靴が固く軽い音を響かせる。一歩毎に暗がりの向こうから自分と同じ歩幅の音が返ってくる。真夜中のこの空間、得体の知れない何かが物陰に潜みながら自分を狙っているように思えて、背筋が凍る感覚が止まらない。
「・・・」
モノクマ曰く、ここにある物は勝手に持ちだしてはいけないらしい、ただの一ヵ所の棚を除いて。倉庫エリアの深奥部、物々しい鉄の扉に閉ざされたこの“武器庫”だけは、1人につき1つだけ何かを持ち出していいことになっている。ホテルのフロントに放置された鍵を使えば、ここに入ることができる。
ガチャリ、と開いた鍵の音さえ反響して、ここにいる自分の存在を倉庫エリア中に知らしめる。こんな時間帯でもないと、このエリアでこっそりと行動することはできなさそうだ。今後のためにもそのことを頭に叩き込む。
「・・・!」
薄暗い照明の下でも分かるくらいに、そこには武器が溢れていた。骨すら断ち切る洗練された美しい流線形の刃。指先1つで命を奪う無駄のないフォルムの銃。苦痛を与えることだけに特化した鋸。見ただけでその重さを想像できる重厚な鎚。どこもかしこも、ここは“殺意”だらけだ。人が人を殺そうという意思が形を得た物たちが集まっている。それを直感的に理解したとき、モノクマの言葉が脳裏を過ぎった。
「“超高校級の死の商人”・・・」
今もなおこのコロシアイ生活を強いられている12人の中に潜んでいるという、謎の存在。その肩書きからして、真っ当な生き方をしているとは思えない。そしてここに並んでいる“殺意”の数々。その“超高校級の死の商人”によるものなのか。だとすれば、“超高校級の死の商人”は一体、誰に対して、どういう理由で、これほどの“殺意”を生み出しているのだろうか。
「っ!」
思わず、振り返る。その場には誰もいない。いるはずがない。さっき分かったはずだ。この倉庫エリアで誰にも気付かれずに行動するなど不可能だ。よほど隠密行動に優れた者でもなければ。
何もない虚空を睨めつけて、再びエリアの奥を目指す。この武器庫には、この“殺意”以外にも隠されているものがあるはずだ。コロシアイというシステム。学級裁判というシステム。おしおきというシステム。これらを用意しておいて、ただ1人1つだけ武器を与えて殺し合うなどという粗雑な計らいで留まるわけがない。
──『探索したらまた良い物が見つかったりするかもね♫』──
モノクマはそう言っていた。モノクマの言う“良い物”が本当に良い物だった試しはないが、少なくともコロシアイにおいて鍵を握るアイテムになることは間違いなさそうだ。ただの武器で終わるはずがない。このコロシアイ生活において、単に人を傷付ける以上に脅威となること。それが一体なにか、考えれば答えはすぐに出る。その脅威を手にすることができる物が何かも。
武器庫の奥の棚に無造作に置かれた、古くさい木箱。明らかに他に陳列された物とは違う雰囲気を醸し出している。何より違うのは、この木箱からは“殺意”を感じない。武器庫にあってただ1つ、物から“殺意”を感じない。それが意味することは、決してそれが危険物ではないということではない。
「・・・!」
おそらくこの武器庫の中で、最も危険なものだろう。それ自体に誰かを傷付ける力はない。刀のように肌を切り裂くことも、銃のように身体を貫くことも、鎚のように骨の髄まで砕くこともできない。これそのものは“殺意”を纏わない。しかし、これを手に入れた者の心の内には、並んだ武器よりも遥かに色濃い“殺意”を与えるものである。
三回目の動機発表に招集された。最初にここに集まってから、もう5人も減った。理不尽に、悲痛に、不条理に、メチャクチャに、凄惨に、命を奪われた。もう俺たちの中に、コロシアイをしようなんて考えているヤツはいないはずだ。それなのに、だからこそ、モノクマはまた俺たちにコロシアイをさせる口実を与えようとしている。見えている罠に、嵌められに行かざるを得ない。この状況こそが、屈辱的で、絶望的だ。
「そう暗い顔すんなって雷堂!メソメソしてたら美味え飯も美味く食えねえだろ!ポジカルセンチングだよ!」
「ポジティブシンキングか?」
「ああそれだ!」
「それ、私たちの真似?」
「何がだ?」
「ううん、なんでもないよ」
「暗くなるなというのは無理があるが、深刻になればそれこそヤツの思う壺だ。強い意志を持つことだな」
「あうぅ、たまちゃんこわ〜い・・・鉄のお兄ちゃん助けて〜!」
「いや・・・止めてくれ野干玉。俺を頼るな」
相変わらず呑気な下越や野干玉とは対照的に、俺と同じように暗い顔をしてるヤツらの方が多い。当然だ。これから何が起きるか分からないが、1つだけ分かるのは、誰かの殺意を煽るってことだからだ。一度目は俺が見張りに立った。二度目は城之内が夜通しのライブを計画した。そのどちらも、コロシアイを止めるどころか、半ば利用される形でコロシアイを助長してしまった。
俺たちがどうにかしてコロシアイを止めようとすることが、逆にクロにそれを利用されてしまうんなら、何もしないままの方がいいんだろうか。誰かが誰かを、もしかしたら自分を殺そうとしているのをただ見過ごして、淡々と学級裁判で裁き続ければいいんだろうか。そんなわけないなんてこと、頭でしか理解できない。
「雷堂君・・・大丈夫?」
「っ!と、研前・・・」
「怖い顔してたよ?心配なのは分かるけど、雷堂君ばっかりが責任を感じることはないんだよ?辛かったら、私たちを頼っていいんだよ?」
