水の紡ぐ恋物語   作:猫犬

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二人の少女に恋してしまった千歌ちゃんの物語。
アニメの内容も多々あります。



トライアングルラブ 前編 【ようちかりこ】

「じゃぁね」

「うん、また来週。サークル頑張ってね」

 

友達に手を振って私は大学構内を出る。

高校を卒業した私は東京の大学に進学した。結局、最終的には十千万で働くつもりだけど、料理をちゃんとできる様になれということで調理学校に。お父さんにならうのも選択肢にあったけど、外の世界で色々なことを学んで来いということで私は勉強中。

今日は夏休み中にあった特別講習。参加は任意だったけど、参加した方が得られるものは多かったのと、気を紛らわせるのによかったから受けた。結果から言えば、色々なことを学べたからやってよかった。

友達はサークルをしてるけど、私は特にやっていない。何かやろうと思ったりもしたけど、ピンと来なくて結局やらずに今に至る。

そんなわけで、明るい道を一人歩く。大学から私の住んでいる家までは電車数駅と少し歩いた場所。

電車に揺られて最寄りの駅で降り、とぼとぼ道を歩いて家に着くとドアを開けて「ただいまー」と言って中に入る。まあ、誰もいないから返事なんて返ってこないんだけど。

荷物を自分の部屋に置くと、椅子に座って机に突っ伏す。

しーんと静まりかえっている家。どこか空虚に感じる。本来なら講義の予習・復習をするべきなんだろうけど、今はそんな気分にはならない。

少し顔を動かすと目に入るのは二つの写真立てに入った二枚の写真。

一つは浦女の卒業式・閉校式の後にAqours九人で十千万前の砂浜で撮った写真。

もう一つは、高校卒業の日に私とよーちゃん、梨子ちゃんの三人で私のスマホで自撮りした写真。真ん中に左手でピースしている私、私の右隣に敬礼してるよーちゃん、私の左隣に小さくピースしている梨子ちゃん。私たちは肩寄せあって三人とも笑顔だった。

 

「よーちゃん、梨子ちゃん、会いたいよぉ」

 

その写真立てを手に取って小さく呟く。

でも、二人ともいないから私の願いは叶わない。

 

「うぅ」

 

そして、最近あまり眠れていないからか私はウトウトして眠りに落ちる。

 

私はよーちゃんと梨子ちゃんの二人に恋をした。でも、そんなのおかしい事で、間違っていること。だから私はあの日、自分の気持ちを閉ざした。

これはそんな私の過去の夢。

 

 

~☆~

 

 

梨子ちゃんと初めて出会ったのは、二年に進級して初めて登校した日の夕暮。梨子ちゃんがキラキラして見えて、目を奪われるように見ていたら、いきなり海に飛び込もうとしたから慌てて駆け出して止めようとした。残念ながら、私も一緒に海に飛び込む形になっちゃったけど。

それから梨子ちゃんが東京から来たのを知って、翌日転校生として再会した。梨子ちゃんがピアノを弾けることは砂浜で聞いていて、もう作曲できる当てが梨子ちゃんしかいなかったから、何度も梨子ちゃんにお願いをした。あの後思ったけど、ちょっと強引すぎたかな?あれは後で反省した。

それから一緒に海に潜って、梨子ちゃんの探していた海の音を聴いたことで梨子ちゃんが作曲してくれることになった。でも、一緒にスクールアイドルはやってくれそうになかった。だけど、その日の夜に、ピアノを弾く梨子ちゃんを見て思った。梨子ちゃんならきっとスクールアイドルをやれば輝けるって。梨子ちゃんは最初ピアノを諦める訳にはいかないからって断ってたけど、私はそうは思わない。スクールアイドルをやったからって、ピアノができなくなるわけじゃない。少し回り道。ううん、別の事をすれば何か見えてくると思ったから。

その結果、梨子ちゃんもスクールアイドルをやってくれることになった。作曲ができて、一緒にスクールアイドルをやってくれてうれしかった。

それから、体育館でライブして、ルビィちゃんと花丸ちゃん、善子ちゃんが加わって、内浦の人みんなの協力でスカイランタンが上がる中ライブをした。その後、東京のイベントに参加して、誰も投票してくれてなくて挫けかけたけど、まだ何も見えてないと気づいて、みんなでその先を見ようと決めた。果南ちゃんたちの仲違いが終わって三人が加わり、私たちは九人で夏祭りのステージに臨んだ。

