誰にも知られていない場所に居る1人のフードを被ったプレイヤーがモンスターを狩っている。ただその場に居る
「あーやばっ!こっち手伝ってー!」
「あぁもう!ちょっと待って!」
被られていたフードが反対側に居るプレイヤーの元へと向かう際に反動などで落ち、そのプレイヤーの顔が顕になる。黒のショートヘアーに、まだ幼い顔立ちにも関わらずその瞳は真剣そのもの。
彼女のこの世界での名前は『ユウキ』。ユウキはステータス内で1番高いAGIを駆使して素早く
「わわっ!」
現時点で共闘しているプレイヤーが慌てて避ける。薄紫の髪色と真紅の瞳が目立ち、何処がとは言わないがユウキよりも主張している部分があるプレイヤー、『ストレア』。
大型ボアはポリゴンへと変貌し、リザルト画面が2人の前に現れる。1つ息をついたユウキはチラとストレアの方を見て、小さく舌打ちをしたあと剣を収めてスタスタと歩き始める。
「あー、待ってよー!」
「……はぁ、あの脂肪もぎたい」
「ゑっ!?」
「あ、聞こえてたんだ。じゃあどっか行って、今度はそれ切り落とすよ」
「や、やめて!色んな意味で洒落にならないから!」
ユウキには無いものを両腕で隠して少し泣き顔になりつつあるストレア。また舌打ちして足早にストレアから距離を取ろうと歩き始めたユウキであったが、後ろから足音が聞こえた途端ゆっくりと振り向いてフードを被ったあと威圧的な眼差しを見せる。
「どっか行ってって……言ったよね?ボク。聞こえてなかった?」
「ううん、聞こえてたよ」
「じゃあ付いて来ないで。邪魔になるから」
「えー!でも2人だったら生き残りやすいでしょー?」
「足でまといは要らないよ。さっきボア系に苦戦してて、それを助けたのは誰だったっけ?」
「むぅ…………それを言われちゃお終いなんだよねー」
どこ吹く風と謂わんばかりに飄々とした態度で、ユウキの威圧的な態度ものらりくらりとしつつ事実は肯定するストレア。一応両手剣使いなのだが、STR的にも装備的にもユウキの持つ【ディープ・ヴァイオレット】と比べても若干威力は上なのだ。
だが正直微妙といった所であった。戦い方に粗がある、とでも言えば良いのだろうか。両手剣を振るっているというよりも、両手剣に振るわれている。とどのつまり両手剣に支配されているような感じであった。もっと分かり易くすれば、犬の飼い主が犬に引っ張られるといったところか。
そんな両手剣使いはユウキにとっては、かえって邪魔にしかならない。バダンのような技術がないストレアを、パーティーに入れるのは気が引ける。
「だったら早く」
「でも大丈夫!今度は上手く倒しちゃうからさ!」
「…………めんどくさっ」
「あー!いま悪口言ったなー!失礼しちゃうなー!プンプン!」
「…………もう、勝手にして」
ユウキはスタスタと歩き始めた。フードに覆われて顔は見えないけれど、とても面倒そうな表情を浮かべているように見えた。
「ねぇ待ってよー!」
ストレアはユウキを追いかけていく。身長的にも体の発育的にもユウキよりも成長しているけれど、どこか妹っぽい様子が見受けられていた。
20層の森林地帯で、ユウキはストレアと別れて1人モンスター狩りに勤しんでいた。ストレアは主街区で、ユウキから貰ったコルと自分のコルを使って消耗品を買っている最中である。
ユウキが行う狩りの仕方は、完全にステルスプレイに偏っていた。幾らレベル制のMMORPGとはいえども、弱点を狙いさえすれば一撃で終わらせることなぞ容易い。木の上からマンティス系のモンスターの頭を、タイミング合わせて【レイジスパイク】で一撃。
モンスターを見つけては木に登り、誘導させて終わらせる。これがユウキの狩りの1通り。効率的にも横取りの可能性に関しても悪手といえるのだが、本人はこのプレイで素早く静かに終わらせたいという思いがあるらしく、変えることは無かった。
「……ふぅ」
武器を収める。あれからどれぐらい時間が経ったのだろうか、目覚めた力が知らず知らずの内にユウキの記憶を蝕んでいる。ただスキル欄に突然現れた【絶剣】の名前に見合った通り、自分が
「っ…………」
頭が痛む。それと同時にユウキの体から瘴気にも似たものが微量ながら流れ始めていた。苦しむ記憶を必死に忘れようと別のことを考えるのだが、思い出すのは厄介な事に、自分を見て恐怖していた
