食堂を出ていく吹雪であった。
「あの人は可哀想やな」
「?」
意味深な事を言う龍驤に疑問を抱く青葉であった。
────────────────────
食堂から寮へ繋がる廊下で、頭を抱えながら歩く吹雪を見つけた駆逐艦が近づいてきた。
「やっほー、吹雪ちゃんどうしたのー?」
「あ、島風ちゃん」
この露出度の高い、金髪の駆逐艦 島風
「顔が幽霊みたいだよー?」
心配しているのだろうか、眉間にしわが寄っている。
「そ、そう?」
「そうだよー、何か困り事ー?」
「うん、かくかくしかじか」
事情を説明する吹雪
「あーなるほどねー、そんなに怖い人なんだー」
大体のことを理解したのだろうか、何やら考えているようだ。
「じゃあ私も行くよー?」
と、軽く了承した島風
「え?本当に?死ぬかもしれないんだよ?」
意外とすんなりと考えがまとまった様子に戸惑ってしまった吹雪
「だって、私たち艦娘の存在意義じゃない?出撃して、死ぬのって理由として充分むしろ誇らしいくらいだよ?」
提督と言っていることは違うが何となく似ているところがあったのか吹雪は少し自分が情けなくなった。
「(やっぱり、私は軍の施設で過ごすという事を理解してなかったのか、島風ちゃんも理解してたのに、私は)」
「でも、睦月ちゃんや如月ちゃんの言うことも分かるよー?」
「え?」
今度は逆の事を言う島風
「死ぬのは確かに嫌だし、怖いよー?だから行かないって言う選択も正しいと思うな」
確かにそうだ、と思う吹雪。
「(国を守る意志か、生きる意志、どっちも大切だけど)」
そう、迷ってしまう、心を持っている以上は、どうしても避けられないものである、しかし決めなければいけない、それを乗り越えなければ、今後もこんなことはよくある。
「でも、私は行く」
「?」
よく分からなかったのか吹雪は首を傾げた。
「んーとね?吹雪ちゃんは名指しで決めるの嫌でしょ?だから苦しまないように自分から行くんだよ?それに私たちは兵器だし一応」
人間に似せすぎているため、普段忘れてしまう艦娘が兵器であることを。
「これであと1人だねー」
あと一人だが今回の島風のようにいくか分からない、死にたくないと思っている娘だっていっぱいいるはず。
「島風が行くならね、私も行くわ!」
どこからともなく聞こえた声に思わず2人で声を上げてしまった。
「あらあら、酷いわね2人とも私よ、天津風よ!」
白髪でケモ耳のような髪の毛の駆逐艦 天津風
「本当に?!」
目をキラキラさせながら天津風に抱きついた吹雪。
「え、えぇ本当よ、ていうか、いつまでやってるつもりなのかしら」
と、眉をピクピクさせて言う天津風。
「あ、ごめん」
シュンとする吹雪。
「じゃあ私は提督に言ってくるね!」
「ええ、いってらっしゃい」
「また後でねー」
こんなに笑顔なのだが忘れてはいけない、ほぼ生還はありえない作戦であるのだから。
あれ、おかしいな小説だけど短い気が・・という訳で改めて自己紹介します、初心者の狙撃の父です、よろしく!
で、更新ですが不定期です、受験が控えてるのでね。それではまたいつか!コメントはしっかり返信するのでドシドシくださいね!