「・・・ああ、ありがとう。大丈夫だ。ちょっと考え事してただけだから」
「ワタルさんはもっと
「美味え飯食べてな!」
「あと温泉もいいよ〜♨マイムね、さっきまでアクティブエリアの温泉行ってきたんだ♫気持ちよかったよ〜♫」
「田園エリアの風も気持ちよかったねえ。人工だけどお、あれはあれで快適なもんさあ」
「ま、待てよみんな。別に俺はそこまで疲れてるわけじゃないんだ。心配してくれなくていい」
自分で気付かないうちに、そんな深刻な表情になってたらしい。次から次へとみんなが俺を労ってくれる。嬉しいけど、今はまだそこまで疲れてるわけじゃない。少なくとも身体は元気だ。問題なのは俺個人の体調より、俺たち全員の連携なんだ。それが崩れた時、またこの中の誰かが犠牲になる。
「ふんっ、下らんな。どんな動機か知らんが、人に煽られたから殺しをするようなやわっこい精神の持ち主では、学級裁判での追及を逃れることはできまい。これからは更に人数が減る。犯人自身も相応のリスクを背負うことになるのだからな」
「逆に考えれば、それを踏まえた上で犯行に及ぶ犯人は相当トリックに自信があることになるが・・・それに次からは殺人対象の選択も1つの要因になるか・・・」
「二人とも止めてよ!そんな物騒な話・・・もうコロシアイなんて起こさないって、そう思いましょうよ!」
「思うだけで変わるのならば苦労はしない。気休めをしていたければすればいい。貴様の命が危うくなるだけだ」
「正地・・・申し訳ないが、二度も起きてしまった以上、再発の可能性を考えないわけにはいかない。無論、予防できることはしておくに越したことはないが・・・私は、現実的な話をしているのだ」
「よせ。無意味に不安を煽ることも、我々の不和に繋がる。いいか、己の心を押し殺さないことだ。抑圧された感情は行動に繋がる。身体が動く前に口を動かせ。多少は冷静になれるだろう」
星砂と荒川はまた不穏なことを言う。星砂は明らかに面白がって言ってるが、荒川は真剣に不安になっているって顔だ。それがあの二人の違いだ。荒川はこの状況に反発している。コロシアイを心から憎んでる。そしてだからこそ、ネガティブなことを言い出す。
「エルリってさー、マッドな雰囲気出してるけど案外普通だよねー♡」
「人を見た目で判断してくれるな!それは本当に怒るぞ!」
「そこまでのことか・・・?」
「見た目で判断されてきたんだねえ。荒川氏」
「皆まで言うな!もう荒川菌だの貧乏神だのは聞きたくないのだ!」
「語るに落ちているな」
まあ、誰にでも触れられたくない過去とか地雷はあるもんだ。悪意に満ちた無邪気な顔をした虚戈を押さえて、正地に荒川を宥めてもらった。それにしても、モノクマはいつになったら出てくるんだ?
「来たようだ」
星砂がぽつりと呟く。僅かな風に靡いてさざ波を立てる池から、ざわざわと水柱が立ち始める。あっという間にそれは水のスクリーンになり、そこに奇天烈な音楽をバックにモノクマの映像が映し出される。そしてスクリーンの裏から映像の自分を破るように、本物のモノクマが飛び出した。
「おでましおめかしおもてなしィ〜〜〜!!とう!ウルトラC!」
「ただの空中前回りじゃん♠しょぼ〜♠」
「うるさいよ!オマエラなんだい!ボクが何かするまでもなく殺伐とした雰囲気だけはあるから、ちょっと刺激を与えてコロシアイをさせてやろうと思ったのに!集めたら集めたでほのぼのじゃれ合いやがって!」
「なにをそんなにおこってるんです?」
「まともに相手しない方がいいよ、スニフ君」
「そんなオマエラを見てたらボカァ馬鹿馬鹿しくなってきたよ。なんでオマエラはこんなにも呑気なんだってね。まともにこの状況に危機感を持ってるのは雷堂クンや荒川サンくらいだよ!何がデートだ見せつけんな!」
「お前が配ったチケットだろうが!」
「ってなわけで、ここいらでボクはオマエラにムチばかりを与えるのは止めにしました。オマエラはそうやってお互いの傷をなめ合っていればいいじゃない。ナメてナメてナメくさればいいじゃない」
「ナメナメナメナメうるさい!結局何がしたいのよ!」
「お互いのゆる〜い部分をさらけ出せばいいだろっての。ゆる〜いゆる〜い、触れれば壊れてしまいそうなくらいやわっこい部分をお互いに打ち明けろって言ってんの」
「
「つまり・・・弱みを見せ合え、ということか?」
「うぷぷぷぷ!話が早いね極サン!もしかしたら極サンの思考回路ってボクと似てるのかな?」
そんなモノクマの冗談に、極はこれまでにないくらいの鋭い目でモノクマを睨み付けた。同じだって言われたことがよっぽど腹が立ったんだろう。悪いヤツじゃないんだけど、こういう時にものすごく怖いヤツだなって感じる。
「そんな熱視線で見つめられちゃ溶けちゃうよぉん♡」
「そうしてふざけていられるのも今のうちだ。いずれ貴様をここに引きずり出してくれる。覚悟をしていろ」
「おーこわこわ!怖くてボクじゃなきゃ失禁しちゃうね!パンツの替えない?」
「漏らしてやがる・・・!!ビビりすぎたんだ・・・!!」
「あのさあ、おれまだやることがあるんだあ。早いとこ弱みを見せ合えってのを説明してもらえるかなあ?」
いちいちオーバーリアクションでしかも脱線するから一向に話が進まない。普段はあまり見かけないし、モノクマって暇なのか?これだけ広大な敷地を管理していながら、俺たちとこんな与太話をする余裕があるなんて。或いは、何も考えてないだけなのか?
