よろしくお願いします。
千歌が好きな曜と曜が好きな千歌がとある理由でギクシャクしちゃうお話です。
「千歌ちゃん、私と付き合ってください!」
「よーちゃん……ごめんね」
ラブライブ予備予選を無事突破し、東京でµ’sと何が違うのか、私たちはどうすればいいのかを知りに行き、改めて目標を決めた翌日。
私はよーちゃんに告白された。
よーちゃんに告白されてチカはすんごくうれしかった。きっとよーちゃんと付き合ったらチカ
だから、チカは断った。
断られたよーちゃんは悲しそうな顔をすると顔を伏せて、やってきたバスに乗り込んで去って行った。よーちゃんにあんな顔をさせてしまったのは胸がいたいけど、これで良かったんだよね?ううん、きっとこれで良かったんだ。
私じゃ曜ちゃんにつりあわないんだから。
~~~
「千歌と曜、最近変な気がするんだよねー」
私は何気なくそう呟いた。東京に行った二日後で地区予選に向けて練習を進めている中、千歌と曜の間に距離がある気がした。昨日までは普通だったのに。
淡島に戻る船に揺られながら、隣に座る鞠莉は考えるような表情をする。
「そうね。あの二人少し距離ができてたわね。曜は時々上の空だし、ちかっちはちかっちで曜から極力離れようとしているし」
鞠莉も二人の異変には気づいているようだった。まっ、鞠莉はあの時も曜の変化に気付いてたし、気づいてるか。
「今回に関しては原因もさっぱりだし、鞠莉はどう?」
「さぁ?私もさっぱりね」
「そっか。じゃぁ、明日の様子を見るしかないかもね。もしかしたら、明日には戻ってるかもだし」
「ええ、そうね。そうならいいのだけど」
二人の距離の原因も分からないから、明日次第かな?問題が解決してればいいんだけど。
そうして、私たちは船を降りるとそれぞれの家に帰る。
夜にも二人に何があったのか考え、
「もしかして……」
とある一つの可能性に至った。でも、もしそうならどうして二人に距離ができたのか、それはわからなかった。もしかしたらと、そう思えない結論に至り、明日二人が元通りに戻っていることを願った。
結果から言えば翌日も事態は好転しておらず、二人の距離はあいかわらず離れていた。
「梨子ちゃん、ストレッチしよ?」
「善子ちゃん、ストレッチしよ?」
「えっ?あっ、うん」
「えぇ……」
最近は千歌と曜で一緒にストレッチをしていたのに二日連続で梨子ちゃん、善子ちゃんとそれぞれペアを組んでストレッチを始めていた。二人は困惑しながらも頷いてストレッチをし、その後も二人の間に会話は無かった。
そして、それなりに練習をすると、日中は暑さで熱中症も懸念されるから部室内での作業をすることにする。一応、日が傾き始めたら再開する予定だけど。
そして、鞠莉が理事長としての仕事があるからと少し離れることを告げた。
「なにか私たちで手伝えることはありますか?」
「ありがと。でも、大丈夫よ。果南が来てくれるんでしょ?」
梨子ちゃんが心配そうな表情で鞠莉に聞くけど、鞠莉は私の方を見てウインクをしてそう言う。これは来いってことかな?そんなに仕事溜めてるのかな?それとも……。
「いいよ。私が行くよ」
「そう、ありがと。みんなはみんなの作業を進めてて。果南がいればすぐ終わって戻ってこれるだろうからね」
「サボったりしないでよ」
「わたくしがいますから問題ありませんわ」
私たちはそう言って、部室を出た。ダイヤがいれば作業がグダることは無いと思うから安心して部室を出ることができた。
理事長室に入るとドアを閉める。これで、中での会話を聞かれることは無い。
「で、千歌と曜のことだよね?」
「ええ。流石に二人の前でできる会話でもないでしょ」
予想通り、二人のことについてだった。そもそも、鞠莉は仕事を残りそうなら夜に無理してやるタイプだからそうだとは思うけど。
