「よっちゃん、私と堕天しよ?」
「え?……え?」
私は学校の屋上でリリーに壁ドンされていた。練習終わりに話があるからって、みんなが先に戻る中私とリリーは屋上に残り、瞬く間にこんな状況に。
なんで壁ドンされているだとか、リリーにそう言われてるとかわからないことだらけ。
「よっちゃん?」
返答に困っているとリリーは首を傾げる。
えーと、この場合の堕天はきっといつも私が言っている事。うんうん。だから問題ない。いや、私のリトルデーモンになれって意味なのに、リリーに言われるってことは私がリリーのリトルデーモンになれってこと?そう考えると、どういうこと?
最近リリーをこっち側に引っ張ってきたと思ったのに、まさかの反逆?くっ、ぬかったわ。まさか、主たる私に反逆しようとは。
「うーん。うまく通じなかったか」
「ん?」
「よっちゃん、私と付き合って!よっちゃんの事が好き!愛してる!」
付き合って?私の事が好き?愛してる?・・・えっ!?
どういうこと?リリーが私の事が好き?
「え……え?」
「あはは。いきなりだから驚かせちゃったよね」
「Likeじゃなくて、loveの方なのよね?」
「うん。loveの方の好きだよ」
一応聞き返してみたけど、どうやらそういうことらしい。
リリーとは仲いいけど、まさかそこまでだったとは思ってなかった。
私だって、リリーの事は好きだけど、私はlikeの方の好き。
リリーのことをそういう風に見たことなんてないからどう返したらいいの?
「えーと」
「あはは、いきなりすぎて驚いちゃったよね。よっちゃんが私の事をそういう風に見てないことはわかってるから、返事はいつでもいいからね」
困っていると、リリーはそう言ってぱたぱたとみんなの事へ走って行き、私は力が抜けてその場にへたりこむ。
リリーは優しいから返事を待ってくれた。でも、いつまでも待たせるわけにもいかないと思う。
「はぁー、なんて返事をすればいいのよ」
~~
リリーに告白されて数日が経った。その間に考えたけど、未だに返事が決まらない。リリーはまるで告白なんてなかったかのように私に接し、私はぎこちないながらもどうにか返す日々が続いている。
告白を受け入れても受け入れなくても、今の関係からは変わってしまう。リリーの事は好き。でも、リリーが私に向けるそれとは違うから受け入れることができない。そんな中途半端な状態で受け入れるのはリリーに失礼だから。
昼休み、私は一人屋上で塀に背中を預けて、おにぎりを食べながら小さく呟く。
「はぁー、どうすればいいんだろ?」
「どうかしたの?」
「ん?ずら丸?」
すると、屋上にずら丸がやって来て私にそう声かけた。今日はふらーと屋上に一人来て、ずら丸はルビィと一緒に教室でお昼を食べているはずなのに、どうしてここに?
「なにか悩み気な表情で出て行ったから気になって」
私の表情からそう読み取ったのか聞く前に説明すると私の隣に座る。私ってそんなに顔に出るのかしら?まぁ、心配されたってことはそういうことなんだろうけど。
「別になんでもないわ」
「嘘ずらね」
「なんでよ!」
「悩みがあるのは一目で分かるよ。それにさっき、どうすればいいんだろ?って呟いていたずら」
「あっ……」
言われて気付いたけど、そう言えば私が呟いたら現れた訳だし聞かれてたか。となると誤魔化しはもう無理か。
「例えばの話よ」
「ん?うん」
「好きと意識したことのない人に告白されたらどう返したらいいんだろ?」
「梨子ちゃんに告白されたからどう返事しようか悩んでるんずらね」
「ちょっ!リリーに告白されたこと一言も言ってないわ!」
「今言ったずら。どんな感じだったの?」
どうして一言も言ってないのに、ずら丸はリリーに告白されたって知ってるの?もしかしてみんなにも知られてる?