今思えば、あの三カ月の間で色々なことがあった。そして、家が隣の梨子ちゃんとは毎日のように寝る前に喋って、気付いた時には惹かれていた。

でも、その頃はまだただ単に仲良くなったから友達として好きって感じだと思ってた。

本当の気持ちに気付いたのは、夏休みにやった合宿の後だった。

 

 

「梨子ちゃん、どうかしたの?」

「ううん、なんでもないよ」

 

夏休みに入り、練習時間を増やすために合宿をすることになった。本当は昼間に練習する予定だったんだけど、海の家のお手伝いをしなくちゃいけなくて、その時間に練習が無理だったから朝と夕方にやるためにこうなった。本当は私と曜ちゃん、果南ちゃんだけのはずだったけど、みんなも手伝ってくれて、ダイヤさんが言うには接客でルビィちゃんたちの人見知りを少しでも改善しようだとか。たぶん、思い付きのこじつけだろうけど、手伝ってくれるのはうれしかった。

海の家での接客、夕方の練習、夕ご飯と一日目を過ごして、私は時折梨子ちゃんが何か考えてるような暗い表情をしているのを見て気になってた。でも、聞いても何もないとはぐらかされる。うーん、私が考えすぎなのかな?

ソースが切れちゃったってことで家に取りに行くと、志満姉と梨子ちゃんのお母さんが玄関で何か話していた。内容はピアノコンクールがあるらしくて、でも梨子ちゃんがどうするつもりなのかわからないということだった。ピアノコンクールあるんだ。ん?じゃぁ、梨子ちゃんそれで悩んでるのかな?出ればいいのに……。

そう思って調べてみると、ピアノコンクールの予選の日とラブライブの予備予選の日が被っていた。だからわかった。梨子ちゃんはどっちを取るか悩んでいるんだって。

寝ている梨子ちゃんを起こして砂浜で聞いてみれば、

 

「私はラブライブに出るよ。最初は考えた。でもこの合宿を通して、皆といる時間が大切だと思ったの」

「え?」

「それで、ちゃんと考えた。どっちが大切かって。そして、決めたの。一緒に予選に出るって。今の私夫目標は今までで一番の曲を作って、予選を突破することだよ」

「そっか」

 

梨子ちゃんはラブライブを取ってくれた。きっと一人で悩んだ末に決めたんだと思う。だから、私がその気持ちに何か言うのはダメな気が知ってしまった。

 

「だから、早く歌詞頂戴ね」

「えー」

 

だから、家に戻る梨子ちゃんが一瞬暗い顔をしたのに何も言えなかった。

 

「うーん」

「どうかしたの?千歌っち?」

「悩みでもあるんですか?」

 

翌日も午前中と夕方に練習、昼間は海の家で仕事をして過ごした。梨子ちゃんは特に何もないかのように振る舞っていたけど、やっぱり時折暗い顔をしていた。たぶん、コンクールを諦めきれたわけじゃないんだと思う。でも、私は梨子ちゃんみたいに一心に打ち込めたものが無いから、なんて言ったらいいのかわからない。よーちゃんだったらきっと何か言ってあげられるんだろうなぁ。

そうして砂浜で悩んでいると、鞠莉ちゃんとダイヤさんがやって来た。どうすればいいのかわからないけど、梨子ちゃんの事を勝手に言う訳にもいかないから、二人に相談することもできない。

でも、せっかく心配してくれてる二人に嘘をつくのも嫌。

 

「友達があることに悩んでたんだけど、悩んだ末に一つの結論を出したの。でも、私は本当にそれでいいのかわからなくて。本当は無理してるんじゃないかって思って」

 

だから、ぼかしながら相談をしてみる。二人は私の言葉を聞くと少し考える素振りをする。

 

「つまり、それを伝えるべきか悩んでいると」

「うん」

「うーん。悩みが何なのかわからないから私たちがこうすべきって言えないわね。その子の悩みを聞いても平気?」

「ごめん、勝手に言う訳にはいかないから」

「そう」

 

梨子ちゃんの事に関係するから、流石に言う訳にもいかずにそう言うと、二人はそれ以上踏み込んで来ることはなかった。

 

「その方が無理しているようで、千歌さんが思う事があるのなら、ちゃんと言葉にするべきでしょうね」

「でも、私が口出すのは……」

「いいのよ。友達なら思ったことは口にして。思っていることをちゃんと口にしなかったらどうなるかわかるでしょ?」

 