「あいかわらずだったね」
「ええ。正直なところ二人で解決してほしい所だったけど、あんまり長引くとみんなも気にするだろうし、練習にも影響を及ぼすわね」
「だよね。となると、帰りに二人に聞いてみるしかないっか。原因はたぶんあれだろうから」
「そう。果南もなんとなくわかったのね」
私たちはそう言って練習終わりに二人に聞いてみることにしたのだった。鞠莉も原因がある程度わかったみたいだし、上手く行けばいいんだけど。
~~~
「はぁー。今日もよーちゃんと話せなかった……」
私は帰って来るなりベッドに横になってため息をついた。そもそも、チカにその資格はもう無いか。よーちゃんを振っちゃったんだから。
でも、仕方ないよね。こうするしかなかったんだから。
コンコンッ
「千歌ー、入っていい」
すると、襖の向こうから果南ちゃんの声が響く。どうやら、遊びに来たのかな?だったら、練習の時に来ることを言っておいてほしかったんだけど。
「いいよぉー」
返事をすると襖を開いて果南ちゃんが入って来る。果南ちゃんは鞠莉ちゃんと学校に残ってたのに、もう来れたんだ。というか、だったら一緒に帰れたんじゃないのかな?
「ベッドに横になって、そんなに疲れたの?」
「ううん。そうじゃないけど」
「そっか。で、曜と何があったの?」
果南ちゃんが来た理由はやっぱりそれだった。誰かが触れるとは思ってたけど、まさか果南ちゃんから聞いて来るとは思わなかった。いや、果南ちゃんだからこそかな?
でも、これはチカの問題だから。
私は身体を起こして、笑みを浮かべてみせる。
「よーちゃんと?ううん、なにもないよー」
「はい、嘘だね。見てればわかるよ。何年幼馴染やってると思ってるの?」
誤魔化したけど、果南ちゃんにはばれているみたいで詰め寄られた。うーん、やっぱりばれちゃうのか。
「よーちゃんに……告白されたんだ」
「……告白されたんだ。で、断っちゃったんだ」
「うん。仕方ないよね。私じゃ……」
「はぁー。どうして、そこまで自分を肯定してあげないの?」
これ以上のごまかしは聞かなさそうだから、私は正直に言う。果南ちゃんはそれを聞くと、今の私たちの状態から私の返事を予想して口にした。
そこまでわかっちゃうんだ。そして、果南ちゃんは私が断った理由もわかっていると思う。そもそも、果南ちゃんにはよく相談していたから。
だからこそ、果南ちゃんの言葉は正しいのかもしれない。
「ダメだよ。果南ちゃんも知ってるでしょ。よーちゃんはすごいんだよ。それに比べて私は……」
「千歌……」
果南ちゃんは寂しそうな表情をする。
「千歌はそれでいいの?」
「うん。チカとじゃ、よーちゃんは幸せにはなれないよ」
「でも、曜から告白をしたんだから――」
「付き合ったら、よーちゃんはすぐに幸せになれないって気付くよ。そしたら、振られちゃうかも……そして今までの関係も壊れちゃうかもしれない……チカはそれが怖いの」
「そっか。難儀なもんだよね。曜のことが好きなのに、曜と付き合うことが怖いって」
チカの思っていることを口にすると、果南ちゃんは小さく呟いた。
チカはよーちゃんの事が好き。いつから好きだったのかと言えばはっきりとは言えないけど、かなり前から。なんの取り柄もないチカといつも一緒に居てくれたよーちゃんに惹かれるのにそんなに時間はいらなかった。それから、何度もよーちゃんに気持ちを伝えようとも思ったけど、よーちゃんがそう思っていないかもと思うと告白には至れなかった。
それから少しして変わってしまった。
よーちゃんは飛び込みでよく入賞して、可愛い衣装が作れて、料理が上手で、大抵のことが出来るようになった。それに比べて私には何も無い。全てが普通で、誇れるものなんて……。