そんな心配をしながらも、あの日のことを話す。
「なるほどねぇ。まぁ、梨子ちゃんが善子ちゃんの事を好きなのは見ていればわかったし」
「え?ほんと?告白されるまで全く気付かなかったけど」
「意外と自分に向けられている好意には鈍感なものずら。恋愛小説でもそんな感じだったし」
「そういうのも読むのね……てことは、みんなも知ってるの?」
「さぁ?みんなが知ってるのかはわからないかな?それでどうするの?」
みんなが知っているのかはわからないけど、ずら丸が知っているのはそういうことだったみたい。
どうすればいいのかなんてわからないわよ。そもそもわからないから悩んでいるわけだし。
「まぁ、だから悩んでるんだよね。とりあえず付き合うんじゃダメなの?一緒に居るうちに梨子ちゃんの好きと同じになるかもしれないし」
「ダメよ。そんな中途半端な状態はリリーに悪いし」
「優しいね」
「優しくなんてないわよ。返事を待たせちゃってるんだから。ずら丸はどうすればいいと思う?」
「難しいずらね。恋愛はマルにはよくわからないけど、わかるのは。その答えは善子ちゃんにしかわからないってことかな?」
「そうよね」
結局、答えは私にしかわからない。そうなると、いよいよどうすればいいのやら?
「でも、一つマルに言えるのは、一度梨子ちゃんの事を考えて直してみることかな?一から梨子ちゃんの事を頭の中で整理すれば何か見えてくると思う。まぁ、ルビィちゃんの持ってる少女漫画の一つにあったんだけど」
「一から考えて見るねー」
キーンコーン、カーンコーン
「あっ、チャイム。戻ろっか」
「ええ。て、まだお昼食べ終わってない」
チャイムが鳴って、ずら丸は立ち上がり、私は膝に乗せていた弁当箱に残ったおにぎりを見てそう呟いた。
「あーあ。マルはここに来る前に食べてきたから問題ないずら」
「ちょっ、心配してた割にちゃんと自分のは済ませてたの?」
「当たり前ずら。さぁ、戻ろー」
「あんただけ食べ終えてるなんてずるいわ!」
「はいはい」
ずら丸に聞いてもらったからか、少しは気持ちがマシになったかな?答えを見つける手掛かりは見つかった訳だし。
~~
リリーを初めて見たのは体育館のライブの告知に沼津駅北口で見かけた時。でも、その時は受け取ってすぐに逃げる様に後にしたからノーカン。ちゃんと認識してみたのはライブのあの日。ステージの上で踊る三人は輝いて見えた。その時はまだ何とも思ってなかった。
それから、Aqoursに誘われ、東京でライブして、三年生が加わって、合宿をして、ラブライブに出場して夏休みが明けた。その期間の間、みんなと一緒に居る時間は楽しく、そんな時間が好きだった。
そんな中、三つのユニットに別れることになり、リリーと同じユニットになった。そのおかげでリリーと話す時間が増えて仲が良くなったんだっけ?
「あっ、そっか。答えなんて案外簡単だったのね」
ダイヤとマリーは生徒会と理事長の仕事、果南はその手伝い、ずら丸とルビィは図書の仕事、二年三人は掃除当番。そんなわけで、私は部室で今まで撮ったライブやPVを眺めていた。そして、わかった。
どうして、わざわざ休日に一時間近くバスに揺られて三人の最初のライブを見に行ったんだろ?あんな悪天候の中。
もっと、言えば、どうしてチラシを受け取るなり逃げるようにして後にしたのか。
一目惚れ。
あの日見た時にリリーがキラキラして見えたんだ。でも、あの時は単純に住む世界が違うと思ったから逃げ、その気持ちに気付かなかった。
でも、内心は気になっていたからあの日のライブを見に行った。
それからも、たびたびリリーに見惚れていた。でも、それは単純にリリーのようにキラキラしたものになりたいだけだと思ってたから本当の事には気づかなかった。
だけど、一度わかれば全てが繋がる。リリーのことを考えるとドキドキする。リリーと一緒に居ると落ち着く。
最初からリリーの事が好きだったんだ。でも、私が恋を知らなかったから気付かなかっただけ。
もう、リリーへの返事は決まった。
「おはヨーソロー!」
「コンチカ!」
すると、ドアが開いて、同時に二つの挨拶が響いた。おはようか、こんにちはのどっちかに統一しなさいよ。
