最南で災難な鎮守府の可哀想な仲間たち   作:狙撃の父

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後で自分で見て、誤字が多すぎることに気づきましたこれからはしっかりします


捨て駒

「提督!」

 勢いよくドアを開け、提督を呼ぶ吹雪

「なんだ?あとノックしろ」

 驚きも戸惑いもしない、無表情、目は光を通さない漆黒。

「す、すいま、せん」

 一気にしょぼくれる吹雪に

「まぁ、そうしょぼくれるな、お前は十分にやっている、今来たのは大方編成が決まったのだろう?」

 ご名答、その通りでございます、と言わんばかりに黙り込んでしまった吹雪。

「・・・こっちへ来い」

 提督が突然そういう。

「え、えーと、はい」

 重い足を上げながら無表情の提督に近づく、やが提督の机まで来た。

 提督は椅子から立ち、手を挙げる、反射的に吹雪は目を瞑り息を呑んだ。

「よく頑張ったな、これは御褒美だ」

 挙げた手を吹雪の頭に乗せ、優しく撫でた、まるで妹を褒める兄のように。

「て、提督っ!これは、一体・・」

 吹雪は若干顔を赤くしながらいう

「言っただろう?御褒美だよ」

 顔は手で見えないが感情のこもった声に吹雪は何故か少しだけ安心してしまった。

「よし、このままドアの方に向いて、行ってこい明日は早いから夜更かししないようにな」

 食堂や命令を出す時とは全く違う、家族のような接し方。

 そこで疑問に思ってしまう、当然の事に

「(提督、あなたの本当の姿はどっちなのでしょう)」

 吹雪は内心に思った、本当にわからない人、と。

 ────────────────────

「諸君、おはよう、昨日の今日だから作戦内容は知っているな?よし、じゃあ出来るだけ生き残れるように、帰ってこれるように、足掻いてこい。」

 朝早くに埠頭で皆に激励をする

「了解しました」

 皆が言う、しかし忘れてはいけない、これは決して楽なものではない、ほぼ確実に死に、生きて帰ってこれない。

「それでは後に」

 と、スタスタと本日の秘書官、龍驤と埠頭を去った。

「仕方ないしねー、やるしかないっぽい」

 ここまで来た以上は拒否権は存在していない。

「じゃあ、行こうか」

 と、仕切り直すように言う吹雪だが、

 流石に艦娘と言えど心を持っているからには、実感してしまう。

 今日死ぬかもしれないという事実、これまでに1度も経験したことのない恐怖と震えがする。

「吹雪ちゃん、やっぱり死ぬのは、いやだね」

 前日までは何ともなかった島風でさえ涙目で言う。

「でも、死にに行かせといて、生きて帰ってこいって本当に!勝手なクソ提督ね!」

 うん、と全員が頷く。

 ────────────────────

「全く君は、よく分からんね」

 龍驤が言う。

「何がだ?あと打電に集中しろ」

 わからない、と言う提督

「はいはい、すいません」

 空気は軽く感じたが、それは感じただけであり、ボーリングの球のように重かった。

 ────一方

「もう!無傷の娘いる!?」

 大声で曙が聞くが、応答がない、つまり全員小破~大破している事になる。

「も、無理、撤退しようよ」

 潮が弱々しく言う。

「分かった、打電するね」

 旗艦である吹雪が打電する。

「お、なんか来たでぇ!てった」

「却下だ、敵主戦力に出来るだけダメージを与えてからにしろ、と送れ」

 完全に龍驤が言い終わるまでに提督は却下した。

「本当に、ええねんな?絶対に帰ってこれんよ?あと!人の話はちゃんと最後まで聞く!」

 龍驤は僅かに声を低くし、重たく言う。

 最後の蛇足以外を聴くと相当のダメージを負っていると分かる。

「いや、方法はある」

「?」

 意味深に言う提督であった。

 