「説明も何も、もう動機はオマエラに与えてあるんだよ。お手元のモノモノウォッチをご覧くださ〜い」
俺たちのモノモノウォッチが震えた。モノクマから新しく何かが配信された合図だ。すぐに俺たち全員が、自分のモノモノウォッチを確認する。与えられた動機、それぞれの『弱み』を。俺の『弱み』は・・・。
「うぷぷぷぷ♫見た?確認した?思い出した?今、オマエラが絶対に人に言いたくない『弱み』!知られれば絶望するしかない『弱み』!そんなオマエラの弱点を、これからお互いに打ち明けてもらいまーす!制限時間は24時間!それまでに誰かに『弱み』を打ち明けなければ、強制的にこのモノクマランドから退場してもらいます!もちろん、ちょ〜ぅエクストリィィイイイッムな、ボクなりのやり方でね!」
「要するに、おしおきか・・・」
「ってことはなんだ?今から1日経つまでに、オレが毎晩みんなに内緒で飯作って1人で食べて楽しんでるってことを打ち明けなきゃ、お前に殺されるってことか?」
「・・・あっ」
途端に、モノモノウォッチが鳴り響いた。あまりにバカらしいカミングアウトをした下越のものも、そのうっかり発言を聞いた俺たち全員のものも。一斉にメチャクチャな音量で全く同じ音が重なり合って、頭が痛くなる。
その場にいる全員の中で、下越だけが状況を理解せずにきょろきょろしていた。
「あ?なんだ?なんだなんだ?」
「今、言ったよね?下越君の『弱み』・・・」
「
「『弱み』を打ち明けた人はそのことがモノモノウォッチに記録されまーす!打ち明けられた人も、そのことがモノモノウォッチで分かるようになってます!だからぁ・・・打ち明けたなんてウソ吐いたって、か〜んたんにバレちゃうんだからね?取りあえず下越クンはクリアってことで」
「今のでいいの!?っていうかアンタ!なんでたまちゃんたちに黙ってそんなことしてんのよ!」
「そーだそーだ♠マイムたちにも食べさせろー♠」
「い、いやあの・・・待て待て!なんでオレの『弱み』を知ってんだ・・・!?」
「そんじゃあ、またコロシアイを楽しんでね〜♫」
まだ自分のしたことに気付かないでパニックになる下越と、それに怒る野干玉を放ったらかしにして、モノクマは退散した。このカオスで手のかかる状況を投げ出した。色々と言いたいことや思ったことはあるが、ひとまずここはみんなを落ち着かせるのが先だな。
「み、みんな落ち着け。取りあえず、今から24時間以内に『弱み』を打ち明けないといけないんだ。今の下越みたいに全員に言う必要はないんだろ?」
「だが・・・誰かには言わなくてはならないのだろう」
「どうするつもりだ、雷堂」
「どうもこうも・・・打ち明けるしかないだろ。だけど人に知られたくないんだったら、こっそりと教えればいいだけだ。二人一組になって──」
「ははははっ!!くだらん!!」
案なんて俺にはない。打ち明けないと殺されるっていうなら、打ち明けるしかない。だからせめて、『弱み』がなるべく人に知られないように二人っきりで打ち明け合えばいいと思ったんだ。だけど、それを簡単に否定するヤツが、ここにはいた。
「どんな動機で俺様にコロシアイをさせようと思っているのかと期待していたが、『弱み』だと!?笑いを堪えるのに苦労した!凡俗共ならいざ知らず、この俺様に打ち明けられぬような『弱み』があると思っているのか!?」
「あるからこういう動機になったんじゃあないのかい?そんならあ、星砂氏の『弱み』ってのはなんだったんだい?」
「ない。故に俺様にモノクマのミッションは課されていない」
「そんなむちゃくちゃな話あるか!自分の『弱み』が言えないだけだろ!チキってんじゃねーよ!」
「・・・ッ!ほう、この俺様を
「ッ!!こ、こんなこと人前でおおっぴらに言えるわけないでしょ!バカじゃないの!?」
「待て!そうやってお互いの『弱み』を追及したらモノクマの思う壺だ!」
「いいや違う。勲章、貴様の言うように『弱み』を二人一組で打ち明けさせることこそが、ヤツの思惑だ」
「ど、どういうこと?」
モノクマが一人だけ動機を与えないなんてことがあるわけがない。ましてや、時間制限と脅しを使ってまで与えてきたものを、星砂だけが免除されるなんてあり得ない。もしそれがまかり通るなら、それは星砂が黒幕レベルでこのコロシアイの核心に近いところにいるってことだ。
「『弱み』をなるべく知らせないために二人一組で打ち明けあったらどうなる?このモノクマランドに自分の『弱み』を知る者は自分とその相手だけ。人の口に戸は立てられぬという言葉もある。相手がいつ誰に自分の『弱み』をこぼすとも限らない。貴様なら・・・どうする?」
「どうって・・・!」
「逆に『弱み』を打ち明けられた者は?知りたくもないことを知って、その『弱み』がどう働くかも分からない。自分の命が狙われるとも限らんし、打ち明けられた『弱み』そのものが新たに動機となる可能性もある。打ち明けなければ死ぬのは確実だが、打ち明けても必ずしも死ななくなるとは限らん」
「それだとまるで、知られれば殺すしかないような『弱み』を持っている者がいると分かっているようだが・・・私の考え過ぎか?」