そんな私がよーちゃんと居ても、よーちゃんは幸せにはなれない。だから、私は好きという気持ちに蓋をした。この気持ちを知られれば、よーちゃんとの関係が壊れてしまうと思ったから。恋の歌を考える時も、よーちゃんの事が好きという感情に蓋をしていたから、誰にも恋してないことにした。
もしも、私にも何か誇れるものがあれば何か変わったかもしれない。でも、そんなものチカには無い。
みんなは私がいい歌詞を書いてくれるからAqoursの曲がよくなるって言うけど、私が作詞をしているのは最初、梨子ちゃんが作曲、よーちゃんが衣装を担当していたから、発案者の私も何かしないといけないと思って作詞を始めただけ。あの時はそれでよかった。
でも、それからはどうだろ?たくさんの本を読んで語彙力のある花丸ちゃん。二年前に作詞をしてたらしい果南ちゃん。二人に比べたら私はそんなに語彙力も経験もない。だから、作詞もこのまま私が続けていいのかな?もしかしたら二人がやった方が、もっといい曲になるのかも。
今になって思えば、そうしていればもっとランキングも上がったのかな?
「ていっ!」
「あうっ!」
考えているうちに暗い方向に行き、その途中で果南ちゃんが私の頭に軽く小突いた。
「なんか難しげな顔してたけど、何考えてたの?」
「分からないのにやったのぉ?」
私は小突かれた部分を手で押さえて文句を言う。だけど果南ちゃんはさして気にする様子は無かった。
「大体、千歌は間違ってるよ。曜の幸せなんて曜にしか分からない。それなのに、なんで千歌が決めつけちゃうわけ?」
「だって……」
「曜がなんでも頑張るのは、曜が頑張れば千歌が褒めて、喜んでくれるからだよ。千歌自身だってそんなことわかってるでしょ?」
「でも……」
「千歌は曜と離れてもいいの?このままだとさらに距離ができちゃうよ?もう、前みたいに仲良くできなくなるかもよ?千歌はそれでもいいの?」
「……いいわけないよ!よーちゃんと一緒に居たいよ!」
果南ちゃんの言葉に私ははっきりと否定の言葉を口にした。よーちゃんと離れ離れになるなんてチカには耐えられない。本当は今日だっていつもみたいに喋りたかった。
よーちゃんが居てくれたから友達が増えた。
よーちゃんが居てくれたからAqoursが始められた。
よーちゃんが居てくれるから色んなことを頑張れた。
よーちゃんがいたからチカは恋を知れた。
よーちゃんがいないと千歌は何もできなくなっちゃう。よーちゃんと離れるなんてチカには考えられない。いや、考えたくない!
今の中ぶらりの状態で居続けるなんて……。
よーちゃんと話したい。
よーちゃんの笑顔がみたい。
よーちゃんと笑い合いたい。
よーちゃんと幸せになりたい!
「なら、千歌が今すべきことは分かる?」
「うん。よーちゃんとちゃんと話してくる。チカのこの気持ちを伝える!」
「うん。それでいいんだよ。あと、さっき千歌は曜といたら曜が幸せになれないっていたけどそうじゃないよ。曜が幸せになれないのなら、千歌が全力で曜を幸せにするんだよ。そして、千歌自身もね」
「……果南ちゃん」
「ほら、行った。こういうのは、善は急げだよ!ただでさえ二日経っちゃったんだから」
果南ちゃんはそう言いながらチカの背を押す。
私はつんのめりながらも一歩踏み出して走り出す。家を出るとバスは行ったばかりで次のを待っているのも嫌だった。
だから私は……。
~~~
「はぁー、今日も千歌ちゃんと話せなかった……」
私はバスを降りた後、家に着いて部屋に入るとベッドに倒れ込んでため息をついた。千歌ちゃんに告白してから、千歌ちゃんとはまともに話せていない。そもそも、振られたわけなんだから、簡単に話せるわけもないか。
どうして、断ったんだろ?千歌ちゃんには好きな人がいたのかな?私の事が本当は嫌いだったのかな?だから、断ったのかな?