「却下された」

 吹雪が声のトーンを低くして言う。

「嘘でしょ?」

 島風が力なく返す。

「却下された!敵の主戦力にダメージを与えてからなら考える!だって!!」

 今度は声を強くして怒鳴り気味にいった。

「あの人は本当に酷いわね」

 1番被害が酷い、天津風は陣形を保つので精一杯であった。

「被害は?」

 吹雪が聞く。

「浸水が若干と、火災は止まったけど少し引火したから、率直に言うと物凄く酷いわ」

 弱々しく話す、天津風の姿は誰が見ても重症だと分かるほどに損傷している。

「じゃあ仕方ないよ、進む以外に選択肢は無いし」

「あれ!敵の主力じゃない?!」

 曙が指をさして言う、そこには戦艦2隻に空母1隻、重巡2隻と駆逐艦1隻が航行していた。

「どうするの?吹雪ちゃん」

 島風が問う。

「空母と戦艦がいる以上、私たちじゃどうしようもないよ、駆逐艦くらいなら全員の魚雷を使えばなんとかなるかも」

「じゃあやる?」

 曙が言った。

「やるしかないっぽい!」

「じゃあ、島風ちゃんと私が囮になるから後ろから他のみんなで攻めて、駆逐艦と重巡に持ってる魚雷全部使ったのと同時に撤退しよう。」

 その瞬間二手に分かれた囮チームと攻撃チームは真逆の方向を進んだ。

「おっわ!」

「ひゃ!」

 囮チームはすぐに敵機と戦艦の攻撃に囲まれた。

「あっちは凄い狙われてるわね」

「そうだね曙ちゃん」

「呑気に言ってないで早く!」

「そうっぽい、じゃないと囮の2人が沈んじゃう」

 攻撃チームは攻撃を一切受けずに敵艦隊の裏手に回っていた。

「じゃあ、いい?」

 曙が魚雷管を構えながらみんなに聞く、そして無言で頷いたのを見て。

「じゃあ、やってやろうじゃないの!」

「魚雷発射!」

 と、言った瞬間に十数本の魚雷が敵艦隊に向けて放たれた。

「次!急いで!」

 間髪入れずに装填を開始し発射準備をする。

「ソロモンの悪夢見せてあげる!」

「夕立ちゃん、それまだ早い」

「喋ってないで、ほら!」

 曙が指をさして、魚雷を撃つように言う。

「もうなーい、空っぽーい」

「私もね」

「私も」

 1番発射していた夕立を筆頭に曙、潮と、どんどん弾切れを起こした。

「じゃあ、離脱するわよ!」

「分かったぽい」

 曙達は離脱しつつ、囮チームへ報告する。

「島風ちゃん!離脱だよ!急いで!」

「了解」

 既に小破していた2人、今は大破していた。

「おー!当たった当たった!」

 囮チームを待ちながら曙が言う。

 敵の被害は

 駆逐艦撃沈

 重巡2隻中破及び大破

「スピードが落ちたから空母は浸水したのかな?」

 見事、魚雷が次々と当たり、敵は追うのをやめた。

「はあ、はあ、お疲れ様」

 吹雪と島風が肩で息をしながら合流した。

「それはこっちのセリフです」

「よくあの中を生きてたわね」

「流石、吹雪ちゃんと島風ちゃんっぽい!」

 3人が揃って言う。

「あれ?天津風ちゃんは?」

 島風が聞く。

「あれ?さっきはいたのに」

「ちょっと待って!あそこ!」

 吹雪が驚いた声で敵艦隊の方に目線を向ける。

 そこには単艦で戦艦に突っ込む大破した天津風がいた。

「ごめんなさい、もう燃料も無いし、浸水も酷いからもうすぐ航行出来なくなりそうなの、だから、最後にみんなを逃がしてあげるために!」

 死を覚悟した行動、いや、死が確定した行動、魚雷を食らったとはいえ、小破すらしていない戦艦に突っ込むのは文字通り、必死であった。

「さっきの電文、許可してよかったん?」

 心配そうに龍驤が提督に聞く。

「それが最良だろう、ここで吹雪らが天津風を助けに行ったりしたらそれこそ全滅、今回の作戦が無かったことになる。」

 いわゆる捨て駒になるべくしてなってしまった天津風はどうしようもない、どのみち待つのは死のみ、しかも死にに行くのを決めたのは天津風である。

「だから、吹雪達に送れ、天津風の救助と支援は認めない、と」

「はぁ、全部背負い込んでると、潰れるよ?」

 この後の提督は上部への被害報告しなければならない、無けなしの戦力を損耗したとなればどうなるかはわからない、それを耐えてもその後の鎮守府内でのほとんどの負の感情、つまり、恨み、悲しみ、怒り、妬み、殺意、全ての矛先になる、常に命を狙われる覚悟が必要であった。

「心配するな、大丈夫だ」

「そーですか」

 何か、残念そうに龍驤は言った。

「っ!」

 その頃天津風は動かなくなる足を無理矢理動かし、吹雪達とは真逆に航行し、戦艦に連装砲を向けたが

「!」

 敵戦艦の主砲が火を吹き、徹甲弾が天津風の連装砲を貫通し、胸を貫く寸前体内で爆発、声もなく散っていった。

「天津風、ちゃん」

「バカ!なんで!なんで?!」

 曙が海面でしゃがみこんで泣きじゃくるのを引き金に彼女たちは嗚咽混じりに泣いた。

「報告、天津風轟沈、です」

「そうか、じゃあ彼女たちが帰投したら入渠させ、休養を取れ、と言っといてくれ」

「君は、どこ行くんや?」

「今回の作戦の報告だよ」

「うちもいこか?」

「お前はやることがあるだろう?それに、少し独りにしてくれ」

「?!」

 初めての感情の入った声に龍驤は目を見開いた。

「(そうか、君も人やねんな、忘れかけとったわ)」

 龍驤はそう、心の中で言った

 ─────────────────────

「そうだ、予定通りにな、あぁ、アレを天津風が沈んだところで自沈されろ、なに、心配ない」

 

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