水の紡ぐ恋物語   作:猫犬

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二人の少女に恋してしまった千歌ちゃんの物語の後編です。
アニメの内容も多々あります。



トライアングルラブ 後編 【ようちかりこ】

決意して迎えた決勝。私たちAqoursはラブライブで優勝して、浦の星の名前を残すことができた。今までで一番のパフォーマンスができたと思う。でも、私の探していた輝きは見つからなかった。

 

ラブライブが終わったけど、私の気持ちははっきりと固まっていない。二人の事が好きなのだと気付いて半年経つのに未だに曖昧なまま、果南ちゃんたち三年生が卒業する日。そして、浦の星女学院が閉校になる閉校式の日を迎えた。

いつも通りに登校して、卒業式、閉校式は特になんのアクシデントもなく終わった。

みんなそれぞれ浦女での思い出の場所に行く中、私は手洗いに行ってから二人がいる音楽室に向かって歩いていた。風に乗ってピアノの音色が響いていて、やっぱり梨子ちゃんの弾くピアノの音色が好きだなぁと実感する。

そして、音楽室前にたどり着くと、演奏は終わっていて二人は窓際に立っていた。いざ中に入ろうとドアに手をかけ、

 

「梨子ちゃんの事、だぁーい好き!」

「私も曜ちゃんの事大好きだよ!」

 

二人のそんな言葉が聞こえてきた。だから、私はそこで手が止まる。

え?二人ともお互いの事が好き?

あはは。なんだ、そうだよね。こんな特に誇れるもののない私の事を好きな訳ないよね。

それに、お淑やかで綺麗な梨子ちゃんと、いつも明るくてかっこいいよーちゃん。うん、どう考えてもお似合いな二人。私が割り込む余地なんて全くない。

二人が付きあえば、私の恋は叶わない。

でも、二人の言葉を聞いても、二人への気持ちは全く変わらない。まぁ、どうにもならないけど。

きっと、二人を同時に好きになってしまった私への罰だよね?諦めよう。私じゃ、二人には敵わない。私が諦めれば、三人の間でぎくしゃくすることは無い。付き合った二人を私が祝福してあげないと!

あっ、それとも私はもう二人に近づかない方がいいのかな?二人だけの時間が欲しいだろうし、私はあまり近づかないようにしないと邪魔になっちゃうよね?

だから、私は自分の気持ちに嘘をついて、音楽室に入るのをやめてこの場を去る。こんな状態で二人と会えばどうなっちゃうかわからないから。

 

「千歌?」

「果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃん……」

「千歌っち、暗い顔してるけどどうかしたの?」

「ん?あはは。浦女とお別れだと思うとね」

 

廊下を歩いていたら三人と遭遇した。鞠莉ちゃんの手には賞状があるから、二人は無事に渡せたみたい。

やっぱり、私の表情は暗くなってるみたいで、三人は心配そうに私を見る。でも、本当の事なんて言えないから、嘘をつく。一度自分の気持ちに嘘をついちゃったから、もう嘘をつくのにも抵抗ないや。

 

「そうですわね」

「もう少し見て回りたいから行くね」

「ん、わかった」

 

今は一人になりたい気分だから、三人にそう言うと私は三人と別れて屋上に向かう。

今の時間なら、屋上には誰もいないはずだから行くと、予想通りそこには誰もいなかった。

 

「うぅ」

 

塀の前で浦女全体を見渡し、屋上で一人になると、我慢していた涙が零れる。

浦女が閉校になるのは辛い。

卒業して遠くに行っちゃう果南ちゃんたちとの別れが辛い。

よーちゃんと梨子ちゃんへの気持ちが叶わないとわかって辛い。

どうして、今日一日に辛い事が連続しちゃうんだろ?別々の日にならまだ耐えられたかもしれないけど、こんなの我慢するのは無理だよ。

 

「よーちゃん、梨子ちゃん」

 

浦女で過ごした日々。九人で過ごした日々。よーちゃんと梨子ちゃんの三人で過ごした日々。目を瞑ればそんな日々が巡る。

今頃、きっと二人は互いの告白の返事をして付き合うことになったんだろうなぁ。あっ、そもそも音楽室で待っててって言っちゃったから、待ってるのかな?だったら、もう少し待っててほしいなぁ。

せめて、この涙が乾くまでは。

 

「何処で間違えちゃったんだろ?」

「さぁ?どうなんだろうね?」

「ん?果南ちゃん?」

 

一人呟くと、私の言葉に返事が返ってきた。声だけで果南ちゃんだと分かる。果南ちゃんは近づいて来るのか足音が響く。でも、足音が一つだから、果南ちゃん一人だけのようだった。

どうして果南ちゃんがここに?

