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ボス戦当日の迷宮区。多くのレイドがボス部屋への道を迷いなく進む中、キリト、M、ヒースクリフ、ゼロ、バダン、シノンの6名も何ら変わりなく向かっていた。Mだけは他のレイド中に交じり、ゲーム病の予兆を確認している。
そうしてMがディアベルの所に来た所で、Mの表情が少し変わった。ここまで来ているのだが、ディアベルの様子がおかしい事に気付いた。
「ディアベルさん、疲れてませんか?」
「君は……Mだね。いや、僕は平気だ。安心してくれ」
「そうですか……けど、何かあったら無理しないで下さい。色々と手遅れになる前に」
「わかった、頭に留めておくよ」
そんな会話を終えてMは仲間の居るレイドに戻り、ボス部屋まで向かう。先程のMの行為に関しては医療行為の一環として考えれば済む話しなので、別に気にしてはいなかった。
道中の敵を倒していく内に、漸くボス部屋の前まで到着した。そこで全てのレイドが歩みを止めると、ディアベルはボス部屋の扉前の位置で後ろを振り返り全員を見る。そして1つ深呼吸をして全員に向けて言い放つ。
「漸くここまで来れた……ここまで来た皆に、俺が言いたい事はただ1つだけだ。
約6名を除き雄叫びが迷宮区内に響き渡る。その声を聞いた後、ディアベルは運命の扉を開いた。目の前には仁王立ちし獰猛な目でレイド全てを見つめていた。
「攻撃開始!」
『おぉー!』
今ここに、運命の幕開けとも言える戦いが始まろうとしていた。
「いんやにしてもっ……!ディアベルの奴っふ!乗ってきたんじゃねぇか?」
「そう出ないと困るのだがなっ」
「ちょっとそこ2人、喋ってる暇があるなら取り巻き倒す」
「へいへいっと」
「いつ見てもスゲェ連携だな、バダンとゼロは」
「僕とパラドみたいな感じだね。喧嘩はするけど」
「あれは異常過ぎるだけだと思うが……」
とか何とか言いつつも目の前に来る【ルイン・コボルド・センチネル】を倒しつつ、ボスへの攻撃をローテしながら役割を全うしているこの6名。バダンはそこかしこに目が付いているかの様に両手剣を振るい、時にゼロの足場として利用させながらサポートを行っている。
ゼロはバダンとの付き合いが1番長いので、思考を読んで取り巻きやボス関係なく攻撃している。引き合いを見極める事が出来る
そんなゼロの無茶を監視するが如く同時に攻撃を仕掛けているシノン。元来のVRの才があるキリトは、ゼロやバダンとのアイコンタクトを行い攻撃対象を変えていたりする。
ヒースクリフとMは慣れていないペアとはいえ、製作者と天才ゲーマーのペアだ。本来ならば新鮮な気持ちでSAOを楽しみたかったヒースクリフは、自分の作ったキャラに八つ当たりとも捉えられる一撃を与える。Mは周りが見えていないヒースクリフのフォローを担当している。
順調であった。そんな中、キリトはMに対して質問を投げかけた。
「先生、仮面ライダーの変身は?」
「あぁ、あれね。あれはバグスターと対面した時に使うって決めてるよ。だって……」
━━━ネットゲーマーの嫉妬深さは異常だ。あまりライダーの力を公に出してしまえば、ライドプレイヤーの二の舞になりかねん。……おのれ壇政宗ェ!VRXまでも使えないだとぉ!?何処までこの私を侮辱すれば気が済むのだァ!?
「…………まぁ流石に無いだろうけど、ライダーシステムを勝手に使われたら不味いからね。今のところ僕らにしか使えないし」
「確かに……でもこんな非常時だと」
「そんな非常時だからこそだ、キリト君」
そう言ったのはヒースクリフ。キリトとMは二人してヒースクリフに視線を向けた。
「ここは今や“もう1つの現実”だ。生き残ろうとするあまり、強大な力に手を出し自滅するオチが見えている。それを防ぐ為でもあるからな。そして今はボスを躍起になって倒そうとする者とて居る……もしそんなプレイヤーに渡ってしまえば、とてつもなく面倒だ」
「……そう、だよな。分かった、デウス先生にその事は?」
「既に知ってるよ。協力者がイライラしながら言ってくれたからね」
その協力者がイライラしている理由を聞かなかったキリトは、まだ純粋な状態だと思いたい。
そんな話しが終わると同時に、ボスが咆哮する。見ればゲージが残り1本の赤色の状態となっている。
「来るぞ!全員下がれ!俺が先行する!」
「「ッ!?」」
ディアベルのその言葉に嫌な予感を覚えたヒースクリフとバダンが、コボルドロードにSSの光を纏わせた剣を持って接近しようとしている所に、バダンとヒースクリフが血相を変えて走り出す。
「ヒースクリフ!?」「バダンおい!?」
突如、ディアベルの体が前に倒れた。なぜ唐突に前に倒れたのかはM以外誰も知りえないが、それよりもコボルドロードだ。やはり情報通り刀武器の【ノダチ】に切り替えて、動けなくなっているディアベルに向けて赤い光を纏わせながら前身する。
しかしディアベルとコボルドロードの間に割り込んだ2人のSSによって、コボルドロードは体勢を崩した。その2人とは、バダンとヒースクリフであった。
「ッ、重い……!」
「ヒースクリフ、分かるよな?」
「……あぁ、勿論だとも」
「ゼロ!シノン!」
「っあぁたく!しゃあねぇ!」
「同感よっ!」
武器や防具の重量を考えて、速度的に速い2人にSSを発動させた。名はそれぞれ、【ラピッドバイト】【ラウンドアクセル】と呼ばれている。先にラピッドバイトを放ったゼロがコボルドロードのアキレス腱を切り裂き、追撃として逆のアキレス腱を切るシノン。