「ふん、考え過ぎなものか。分かっているだろう?ここの凡俗共の中には“超高校級の死の商人”が潜んでいるのだ」
「“超高校級の死の商人”・・・!」
最初の裁判が終わった後に、モノクマが俺たちに告げた謎の“才能”。城之内も相模も“超高校級の死の商人”ではなかった。つまり、今生き残ってるこの中に、“超高校級の死の商人”がいるってことだ。俺は星砂から聞いているが、それ以外の誰もその正体を知らない。そもそも星砂の推理も合っているかどうか分からない。
「では俺様からも1つ、言っておこう。この中に“超高校級の死の商人”がいると言うのなら、その『弱み』は間違いなく、自身が“才能”を偽っていることだろう。即ち・・・」
その場の空気を一瞬で支配し、全員の耳を自分の言葉に傾けさせる。まるで星砂こそが俺たちのリーダーみたいだ。それも、“超高校級の神童”で修得した“才能”の1つなのだろうか。
「今から24時間以内に、“超高校級の死の商人”の正体を知る者が現れる。それが誰か、そして果たしてそいつが生きていられるのかは、神のみぞ知るといったところだな・・・くくく」
わざとらしく笑って、星砂は俺たちに背を向けて去って行った。またあいつは、俺たちを不安に陥れるようなことを言って放ったらかしにするのか。後に残された俺たちの身にもなってくれ。本当にあいつが俺たちと一緒に脱出しようとしているのか、それすら疑わしくなってくる。
「・・・で、で、どうするの?私・・・『弱み』を言うのなんて・・・!」
「言わなければ死ぬだけだ。24時間の猶予が与えられているとはいえ、覚悟は必要だろう・・・」
「マイムもちょ〜っと言いづらいかな〜これは♣」
「ん〜〜〜!取りあえずだ!腹ごしらえして落ち着こうぜ!」
「まだアンタの『弱み』の説明されてないんだけど」
「・・・」
俺は、“超高校級の死の商人”のことを見ていた。あいつは、この場で自分の『弱み』を打ち明けるだろうか。もしあいつが俺たちに危害を加えるつもりなら、このまま『弱み』をギリギリまで隠して、何か動くはずだ。あいつは・・・あいつはどっちなんだ。願わくば、そんなことにはならないでくれ。
「だーかーら!暗え顔すんなって雷堂!」
「い、いや・・・だけど・・・」
「オレだってよお、参ってんだ。いくら空元気で明るく振る舞ったって、状況はなんも変わらねえ。ここから脱出するか、モノクマの野郎をなんとかしねえと、解決しねえんだろ。だから考えすぎてもしょうがねえ!取りあえずは飯にして元気一発だ!」
「・・・ありがとうな、下越」
ひとまず俺は、下越の言う通りレストランに向かった。この場であれこれ考えても何も変わらない。そうやって問題を先送りにして、もう2度も間に合わないまま人を見殺しにした。下越がそんなことを考えてるとは思わないけど、そういう結果になるんだったら、一度ちゃんと話さなきゃいけない。憂鬱だ。どうして俺がこんなことをしなくちゃいけないんだ。
『弱み』を打ち明け合うなんて、こんなバカみたいなことやってらんないよ!だけど明かさないと1日したら強制的に処刑とか・・・むちゃくちゃ過ぎる。こんな『弱み』死んでも人に言えない。だけど言わなきゃ本当に死ぬ。あああううう!!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!!ぜぇーーーったいにイヤだァーーー!!
下越の分だけ数字が増えたモノモノウォッチのカウンターを見てため息を吐く。自分の『弱み』はまだ明かしてないから、数字の横には『未クリア』の表示。このまま24時間・・・正確に言ったらあと23時間とちょっと。このままじゃモノクマに殺される。
「ねえ鉄おにーちゃん、『弱み』言う気、ないよね?」
「・・・ああ。決心が付かない。自分が・・・不甲斐ない・・・」
「鉄おにーちゃん・・・たまちゃんも自分の『弱み』言えないの・・・。もし、もしこのまま一日経ったら・・・たまちゃんのこと守ってくれる?」
「済まないが、お前の期待には応えられそうにない。自分のことだけで精一杯なんだ」
「ちっ」
「あまり粗暴な態度を取らない方がいいんじゃないか?余計な世話かも知れないが、お前はアイドルなんだろう?そんな一面を見たら、がっかりする者もいるんだろう?」
「は?うっさいし。アンタみたいな図体だけデカいくせにビビりなヤツに言われたくないんだけど」
「うぐっ」
ホントに余計なお世話だよ。っていうか、アイドルとしてファンに媚び売らなきゃいけないからぶりっ子してるだけで、ホントはこんな気持ち悪いキャラやりたくないんだって。
「いいのよそれは。もしバレちゃっても、そういうギャップが好きなヤツにウケてちょっとは絞れるだろうし」
「・・・ギャップ?」
「ほら、たまちゃんってこういうフリフリの女の子っぽい格好似合うし?顔も可愛い系だし?今までムカつくくらいきゃぴきゃぴしたアイドル演じてた娘が、いきなりやんちゃな本性剥き出しにして逆に人気出るってのも、あり得ないシナリオじゃないでしょ?」
「さ、さあ・・・俺はよく分からないが・・・」