そんなことを思いながら声の方を向けば、挨拶の通り千歌と曜がいた。
「朝振り。あれ?リリーは?」
でも、リリーの姿が見えず、私は首を傾げる。てっきり、三人同時に来るものだと思ってたけど。
「ああ、梨子ちゃんなら曲のイメージが浮かんだからって音楽室に行ったよ。ピアノで一回弾いてみたいからって」
「そう……ちょっと出てくるわね」
「ん?うん!いってらっしゃーい」
私は二人にそう言って部室を出る。たぶん、まだみんなは来ないだろうからたぶん平気なはず。だいぶ待たせちゃったから早く返事をしたい。この気持ちを伝えたい。
「ふぅ、やっと返事ができるようになったみたいだね」
「あはは。やっとチカ達解放されるね」
~~
~♪
音楽室の前に着くと、ピアノの音が聞こえる。リリーの弾くピアノの音も好き。聴いていると気持ちが落ち着く。
だからか、返事をする前に一度私の気持ちが落ち着いた。そのおかげでちゃんと伝えられるはず。
ドアを静かに開けると、リリーは目を閉じてピアノを弾いていて、私が入ってきたことに気付いた様子も無い。途中で止めるのも悪いから静かにドアを閉めて、静かにその音を聞く。
ピアノを弾くリリーは綺麗で(まぁ、ピアノを弾いていない時もきれいなんだけど)、そんなリリーの姿に見惚れる。それと同時にドキドキする。リリーの演奏で落ち着いてるはずだけど、やっぱりいざ告白の返事をするとなるとドキドキしてしまう。
「ふぅー」
パチパチパチ
「わっ!」
ちょうど区切りが付いたのか演奏が終わり一息ついたから、私は拍手をした。いい演奏だったから拍手をしたわけだけど、私の存在に気付いていていなかったリリーは勢いよく立ち上がりながら驚きの声をあげてしまった。
あっ、まずった。
「ごめん、驚かしちゃった」
「あっ、よっちゃん。ううん、気にしないで、私が大げさなだけだから」
「そう?」
「そうなの!それでどうしたの?こんなところに」
リリーの疑問はもっともだった。そもそも、リリーがここに居るのを私が知るはずがないし、用が無ければここには来ないと思うだろうし。
「千歌達に聞いてね」
「そっか……」
「それでね。あの時の返事を伝えに来たの。だいぶ待たせちゃってごめん」
「ううん、それは気にしないで。それで……」
「リリーの事が好き!だから、私と付き合ってください!」
「え!?……ほんと?」
リリーは口に手を抑えて驚いた表情をする。なんで、驚かれてるのやら?
「最初は私のリリーに対する気持ちは友達として好きだって思ってた。でも、今までの事を振り返ってわかったの。私はリリーの事が恋愛の意味で好きだったんだって。恋してたんだって」
「そっか、うれしい。もしかしたらフラれるかもって心配だったから」
「じゃぁ、どうしてあの時告白したのよ?」
フラれるのが心配だったら、あの時告白した理由が分からない。いや、告白してくれたおかげでこの気持ちに気付けたわけだけど。
「それは、まぁ。のんびりしてたらよっちゃんが誰かに取られちゃうんじゃないかって心配になって……」
「だから、告白したと」
誰かに取られるかもしれないから告白に至ったって……。私に告白する人がリリー以外にいるとは思えないけど。それに、誰かに告白されたらこの気持ちに気付いただろうから、その人と付き合うことも無いだろう。
あっ、そしたら、私からリリーに告白してたのかな?
「よっちゃん」
「ん?なに?」
チュ
「え?」
そんなことを考えて意識を外していたらリリーに声をかけられて、返事をするなりいきなりキスをされた。触れるだけの短いキス。でも、私にとってはファーストキス。驚きはあるけど、リリーだからうれしい。
私から一歩下がったリリーは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。そんな笑みを浮かべるリリーにドキッとした。こんな調子で私これからもつかしら?
「ずっと一緒だよ?」
「うん!」
まぁ、リリーと一緒ならそれもいいかな?
大好きだよ、リリー。
告白するまでにようちかの二人は毎日の様に相談されたり、告白後には、フラれないかと相談され続けていたりいなかったり。そんな、裏話があったりなかったり。