鞠莉ちゃんと果南ちゃんがお互いの本当の想いを伝えなかったことで生じたすれ違い。鞠莉ちゃん本人の事だからこそ説得力がある。

自分の気持ちを隠すのはいい事とは限らない。場合にもよるけど、今回に関してはたぶん、伝えるべきなんだと思う。

でも、本当にそれでいいのか、梨子ちゃんに迷惑がられないかっていう心配が生まれる。

 

「思っていることを伝えるのに躊躇う気持ちもわかります。ですが、それに怯えて踏み出さないのは千歌さんらしくありませんわ」

「そうそう。私たちの時にグイグイ来たんだから」

「それは……」

「だから、真正面からぶつかりなさい!誰なのかは知らないけど、千歌っちの友達ならきっとちゃんと聞いてくれるわ」

「そうかな?……うん。そうだよね」

 

二人が言う通り、何もしないのは私らしくない。そもそも、梨子ちゃんをスクールアイドルに誘った時だって強引だったもんね。だったら、今回だって。

 

 

「ここだったら、どれだけ弾いても大丈夫。だから聴いてみたいの。お願い」

「そんないい曲じゃないよ?」

 

その日の夜。みんなが寝鎮まった頃に梨子ちゃんを起こして、浦女の音楽室に来た。最初はただ思ったことを伝えようと思ってたけど、そう言えば梨子ちゃんの弾くピアノをちゃんと聴いたことが無いからここに来た。丘の上で誰もいないから、近くに住んでいる人の迷惑にもならない。梨子ちゃんは困惑しながらも弾いてくれた。私は静かに聴いた。

梨子ちゃんのピアノには梨子ちゃんのピアノを大好きって気持ちが籠っていて、やっぱり私は伝えようって思った。

そして弾き終ると、私たちは学校を出てバス停の椅子に座った。

 

「いい曲だね。梨子ちゃんがいっぱい詰まってた。梨子ちゃん……ピアノコンクールに出てほしい……こんなこと言うのは変だよね?スクールアイドルに誘ったのは私で、せっかく梨子ちゃんがAqoursの方が大切って言ってくれたのに」

「私が一緒じゃ嫌?」

「ううんそうじゃないの。一緒がいいに決まってるよ!」

 

梨子ちゃんはそう言い、私はそれを否定する。梨子ちゃんと一緒にステージに立ちたい気持ちはある。

 

「でも、思い出したの。最初に梨子ちゃんを誘った時のこと。あの時思ったの。スクールアイドルを続けて、梨子ちゃんがまたピアノと向き合えるようになって、また前みたいに前向きに弾けたらって。そうしたら、すてきだなって」

「でも……」

「うん。この街が、みんなが大切だって言うのはわかるよ。私もおんなじ。でもね。梨子ちゃんにとってのピアノも同じくらい大切だと思ったの……だから、その気持ちにちゃんと答えを出してあげて」

 

私は思っていることをちゃんと口にした。梨子ちゃんはAqoursも大切に思っていてくれていて、ピアノコンクールに出たら、みんなに迷惑がかかるって気持ちもあったんだと思う。

 

「ここで待ってる。みんなと待ってるって約束するから」

 

だから、私はそんなこと思わずに梨子ちゃんの嘘偽りのない気持ちでちゃんと決めてほしかった。自分が一番望む形で。

 

「ほんと、変な人……大好きだよ」

「ふぇ?」

 

梨子ちゃんに“大好き”と言われた瞬間、胸がドキンッと鳴った。

 

「千歌ちゃん、もう少し考えてみるね。自分が本当にどうしたいか」

「うん!ちゃんと梨子ちゃん自身が納得する答えを見つけてね」

 

考える間もなく、梨子ちゃんは続けてそう言い、私は考えるのを一度止めた。梨子ちゃんはどうしたいかをちゃんと考えてくれる。だから、それで梨子ちゃんが選んだ答えに背中を押そう。

 

梨子ちゃんはピアノコンクールに出ることになり、私たちは八人で、ううん、離れていても想いは一つだから気持ちは九人で臨んだ。

それからは梨子ちゃんの事を目で追ってしまった。

それで気づいた。私は梨子ちゃんに恋していたんだって。今思うと初めて梨子ちゃんに出会った時に一目惚れしてたんだと思う。でも、その時は恋なんてよくわかってなかったから、梨子ちゃんに一目惚れしていたんだと分からなかった。