「そういうギャップがみんな好きなんだよ。たまちゃんがハスラーアイドルなんてバカみたいなデビューしたのも、この見た目とハスラーとしての技術のギャップがオヤジにウケたのがきっかけだし。客商売してると、イヤでもそういう目新しさを求められんの」
「・・・嫌なのか?」
「嫌だよ。他人が勝手に決めつけたイメージとたまちゃんの本音がズレてるからって、キャラだとかなんとか言われるの。しかもそれが嫌だって言えないんだもん。あいつには・・・一発で気付かれたけど」
「あいつ・・・城之内か」
「あたしのCD聴いて、嫌々歌ってんのが丸わかりだって。そういう演技には自信あったんだけどな。
なんでたまちゃん、こんなこと鉄なんかに話してんだろ。アイドル活動がつまんないわけでも嫌いなわけでもないのに、なんで愚痴っちゃうんだろ。なんで今更、城之内のことなんか思い出して辛くなるんだろ。
「やはり・・・ろくなことにならないな」
「なにが?」
「・・・人はありのままでいいんだ。本音を隠し、本心を欺き、本性を眩ませても自分が苦しいだけだ」
「そんなの当たり前じゃん。ま、本当の自分だけで生きてるヤツなんていないけどね。ウソを吐かないで生きてるヤツなんていないよ。だからたまちゃんはもう半分諦めてるけどさ」
「だが、ウソだけで生きている者もいないだろう。今のお前は、本当のお前なのだろう?」
「そうだと思うよ」
敢えてそんな風にぼかした答えをする。この気持ちがホントなのは間違いないけど、それを認めるのはなんだか抵抗を感じた。ウソを吐くとか吐かないとかじゃなくて、単純にたまちゃんは本心をさらけ出すのが怖いだけなのかな。自分でも自分のことが分かんなくなってきちゃった。
「俺はやるべきことができた。野干玉」
「だからたまちゃんって・・・あ、でも今はそっちでもいいかも」
「ありがとう」
「は?」
それだけ言うと、鉄はさっきまで暗い顔してたくせに、急ぎ足でどこかに行っちゃった。なんで今たまちゃんはお礼言われたの?分かんないけど、結局たまちゃんも鉄も自分の『弱み』は誰にも言わないままだ。このままじゃアイドルがどうとか言ってる場合じゃなくなる。早く誰かに助けてもらわないと──。
「・・・?」
その時、腕から音がした。さっき下越が自分の『弱み』を暴露したときと同じ音が。思わずモノモノウォッチを確認して・・・頭が真っ白だった。一個だけ把握できるのは、さっきまで『未クリア』だった表示が『クリア』になってることだけだった。
「私たちだけでも、『弱み』を打ち明けないか」
私は、思い切って提案してみた。下越と雷堂はレストランに行き、それ以外の面々は互いを警戒してか、どうしていいか分からないままにモノクマランドをうろついたりホテルに戻ったり、とにかくまとまりなく行動している。そんな中、気分転換にと散歩に来た田園エリアで、私は納見に出会った。草原の真ん中で無防備に両脚を投げ出して、組んだ手を枕に寝そべっていた。個室以外での故意の就寝は罰則対象だが、呑気なものだ。
「どうしたんだい急にい。まあいずれは打ち明けなきゃいけないことだけどお、どうして今おれとなんだい?」
尤もな質問だが、意外な質問でもあった。『弱み』を打ち明ける相手とタイミングは、下越でもなければ皆が慎重に機をうかがうものだ。それを、ほぼ偶然に任せたような相手とタイミングで打ち明けることに疑問が浮かぶのは当然だ。だが、納見のような楽天家からそんな質問が出たことは意外だった。
「私の『弱み』の内容だが・・・別に誰に話してもいいのだ。どうせ過去のことだからな。だが、敢えて話す相手を選ぶのであれば、私の『弱み』を軽んじないであろう者に聞いて欲しい」
「おれは真剣に話をするのが苦手だけどねえ」
「真剣に聞く必要はない。お前は私の『弱み』を、ただありのまま受け入れてくれるだけでいい。そういう意味では、雷堂よりもお前の方がよっぽど適任だと思うのだ」
「雷堂氏よりもおれがかい?想像がつかないけどお・・・まあいいよお。おれの『弱み』が荒川氏にとってどう感じるものかはさっぱり分からないけどねえ。どうせなら鉄氏か極氏に話したかったけどお、別に特別こだわりはないからねえ」
「お前は正直だな」
もちろん私の『弱み』を話す以上は、納見の『弱み』を聞く覚悟もあった。しかしこんなのほほんとした男に、果たして『弱み』などというものがあるのか、それさえ疑問だ。星砂は『弱み』が無いなどと宣っていたが、さすがにそんなことはないだろう。
「そんじゃあ、まずは荒川氏の『弱み』を打ち明けなよお」
「文句を言うわけではないが、とても重大な秘密を打ち明けるような雰囲気ではないな」
「そうかい?爽やかじゃあないか」
「全て人工物だがな。まあいい。それで私の『弱み』だが・・・実はな、私はな──」
どうしても言い淀む。言葉など決まっているのに、それがどうしても喉に突っかかる。言おうと覚悟していたはずなのに、それを口にしてしまうことで私の中の何かが失われて二度と戻らないような気がして、どうしても話せない。
「言いにくそうだねえ。やめるかい?」