目元を拭って、果南ちゃんの方に身体を向ける。

 

「どうかしたの?果南ちゃん?」

 

無理矢理笑顔を作って果南ちゃんに聞く。果南ちゃんに心配をかけたくない。だから、あの時みたいに私は私の気持ちを偽って何事も無いように振る舞う。

でも、果南ちゃんは私を見て「はぁー」とため息をついた。

 

「泣いてたの見えてたし、目元赤いし、色々手遅れ。気になったから追いかけてきたんだよ」

「あはは」

「で、どうしたの?」

「さっきも言ったけど、浦女とお別れするのが寂しくって。なんか色々思い出しちゃってね」

 

私の本当の気持ちなんて、口にしなければ私以外は知れない。だからこそ、嘘をついてやり過ごす。ううん、浦女が無くなるのも寂しいから完全に嘘って訳でもないか。

 

「そっか。で、それ以外にも何かあったでしょ?」

「ふぇ?なんのこと?」

「誤魔化さないの。何年の付き合いだと思ってるの?千歌が何か隠してるのなんて私には見破れるよ」

「隠してなんて……」

「曜と何かあった?それとも梨子ちゃん?」

 

果南ちゃんは首を傾げながらも言ったその言葉は合っていた。たぶん勘で言ったと思うけど、まさか当たるなんて。

 

「二人は関係ないよ?」

 

まぁ、当たったところで本当の事は話さないけど。こんなの話したって困らせちゃうだけだよ。

 

「なるほど、二人が関係してるのか」

「なんで?関係ないって言ったよ?」

「ん?だって、嘘ついてるでしょ?だいたい、千歌が二人に何か思ってることがあるのは前から分かってたし。千歌が相談してこないってことは踏み込んでほしくないと思ったから聞かないでいただけだよ」

「だったら、このまま放っておいてよ……」

「うーん、それは無理かな?もうすぐ千歌達と長期間会えなくなるし、高校生最後のお節介ってことで」

「勝手すぎるよ……」

「知ってる。でも、私が千歌の性格を知ってるように、千歌だって私の性格わかってるでしょ?」

 

果南ちゃんは悪びれた様子はない。果南ちゃんらしいけど、相談するのには抵抗がある。

そもそも、二人の事が同時に好きなんてしたら、普通引かれるに決まってる。

 

「ほらほら、早く言ってよ。それとも、私じゃ役不足?」

「そんなこと無いけど……」

「だったら、聞かせて?ここに居るのは私だけ。それに、どんな重いのが来たってちゃんと聞くし、内容がどうあれちゃんと受け止めるからさ」

 

これ以上、隠そうとしても果南ちゃんも引かずに聞き続け、ずっとこのままな気がした。

 

「ほんとに引かない?」

「引かないよ。てか、そんな内容なの?」

 

確認の意味を込めて聞くと、果南ちゃんはその言葉で困った顔をした。でも、大丈夫。果南ちゃんならちゃんと聞いてくれる気がした。

 

「チカね。よーちゃんと梨子ちゃんの事を好きになっちゃったの」

「好きって言うのは……」

「恋の方の意味だよ。二人の事が同じくらい好き。気づいたのは夏で――」

 

それから、一通り話した。

合宿を終えた後に梨子ちゃんの事が好きだと気づいたこと。

夏にやった予備予選が終わった後によーちゃんの事が好きだと気づいたこと。

でも、二股なんてやっちゃいけないからどちらか一人に決めようと思ったこと。

それなのに、気持ちは変わらず、どんどん膨れ上がっていたこと。

未だにどちらかを選べないこと。

 

「って、感じで」

「なるほどね」

「果南ちゃんはどう思う?やっぱり引く?」

「ううん。私だって鞠莉とダイヤの事は大好きだよ。私の二人に対するそれよりも、千歌は曜と梨子ちゃんの事が大好きなだけ」

「そうなのかな?」

 

果南ちゃんはチカの話を静かに聞いてくれて、そう言ってくれた。普通の大好きよりも、私が二人の事が大好きなだけ、か。果南ちゃんは引いたりしなかったけど、それは私の事を知っているからで、知らない人からすれば引かれると思う。

 