あの日“大好き”といわれたことがきっかけで、梨子ちゃんに恋しているのだと気づいた。それから一緒に過ごした事で、仲良くなって梨子ちゃん、よーちゃんと三人でいる時間が好きになっていた。そして、あの日を境に梨子ちゃんと顔を会わせるだけでドキドキするようになった。

 

梨子ちゃんに好きだという気持ちを伝えたい気持ちもあったけど、それで今の関係が壊れるのが怖かった。そのせいでラブライブに影響したらと思って、せめてラブライブが落ち着くまでは伝えないことにした。もし、落ち着いてからもこの気持ちが残っているのなら、梨子ちゃんにこの気持ちを伝える。私はそう決めた。

 

でも、二つの理由から私は梨子ちゃんに気持ちを伝えられなくなった。

一つは、地区予選で敗退して決勝が終わってすぐのタイミングで次のラブライブが発表され、みんなでラブライブに出場することになって練習の日々になったこと。それと同時に浦女の廃校がほぼ決定したという話が流れたから。その為に、どうにか廃校阻止をしようということで忙しくなり、このタイミングで告白するわけにはいかなくなったから。

 

もう一つは、梨子ちゃんへの気持ちに気付いてすぐ。よーちゃんにも恋しているのだと気付いたから。

 

 

~☆~

 

 

よーちゃんの家と果南ちゃんの家含めて家族ぐるみで付き合いがあった。だから、物心がついた頃からよーちゃんと一緒に居た。幼稚園も小学校も中学校もいつも一緒この辺りは子供が少なかったからクラスも一クラスか二クラスで、そのおかげかずっと同じクラスだった。

浦女に入学する前によーちゃんの家が沼津の方に引っ越した時は、高校は別々になるんじゃないかって心配したけど、よーちゃんは浦女に入学した。沼津の高校の方が飛び込みのできるプールが近いし、そもそもよーちゃんの家からだとそっちの方が近いから浦女に入学した理由が分からなかった。聞いても、秘密にされちゃってほんとのことはわからない。

よーちゃんとはほとんど一緒に居たからもう姉妹のような感じで、一緒に居ることが当たり前だった。それまでは、よーちゃんに対する気持ちは単純な家族愛、姉妹愛みたいなものだと思ってた。

でも、私は本当はそんなんじゃなくて、恋愛の意味で好き、いわゆる愛しているのだと気づいた。

そう気づいたのは夏の予備予選が近づいた、よーちゃんの家に行ったあの日の後だった。

 

 

「もう一度、梨子ちゃんと練習してた時みたいにやってみて」

「えっ、でも……」

「いいから」

 

梨子ちゃんがピアノコンクールに出ることになって起こった、センター不在問題。残り僅かになった時間で選べる選択肢の結果、梨子ちゃんの位置によーちゃんが入ることになった。よーちゃんとのダブルセンター。よーちゃんの隣に立てる機会ってことで内心舞い上がってた。まぁ、表には出さないでおいたけど。

でも、どうしても歩幅がうまく合わなくてぶつかっちゃうことを繰り返していた。どうしてうまくいかないのかわからないまま練習は続き、結局練習時間中にうまく行くことは無く、その日の練習時間が終わった。わかったことといえば、梨子ちゃんと合わせていた歩幅が染みついちゃってることくらい。

帰りにコンビニに寄って、コンビニの横の空きスペースで練習を続ける中、よーちゃんがそう言った。

梨子ちゃんの時みたいって言われて、聞き返そうとするもよーちゃんが動き始めて慌てて私も動く。

結果はぶつかること無くきれいにそろった。

 

その時は成功したことがうれしくてあまり気にしなかった。でも、翌日やってみて何か違う感覚に襲われた。何が違うのかわからない。せっかくうまく行ったのに、ここでそれを言ったらダメな気がしてそれを口に出せない。せめて、この違和感の正体に気付ければ。

 

「うーん、どうすればいいんだろ?」

「そんなの、練習あるのみよ」

「マルもそう思うずら」

「あれ?三人とも何してるの?」

 

練習終わりに部室に忘れ物をしたから部室に戻って来ると、パソコンとにらめっこして呟く三人がいた。どうしてルビィちゃんたちがここに?花丸ちゃんの図書委員の仕事を手伝いに二人も行っていたはずなのに。ちなみによーちゃんは家の用事でもう帰っている。果南ちゃんたちは生徒会の仕事だとか。

 