「いや、話す。私はな・・・その、ずうっとだな、ずっとと言うのは小学生時分から希望ヶ峰学園に来るまでの間だが・・・いわゆる・・・いじめ、を受けていた」
ぴろりん、と間抜けな音が鳴る。私のモノモノウォッチにはクリアの表示、納見のモノモノウォッチのカウンターの数字は1つ増える。今の音を以て、私に与えられた動機はクリアとなった。死なない権利を手に入れた私は、だが同時に大きなものを失った。いや、とっくに失っていたのだが、失ったと自覚しないようにしていたものを自覚せざるを得なくなった。
「ふぅん・・・いじめねえ。それが荒川氏の『弱み』かい。思ったよりもありふれたもんだねえ」
「否定はしない。だが・・・私のような境遇がありふれていいはずがないだろう。私は、小学生から高校生まで、実に12年もの間、“日常”を不当に脅かされ続けてきたのだ」
「そうだねえ。おれはそういう話とは無縁で生きてこられたからあ、荒川氏の気持ちを慮ってあげることはできないけれどお・・・」
「いいのだ。こうして自分の言葉にしてしまったことで、私は私の過去を受け入れざるを得なくなった。あの理不尽な暴力を、非道なる所業を、やるかたない憤懣も、現実のものだと認めてしまったのだ。こんな屈辱はない」
「残酷だねえ。でもきっといじめた側はそんなことすっかり忘れてるんだろうねえ。覚えてたとしても荒川氏ほど思い悩むことはないだろうさあ。さっさと忘れてしまえばいいんじゃあないかい?」
「忘れてしまえればどれほど良いか。だが忘れられんのだ。そもそものきっかけは、私のこの顔が薄気味悪いという程度の理由だ。毎朝鏡を見ては思い出すのだ。その屈辱の日々を・・・!」
「まあ、子供っていうのはそんなもんさあ」
「顔立ちの美醜はステータスだ。美しき者は人格も美しく、醜き者は人格も醜い。それがあの場所、あの時、あの者たちの常識だったのだ・・・まったく下らない」
「でも荒川氏だって分かってるんだろお?過去の話だってさあ。今の荒川氏が思い悩むことなんてないと思うよお」
「・・・お前はあれだな、まったく私を慰めようとかいうことはしないのだな。当たり障りのないようなことを言うことしかしない」
「気に障ったかい?」
「いいや、やはりお前に話して良かった。今更何を言っても過去は変えられない。私はこのやるせなさと一生付き合っていくしかないのだ。お前の態度で再確認した。やはりこれは私の問題、
この男の、呑気かつ能天気で、無責任かつ当たり障りのない物言いは、今の私にとっては却って助かる。形式張った慰めも、惨めになるだけの同情も、何の意味も成さない義憤も無い。ただ事実を事実のまま受け入れてくれる。それだけが、私にとっての救いなのだ。
「まあそれはそれとして、ヤツらへの憎しみが消えることはないがな。過去に戻れる車でもあれば、復讐の1つでもしてやるというのに」
「それは荒川氏の自由だけどお。あくまで当時のいじめっ子に復讐したがってるってことはあ、それなりに分別はついてるんだねえ」
「当然だ」
こんな話を納見とすることになるとは思わなかった。何よりこれを『弱み』として打ち明けさせるということは、モノクマは我々の中にスクールカーストのような上下関係を作ろうとしているのか?閉鎖空間内において少人数であれば、前時代的な社会構造もできやすくはある。コロシアイという環境と相まって殺人に発展することもなくはなさそうだが、その程度でヤツが満足するだろうか。
「ともかく私はクリアだ。協力に感謝する」
「いいよお。おれの『弱み』も聞いてもらえるわけだしねえ」
「そうだな。次はお前の話を聞こう」
「とは言っても、おれの『弱み』は『弱み』って言えるほどのものじゃあないけれどねえ。荒川氏にとっちゃよく分からないものだと思うしねえ」
「ほう?」
「おれの『弱み』はねえ、これさあ」
そう言って、納見は自分のモノモノウォッチの画面を私に見せてきた。嘘偽りのない、本当の『弱み』であるというアピールだろう。そこに表示されている文字は、こうだ。
──納見康市は、自分の“才能”に迷いがある──
まず、意味が分からない。“才能”に迷うとはどういうことだ?納見の“才能”は確か、“超高校級の造形家”だったな。それに迷うということは、その“才能”に何か不満を感じているのか?或いはそれは、納見の本当の“才能”ではないのか・・・?だとすれば納見は自分の“才能”を偽っているということか?何のために?
「先に言うけど、おれは“超高校級の死の商人”じゃあないよお」
「・・・ッ!」
「おれは正真正銘の“超高校級の造形家”さあ。今の状況じゃあ、そうやって疑われるから言いにくかったんだけどお」
「いや・・・まあ、正直疑った。しかし、だとすれば迷いがあるとは一体どういうことだ?」
「う〜ん、モノクマの言い方だからおれが思ってることと合ってるかは分からないけれどお、別にいいかあ。うん、おれはねえ、芸術家にはなりたくなかったんだあ」
「・・・ん?」
やはりまだ意味が分からない。芸術家にはなりたくなかった、とはどういうことだ?迷いがあるというのはそのことか?