「告白はしないの?気持ちを胸の内に抑え込み続けるのは辛いよ?」

「無理だよ」

「二人ならきっと、ちゃんと聞いてくれると思うよ?」

「二人に同時に告白するのはやっぱりダメだよ……どちらか一人にしか告白しちゃダメだよ。」

「ありゃ。でも、一人に絞れないんでしょ?それと曜か梨子ちゃんか片方を選ばなくてもいいんじゃない?あの時だって、二つのどちらかを選ばなくちゃいけなくて、でもどちらも大事だったから両方選んだ」

 

果南ちゃんが説明会と予備予選が被ったあの日のことを言っているのはすぐわかった。たしかに、あの時は両方選んだ。どうにかできる道があったからどうにかなった。でも、それとこれとは話が別。二人に同時に告白なんてしちゃダメだよ。

それに、

 

「そもそも、告白なんてできないよ……さっきね。見ちゃったの」

 

ついさっき二人が告白しているところを見てしまったこと。

だから、もうこの気持ちを無かったことにしようと思ったこと。

それを話すと果南ちゃんは困った顔をする。

二人が告白してたんだから、もう手遅れだよ。

 

「二人の告白現場に遭遇ねー」

「だから、告白なんてできないよ」

「本当にそれでいいの?」

「うん」

 

両想いの二人に告白なんてするべきじゃない。私が我慢することで丸く収まるのなら私はそうするだけ。それが一番に決まってる。

「ありがとう、果南ちゃん。話したらだいぶ気が楽になったよ」

 

悩みを口にしたおかげか気持ちがだいぶ軽くなった気がする。そう考えると、果南ちゃんに話したのは正解だったのかな?

でも、果南ちゃんは納得がいかないのか何か考えている。

 

「そもそも、本当に二人が告白し合ってたのかって言うのも疑問だけど?」

「でも、見たもん」

「ただ単に友達として大好きって言い合ってただけって可能性もあるでしょ?」

「……確かに」

 

今更ながらその可能性もあった。二人の前後の会話を聞いていないから、そもそもどういう流れで大好きって言い合ってたのかもわからない。もし果南ちゃんの言う通りだったら……。

 

「じゃぁ、二人の告白が千歌の勘違いだったら告白する?」

「ううん。こんな状態じゃ二人に悪いよ」

 

仮に勘違いだったとしても、告白なんてしちゃダメだよ。よーちゃんと梨子ちゃんに迷惑だと思われちゃうよ。

 

「ダイスキだったらダイジョウブなんじゃないの?」

「いや、大丈夫じゃないよ」

「未熟DREAMERってことで」

「いや、ダメでしょ。夢は夢だよ」

「想いよひとつになれってことで」

「一つなわけないよ!というか、さっきからなんで私たちの曲使うの!」

「いや、ノリ?とにかく、ぶつかりなよ。私はそうすべきだと思う。だいたい千歌は思った通りに動いた方がらしいよ」

「私らしいって……」

 

私らしいってなんだろ?まっすぐぶつかる?でも、それじゃダメだと思う。

 

「人のことを考えちゃって自分の事は後回しにしちゃう。人の機微には鋭いのに、自分の事は鈍感」

「貶してるの?」

「ううん。千歌は自分の事よりも誰かの事を優先しちゃうってこと。いい事ではあるけど、たまには自分の事を優先していいんだよ?」

「でも、それだと迷惑をかけちゃう……」

「いいんだよ。友達なら迷惑をかけたって。二人だって、千歌が悩みを溜め込むことを望んだりしないよ?千歌だってみんなが悩みを溜め込むことを望まないでしょ?」

 

みんなが悩みを抱えて、それをため込んでいたら助けたいって思う。

でも、いいのかな?本当に私の事を優先しても。そんなの、ただのわがままでしかないのに。

 

「うん、そうだけど……でも本当にいいのかな?」

「いいんだよ。私はそう思うから。千歌はどうなの?本当にこのままでいいの?告白しないで胸の内に秘め続けて後悔しない?」

「それは……」

「千歌が後悔しない道を選びな?」

 

私が後悔しない道。

梨子ちゃんはピアノが好きで、その想いを聞いたから本当に好きなんだと知った。そして、そんな大好きな気持ちがあるからこそ、梨子ちゃんの弾くピアノが好きで、演奏している梨子ちゃんがキラキラして見えた。

よーちゃんは運動が大好きで、その中でも高飛び込みはすごかった。高飛び込みをしているよーちゃんはカッコよくて、大好きなことをしているよーちゃんはキラキラして見えた。

二人ともチカには無いモノを持っていて、そんな二人に憧れた。そして、恋い焦がれた。二人のことを考えれば胸が高鳴り、ドキドキする。

できれば告白したい。こんな気持ちを持ち続けるのは辛い。

 

