ハイスクール&パンツァー(旧)   作:鈴木大佐

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登場人物紹介
沖田拓海・・・普通科2年3組。正弘のミリタリー好き友達。正弘の要請に応えて戦車道を履修した。
中村裕二・・・工業科2年15組。自動車部所属。正弘の要請に応え、戦車道を選択。

西村美佳・・・普通科2年1組。清水の友人。戦車道を選択。


第5話 「捜索と戦車と洗車」

 長い間使われていなかったらしく、倉庫の中は鉄と油と錆びの匂いで充満していた。

「……にしても酷いな」

 倉庫の中に1両だけ置いてあった《Ⅳ号戦車D型》は、覆帯が外れかなり汚れた状態だ。内部はかなりひどく、埃と錆び、さらにカビまで生えていて、大規模な整備が必要だ。

 それにしても……

「1両しか、ないな」

 隣で笹原が俺が思っていた事を口にする。

 そうなのだ、戦車が1両しかないのだ。

 ざっとみたところ、戦車道履修者は俺達を含めて30名以上。1両当たり4、5人乗るとしても7、8両は必要だろう。

「それじゃあ、今から戦車探そっか」

 ふいに角谷会長がそんなことを言った。…はい?

「「「えええ?」」」

 疑問、驚きの声が上がるのも無理はない。

「我が大洗学園は20年前まで戦車道が盛んに行われていた。その頃に使われていた戦車がまだどこかにあるはずだ。お前達には今からそれを探してきてもらう」

「それじゃあみんな、レッツゴー!」

 おいおいマジかよ。

 しかし、戦車がなければ戦車道は始まらない。みんなぶつぶつ文句を言いながらも、それぞればらばらになって歩きはじめた。

「えー、なんか思ってたのと違うよ~」

 側では武部ががっくりと肩を落としていた。

「土曜日にカッコイイ教官来るよ」

 そんな武部に対し会長が干し芋を食べながら言う。

「ほ、本当ですか!」

『カッコイイ』の言葉に反応したのか、武部は目を輝かせて会長の方へ向き直る。

「ほんとほんと。だから頑張ってね」

「はーい、いってきまーす♪」

 会長に上手く乗せられた武部は、そのまま軽い足取りで倉庫から出ていった。

 

 

 

 数分後……

「一体どこにあるってゆーのよー!」

 駐車場に武部の大声が響く。

 俺達は主に教職員の車が停められている大駐車場にいた。メンバーは、みほに武部に五十鈴、清水に篠原と同じ1組の西村美佳(にしむらみか)、そして俺と笹原と昨日の俺の要請に応えてくれた、沖田拓海と中村裕二だ。二人とも俺のミリタリー好きな友達である。沖田は現在普通科3組、中村は工業科で自動車部に所属している。

「さすがに駐車場には停まってないと思いますが」

 確かに駐車場に停めてあったら生徒会が既に見つけているだろう。

 しかし、この人数でまとまって探すのは非効率的だ。いくつかに分かれて捜索しないと----ん?

 駐車場の奥に気になる建物を見つけた。

「どうした?鈴木」

「いや、あの車庫みたいな建物なんだけど…」

 大駐車場の一番奥に横長の車庫があった。かなり古そうで入口はシャッターで降ろされいる。

 もしかしたら、1両くらいあるかもしれない。

「笹原、あの車庫の鍵ってどこにあるんだ?」

「職員室か事務室か……生徒会室にもあるかもしれないな。取ってくる」

 

 

 数分後、笹原が車庫の鍵を持って戻ってきた。

「ふんぬぅぅぅ!!」

 さびていたのか、隙間にごみが詰まっていたのか、シャッターがなかなか開かず、俺と笹原と中村の3人がかりでシャッターを持ち上げる。

「おおー」

 なんとまあ当たるとは思わなかった。

 俺達の目の前には戦車があった。

「こいつは……」

 第二次大戦後期の独軍の主力戦車《Ⅴ号戦車パンター》にも見えるが、何か違う気がする。ええと、こいつは…

「M10パンターじゃないですか!」

「それだぁっ!!」

 ってあれ?

 誰だ?今の。

 俺は声のした方を振り返る。

 そこにいたのは、見知らぬくせっ毛の女子。ええと、誰?

「秋山さんじゃないか」

「沖田、知ってるのか?」

「知ってるもなにも、同じクラスだ」

「ってことは3組?」

「うん、そう」

 なるほど。

「あと、ええと、私普通科2年3組の秋山優花里といいますっ!」

「あ、どうも1組の鈴木です」

 互いに自己紹介する。

 で、話を戻して、

「良く偽装パンターだったなんてわかったな」

 偽装パンター、別名《M10パンター》は独軍が米軍部隊の潜入を図る『グライフ作戦』のために少数のみ作られた戦車だ。パンター戦車に薄い軟鉄製の偽装車体を被せて、米軍の《M10駆逐戦車》に、似せようとしたものだ。実際は英軍型M10の《アキリーズ》に似ていたといわれ、足回りはどうしようもならなかったが、そのリアルさは米軍の情報士官も評価したほどだ。しかし、作戦は諸事情で失敗したそうだ。

「かなりレアな戦車です!」

 秋山は目を輝かせてM10パンターに見とれている。おそらく彼女は戦車が好きなのだろう。

 とりあえず、これで戦車を見つけるという目的は達せられた。あとはのんびり探すと……

「ねえ、なんか奥にもあるよ」

 なんだと!?