「あっ、千歌ちゃん。どうしたの?」

「あはは。忘れ物を取りに。どうしてここに?」

「くっ、秘密の特訓がばれてしまったか」

「うまくいってない部分があったから、練習風景を見て苦手な部分の復習をしようと思って」

「図書の仕事はもう終わってるずら」

「あっ。じゃぁ、チカも見る。いいものにしたいからね」

 

三人がここにいる理由はそういうことだった。図書委員の仕事って言うのは口実だったみたい。

棚に置いていた歌詞ノートを鞄に入れると、特に急ぐ理由もないし、もしかしたら違和感の正体が分かるかもってことで私も隣に座って一緒に見る。

パソコンに流れる映像は今練習中の曲で、やっぱりあのステップはきれいにそろっている。うーん、やっぱり違和感の正体が分からない……。

 

「ねぇ。私とよーちゃんのこのステップどう思う?」

 

わからないから、三人に意見を聞いてみる。もしかしたら何かわかるかもって期待を込めて。

 

「ん?綺麗にできてると思うよ。流石二人だよね」

「うんうん。息ぴったり」

「最初は心配だったけど、見事に合致してるわよね」

 

でも、私の望む答えではなかった。そもそも、この違和感自体私の勘違いかもしれないけど。

 

「あっ、でも。二人らしくないかも」

「え?」

「あっ、マルもそれは思った」

「そうね。二人らしくないなって。二人ならもっと大きく動いてるような」

「うん。なんだか梨子ちゃんとやってる時みたいで……」

「それに、二人とも無理に合わせようとしてて、無理してる感じがするかな?」

「あっ!」

 

それでわかった。よーちゃんが梨子ちゃんの動きをしていて、よーちゃんらしさを感じない。まぁ、よーちゃんらしさが何かって聞かれたらうまく説明できないけど。でも、よーちゃんにはよーちゃんのステップがあって、梨子ちゃんの形に合わせるのは違う気がする。私とよーちゃんだけのステップがある気がした。

今わかったところで、やり直すわけにもいかないけど。きっと、またうまく合わずにぶつかっちゃう。

 

「もしかして、今から曜ちゃんとやり直すの?」

「ううん。流石にそんな時間無いよ」

 

衣装もまだ完成していない以上、時間に余裕はそんなにない。それにうまくいく保証もない。もしかしたらそのせいで今のステップも崩れちゃうかもしれない。

 

「ルビィのわがまま言っていい?」

「ふぇ?」

「ルビィは二人が本当の意味で納得する形にして欲しいかな?少しでも違和感があると思ったら、納得する形になるまでやって欲しい」

「でも、衣装もまだだしそんな時間……」

「衣装ならルビィと私が手伝ってどうにかするわ」

「うゆ!」

「こういう時くらいマルたちを頼って欲しいずら。マルたちは仲間であり友達。友達は頼り頼られあうものだよ?」

「ルビィちゃん、善子ちゃん、花丸ちゃん……」

 

私が一歩踏み出すのを躊躇っていると、その原因を察してか三人はそう言ってくれた。こういう時は頼って本当にいいのかな?ううん、こう言ってくれてるんだから、頼らないとダメだよね?

 

「ありがとう、三人とも!行って来るね!」

「ええ。あと、ヨハネよ!」

「千歌ちゃん、がんばルビィ!」

「いってらっしゃーい」

 

三人にそう言って私は部室を出た。バスが来るのはまだ先だから、私は走って家に帰る。そして、家に着くと練習着に着替えて家を出た。本当は車で送ってもらいたかったけど二人とも忙しそうだった。だけど、バスが来るのを待っている気分じゃないから自転車を引っ張り出して、一気にペダルをこいで走り出す。

よーちゃんの家までは結構距離があるけど、練習のおかげか息が上がるる事もなくすいすいと進んで行く。

よーちゃんの家に着く頃には陽は完全に落ちて暗くなっていた。

 

「よーちゃん!」

「……」

「よーちゃーん!」

「千歌ちゃん?どうして?」

 

家の前で呼ぶと、一度目は反応が無かったけど、二度目で顔を出してくれた。私がここにいる事に疑問を持っているような表情をしていた。

 

「練習しようと思って」

「練習?」

「うん!私考えたの。よーちゃんは自分のステップでダンスした方がいいって。合わせるんじゃなくて、よーちゃんと私の二人で!」

 

私は私の思ったことをぶつける。すると、よーちゃんは奥に引っ込んでしまった。あれ?急にどうしたんだろ?