はぁー、どうして告白しちゃったんだろ。
私が千歌ちゃんに告白しようと決心したのは東京からの帰りにみんなで目標を決めた後だった。もっと前から千歌ちゃんの事が好きだったけど、伝える勇気がなくて言えずにいた。一度は千歌ちゃんが私の事をどう思っているのか分からなくなってたけど、自転車で私のところまで来てくれて、想いは強くなった。そして、Aqoursが次の一歩を踏み出したのを機に伝えようと決心して、告白をした。
告白しないでこの気持ちを自身の中に蓋をしておけば、こんなことにならなかったのかな?
そんなことを考えていると、階段を登って来る音が聞こえてきたから身体を起こす。ママが来たのかな?
コンッコンッ
「Hello、曜。入っていいかしら?」
「えっ!?鞠莉ちゃん!?」
ドアの向こうにはなんでか鞠莉ちゃんがいた。いつの間にうちに来たんだろ?というか、ママも来たなら言ってよ。
「曜?」
「あっ、うん。どうぞ」
「失礼するわよ。曜のママさんが曜に声を掛けたのに返事が無かったからそのまま通してもらっちゃった」
どうやら、ママは声をかけたらしいけど、考えに耽っていたから気付かなかったみたい。そんなわけで鞠莉ちゃんが来たのはわかったんだけど。
「なんで、鞠莉ちゃんがここに?」
「そうね。それについては追々わかるわ」
鞠莉ちゃんはとりあえず私の勉強机の椅子に座り、私はベッドの上で姿勢を正す。あの日もこんな夕暮だったっけ。
「それで、ちかっちと何があったの?」
「なにも、ないよ……」
「嘘ね。何も無ければあんなにぎくしゃくしてないわよ」
「……」
「ぶっちゃけトークするわよ」
私は否定したけど、鞠莉ちゃんは確信があるようで引き下がらず、私は黙り込んだ。そしたら鞠莉ちゃんは椅子から離れて、私の頬を両手で挟んでそう言った。
どうせ言ったって……。
「なになに?もしかして、ちかっちに告白したとか?」
「……うん」
「……そう。そして、ちかっちは」
「――断られちゃった。えへへ」
鞠莉ちゃんは私が千歌ちゃんに告白したのだと想像していたようで、当たっていた。そもそも、鞠莉ちゃんには私の気持ちがばれている訳だから、そこに行きつくのはそう難しいことではないよね。
「どうしてなんだろ。なんで……私振られ、ちゃったんだろ……」
思い出すと、私の目から涙が零れ出す。あの時はギリギリ千歌ちゃんの前では泣かなかったけど、家に着いて部屋に入ったら大号泣した。
そんな私を鞠莉ちゃんは優しく抱きしめる。
「そう……頑張ったわね。今は泣いていいわよ。この部屋には私以外、誰もいないから」
「うん……ありがと……」
私は鞠莉ちゃんに抱きしめられた状態で泣き続けた。鞠莉ちゃんは優しい手つきで背中をさすってくれた。
「どうして、千歌ちゃんは私を振ったの!?私は千歌ちゃんの事が好きなのに」
「うん」
「私と一緒じゃ、やっぱり嫌なのかな?私の事嫌いなのかな?……なんで……」
それから、私は気持ちを吐露し続け、鞠莉ちゃんは静かにそれを聞いていてくれた、そうして、どれくらい時間が経ったのか、傾いていた夕日がさらに傾いた頃、私は泣き止んだ。
「ぐすんっ。ありがと、鞠莉ちゃん」
「いいのよ。これくらい」
鞠莉ちゃんは笑顔でそう言うとハンカチを取り出して私の目元を拭う。それから、私たちは椅子に腰かけた。
「それで、落ち着いた?」
「うん」
「そう。それで、ちかっちに振られた理由はわかる?」
「ううん。断られたら逃げるようにちょうど来たバスに乗っちゃったから。でも、千歌ちゃんは私の事を友達として好きってだけだったんだよ」