「今だって別に大した芸術家気取りなわけじゃあないけれどねえ。でも何かを造る度に色んな人から評価されたりするのは億劫だねえ」
「・・・それだけか?」
「それだけっていうのはあ?」
「いや、今のお前の話を聞いた限りでは、お前は“超高校級の造形家”としての世間体が面倒だと言っているのだと思ったのだが、お前の『弱み』とはそれだけなのか?」
「自分の『弱み』はあんなに深刻そうにしておきながらずいぶんだねえ。まあ分かってくれとは言わないけれどねえ」
「ああ、そうだな。すまん」
納見に言われて、私は自分の認識が誤っていることに気付いた。先ほど私は自分の『弱み』を重苦しく、納見に勝手な期待をして話した。だというのに、私は納見の『弱み』を“それだけ”扱いした。正直に思ったことではあるが、モノクマが『弱み』に設定している以上は納見にとって軽々しいことではないはずだ。
「単におれの責任感とか品格が足りないって話でまとまっちゃうんだけどさあ、やっぱりおれは好きなものを好きなときに好きなように創作したいわけさあ。それが誰かに楽しんでもらえたり価値を感じて貰えたりすることはもちろん嬉しいけれどお、逆に批判されたり的外れな議論をされたりするのが鬱陶しいのさあ」
「言いたいことは分かるが・・・やはりそれを聞いても、それがお前の『弱み』であるとは信じがたい。内容の軽重ではなく、それがコロシアイに発展する動機になり得るのかが疑問だ」
「『弱み』自体は本当のことだけどねえ。荒川氏のカウンターも数字が増えてるだろお?」
「ああ。間違いない」
「そんならもうおれたちはクリアさあ。これで今回の動機からは解放されたってことだねえ。自由さあ」
「自由、か」
「ああそうさあ。おれは自由が好きなんだあ。何をしててもいいし何もしなくてもいいっていう無責任な自由がねえ。そんな自由がないと創作なんてことはできないしねえ」
「お前はお前でずいぶん能天気だな」
とはいえ、納見と私の目的はクリアされたのだ。これ以上互いの『弱み』に関して詮索をして、余計なことを知る必要もない。
「というわけでおれも荒川氏も“超高校級の死の商人”じゃあなかったねえ」
「ああ。だがそうなると、“超高校級の死の商人”は一体・・・?」
「そもそも死の商人っていうのはあ、人を殺す仕事じゃあないだろお?どちらかというと商売人気質な人なんじゃあないかい?」
「モノクマのことだから、無意味に我々の不安を煽るようなことを言う可能性はある。だとしても本人が名乗り出ない以上は、その“才能”はこのコロシアイ生活において何らかの力を持つということになるだろう」
「ふぅん・・・そうねえ。だとするとお・・・」
「だとすると、何だ?」
「“超高校級の死の商人”はどこまでこのコロシアイ生活に関わってるんだろうねえ」
“才能”を偽り、我々の中に紛れ、そして今まで鳴りを潜めている“超高校級の死の商人”。その目的が一体何なのか。それさえも分からないままでは、今後どうすればいいのかも分からない。気持ちが悪い。危険が潜んでいると分かっているのに対策が打てないこの状況が、非常にもどかしい。
「私の『弱み』は、まだ言ってないことになってるんだね」
モノクマからコロシアイの
「だけどボク知ってます。こなたさんは、ボクに言えば
「うん、そうだね。それじゃあさ、スニフ君の『弱み』は、私が聞いてあげる。他の人より、私の方が打ち明けやすい・・・かな?」
「
辺りに人がいないことをたしかめて、ボクとこなたさんは
──研前こなたの“幸運”は、他人の犠牲を要する──
ボクがそれを見ると、こなたさんのモノモノウォッチがプゥと音を出した。これでこなたさんは、
「あ、これでクリアになるんだ。てっきり、もう知ってるスニフ君じゃカウントされないんじゃないかと思ってた」
「それなのに見せてくれたんですか?」
「一応ね。それに、スニフ君に知っておいて欲しかったから。私の言ったことがウソじゃないんだってこと」
「ウ、ウソだなんておもってないです!」
「ふふっ、うん。そうだよね。スニフ君は優しいね」
またこなたさんに
「それじゃあ・・・スニフ君のも見せて?」
「えっ・・・あっ、No!ダメです!ボクのは見せたくないです!」
「え・・・?どうして?」
「あのっ、ごめんなさい。でもボクのは・・・こなたさんには見せられないです。見せたくないんです。こなたさんにだけは・・・」
「・・・私のこと、そんなに信用できない?」
「そんなことないです!ボク、こなたさんのこととっても
見せられない。だってボクの『“
──スニフ・L・マクドナルドの初恋は、研前こなたではない──
ボクのこのきもちは、ボクが自分の口で言わないとダメなんだ。こんなふうにこなたさんが知るのは、そんなのいけない。ダイスケさんだって言ってた。ボクがやりたいようにやればいいんだ。だから他の人の、モノクマなんかのせいで
「ごめんなさい・・・こなたさんにだけは、見せたくないです」
「そっか。うん、ごめんね。私の『弱み』を知ってるからって、スニフ君の『弱み』を教える必要ないもんね。なんか・・・私、押しつけがましかったかな」
「おしつきがまし?」
「いいのいいの。でも、気を付けないとダメだよ。誰かには打ち明けないと、モノクマにおしおきされちゃうから」
「はい。はい・・・」
でもどうしよう。こなたさんに言えないなら、ワタルさんにだってぜったい言えない。だってワタルさんがこれを知ったら、きっとワタルさんはボクとこなたさんのことを