 武部が奥の方を指差して言う。暗くてよく見えないが戦車らしき物が見える。

「こいつは《T-80》じゃないか!」

 ソビエトが少数だけ量産した《T-80》軽戦車だ。

「なんだここは?レア戦車の宝庫か?」

 まあ、この2両しかないようだが。

「まさかT-80に出会えるとは!感激です~!」

 さっきまでM10パンターに見とれていた秋山さんは、今度はT-80に抱きついて肌をすり寄せていた。

 捜索開始から30分とたたぬうちに、2両の戦車を見つけてしまった。あとはのんびり探そう。

 

 その後、何となく入った山林でもう1両を見つけて、俺たちは集合場所だった倉庫前に戻った。

 

 

 

 他のメンバーも戦車を見つけたようだ。聞いたところによると、池に沈んでいた車両や、ウサギ小屋にあったものもあったという。いったいどんな放棄のされ方をしたのか。

「ご苦労であった。戦車の回収は自動車部に今日中に行ってもらう。あしたの授業では洗車および整備をやってもらうから。必ず出席するように」

 並ぶ俺たちの前で、河嶋先輩が諸連絡を言う。そうか、明日は木曜日。5・6限目に必修選択科目がある日だ。

 俺の隣で中村ががっくりと肩を落としていた。彼にはこれから戦車の回収という、地獄の作業が待っているのだ。

「おつかれさん」

 俺は中村の肩をたたいてやる。

「あんな重いの移動させるの大変なんだぞ」

「仕方ないだろ。戦車なんだから」

 M10パンターは45トン、軽戦車であるT-80でも12トンある。移動させるためには自走させるか、重機を使用してトレーラーで運ぶかしなければならない。かなりの期間放置されていたから自走させるのは無理だろう。

「それに、整備したら戦車の運転ができるんだぞ」

 俺が中村に戦車道をとるように頼んだとき「戦車の運転ができるのならやる」と彼は言った。だから俺は中村に戦車の操縦を任せようと思っている。ここは辛抱なのだ。

 俺たちも明日、汚い戦車達を洗車するという重労働が待っているのだ。

「質問は無いな。それじゃあ解散!」

 こうして戦車道の1回目の授業(?)は終わった。

 

 

 

 

 翌日、戦車道の授業のために俺たちが倉庫前に行くと、発見された戦車達が並んでいた。

 

 Ⅳ号戦車D型

 M10パンター

 T-80軽戦車

 38t軽戦車C型

 九七式中戦車チハ

 Ⅲ号突撃砲F型

 M3リー中戦車

 センチネルACⅠ巡航戦車

 

 合計8両。全員が戦車に乗るには十分な数だ。

 さらにチーム分けも行われた。

 俺は笹原と中村、沖田の4人でM10パンターに乗ることになった。

 みほ達は武部、五十鈴、秋山さんとⅣ号戦車に、清水・篠原・西村はT-80に決定した。ほとんどは発見者がそれぞれ見つけた戦車に乗ることになった。

「さあて、始めるか!」

 体操服に着替え戦車の洗車が始まった。

「中村、スポンジ取ってくれ・・・うおぉぉっ!」

 車内を掃除していた俺は、ハッチから頭を出すといきなり水をぶっかけられた。

「ちょっ!てめぇ・・・・・・なんてことを」

 ホースを持っていた中村が俺に水をぶっかけたのだ。

 これは中村に限ったことではなく、他のグループでも水のかけ合いが始まっていた。

 おいおい、体操服でそんな事をやってたら・・・・・・

「ちょっ!やめてよー!」

「透けちゃう~!」

 ほらほら、下着が透けて見えちゃうじゃないか。

「おい、中村」

「・・・・・・なんだ?」

「いつまで見ているんだ」

 中村は俺に水をぶっかけて以降、ずっと女子の方を見ている。

「そんなに見てたら・・・・・・ばれたら殺されるぞ」

「それなら問題ない」

 なにが問題ないんだろうか。

 俺だったら篠原か清水に殺されるだろうな。

 そんなことを考えていると、隣でT-80を洗車していた清水と目があった。彼女も西村に水をぶっかけられびしょびしょになっていた。

「・・・・・・(キッ)」

 鋭い目で睨まれた。

 俺は知らないふりをして、視線を逸らす。見ていない、俺は見ていないぞ。なんかピンク色の物が見えたけど・・・・・・

「・・・・・・見たでしょ」

 背中から、低い重い声が聞こえる。

「な、なんのことでしょうか・・・・・・」

 俺はゆっくりと振り返る。目の前には殺気に満ちた目をした清水がいた。

「ど、どうしたのかな・・・・・・清水さん?」

「・・・・・・見たでしょ」

「見てない!見てないぞ!」

「絶対見た!」

「俺はそんなこと・・・・・・うおっ!」

 胸ぐらを捕まれた。

「ちょっと・・・!清水さん!?」

「記憶が飛ぶまでどつき回す・・・・・・!」

「いや、下着が見えたぐらいで・・・・・・ってぎゃあああああぁぁぁぁっ!!」

「やっぱ見たやんかぁっ!」

 この日は頭の痛みに耐えながら、洗車を終えた。

 

 

 




どうも鈴木大佐です。

ようやく、戦車が登場しました。M10パンターは強すぎたでしょうか?


ではまた次回~

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