そんなことを考えていたらドアが開く。でも、何故かよーちゃんは後ろを向いていて、じりじりと近づいてきて腕を伸ばして、私の肩に触れる。

 

「千歌ちゃん、汗が」

「あはは。バスも終わってたし、美渡姉も志満姉も忙しくてね。だから自転車で」

 

この距離を走るのはやっぱり無茶だったのか汗はすごくかいてる。そもそも夏だしね。

 

「よーちゃん何か気にしてそうな気がして……私の想像だけど。あはは」

「私、バカだ……バカヨウだ」

「バカヨウ?」

 

すると、よーちゃんが振り返るなりいきなり抱きしめてきた。それと同時に「バカヨウ」って言っていた。どういうこと?

 

「よーちゃんどうしたの?何で泣いてるの?」

「いいの!」

 

話を聞こうにも、よーちゃんは泣いているから話が聞けない。そんな訳でよーちゃんが泣き止むまで私もよーちゃんに抱きついた。よーちゃんに抱きしめられていると落ち着く。それに、胸がドキドキする。

よーちゃんが泣き止むと、どうして泣いていたのか教えてくれた。

最近梨子ちゃんと仲良くしてたから、本当は私がよーちゃんと一緒に居るのが辛いんじゃないかと思っていたこと、ピアノコンクールの事をよーちゃんに相談しなかったから頼りないのかと思っていたこと。

 

「私は千歌ちゃんと一緒に何かやりたいってずっと思ってた。だから、一緒にスクールアイドルができるってなった時うれしかったの」

「うん、私もよーちゃんと一緒に何かできるってなってうれしかった。中学に入ってから、よーちゃんの誘いよく断っちゃってたから。普通の私じゃ、中途半端にしかできないからって」

 

よーちゃんが気持ちを話してくれたから私も気持ちを口にする。それから、今まで思ってたことを全て打ち明けた。その結果、今まで以上によーちゃんの事がわかった。

それから、私とよーちゃんだけのステップを目指して練習をして、なんとか納得できる私たちの形にできた。

 

そして、予備予選を私たちは突破することができた。

それからすぐ、私はどうしてよーちゃんに抱きしめられた時ドキドキしたのか気になった。果南ちゃんにハグされた時も落ち着きはするけど、あの時みたいにドキドキしない。

だから、気付いた。

私はよーちゃんに恋してるんだと。よーちゃんと一緒にいるのが当たり前になっていたから、この気持ちが恋なのだと気づくのに時間がかかったけど、梨子ちゃんと同じくらいよーちゃんと居てもドキドキする。だからそうなのだと分かった。

 

でも、梨子ちゃんとよーちゃんの二人の事が好きになったことで、どうすればいいのかわからなくなってしまった。こんなの普通の事じゃないし、二人に告白して受け入れてくれた方と付き合うなんてことをしていい訳が無い。二股なんてやっちゃいけない。

だから、どちらかを選ぶしかない。

 

そう決めて、梨子ちゃんとよーちゃんのどちらの方が好きなんだろうと考えた。でも、結論は出なかった。どっちも好きで、だから選べない。

その結果、私はずるずると引きずりながら日々を過ごした。どちらにしろラブライブが終わるまでは告白するつもりは無い。決勝まで行ければ、三月までは時間がある。それに、廃校を阻止するから、どっちにしろそれくらい先の話だと思う。

そうして時間は流れ、私たちは予備予選、地区予選と突破していった。でも、廃校を止めることはできなかった。あと一歩のところだったのに。

その結果、本当にラブライブの決勝に臨んでいいのかわからなくなったけど、浦女の名前を残すことを目指してまた走り出した。

二人に対する気持ちはあいかわらずで、前よりも大きく膨れ上がっていた。

決勝が終わったら、この気持ちをはっきりさせよう。きっと輝きが見つかれば、私の本当の気持ちもわかる気がしたから。

 

でも、私は優柔不断にしていたらいけなかったんだと、この気持ちをもっと早くにはっきりさせておけばよかったのだと後悔した。

 

「梨子ちゃんの事、だぁーい好き!」

「私も曜ちゃんの事大好きだよ!」

 

卒業式・閉校式の日。よーちゃんと梨子ちゃんのその言葉を聞いてしまったことで。




千歌ちゃんの大学選択は勝手な想像です。

さて、やたらと長くなったので前後編にわけています。
後編は明日中には投稿予定です。まだ、書き終わってない・・・。
では、ノシ
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