千歌ちゃんが断った理由はそんなところだろうと思いながら口にする。それくらいしか思いつかないし。
しかし、鞠莉ちゃんはそうは思っていなさそうだった。
「たぶん違うわね。もしそうならちかっちの方は曜から距離を取らないわ」
「そう?振った相手だから話しづらいんじゃ?」
「そうも考えられるけど、私は別の理由があると思うわ。流石にどうしてかはわからないけど」
「別の理由?」
鞠莉ちゃんの言葉に首を傾げる。他に理由なんて私には思いつかないけど。
「まぁ、ちかっちの事情なんて私は知らないわ。そんなのちかっちに聞かないと分からないことだもの。だから、そんな目で見ないでちょうだい」
「鞠莉ちゃん……」
「でも、一つ分かるわ。ちかっちは曜と一緒に居たいと思っている。幼馴染の絆は固い物よ」
鞠莉ちゃんはウインクしてそう言う。
幼馴染の絆、か。果南ちゃんと鞠莉ちゃんはそうかもだけど。私たちの場合は。
「それで、曜は一回振られただけで諦めてしまう程度だったの?」
「それは……諦めたくないけど。でも、千歌ちゃんの気持ちなんて」
「そう、わからないわ。でも、それは前の話。告白してダメなら、OKしてもらえるまで諦めなければいいのよ」
「鞠莉ちゃん。でも、そんなこと」
「ちかっちへの好きな気持ちはその程度ではないでしょ!なら、ちかっちにぶつかりなさい!ダメなら何度だって、励ましてあげるわ」
鞠莉ちゃんは笑みを浮かべてそう言う。
千歌ちゃんの事が好き。振られた今でも未だに残っている。この気持ちを簡単に無くすなんてできない。
千歌ちゃんが居てくれたから飛び込みも衣装作りも頑張れた。
千歌ちゃんがいてくれたからスクールアイドルというキラキラした世界を知れた。
千歌ちゃんがいてくれたから好きという感情を知れた。
千歌ちゃんがいてくれたから私の世界はずっと照らされていた。
それくらいまで千歌ちゃんの事が好き。千歌ちゃんがいない生活なんて考えられない。
「私、もう一度告白してみる。また振られるかもしれないけど、それでもこの気持ちを消したくない!」
「そう……それでこそ曜よ。私は応援しているわ。それで、いつ告白するの?」
「それは……うん。今から千歌ちゃんの家に行って会って来る!」
「それがいいわ。こういうのは早い方がいいわね」
鞠莉ちゃんは優しい表情でそう言うと、私の背を押す。
「行ってきなさい!そして、ちかっちに想いを伝えて来なさい!」
「うん。行って来るね!」
背中を押された私は走り出す。そして、バスを待っているのも億劫だから、自転車を引っ張り出すとそのまま走り出した。
~~~
私は自転車でひたすら走った。よーちゃんの家までひたすらに……。
「よーちゃん!?」
「千歌ちゃん!?」
もう少しでよーちゃんの家というところで、自転車に乗って走っていたよーちゃんと出会った。と言っても記念公園の辺りだからまだ距離はあるんだけど。
私は少し戻って信号を渡って来るよーちゃんを待つ。
「よーちゃん。伝えたいことがあるの!」
「うん。私も」
よーちゃんと会うと私はそう切り出し、よーちゃんも何かあるのかそう言った。
そして、私たちは道路で話す内容でもないし、邪魔になるからと海岸へ移動した。
チカとよーちゃんは自転車を降りると砂浜に腰を下ろす。
「よーちゃん。この前はごめんね」
「ううん。私の方こそ、いきなり言っちゃって。いきなりすぎて困っちゃうよね。私の事好きじゃないんだから」
「えっ!?私はよーちゃんの事嫌いじゃないよ!」