「ううぅ・・・どうしよう・・・」
「ねえ、しつこいかも知れないけど、私には言ってくれないの?人に言ったりなんかしないよ?」
「そうでしょう、でもそうじゃないんです。こなたさんだけは・・・」
「2人とも何してんのー?」
「Wow!!」
「きゃっ!?こ、虚戈さん!?」
またこなたさんがボクによってくると、
「あれ?あれ?マイムお邪魔だった?おジャ魔女だった?パジャマでお邪魔だった?ごめんね♡」
「あっ!ちょ、ちょっと待って虚戈さん!」
「うん?なあにこなた?」
ぴょんぴょこ
「虚戈さんは、もう誰かに『弱み』は打ち明けたの?」
「うーん・・・まだだなあ♣でもマイムは自分の『弱み』を人にペラペラ言ったりするような尻軽じゃないんだよ♡もしその人がマイムにだけ『弱み』を教えてくれるっていうんだったら信じてもいいかなー♫」
「とってつけな人ですね!」
「うってつけ、だね」
「それでした!」
「なになにどゆこと?こなたとスニフくんで『弱み』を打ち明けあってたんじゃないの?」
「それがね、スニフ君が私には打ち明けたくないって言うの。どうしてかな?」
「こ、こなたさん・・・ボクのことおいといてすすめないでください・・・」
なんだか、いきなり来たマイムさんとボクとで『“
「ふ〜ん♡スニフくんは『弱み』をこなたには言いたくないんだ〜♡そうなんだ〜♡」
「な、なんですか・・・」
「いいのいいの♡まったくスニフくんは可愛いな〜♡それじゃあマイムお姉ちゃんが聞いてあげるよ♡こなたにはナイショだよね♡」
「ボ、ボクまだマイムさんに
「でもマイムに言わないと他に言う人いないでしょ?早くしないとスニフくん、モノクマに殺されちゃうよ?」
「それはそうですけど・・・」
「大丈夫だよスニフ君。私、先にホテルに戻ってるから。虚戈さんだって、私がいたら『弱み』を打ち明けにくいでしょ」
「うん!じゃあまた後でね〜♡」
「What!?あっ、こ、こなたさーん!」
なんだかこなたさんとマイムさんでどんどんお話がすすんで、ボクだけがおいてけぼりにされてるかんじだ。みんなボクのこと子どもあつかいして!
「それで、スニフくんの『弱み』はなんなの?こなた絡みでしょ?」
「
「バレてるよ♫スニフくん、こなたのこと大好きだもんね♡見てたら分かるよ♡」
「・・・ダイスケさんにも言われました。ボクがこなたさんのこと好きなの知らないの、こなたさんとテルジさんだけだって」
「そうだね♫もうスニフくんってば水くさいなあ♡恋愛相談ならマイムだって力になってあげるのに♡」
「マイムさん、
「ないよっ☆」
「
「でも他のみんなより色んな経験はしてきてるんじゃないかな♫きっとみんなは友達が死んだり、パパとママに捨てられたり、ムチで打たれたりしたことないと思うよ♡」
「
「いーのいーの♬取りあえずスニフくんの『弱み』を教えなさい♡」
「ううぅ・・・わかりました」
このままマイムさんに
「あのぅ・・・ボクのは、これです」
「えーっと、『スニフ・L・マクドナルドの初恋は──』」
「
「ごめんごめん☆」
分かってくれてないのかな!?
──スニフ・L・マクドナルドの初恋は、研前こなたではない──
「これが『弱み』?ふーん、なんだか拍子抜けっていうか・・・別にこなたにバレてもよくなくなくない?」
「よくなくなくなく・・・どっちですか?」
「それにしても初恋がこなたじゃないって、スニフくんってばここに来る前も恋愛してたんだねー♡まったくもーおませサンなんだから♡」
「いえあの、ボク・・・こなたさんが
「えー?じゃあ前に好きになった娘のこと忘れちゃったの?ひどいなー♠何があったかは聞かないけれどね、女の子を大切にしない男の子はモテないんだぞ♣」
「
「だけどモノクマはウソは言わないからなあ〜♣モノクマがこう言ってるってことは、スニフくんが忘れてるんじゃないの?」
「だけど
「なすてぃー?分かんないけど、でも初恋がこなたじゃなくたって、今スニフくんが好きなのはこなたなんでしょ?だったら別にいいんじゃないの?」
「う〜ん・・・
マイムさんの言うことはそれはそうなんだけど、でもボクが今まで
「とにかくこれでスニフくんは動機『クリア』だよ☆よかったね♡」
「はい。Thank youです、マイムさん」
「スニフくんはこの後どうするの?こなたはホテルに戻ったみたいだけど、マイムはちょっとカジノでも行ってルーレットしようと思ってるんだ♡クルクルクル〜っと◎」
「あれ?マイムさんは『“
「まだだよ♡」
「ボクききますけど」
「ダーメ♬マイムの『弱み』はスニフくんには教えてあげない♡」
「なんでですか!?ボクのはきいたのに!」
「えへへー♬ごめんね♡だけどね、マイムだって言う相手を選ぶぐらいのことはするんだよ♬マイムはスニフくんの前ではいいお姉さんでいたいからね☆」
そう言ってマイムさんはくるくる
「でもそしたらマイムさん、
「だからカジノとかで言う人探すよ♬困ったら夜になればみんなホテルに集まるでしょ♡」
「
マイムさんがそれでいいんならボクはいいだけど、やっぱり気になるなあ。というか、ボクはなんだかながれでマイムさんに言っちゃったけど、ボクだって言う人を
コロシアイ・エンターテインメント
生き残り:12人
更新日はロンカレの初回投稿日です。
1年で三章の途中まで。早いんだか遅いんだか分からないですけど、前作よりは遅いです。