それを思い出す度に、嫌われたくない。怖がらせたくない。もう誰も殺したくはない……そんな思いだけが募り続けて、終いにはユウキの周囲に瘴気が漂い周りの植物を枯らしていた。
「気持ち悪いなぁ、お前」
「っ!?」
声は聞いたことがあった。ただこの声は耳に入れたくはない、ユウキにとって不吉そのものといえる声。
「お前……!何でここに…………!?」
「暇だったからなぁ……様子見ってところだが、随分とまぁ侵蝕されまくってるなぁ」
プレイヤー相手に剣を抜くのは怖い。また死なせてしまうことだって有り得るし、ストレアが来たらまたあの目で見られてしまう。
「っ…………!っ……!」
「まだ恐怖があるみたいだな…………仕方無い。少しばかり手を加えるか」
現れたプレイヤーは姿を変えた。この世のものとは思えない姿、本性を現した。
「ユーウキー!どこー!?」
ストレアが買い出しから戻ってきたのも束の間、ユウキが居たであろう場所に赴いたのだがユウキは見つかりはしなかった。フレンド登録もしていないので尚のこと探そうとしても見つかる可能性はほぼ有り得ないのが常識だろう。
しかしながらストレアの他にもプレイヤーがユウキを探している。ただし探索側のプレイヤーの顔はやつれており、どこか生気まで無くしかけている様子みたいだが。
「ユウキー!お姉ちゃんだよー!……お願いだから、でてきてよぉ…………!また一緒に……一緒にぃ……」
徐々に声にも覇気が無くなっているユウキの姉のラン。だがこの状況は重症としか言い様が無い。まるで生きている人間を探し出しているゾンビにも似たような歩行、そしてその目には大量の涙が浮かんでいることから、ユウキ無しでは到底普通の生活ができそうにない様だ。
因みに他のメンバーにさえ言わずに出ていったので、実質脱走に近いのだが。しかし見ていて痛々しく、そして可哀想に見えてしまうのが今のランであった。そんなランは鬼気迫る表情でストレアに近付いて両肩を掴み、激しく揺らしながら問う。
「ねぇ貴女!本当にユウキと一緒に居たのよね!?そうなのよね!?だったらユウキとフレンド登録ぐらいしてるわよね!?そうだと言ってお願いだからァ!」
「え…………えっと…………そのぉ………………」
正直ストレアもここまでとは予想外であった。片っ端からユウキのことを聞いて回るプレイヤーにたまたま声を掛けられて、そしてユウキと共に行動していると知れば人の目を気にせず大騒ぎ。
果てにはストレアの首根っこを掴み、そのまま素早く主街区を出て走りながらストレアに質問攻めしていくことまでする始末。ストレアは1つの思考におさまっていた。
━━━━━シスコンが過ぎる、と。
そんな中、パキッと小枝が折れる音が響く。その音のした方向へと視線を向けても、誰も居ない。だが気配探知系スキルを発動させると、誰かが居ることは理解できた。
「……ユウキ、なの?」
「ユウキー、君のお姉さん連れてきたよー。メッチャ疲れたんだけど……」
「あ?」
「ねぇこの2人スキルに【地獄耳】でもあるのー!?」
ストレアのキャラが崩壊しかけている中、木の影に隠れていたプレイヤーが姿を現す。しかしその現れたプレイヤーは、まず人間とは思えない姿をしていた。
黒に近い紫の体色で、顔面であろう部分には彩度の高い赤紫色のバイザーのようなものがある。右手にはユウキが持っている筈の【ディープ・ヴァイオレット】があることをストレアが知る。
「まさか……ユウキ…………VRシステムが……」
「VRシステム……それって…………っ!」
突如【ディープ・ヴァイオレット】を2人に向けて振るうユウキと思わしきライダー。ランとストレアは左右に避けて間一髪回避したものの、ランは突然の行動に驚愕している。
「ユウキ!そんなにお姉ちゃんが嫌いになったの!?」
「いや違う……これは…………!多分暴走してる!敵味方見境なく……!」
ストレアが両手剣を取り出して真上から勢いよく振るう。威力の高さが剣の重さと振るった地点の位置エネルギーが加重されて上昇する。だがユウキと思わしきライダーは両手剣をいなしてストレアに攻撃しようとする。
しかしストレアの後ろから何者かが飛んできてライダーと衝突する。ストレアは何事かと後ろに振り向くと、そこに1人のプレイヤーが居た。
「おい
同じく両手剣……いな、大剣を持ったバダンであった。
活動報告でアンケート実施してまーす。そういえば、つい最近PS4スパイダーマンを買ったんですよね。
ゲームの進行状況100%にしましたけど。