「そうだよね。でも、好きって訳でも――」
「何言ってるの!チカはよーちゃんの事が大好きだよ!よーちゃんと付き合いたい!よーちゃんと恋人になりたい!ずっと一緒に居たい!」
「えっ!?」
「あっ」
よーちゃんが“私はよーちゃんの事が好きじゃない”と思っているようでそれを否定した勢いで告白というか、なんというか。とにかく言っちゃった!もっと雰囲気がよくなってから言おうと思ってたのに。
よーちゃんは私の言葉に驚きの表情をしていた。そうだよね。告白を断ったんだからね。
「千歌ちゃん?どういうこと?でも、一昨日はごめんって」
「……うん。一昨日のことはごめんね。チカがちゃんと自分の気持ちに素直になっていればよかったのに」
「どういうこと?」
私はそれから話した。よーちゃんと比べてチカには何も無いこと。そんな私と居たらよーちゃんが幸せになれないんじゃないかと思っていること。だから、チカのよーちゃんへの気持ちに蓋をして告白を断ったこと。
よーちゃんは静かにそれを聞いてくれた。
「千歌ちゃんはそう思ってたんだ」
「うん。チカはチカ自身のことを好きになれないんだよ。何かこれだってモノがあれば良かったんだけど」
「千歌ちゃんにもあるよ!」
「そうなの?」
よーちゃんはチカの目を見てはっきりとそう言った。チカなんかにそんなモノなんて。
「千歌ちゃんには人を引き付ける魅力がある。みんなを想う優しさがある。人を笑顔にする力がある」
「そんなのみんなにもあるよ」
「ううん。千歌ちゃんがスクールアイドルを始めようと言ってくれなかったら、私はスクールアイドルになってなかった。Aqoursのみんなともこんなにも仲良くなれなかった。千歌ちゃんだから、みんなが集まったんだよ。東京での出来事だって、千歌ちゃんは自分が暗くなったらみんなも暗くなるって、明るく振る舞ってくれた。千歌ちゃんだって悔しかったはずなのに。私はあの時諦めかけてた。千歌ちゃんの気持ちを聞くのが怖かった。もしも、辞めるって言ったら後戻りができなくなると思ったから。でも、千歌ちゃんは辞めなかった……諦めなかった」
「でも……」
「それに、私は千歌ちゃんとずっと何か一緒に何かをやって成し遂げたかった。千歌ちゃんがいたから……私が何かをすれば千歌ちゃんは笑顔で一緒に笑ってくれたから、私はなんだって頑張ってこれた。千歌ちゃんがいなかったら、私は何もできなかったよ。だから……自分をそんな風に悪く言わないで!」
引き付ける魅力、想う優しさ、笑顔にする力。
そっか。チカには何も無いと思ってたけど、ちゃんとあったんだ。
「そんな千歌ちゃんだから、私は千歌ちゃんの事を好きになった。千歌ちゃんがまだ誇れるものが無いって言うのなら、一緒に探そ?一緒に見つけよ?」
「よーちゃん……」
「千歌ちゃんと居る時間は私にとって幸せな時間なんだよ?千歌ちゃんと居たら私が不幸せになるなんて言わないで!」
チカと居る時間がよーちゃんの幸せな時間。
なんだ、結局チカの勝手な思い込みだったんだ。だったら、もうこの気持ちに蓋をする必要も無いんだね。私は私の気持ちに素直になっていいんだね。
「だから……千歌ちゃん、私と付き合ってください!私と一緒に幸せになってください!」
「……うん、私の方こそ。こんなチカだけど、よーちゃんの彼女にしてください!私と一緒に幸せになってください!」
二人が付き合うところで終わしにしたのは、区切りが良さそうだったからです。
お読み下さりありがとうございました。
次はどの組み合わせにしようかな?