「気持ちを、伝えたいよ……でも……」

 

伝えたい気持ちがあるけど、やっぱり怖い。

告白したら今の関係が壊れてしまう。二人に嫌われたくない。

想いを伝えたい気持ちと、伝えたくない気持ち。もうどうしたらいいのかわからなくなって、また涙が零れる。

 

「千歌……」

 

そんな私を果南ちゃんは優しくハグしてくれた。果南ちゃんに抱きしめられたことで、なんだか気持ちが落ち着く。気持ちが安らぐ。

 

「その涙が答えだよ。本当に好きで、二人のことを想っているから涙が出る。そんなに好きなら、やっぱり千歌の気持ちを伝えるべきだよ」

「いいのかな?」

「いいんだよ。それに、二人は千歌の気持ちを聞いたって嫌ったりしない。確かに少し困らせちゃうかもしれない。ぎくしゃくしちゃうかもしれない」

「うん」

「でも、すぐにまた今の仲良し三人に戻れるに決まってる」

 

果南ちゃんの言う通り、告白したら困らせちゃうだろうけど、二人とも優しいから時間が経てば元の仲の良い関係に戻れると信じたい。二人を疑うなんてことしたくない。

疑って後悔するくらいなら、二人に正面からぶつかりたい。

 

「もし、関係が崩れたのならちゃんとフォローしてあげるから」

「うん!ありがと」

 

二人に告白する。もう、どうなろうが関係ない。二人にまっすぐぶつかるだけ。

 

「ん?さて、じゃぁ、早速きっかけあげるよ」

「ふぇ?」

「曜、梨子ちゃん、さっき音楽室で告白してたの?」

「告白?」

 

果南ちゃんが何か言ったと思ったら、いきなり二人の名前を呼んでそんなことを聞いた。どうして急に?って思ったら、梨子ちゃんの声が聞こえた。

果南ちゃんのハグが解かれて入り口の方を見れば、そこには二人が立っていた。

嘘!もしかして二人に聞かれた?

 

「告白なんて……あっ、もしかしてさっきのかな?でも、どうして果南ちゃんが?」

「千歌が聞いちゃって、気にしてたからね」

「あはは」

「あー、そういうこと」

「だから、千歌ちゃん来なかったんだ」

 

二人に聞かれた様子は無かった。それに、見た感じあれは告白って訳じゃなかったみたい。じゃぁ、安心かな?

 

「そっか。じゃぁ、私は戻ろうかな?千歌頑張って」

 

後半を私の耳元で言うと、果南ちゃんは屋上をあとにして、屋上には私たち三人だけになる。

果南ちゃんに相談して、疑問を聞いてくれて、応援してくれた。ここまでされたら、もう引き下がるわけにはいかない。

よーちゃんみたいに言えば全速前進だね!

 

「よーちゃん、梨子ちゃん。大事な話があるの」

「ん?大事な話?」

「なに?」

 

心臓がバクバク言っている。どうなるのかわからないからやっぱり怖い。でも、もう告白するって決めたんだから!

 

「よーちゃん、梨子ちゃん。私は二人に恋してる。こんなのおかしいって、普通じゃないってわかってる。でも、それでもこの気持ちは嘘じゃないって気付いた。だから、私は二人の事が大好き!できれば二人と付き合いたいって思ってる!」

「「え?」」

「ごめんね。いきなりこんなこと言われたら困っちゃうよね?でも、この気持ちを抱えたままいるのが辛いから、気持ちを伝えたの。それくらい二人の事が大好きって伝えたかった。あはは。気持ちを伝えたら、なんだか安心しちゃったや」

 

二人に気持ちを伝えることができた。わかっていたことだけど、二人はいきなりの事で驚いていた。私が二人の立場だったら、たぶん驚いていたと思う。

二人は驚いた表情のまま固まっていて、少し沈黙が流れる。

そして、二人は口を開き、言葉を紡ぐ。

 

「千歌ちゃんが勇気を持って伝えてくれたんだよね?だったら、ちゃんと返事をするね。――」

 

「そっか。ありがとう、千歌ちゃん。思っていたことを言葉にしてくれて。――」

 

 

~☆~

 

 

コンッコンッ。コトコト。

「ん~」

 

何処からか聞こえる、包丁で切る音と鍋で煮る音。その音で目を覚ますとすでに日は暮れ始めていて、部屋はミカン色に染まっていた。

あの頃の夢を見るのは久しぶり。まだあの日から一年と半年しか経っていないんだけど。

部屋に置いている時計を見ると、時刻は午後六時。

 