一応それで少しは時間が稼げた。だがディアベルの様子がおかしい、Mはディアベルを支えて後方に下げながら容態を確認する。結果はやはり……
「ゲーム病……やっぱり…………!」
「は、ははっ……ゲーム病か…………お似合いかもな」
「っ!…………今すぐ助けを呼びますから!少しの間安静に!」
〔その必要はなぁい〕
Mがデウスにメッセージを送ろうとした途端、このボス部屋から忌むべき声が聞こえた。それと同時にコボルドロードの動きも止まるのだが、好機と見たプレイヤーが攻撃するもダメージは一切入っていない。
「壇政宗……!」
〔今、その彼の体内で増殖したウィルスを消されるのは勘弁したい。それに……これで私の作る
そう言い終えた直後、ディアベルの体内からバグスターウィルスが全て分離される。体を離れていったバグスターウィルスは、コボルドロードの方に向かって移動し……遂に辿り着いた。
〔諸君、私のゲームの醍醐味だ。とくと楽しみたまえ〕
嫌な予想は、当たっていた。コボルドロードのデータにバグスターウィルスが侵入し侵蝕していく。そしてバグスターウィルスが全て消えると、コボルドロードが咆哮を挙げる。
確認すると、コボルドロードのHPバーが徐々に回復の一途を辿っている。つまり、このボスを殺させない為の鬼畜仕様。
「誰かデウスにメッセを飛ばせ!ここは
そう言い終えたMはディアベルを他のプレイヤーに見てもらうと、真剣な表情でゲーマドライバーとダブルガシャットを取り出す。ゲーマドライバーを腰に装着させると、ガシャットを起動させた。
【マイティブラザーズXX!】
「変身ッ!」
【ダブルガッシャット!】
【ガッチャーン!レベルアーップ!】
【マイティブラザーズ!2人で1人!マイティブラザーズ!2人でビクトリー!X!】
ガシャットを差し込みレバーを開くと、パネルを選択。マイティブラザーズレベル
しかしコボルドロードは的確にMの攻撃に合わせてSSを叩き込ませる。発動したSSは先程ディアベルを襲おうとした【浮船】。
「ッ、不味いっ!」
「「させるかっ!」」
キリトとヒースクリフが先回りしていたのか、SSの光を纏わせてSSを相殺させる。そこで体勢の崩れたコボルドロードは、運良くキックを逃れた。後ろに位置したMがすぐにキリトとヒースクリフを避難させると、2人に怒鳴る。
「おい2人とも!何で無茶な真似をした!?」
「危なかったのは、君の方なんだがね。寧ろ感謝してほしいよ」
「そういうことじゃ!」
「Mさん後ろ!」
「あぁもう!説教は後でな!」
【ガシャコン・キースラッシャー!】
【ズ・キュ・キュ・キューン】
武器選択画面からガシャコン・キースラッシャーを装備したMは銃撃モードに移行させると、コボルドロードに連射する。その間に避難した2人は、傍観者の立場になろうとは思わなかった。
コボルドロードのノダチがSSもなく振り下ろされるが難なくジャンプして避けたMは連射。着地と同時に剣モードに移行させて対応を変える。
【ジャジャ・ジャ・キーン!】
「ぉぉおおお!」
コボルドロードの身長に届く跳躍力と、体型に見合わない素早さで撹乱しながらダメージを確実に与えていくMであったが、生憎とこのボスは既に鬼畜仕様のHP回復を得ている。しかも攻撃した分のHPが回復しているので、キリが無い。
「くそっ!これじゃジリ貧になる!」
『さっき見た時、エナジーアイテムも無かった!多分ここだけ壇政宗が操ってる可能性がある!』
「これじゃ本物の糞ゲーじゃねぇか!」
そう愚痴っていると、攻撃を受けながらもSSを発動しようとしているコボルドロードを見て直感で危険と捉える。だがその時は既に突撃中、コボルドロードの放つ【旋車】に当たり吹き飛ばされて変身が解除された。
【ガッシューン】
「があっ!」
「先生!」「M君!」
「くっそ……!バグスターウィルスの影響なのか……!?」
「チィっ!Mを守るぞ!」
「言われなくても!」「やらなきゃ駄目だろ!」
「あぁったくよォ!」「俺達も加勢する!」
「っ!駄目だ来るな!ボスの力は、とっくに!」
そう言ってはいるが、やって来るシノン、ゼロ、バダン、外国の
だがそうはしなかった。結局このプレイヤー達も、本質は単なるお人好しなのだろう。
【浮船】で邪魔者を蹴散らそうと、試みるコボルドロード。無慈悲にも赤い光がノダチに纏われ、M目掛けて突進を仕掛ける。
「やめろぉぉぉおおお!」
「ぉおおりゃア!」
この世界では聞き慣れない音と、聞きなれた声の来訪がコボルドロードの顔面を吹き飛ばし倒れさせた。それはMの隣に着地すると、息を吐く。そのあとMにポーションを渡し、逆の手を差し伸べる。
「お待たせしました、Mさん!」
「デウス……!」
「どうやら緊急事態みたいですが……Mさん、まだやれますか?」
「…………あぁ、まだやれる」
「なら良かった。じゃあ……行きましょうか」
バイクに跨ったデウスの手を掴み立ち上がったMは、再度ゲーマドライバーを装着し、今度はピンク色のガシャットを起動させる。
【マイティアクションX!】
デウスはバイクから降りてゲーマドライバーを装着したあと、愛用の白いダブルガシャットを取り出して起動させる。
【ドクターマイティXX!】
そうして彼らは、医療チームを結成する。
「Mさん!」「わかってる!」