「……あっ、寝過ごした!」

 

夕飯の準備をすでに始めていないといけない時間。まぁ、私一人だから遅くなっても問題ないけど、できればあまり時間は変えたくないという訳で、慌てて部屋を出る。

リビングに行くとそこには、

 

「あっ、千歌ちゃん。ただいま!よく寝てたね」

「よーちゃん?」

 

よーちゃんがいた。ここにいるはずがないのに。

 

「どうしてよーちゃんが?」

「ん?ああ、遠征自体は今日終わりで、明日は練習が無いから一日観光してから帰る予定だったんだけど……」

「うん、そう聞いてたけど……」

「我慢の限界で戻ってきちゃったであります!」

 

よーちゃんは苦笑いを浮かべてそう言った。

 

「よーちゃん!」

「わっ、千歌ちゃん!」

 

私はよーちゃんに抱きつこうと近づき、よーちゃんはそんな私を見て慌てて手に持っていた包丁を置いて私を抱きしめる。

よーちゃんは航海士の勉強を大学でしていて、その傍ら高飛び込みのサークルに入っている。ここ一週間は高飛び込みの遠征で家を空けていた。こんなにも長くよーちゃんと離れていたのは初めてだった。何時も一緒なのによーちゃんが遠征に行ってすぐに寂しくなっていた。

だからこそ、よーちゃんを久しぶりに見て感極まって抱きついちゃった。

 

ガチャ

「ただいま」

 

すると、玄関のドアの開く音がしてリビングに梨子ちゃんが現れた。

え?どうして梨子ちゃんが?今日はまだ帰って来れないはずじゃ?

 

「え?あっ、おかえり」

「梨子ちゃん、おかえり」

「あー、なんで二人抱き合ってるの!」

 

困惑しながらも挨拶をかえすと、早々に梨子ちゃんは私と曜ちゃんを見て起こった表情をする。感極まってよーちゃんに抱きついているのが今の私たちの状態。梨子ちゃんは手に持っていた鞄と、引いていたキャリーバッグを置いて、私たちに近づいて来る。

梨子ちゃんは私たち二人まとめて抱きしめる。

梨子ちゃんは今音大に通っている。ピアノのコンクールは度々あったけど、大体東京でやってたから、夜には帰って来て家を空けることは無かった。でも、この一週間は海外のコンクールで海外に行っていて、家にいなかった。

だからこそ、私は二人ともいないこの一週間が辛かった。

 

「二人に早く会いたくて、終わり次第さっさか戻ってきちゃった」

「あはは、私と同じだね」

「よーちゃーん、梨子ちゃーん」

「「わっ!」」

 

二人とも私と同じ気持ちだったらしくて、私はうれしさが込み上げる。

私たち三人はそれぞれ東京の大学に進学し、今は三人一緒にシェアハウスに住んでいる。

 

あの日。二人に告白した後、二人から告げられた。

 

『私は千歌ちゃんと曜ちゃんの事が好き。二人に恋しているんだって。でも、言うのが怖かった。こんなこと知られたら嫌われちゃうって思ってたの』

『私もね、千歌ちゃんと梨子ちゃんが好き。千歌ちゃんが言葉にしてくれたから私も言う勇気を貰えた。だから、ありがとう。千歌ちゃん!私と、ううん――』

『『私たちと付き合ってください!』』

『うぅ……こちらこそ、こんなチカだけど付き合ってください!』

 

二人も私と同じように二人同時に好きになっていたらしい。そして、私と同じように、本当の事を伝えるのが怖かった。でも、私が告白したことでその心配が無くなって、二人の気持ちを知ることができた。

それから私たち三人は付き合いだした。といっても、今までと変わったことはほとんどないんだけど。

 

私たちのこの関係を知っているのはそれぞれの家族とAqoursのみんなだけ。他の人からすれば仲の良い三人組にしか映っていないはず。

世間一般からすれば、きっと私たちの関係はおかしな関係だと言うと思う。みんなはそんな私たちのことをおかしいだとか思わず、普通に接してくれている。

私は今のこの関係を幸せだと感じている。

大好きな二人と一緒なんだから!

私は今ある幸せが逃げないように二人を力いっぱい抱きしめる。

 

「大好きだよ!よーちゃん!梨子ちゃん!」

「「うん!」」




不穏な感じで始まったトライアングルラブ。というか、千歌ちゃんが寝落ちるまでだと、二人の身に何かしらあったようにしか見えない・・・。
まぁ、ハッピーエンドが一番好きだからこうなっちゃうんですけども。
では、ノシ
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